【寄託契約】物の一部滅失と解除/第三者が返還請求してきたら?/混合寄託と消費寄託とは

▼この記事でわかること
寄託契約とは
寄託物の一部滅失(預けた物が傷ついた・壊れた)等による損害賠償請求と費用償還請求
第三者が寄託物の返還を請求してきたら?
寄託契約と賃貸借契約の違い
混合寄託消費寄託とは
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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寄託契約

 寄託契約とは、物を預ける契約です。倉庫に物を預けて保管してもらう契約などは、寄託契約の典型です。
 そして、寄託契約は、書面ナシの互いの合意のみでも成立します。(民法657条)
 つまり、物を預けて保管してもらう契約(寄託契約)は「預けます」「預かります」の、口約束だけで成立します。(諾成契約)

預けた物が傷ついた・壊れた場合
寄託物の一部滅失等による損害賠償請求と費用償還請求


 寄託物(預けた物)の一部が滅失(傷ついた・壊れた)ときは、寄託者(物を預けた人)は受寄者(物を預かった人)に対して、その損害賠償請求ができます。
 また、寄託物(預かった物)の一部滅失(傷ついた・壊れた)が、受寄者(物を預かった人)の責任ではない場合に、そのために費用がかかったときは、受寄者(物を預かった人)は寄託者(物を預けた人)に対して「かかった費用分の金払え!」と費用償還請求ができます。
 この寄託物の一部滅失による損害賠償請求費用償還請求は、寄託者(物を預けた人)が、寄託物(預けた物)返還を受けた時から1年以内に請求しなければなりません。(民法664条の2)

寄託者 → 受寄者
 損害賠償請求
       >物返還時から1年以内
 費用償還請求
受寄者 → 寄託者

 つまり、預けた側から預かった側に対する損害賠償請求にせよ、預かった側から預けた側に対する費用償還請求にせよ、預けた側の手に物が返った時から1年以内に請求しなければならない、ということです。

預けた側→預かった側
  損害賠償請求
        >物返還時から1年以内
  費用償還請求
預かった側→預けた側

時効完成の猶予
 上記の、寄託物の一部滅失等による損害賠償請求権については、寄託者(物を預けた側)が寄託物(預けた物)の返還を受けた時から1年を経過するまでは、時効の完成が猶予されます。(民法664条の2 2項)
 時効の完成の猶予とは、時効の進行が一時的にストップする、ということです。
 つまり、寄託物の一部滅失等による損害賠償請求権は、預けた側に物が返還された時から1年間の間は時効の進行が一時的にストップします。(時効についての詳しい解説は「取得時効~消滅時効~」をご覧ください)

寄託物に関する権利を主張する第三者
第三者が寄託物の返還を請求してきた場合


 最終的に、寄託物は受寄者(預かった人)から寄託者(預けた人)に返還されなければなりません。
 ですがもし「その寄託物は私のものだ!だから私に返せ!」と主張する第三者が現れた場合、受寄者はどうすればいいのでしょう?

          (通常)
 受寄者(預かった人) → 寄託者(預けた人)
    寄託物   返還?
 私に返せ↑↓返還?  
    第三者

受寄者は誰に寄託物を返還すればいい?

 このような場合でも、受寄者(預かった人)は、原則として寄託者(預けた人)に対して寄託物を返還しなければなりません。
 ただし、例外があります。
 受寄者が訴えの提起等を受けたことを寄託者に通知した場合等において、寄託物を第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決等があったときに、その第三者に寄託物を引き渡したときは、例外的に寄託者に対する返還は不要です。
 これだとちょっとわかりずらいですよね。もう少し噛み砕いて言うとこうです。
「寄託物について受寄者(預かった人)が第三者に裁判を起こされて、その事を寄託者(預けた人)に通知(お知らせ)した上で、その裁判で「寄託物は第三者に返還せよ」という判決が下された場合に、第三者に寄託物が引き渡されたときは、もう寄託者(預けた人)に返さなくいいですよ」
 要するに、裁判の判決で寄託物を第三者に返したのならそれはOK!というハナシです。

寄託契約についての補足

 倉庫に物を預けるとき、実は契約のパターンが2つあります。
 ひとつは、ここまでの解説で申し上げた寄託契約。そしてもうひとつは、賃貸借契約です。
 え?どゆこと?
 わかりやすくざっくり言いますね。
 寄託契約の場合は、物を預かって保管してもらう契約です。
 一方、賃貸借契約の場合は、倉庫自体を借りて自ら保管する契約になります。
 当然、どちらになるかにより料金が異なるのはもちろん、物の保管に関する責任の帰属関係も変わります。
「責任の帰属関係が変わる」とは、例えば、保管物に何かあったときに、誰が責任を持つのか(その原因の問題はここでは省きます)、あるいはその責任の度合い、といったものが変わるのです。
 倉庫に物を保管するといった契約をされる場合は、事前にこのあたりの契約内容を、よく確認しておくことを推奨します。
倉庫
混合寄託と消費寄託

【混合寄託】
 混合寄託とは、受寄者が複数の寄託者から保管を委託された同一の種類・品質の物を混合して保管し、後に同じ数量を返還する類型の寄託です。
 この説明だけだとよくわからないと思いますので、実例を挙げますと、石油・穀物・金属などの保管で混合寄託が活用されています。
 色んな人からの寄託物(石油・穀物・金属など)を、ひとまとめに保管して、返すときは、預かった物そのものではなく預かった物と同種の物を同量(預かった分だけ)返せば済むので、寄託物(石油・穀物・金属など)の保管のための場所や労力の負担を減らし、寄託の費用の節約にもつながることから、特に倉庫寄託を中心として利用されています。
 何となくイメージできましたかね。
 なお、混合寄託をする場合は、各寄託者(預ける人それぞれ)の承諾が必要です。(民法665条の2)
 また、寄託物の一部が滅失(傷ついた・壊れた)場合は、各寄託者は、受寄者(預かった人)に対し、総寄託物(ひとまとめに預かったもの全部)に対する、自己の寄託した物の割合に応じた数量(つまり自分が預けた分だけ)の、寄託物の返還を請求できます。損害が生じた場合は、損害賠償請求も可能です。(民法665条の2 3項)

【消費寄託】
 消費寄託とは、受寄者(預かった人)が寄託物(預かった物)そのものではなく、それと種類・品質・数量の同じ物を返還する、という寄託で、契約により、受寄者が寄託物を消費することができます。
 消費寄託のもっともわかりやすい例は、銀行の預貯金です。
 銀行(受寄者)は寄託物(預貯金)を、そのお金そのものではなく、各寄託者(各預金者)から預かった分と同じ金額分のお金を返せばOKですよね。さらに銀行(受寄者)は、各預金者から預かって貯まっている大量の預貯金(寄託物)を、銀行融資等で使います。
 なお、預貯金については、受寄者による寄託物の期限前の返還を可能とする規定が設けられています。(民法666条3項)


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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