抵当権の優先弁済の範囲

 抵当権者は、1番抵当権者から順番に競売代金から優先的に弁済を受けられますが、その「優先」の範囲は、一体どこまでなのでしょうか?

 例えば、債権額が2000万円、損害金年15%と登記された1番抵当権があったとして、抵当不動産の価格が5000万円というケースを考えてみましょう。
 このケースで、2番抵当権者が債権額1500万円の抵当権登記をしていた場合に、この不動産を競売するとどうなるでしょうか?
 ここで問題になってくるのが、損害金です。もし、1番抵当権の債務者が10年支払いが滞っているなどの履行遅滞状態であった場合に競売すると、損害金が
2000万円✖️15%✖️10年=3000万円
となり、これを元本2000万円にプラスすると、なんと1番抵当権の債権額が5000万円となり、抵当不動産の価格5000万円まるまる1番抵当権者が独占してしまい、2番抵当権者の取り分が全くなくなってしまいます。
 でも、これってどうでしょう。1番抵当権の損害金次第で、2番抵当権者などの後順位抵当権者や一般債権者(抵当権者以外の債権者)は、競売代金からの配当を一切受けられなくなってしまうということですよね。
 いくら1番抵当権者に、他に先立って優先弁済を受ける権利があるとはいえ、公平さに欠くと言えます。
 そこで、民法375条では、後順位の担保権者(後順位抵当権者)や一般債権者の保護のための規定を置きました。

(抵当権の被担保債権の範囲)
民法375条
1項 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
2項  前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。

 上記の条文により、抵当権の優先弁済額の上限は、利息や損害金については満期となった最後の2年分のみとなります。
 つまり、先の例だと、1番抵当権者が優先弁済を受けられる金額の上限は、
元本2000万円+損害金2000万円×15%×2年=2600万円
となり、2番抵当権者は、抵当不動産の価額5000万円―2600万円=2400万円から配当を受けられることになります。
 すると、2番抵当権の債権額は1500万円なので、2番抵当権者も無事、債権額の全額の弁済を受けられるということになります。
 民法375条の規定があるのとないのでは、2番抵当権者にとって天と地の差がありますね。

補足では1番抵当権の残りの損害金8年分はどうなる?
 これはもちろん残ります。決して消えてなくなる訳ではありません。
 民法375条の規定は、あくまで後順位抵当権や一般債権者の保護のための規定です。
 従いまして、1番抵当権の損害金8年分の2400万円は、無担保債権として残ります。
 無担保債権ということは、サラ金などと同じような、単に抵当権が設定されていない一般債権として残るということです。

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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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