抵当権者は抵当権を行使せず一般財産を差し押さえられる?抵当権者と一般債権者の利害の調整

 抵当権者などの担保権者は、抵当権を設定した不動産などの担保目的物の競売代金から優先的に弁済を受けることができます(優先弁済権)。
 しかし、抵当権などの担保を持たない一般債権者は、(担保権者がごっそり持っていった後の)担保物の競売代金のおこぼれにあずかるか、担保物以外の財産(一般財産)にありつくしかありません。
 この点を踏まえた上で、次の問題について考えていきます。

抵当権者は抵当不動産を競売にかけず一般財産を差し押さえることができるのか?

 結論から先に述べると、抵当権者が一般財産を差し押さえることは可能です。つまり、抵当権者が抵当権を行使するかしないかは、抵当権者の自由ということです。
 ただ現実に、抵当権者が抵当権を行使せず、わざわざ一般財産を差し押さえるなんてことはあまり考えられません。なぜなら、抵当権者が優先弁済権を持つのはあくまで抵当不動産についてだけです。それに、一般財産を差し押さえるには、裁判所の手続を経て債務名義を取得しなければなりません。つまり、裁判を起こさないといけないわけです。
 ですので、抵当権を持つ抵当権者がわざわざあえてそんな面倒なことを、普通はしないでしょう。
 では、もし抵当権者が、その抵当権を行使しないで一般財産を差し押さえる手続きを取ったらどうなるでしょう?
 こうなると困ってしまうのは抵当権者以外の一般債権者です。
 なぜ一般債権者が困ってしまうかというと、一般財産に群がる債権者が1人増えてしまうからです。一般債権者が1人増えれば、その分、一般債権者ひとりひとりの取り分が減ります。つまり、一般債権者からすると「おまえ(抵当権者)はこっち来んなよ」という感じなんです。
 さらに、たとえ抵当権者が抵当権を行使しないからといって、一般債権者が抵当権者に先立って抵当不動産の競売代金に手を出すことはできません。
 ということで、抵当権者が一般債権者の群れに参加するのは、一般債権者にとっては迷惑でしかないのです。
 これってどうでしょう?ちょっと抵当権者に有利すぎるというか、公平さに欠けると思いませんか?
 そこで、民法394条1項で次のような規定が置かれています。

(抵当不動産以外の財産からの弁済)
民法394条1項
抵当権者は、抵当不動産の代価から弁済を受けない債権の部分についてのみ、他の財産から弁済を受けることができる。

 これはどういうことかといいますと、抵当権者が抵当権を行使せずに一般財産を差し押さえるのは自由だが、その場合、抵当権者が一般財産から弁済を受けられる範囲は、抵当不動産からだけでは足りない部分についてのみ、ということです。
 これは例えば、抵当不動産の価格が2000万円で被担保債権額が1000万円だった場合、抵当権者は一般財産から弁済を受けることはできません。しかし、被担保債権額が3000万円だったら、3000万−2000万=1000万円は、一般財産から弁済を受けることができる、ということです。
 尚、一般債権者が存在しない場合は、抵当権者が一般財産から弁済を受けることに何の制約もありません。民法394条1項の規定は、あくまで一般債権者が存在する場合の抵当権者と一般債権者の利害の調整のための規定です。一般債権者が存在しなければ、利害の調整も必要ないですからね。
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Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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