賃料債権の譲渡vs物上代位~抵当権者(物上代位)が勝たないと競売の値段に影響する?

▼この記事でわかること
賃料債権の譲渡と物上代位の基本
抵当権者(物上代位)が勝つ理由
譲渡された賃料債権に物上代位できないと抵当不動産の競売の値段に影響する?
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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賃料債権の譲渡と物上代位

 賃料債権は譲渡することができます(債権譲渡)。
 さらに、将来発生する賃料債権をあらかじめ包括的に譲渡することも可能です。
 え?どゆ意味?
 こういうことです。オーナーBがCに建物を賃貸していた場合に、オーナーBが賃借人Cに対して持つ「家賃払え」という賃料債権を、Dに譲渡することができますが、さらに、BがCに対して持つ、来月以降に発生する「家賃払え」という賃料債権を、あらかじめDに譲渡することも可能、という意味です。
 ただ、ここでひとつ注意点があります。
 賃料債権の譲渡はオーナーチェンジではありません。ですので、オーナーBがDに賃料債権を譲渡しても、オーナーがBからDに移ったわけではありません。オーナーはあくまでDのままです。
 この点はご注意ください。
 賃料債権の譲渡についてはお分かりになりましたよね。それではここから、本題の賃料債権の譲渡と物上代位が絡んだ場合の問題について、解説して参ります。

事例
BはCに自己所有の甲建物を賃貸し引き渡した。その後、BはAから融資を受けるために甲建物に抵当権を設定し、その旨の登記をした(抵当権者はA、抵当権設定者はB)。その後、甲建物のオーナーであるBは、将来の賃料債権をDに譲渡し、甲建物の賃借人であるCに確定日付のある通知をした。その後、Bが債務不履行に陥ったので、Aは抵当権を実行した。


 さて、この事例で、抵当権者Aは、オーナーBからDに譲渡された賃料債権(甲建物の家賃債権)に物上代位できるのでしょうか?
 まずは一度、状況を確認します。

[賃料債権譲渡前]

  抵当権者A
抵当権⇨↓
  オーナーB→賃借人C
       ⇧
       賃料債権

[賃料債権譲渡後]

  抵当権者A
抵当権⇨↓
  オーナーB⇒D→賃借人C
   債権譲渡⤴︎ ⇧
         賃料債権
         ⬆︎    
    ここに物上代位できるか

 オーナーBは自己所有の甲建物をCに賃貸しています。
 つまり、オーナーBは賃借人Cに対して「家賃払え」という賃料債権を持っています。
 そしてBは、Aから融資を受けるために甲不動産に抵当権を設定します。
 それから、Bは賃借人Cに対する甲不動産の賃料債権をDに譲渡します。
 その後に、抵当権者Aが抵当権を実行した、というのが事例の状況になります。
 では改めて、先ほどの問いかけに戻ります。
 この事例で、抵当権者Aは、オーナーBからDに譲渡された賃料債権(甲建物の家賃)に物上代位できるのでしょうか?
 結論。抵当権者Aは、オーナーBからDに譲渡された賃料債権に物上代位することができます。
 この事例のように、抵当権者(事例のA)による物上代位と、抵当権設定者(事例のB)による抵当不動産(事例の甲建物)の賃料債権の譲渡がバッティング(競合)した場合、抵当権の登記が債権譲渡よりも先に行われていれば、抵当権者の物上代位が勝ちます。それは賃料債権が「すでに発生したもの」であっても「将来発生するもの」であっても、物上代位が勝ちます。

なぜ抵当権者が勝つのか
家くん
 ところで、抵当権者Aが、オーナーBからDに譲渡された賃料債権に物上代位できるのは、Dからすればたまったもんじゃないですよね?せっかく譲渡された賃料債権なのに、その債権でCから家賃を受け取れるのに、差し押さえられてしまう訳ですから。
 確かにDは気の毒です。しかし、仮に抵当権者AがDの賃料債権に物上代位できないとなると、様々な問題が発生します。
 まず「抵当権者として本来持つ権利への期待」を裏切ることになります。Aとすれば、万が一、Bが債務不履行に陥っても、抵当権を実行して甲建物を競売するか、いざとなったら賃料債権に物上代位して債権を回収できるからこそ、Bに融資したわけです。しかし、その物上代位できないとなると、その期待を、もっと言えば抵当権者の権利を害することになってしまいます。
 Aは物上代位できないならフツーに甲建物を競売にかければいいんじゃね?
 これがそんな単純じゃないんです。実は、抵当権者AがDに譲渡された賃料債権に物上代位できないとなると、甲建物を競売にかけてもロクな値段がつかなくなってしまうのです

なぜDに譲渡された賃料債権に物上代位できないとなると甲建物の競売の値段にも影響するのか?

 まず、今回の事例の場合で、競売により甲建物を買い受けた者は、自分自身で甲建物を使うことはできません。
 なぜなら、甲建物の賃借人Cは、引渡しという対抗要件を備えているからです(つまり甲建物の所有権を取得しても賃借人Cに対し「甲建物から出ていけ」とは言えない)。
 まあでも、店子(借家人)付きの不動産を売買することはよくあることです。深刻な問題はここからです。
 それでは仮に、新たにEが甲建物を競売により買い受けたとします。その場合に、抵当権者Aが賃料債権に物上代位できないとすると、なんと買受人Eは甲建物の家賃をもらうことができません。
 どうして?
 なぜなら、抵当権者Aが賃料債権に物上代位できないということは、Aの抵当権の実行による競売で甲建物を買い受けたEの権利より、Dの賃料債権が優先してしまうことを意味します。
 Dの賃料債権が優先してしまうということは、賃借人Cから甲建物の家賃をもらう権利があるのはDで、甲建物の買受人Eは家賃をもううことができず、結果的にEの家賃収入はゼロになってしまいます。
 ということは、抵当権者AがDに譲渡された賃料債権に物上代位できないとなると、競売にかけられたときの甲建物は、店子付き家賃収入ゼロ物件という全く価値のないものとなってしまうのです。
 そんな競売物件にロクな値段がつくわけないですよね。

 以上のことから、抵当権者Aは、債権譲渡よりも先に抵当権の登記を備えていれば、Dに譲渡された賃料債権に物上代位することができるのです。
 また、抵当権者AがDに譲渡された賃料債権に物上代位できないとなると、Bが抵当権者Aを害する意図でわざとDに賃料債権を譲渡する可能性もありますよね。それは大問題です。この点も併せて覚えておいてください。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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