2021/03/29
【消費貸借(金銭消費貸借)と賃貸借】お金と物の貸し借りはどう違う?/消費貸借のメリットと成立要件
▼この記事でわかること・消費貸借契約とは
・賃貸借との違い
・消費貸借のメリット
・消費貸借契約の成立要件/解除/期限前弁済と損害賠償
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

消費貸借契約
有償(つまり有料)で物を貸し借りする契約は、賃貸借契約になります。
無償(つまりタダ)で物を貸し借りする契約は、使用貸借契約になります。
では、お金の貸し借りは何契約でしょう?
実は、お金の貸し借りは、賃貸借契約でも使用貸借契約でもありません。
お金の貸し借りは、消費貸借契約というものになります。特にお金の貸し借りは、金銭消費貸借契約と言われます。

賃貸借契約との違い
賃貸借契約と消費貸借契約の違いを説明すると、賃貸借契約の場合「お金を払って物を借りて使って返す」ということになりますが、消費貸借契約の場合は、お金を払って物を借りて「消費」して消費した分を返す、ということになります。
これではなんだかよくわかりませんよね(笑)。もう少し簡単に噛み砕いてわかりやすく解説します。
賃貸借契約の場合は
物を借りる→借りた物を使う→借りた物を返す
となります。
それでは、消費貸借契約の場合はどうなるでしょう?
お金で例えるのがわかりやすいので、金銭消費貸借契約で説明すると
お金を借りる→お金を使う→使ったお金を返す
となります。(利息に関しては解説をわかりやすくするために省きます)
消費貸借契約は「価値」を貸し借りする契約
お金を借りたら、借りたお金は返しますよね。当たり前の話です。
さて、ここでよく考えてみてください。
家を借りたら借りた家を返しますが、お金の場合は「借りた分のお金」を返します。
例えば、友達から1万円を借りたとしても、返す時は実際、友達から受け取ったその1万円札自体を返す訳ではないですよね。受け取った1万円札と同じ価値分の金銭を返しますよね。
つまり、1万円を借りて1万円札を受け取っても、返すときは、変な話100円玉100枚で返しても良い訳ですよね。まあ、そんな返し方をしたら相手は嫌がるでしょうが(笑)。
以上が、賃貸借と消費貸借の違いです。
繰り返しますが、賃貸借は物を貸し借りする契約で、消費貸借は、いわば価値を貸し借りする契約です。
消費貸借のメリット
消費貸借についての民法の条文はこちらです。
民法587条
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
この民法587条の条文だけでは、今一つピンと来ないかもしれませんが、要するに、借りた物そのものを返すのではなく「種類、品質および数量の同じ物」を返すのが、消費貸借契約ということです。
つまり、貸した側は、貸した物そのものを返してもらう必要がないので、借りた側は、借りた物を賃貸借や使用貸借よりもっと自由に使える、というメリットがあります。
もちろん、貸した側にもメリットがあります。お金を貸した場合は、利息分を加算した額を返してもらうことで利益を得られます。
消費貸借契約の成立要件と解除
消費貸借契約は、書面によるものと書面によらないものとで成立要件が異なります。
書面による消費貸借契約は、要物契約になります。したがって、物を引き渡した時に成立します。金銭の場合、そのお金を貸し渡した時に成立します。
書面によらない消費貸借契約は、諾成契約になります。したがって、合意のみで成立します(申し込みと承諾で成立=口約束で成立する)。なので、貸し借りする物・金銭の授受の前に、借主が貸主に「私に貸し渡せ」と請求する権利が生じます。
消費貸借契約の解除については、書面による消費貸借契約であれば借主が金銭の交付を受ける前なら、借主はいつでも契約を解除できます。(これは借主に借りる義務を負わせない趣旨)
この場合に、貸す側である貸主に損害が発生するときは、貸主は損害賠償請求ができますが、その請求は限定的な場面でのみ可能です。
例えば、相当の調達コストがかかる高額融資のケースでは、損害賠償請求が可能です。しかし、消費者ローンなど少額多数の融資では、借主の契約解除による損害はまずないので、損害賠償請求は難しくなります。
借主の期限前弁済(約束してた期日よりも早く返すこと)と損害賠償
借主は、返還時期の定め(「いついつに返す」という決まり)があっても、その返還時期の前に、貸主に対して、いつでも返還をすることができます。
この場合に、貸主は借主に対し、損害賠償を請求することができますが、その請求は限定的な場面でのみ可能となります。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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