事業用融資での第三者保証~保証意思宣明公正証書の必要性/保証人への情報提供義務の3つの場面

▼この記事でわかること
事業用融資における第三者保証の制限
公証人による意思確認手続きとは
保証契約締結時の情報提供義務
主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務
保証人から請求があったときの情報提供義務
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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保証の制限

 保証とは、主債務者が債務の支払をしない場合に、これに代わって支払をすべき義務のことです。
 例えば、債務者Aの債務を保証するために、Bが保証人となり、もしAが債務の履行を果たせない場合に、Aの代わりにBが債権者に対してその債務の履行は果たします。(保証債務の基本について詳しくはこちら)

    債権者
  主債務↓   保証債務
    A  B
 (主債務者)   (保証人)

 保証人は、主債務者がその債務(主債務)を履行しないときに、それをいわば肩代わりする存在です。もし主債務者が大きな借金を残したままその債務(主債務)が履行できないとなると、保証人が代わりにその大きな借金を背負うことになります。
 このように、保証人の責任は非常に重いのです。
 そして、こんな重い責任を背負わされる保証契約の締結を、無制限に許してしまうのは危険ですよね。
 ということで、民法では保証契約の締結にあたり、より慎重なルールを加えています。

事業用融資における第三者保証の制限
-個人保証人の保護の拡充-

 保証契約は、何も個人が個人を保証するものに限りません。
 よくあるのが、法人(会社)が事業用融資を受ける際に経営者や経営者以外の役員や友人など(第三者)の個人が保証人なるケースです。
 法人(会社)の事業用融資となると、その金額もかなりの大きなものになる場合もあるでしょう。
 このような保証契約を無制限に許してしまうのは非常に危険ですよね。
 ということで、民法ではこのような保証契約については、より慎重な手続きを要する規定を置いています。

(公正証書の作成と保証の効力)
民法465条の6
事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。


 この条文で何を言っているのかといいますと「事業用融資の保証契約は、その契約締結に先立って、公正証書を作成して、公証人があらかじめ保証人本人から直接その保証意思を確認しなければ、 効力を生じない」ということです。
 公正証書とは、私人(個人又は会社その他の法人)からの嘱託(簡単に言えば依頼)により、公証人がその権限に基づいて作成する文書のことです。
 つまり、事業用融資のための保証契約を締結するには、事前に公証人に公正証書を作成してもらって、公証人に保証人本人からの「この債務を保証します」という意思を確認してもらった上で、契約締結を行わなければいけないということです。
 これは手続き的にもかなり慎重なルールと言えます。
 そして実はこの規定、2020年4月施行の改正民法から新設されました。
 ここまで慎重な規定を置くことになった理由って?
 そもそも事業用融資の保証自体、その金額も大きいので(ましてや個人がそれを保証するとなると特に)大きなリスクをはらんでいます。実際、個人的な情義等(「アイツのためなら...」みたいな感情)から保証人となった者が、想定外の多額の保証債務の履行を求められ、生活の破綻に追い込まれる事例が、現実に後を絶ちませんでした。
 しかし一方で、特に中小企業向けの融資において、主債務者の信用の補完や、経営の規律付けの観点から、重要な役割を果たしていたことも事実です。
 そして検討の末...まず経営者の保証については、有用な場合があることは否定できず、民事法による強力な規制は不適当(適用対象外に)という結論となりました。一方、第三者保証(経営者以外の者が保証人となること)については、できる限り抑制すべきであるが、一律禁止は行き過ぎ(厳格な要件の下で許容)であると結論付けました。
 以上の事を総合的に勘案して、事業用融資における第三者保証の制限についての規定が新設され、慎重な手続きを経た上で可能となることとなったのです。
 なお、次に掲げる者については、民法465条の6の規定は適用されません。

1・主債務者が法人である場合の理事、取締役、執行役等
2・主債務者が法人である場合の総株主の議決権の過半数を有する者等
3・主債務者が個人である場合の共同事業者又は主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者

 上記に当てはまる者については、民法465条の6の規定による慎重な手続きは必要ありません。その理由としては、この者達まで、民法465条の6の規定による慎重な手続きで縛り付けてしまうと、円滑な取引を阻害し、世の中のビジネスというものに少なくないマイナスの影響を与えてしまうからだと考えられます。
 なお、上記3についての補足ですが、「主債務者が行う事業に現に従事している」とは、 文字どおり、保証契約の締結時において、その個人事業主が行う事業に実際に従事しているといえることが必要です。単に書類上事業に従事し ているとされているだけでは足りず、また、保証契約の締結に際して一時的に従事したというのでも足りません。 
 また、主債務者が法人である場合に、その代表者等の配偶者が例外になるわけではありません。例外となる配偶者は、主債務者が個人である場合の法律上の配偶者に限らます。

補足:「事業のために負担した貸金等債務」の要件
ここポイント
【事業性】
「事業」とは、一定の目的をもってされる同種の行為の反復継続的遂行を言い、「事業のために負担し た貸金等債務」とは、借主が借り入れた金銭等を自らの事業に用いるために負担した貸金等債務を意味します。
 例えば、製造業を営む株式会社が製造用の工場を建設したり、原材料を購入したりするための資金を 借り入れることにより負担した貸金債務が「事業のために負担した貸金等債務」の典型例です。
 このほか、いわゆるアパート・ローンなども「事業のために負担した貸金等債務」に該当するものと考えられます。 他方で、貸与型の奨学金については「事業のために負担した貸金等債務」に該当しないと考えられます。
 具体的な判断としては、次のような感じです。
 借主が使途は事業資金であると説明して金銭の借入れを申し入れ、貸主もそのことを前提として金銭を 貸し付けた場合には、実際にその金銭が事業に用いられたかどうかにかかわらず、その債務は事業のために負担した貸金等債務に該当します。(借入時において、借主と貸主との間で、例えば、その使途を居住用住宅の購入費用としていた場合には、仮に借主が金銭受領後にそれを「事業のために」用いてしまったとしても、そのことによって「事業のために負担した」債務に変容するものではない)

公証人による意思確認手続き

 先述の民法465条の6の規定に基づいた、公証人による意思確認手続きは、保証人になろうとする者が保証しようとしている主債務の具体的内容を認識していることや、保証契約を締結すれば保証人は保証債務を負担し、主債務が履行されなければ自らが保証債務を履行しなければならなくなることを理解しているかなどを検証し、 保証契約のリスクを十分に理解した上で、 保証 人になろうとする者が相当の考慮をして保証契約を締結しよ うとしているか否かを見極めるものです。
 そして、もし保証人になろうとする者の保証意思が確認できない場合には、公証人は「無効な法律行為等については証書を作成することができない」とする公証人法26条に基づき、 公正証書の作成を拒絶しなければなりません。公証人に公正証書の作成を拒絶されれば、必然的にその保証契約の締結もできなくなります。

公証人に対する口授・筆記

 保証人になろうとする者は、公証人に対し保証意思を宣明するため、主債務の内容など法定された事項を口頭で述べ、公証人は保証人になろうとする者が口頭で述べた内容を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は閲覧させなければなりません。 (口がきけない者については通訳人の通訳又は自署)
 なお、 保証人になろうとする者が口頭で述べる「法定された事項」とは、次の事項です。

1・主債務の債権者及び債務者
2・主債務の元本と従たる債務(利息、違約金、損害賠償等)につ いての定めの有無及びその内容
3・主債務者がその債務を履行しないときにその債務の全額について履行する意思を有していること

(上記は通常の保証契約(根保証契約以外のもの)の場合のものですが、根保証契約については別途改めて解説します)
 そして、保証人になろうとする者は、公証人が証書に記載した内容が正確なことを承認して署名押印するなどし、公証人はその証書が法定の方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名押印します。

【公正証書の作成手続の特徴】
 代理人による嘱託は不可です。必ず保証人本人が出頭しなければなりません。(代理人に頼むことはできない)
 手数料は、保証債務の金額によらず、保証契約ごとに、原則として1件1万1000円です。

【保証意思宣明公正証書の性質】
 この公証人による保証人の意思確認の公正証書を、保証意思宣明公正証書と言います。
 注意点として、これは保証契約の契約書(保証契約公正証書)とは別のものです。つまり、保証契約書は保証契約書でまた別に作成することになります。
 また、保証意思宣明公正証書自体には執行認諾文言を付けることはできません。(執行認諾文言を公正証書に付けると、定めた約束が守られなかったときに裁判抜きで強制執行が可能になる)

情報提供義務
 
 保証契約において、3つの場面で、主債務についての保証人への情報提供義務が定められています。(民法465条10)
 これは、保証人に対して自身が保証している主債務の状況、わかりやすく言えばそのリスクをちゃんと把握させようという趣旨です。

保証契約締結時

 公証人は、保証意思を確認する際には、保証人が主債務者の財産状況について情報提供義務に基づいてどのような情報の提供を受けたかも確認し、保証人がその情報も踏まえてリスクを十分に認識しているかを見極めなければなりません。
 保証人に対して提供すべき情報は次の3つです。

1・財産及び収支の状況
2・主債務以外の債務の有無、その債務の額、その債務 の履行状況
3・担保として提供するもの(例えば、ある土地に抵当権を 設定するのであれば、その内容)

 もし上記の情報提供義務に違反があった場合(上記に定められた情報がちゃんと提供されていなかった場合)、保証人は、保証契約を取り消すことができます。ただし、それには次の要件を満たすことが必要です。
①保証人が主債務者の財産状況等について誤認
②主債務者が情報を提供しなかったこと等を債権者が知 り、又は知ることができた(情報提供についての債権者の悪意)

 また、この保証契約締結時の情報提供義務の対象となる保証契約は、個人に対して事業上の債務の保証を委託する場合の保証契約です(貸金債務の保証に限らない)。
 参考として、具体的には次のようなケースがあります。
保証契約締結時の情報提供義務例
画像中の「左記3①②の要件」とは、前述の保証人が情報提供義務違反により保証契約を取り消すための要件です。
(※出典:法務省民事局『民法(債権関係)の改正に関する説明資料』)

主債務者が期限の利益を喪失した場合

 期限の利益とは「定められた期限まで弁済をしなくてもOK」という、債務者の受ける利益です。期限の利益の喪失とは「定められた期限まで弁済をしなくてもOK」という利益を失って、すぐに弁済しなければならなくなることです。
 例えば「100万円を毎月末10万円ずつの分割10回払いで返済」という金銭消費貸借契約を1月に締結して借金をした人(債務者)がいたとします。この場合、100万円全額の支払い(弁済)は10月末まではしなくてもいいですよね?これが期限の利益です。そして、この債務者が3月末の支払いを怠ったとして、それにより、4月に残りの80万円全額を一括返済しなければならなくなった...これが期限の利益の喪失です。なお、このときに遅延損害金が発生していれば、債務者はそれを上乗せして弁済しなければなりません。
 以上を踏まえた上で、保証についての話に戻ります。
 保証人の負担額は、主債務者が支払いを遅滞した後に発生する遅延損害金によって大きく膨らみます。
 特に、主債務者が分割金の支払いを遅滞して期限の利益を喪失し、一括払いを求められるケースにおいて顕著です。
 ということは、もし主債務者が支払いを遅滞し、期限の利益を喪失したことを保証人が知っていれば、早期に立替払いをして遅延損害金が発生することを防ぐなどの対策を取ることも可能ですよね。しかし実際には、保証人は主債務者が支払いを遅滞したことを当然には知らないのが現実です。
 そこで、2020年4月施行の改正民法より、期限の利益喪失に関して債権者の保証人に対する情報提供義務の規定を置いています。

(主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務)
民法458条の3
1項 主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。
2項 前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
3項 前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。


 この規定により、主債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は保証人に対し、その喪失を知った時から2か月以内に、その旨を通知しなければなりません。もし債権者が保証人に対し2か月以内に通知をしなかったときは、債権者は、期限の利益を喪失した時からその後に通知を現にするまでに生じた遅延損害金については、保証債務の履行を請求することができません。ただ、これはあくまで保証人の保証債務についての話で、主債務者は引き続き遅延損害金も含めて支払義務を負いますので、この点はご注意ください。
 また、この規定の対象となる保証契約は、保証人が個人である保証契約一般です。保証人が法人である場合には適用されません。
 参考として、具体的には次のようなケースがあります。
〈例〉支払いを1回でも怠れば直ちに一括払いの義務を負うとの特約が付いている分割払の貸金債務について、個人により保証がされたが、主債務者が分割払いの支払いを怠ったことにより期限の利益を喪失し、一括払いの義務を負った。
 この場合に、債権者は保証人に対して期限の利益喪失に関して、その旨を通知しなければなりません。そして、もし債権者が2か月以内に通知せず、3か月後に通知をした場合、債権者は一括払い前提での3か月分の遅延損害金の請求を保証人にすることはできません。
 
保証人から請求があったとき

 債権者は、保証人から請求があったときは、主債務の元本、利息及び違約金等、主債務の履行状況に関する次の情報を提供しなければなりません。(民法458条2)

1・不履行の有無(弁済を怠っているかどうか)
2・残額
3・残額のうち弁済期が到来しているものの額

 ただし、上記の請求をすることができるのは、主債務者から委託を受けた保証人(法人も可)に限られます。
 なお、こちらの規定も、2020年4月施行の改正民法より新設されたものです。
【参考】
主債務の履行状況に関する情報提供義務例
※出典:法務省民事局『民法(債権関係)の改正に関する説明資料』

 以上、保証契約における制限等ルールについてになります。
 今回の記事で記した内容は、どれも2020年4月から施行された民法改正により新設された規定です。
 改正以前の民法に慣れてしまっている方は、くれぐれもお気をつけください。また、それ以外の方も、ひとつの大きな民法改正ポイントとして、覚えておいていただければと存じます。
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