登記の流用

 例えば、AがBに貸付をして、抵当権を設定したとします。その後、Bは弁済したが、抵当権の登記を抹消せずに放置したままで、新たにAがBに貸付をした場合に、放置したままだった抵当権を新たに行った貸付に流用できるのでしょうか?
 本来、不動産登記は、実体上の権利変動を忠実に示したものです。ですので、先の例の場合、一度、BがAに被担保債権(AのBに対する貸付債権)を弁済した時点で、その抵当権の抹消登記をして、それから再度、新たな貸付債権(被担保債権)のための抵当権の登記をすべきです。
 それに、抵当権は担保権であり、担保権には付従性があります。付従性とはくっ付いて従う性質です。つまり、抵当権は被担保債権にくっ付いて従うので、被担保債権が弁済等により消滅すれば、抵当権も消滅するのです。
 以上のことから、流用した登記は、無効な登記ということになります。
 しかし!実は、実務上、登記の流用は頻繁に行われています。すなわち現実においては、登記の流用は当たり前にあるものなのです(え?と思う方もいらっしゃるかと思いますが、法律の原則と実務の実態が違うということは、よくあります。この辺が、民法を学ぶ上で難しく感じるところであり、面白いところでもあります)。
 こういった実情をふまえて、登記の流用のすべてを無効なものにしてしまうと逆に世の中が混乱してしまうということで、判例でも、一定の登記の流用に関しては、これを有効としています。

判例が認める「一定の登記の流用」とは

 判例により、一定の登記の流用については、これを有効としています。ただ、いくら有効とするといっても、あくまで「一定の登記の流用」については、です。ではこの「一定の登記の流用」とは何かというと、登記の流用によって迷惑を被る第三者がいない場合の登記の流用のことです。

登記の流用によって迷惑を被る第三者とは

 これは、その登記を流用する前に出現していた後順位抵当権者のような利害関係人のことです。このような者達は、先順位の抵当権が弁済により消滅した以上は、抵当権順位の上昇という利益を当然に受けるべき人達(第三者)です。ところが、もし登記の流用なんてことをやられてしまうと、順位の上昇ができず、本来受けるべき利益を受けられなくなってしまいます。ですので、その登記の流用前から後順位抵当権者が存在する場合は、その登記の流用は認められないのです。
 逆に言えば、登記の流用前に後順位抵当権者がいなければ、登記の流用は可能です。ということはつまり、登記の流用後に出現した後順位抵当権者がいても、登記の流用は可能です。なぜ可能かというと、登記の流用後に出現した後順位抵当権者は、流用された登記が登記簿に載っているのを見た上で、後順位抵当権者として取引に入ってきているので、問題ないという訳です。

補足
なぜ登記の流用は行われるのか


理由は2つ考えられます。
1、金がかかる
 まずひとつは、抵当権の設定登記をする際、登録免許税という税金がかかります。
税率は債権額の4/1000です。つまり、債権額が1億円の抵当権の設定登記をする場合、設定登記をするだけで40万円かかるという訳です。
2、単に手続きが面倒
 以上の理由から、抵当権を流用しちゃえ!となってしまうのです。
 40万円ぐらい大したことないじゃん!手続きぐらいやれよ!と思われる方もいらっしゃると思いますが、良くも悪くもそれが実態なのです。
 ただ、手続きはまだしも、税率については、債権額が10億円なら400万円ですからね。抵当権設定登記だけで400万円もかかるぐらいなら流用しちゃえ!となってしまうのもよく分かるかと思います。

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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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