2018/06/07
抵当権の効力の及ぶ範囲 付合物と従物
原則として、抵当権は不動産に設定するものです。では、その抵当権の効力は、抵当権を設定した不動産について、どの範囲まで及ぶのでしょうか?というのは、抵当権は債務者(抵当権設定者)が債務不履行になったような場合に、債権者(抵当権者)が抵当権を設定した不動産を強制的に競売にかけて、その売却代金からお金を回収することができる権利です。ですが例えば、その不動産が一軒家だった場合、庭石はどうなるのでしょう?抵当権が実行されると庭石も競売に出されてしまうのか?あるいは、抵当権設定後に設置されたエアコンはどうなるのでしょうか?つまり、抵当権の効力がどの範囲まで及ぶのかという問題は、庭石やエアコン等、どこまでの物がその抵当不動産と一緒に競売にかけられるのか、という問題と同じ意味になります。ということでまずは、抵当権の効力の及ぶ範囲についての民法の条文を見てみましょう。
(抵当権の効力の及ぶ範囲)
民法370条
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。
上記の条文によれば、抵当権の効力は「不動産に付加して一体となっている物」にも及ぶとあります。「不動産に付加して一体となっている物」は、略して付加一体物と呼びます。ということは、何が付加一体物なのかがわかれば、おのずと抵当権の効力の及ぶ範囲もわかることになります。
付加一体物
実は、何が付加一体物で何が付加一体物でないのかについて、学説上では争いが生じています。ですが、それをここで記しても意味がありませんので、判例上の見解にのっとった解説をして参ります。
まず、付加一体物に該当する可能性のあるものは、次の2種類があります。
・付合物
・従物
では、それぞれにどのような物があるのか、見て参ります。
・付合物
これは、元々は独立した動産だけど付合により建物と一体化し建物の構成部分になるものです。要するに、設置すると建物と一体化するようなタイプの物です。
例→取り外しの容易でない庭石、石灯籠、建物の内外を遮断する建具(入口用の扉、入口用のガラス、雨戸)
・従物
これは、建物備え付きの備品のことで、備え付けられても独立した動産としての地位を失わないものです。要するに、設置しても建物と一体化しない物です。
例→取り外しの容易な庭石、エアコン、畳、建物の内外を遮断しない建具(ふすま等)
さて、この時点で、抵当権の効力の及ぶ範囲がどこまでなのか、なんとなく見えてきましたよね。
結論。付加一体物には付合物が含まれます。したがって、付合物(取り外しの容易でない庭石、石灯籠、建物の内外を遮断する建具)には抵当権の効力が及びます。ということは、付合物は抵当不動産と一緒に競売にかけることができるということです。ですので、容易に取り外せない庭石は、抵当不動産と一緒に競売にかけられてしまいます。
また、従物については、抵当権設定時の従物には、抵当権の効力が及びます。つまり、エアコンでも抵当権設定時にすでに設置されていたものであれば抵当権の効力は及び、競売にかけられます。しかし、抵当権権を設定した後に設置されたエアコンであれば、抵当権の効力は及ばず競売にかけられません。
尚、付合物については、付合の時期を問わず、抵当権の効力が及びます。つまり、容易に取り外せない庭石は、抵当権設定後に設置していたとしても抵当権の効力は及び、競売にかけられます。
補足
エアコンは従物になりますが、そのエアコンを設置する対象の建物は主物になります。
原則として、従物は主物の処分に従います。しかし、抵当権の効力が及ぶ範囲については、その従物が抵当権の設定後に設置されたかどうかで扱いを分けているということです。この点はご注意下さい。
尚、従物には、先述に例示した物以外にも、ガソリンスタンドの存在する土地上または地下に設置されている地下タンク、ノンスペース軽量機、洗車機などの設備も従物になります(主物はガソリンスタンド用建物)。つまり、ガソリンスタンド用建物に抵当権が設定された場合、それらの設備が抵当権設定時にすでに設置されていた場合は、それらの設備にも抵当権の効力が及び、競売にかけられます。
(スマホでご覧の場合、次の記事へ進むには画面下左の前の記事をタップして下さい)
- 関連記事
-
-
抵当権の随伴性
-
抵当権の効力の及ぶ範囲 付合物と従物
-
抵当権の効力の及ぶ範囲 借地権 付加一体物の例外
-
コメント