2021/05/18
【共同保証】複数の保証人~分別の利益とは/保証人間(同士)の求償の問題
▼この記事でわかること・共同保証とは
・分別の利益は債権者にとって都合が悪い?
・保証人間(保証人同士)の求償
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

共同保証
保証人は1人しか立てられないわけではありません。複数人の保証人を立てることもできます。
1つの主債務について複数人が保証債務を負担するものを共同保証と言います。
事例1
BはAから150万円を借り受けた。CおよびDはBの保証人である。
これは、CとDの2人がBの保証人、すなわち共同保証のケースです。
主債務者
B
↗︎
債権者A → 保証人C
↘︎
D
保証人
さて、この場合、債権者Aは保証人Cに対して150万円全額の請求ができるのでしょうか?
結論。債権者Aは保証人Cに対して150万円全額の請求はできません。請求できる金額は75万円です。
これはどういうことかなのか?共同保証の場合、各保証人はそれぞれが等しい割合で債務を負担することになるからです。
つまり、事例1の場合、保証人C・Dはそれぞれ等しい割合で債務を負担します。
主債務者
B
↗︎
債権者A → 保証人C(75万円負担)
↘︎
D
保証人(75万円負担)
したがって、保証人C・Dは75万円ずつ負担することになり、債権者Aが保証人Cに対して請求できる金額は75万円ということになるのです。
なお「共同保証の場合は各保証人それぞれが等しい割合で債務を負担することになる」ということは何を意味するのかと言いますと、これは、保証人の数が増えていくほどに各保証人の負担割合も減る、ということを意味します。
例えば、事例1のBの保証人がC・D・Eの3人となれば、各保証人の負担する金額は150万÷3=50万円ずつとなります。さらに保証人が5人に増えれば、各保証人の負担する金額は150万÷5=30万円ずつとなります。
このように、保証人の数が増えるほどに各保証人の負担が減ることを分別の利益と言います。
分別の利益は債権者にとって都合が悪い
保証人の数が増えるということは、債権者にとっては請求できる相手が増えてありがたいように思えますよね。
しかし、決してそんなことはありません。
というのも、分別の利益があるからです。
これはどういう意味かと言いますと、保証人の数が増えれば債権者が請求できる相手も増えますが、同時に各保証人の負担する割合は減っていきます。各保証人の負担する割合が減っていくということは、債権者が各保証人に対して請求できる金額が減っていくということです。
これは債権者にとっては不利益と言えるでしょう。
え?なんで?
例えば、事例のBの保証人がCひとりだったします。すると、債権者Aが保証人Cひとりに対して請求できる金額は150万円全額になります。
ということは、もし主債務者Bが無資力(金がない状態)になってしまった場合、債権者Aは保証人Cに対して債務の全額を請求して150万円を回収することになります。
ところが、これがBの保証人がC・D・Eの3人だった場合、債権者Aが各保証人に請求できる金額は150万÷3=50万円になります。
ということは、もし主債務者Bが無資力(金がない状態)になってしまった場合、債権者Aは保証人C・D・Eの3人にそれぞれ50万円ずつ請求して150万円を回収することになります。
保証人が1人であれば、1人に対して全額を請求できるのに対し、保証人が3人の場合は、それぞれに3分の1ずつの金額しか請求できません。
したがいまして、分別の利益というのは保証人側にとっての利益であって、債権者側から見れば、それこそ分別の不利益と言ってしまってもいいかもしれません。
なお、これが連帯保証の場合は、いくら保証人が増えようが、債権者は各連帯保証人それぞれに対して債務の全額の請求ができます。
したがって、連帯保証の場合、連帯保証人が増えるのは債権者にとってありがたいことになります。
このことからも、なぜ現実の保証債務のほとんどが連帯保証なのか、その意味がよくわかりますよね。
保証人間(保証人同士)の求償
1つの主債務に複数人の保証人を立てることも可能なのはわかりました。
では、複数人の保証人を立てた場合、すなわち共同保証の場合の求償についてはどうなるのでしょうか?
(保証人の求償の基本についての詳しい解説は「委託を受けた&受けない保証人の求償権~」をご覧ください)
事例2
BはAから150万円を借り受けた。CおよびDはBの保証人である。そして保証人Cは自身の負担分75万円をAに弁済した。
この事例は、2人の保証人のうち、保証人Cが債権者Aに75万円を弁済したという話です。
主債務者
B
↗︎ 75万弁済
債権者A →← 保証人C(75万円負担)
↘︎
D
保証人(75万円負担)
さて、この場合、自身の負担分75万円を弁済した保証人Cは、主債務者Bに対して「おまえは私に金払え」と求償することができるでしょうか?
結論。保証人Cは主債務者Bに対して75万円を求償することができます。(求償の範囲は委託の有無によって異なります。保証人の委託の有無の問題についての詳しい解説は「委託を受けた&受けない保証人の求償権~」をご覧ください)
保証人Cは自身の負担分の75万円をAに弁済しました。しかし、その75万円はもともと主債務者Bが弁済すべき債務150万円の一部です。
つまり、保証人CはBの債務の一部を肩代わりしたわけです。
したがって、保証人CはAに支払った75万円を「私(C)が肩代わりした分をおまえ(B)は私に払え」と主債務者Bに求償することができるのです。
保証人Cは保証人Dに対して求償することはできるのか
さて、保証人Cが主債務者Bに対して求償できるのはわかりました。
では保証人Cは、もう1人の保証人Dに対しても「あなたは私(C)に金払え」と求償することはできるのでしょうか?
結論。事例2の保証人Cは、保証人Dに対して求償することはできません。
ただし!ここで注意点があります。

今回の事例2の保証人Cは、保証人Dに対して求償することができません。
しかし、この結論は「共同保証の場合に保証人間での求償が認められていない」という事を意味している訳ではありません。
例えば、もし事例2の主債務者Bが無資力(金がない状態)になってしまった場合に、保証人Cが債権者Aに150万円を弁済したときは、保証人Cは保証人Dに対して求償することができます。
なぜなら、主債務者の無資力は共同保証人同士で公平に分担すべきだからです。公平に分担するということは、各保証人はそれぞれの負担分に応じて分担するということです。
そして、保証人C・Dの負担部分はそれぞれ75万円ずつです。
ですので、主債務者Bが無資力になってしまった場合は、その無資力(Bに金が無いこと)の負担を保証人C・Dは、それぞれ75万円ずつ分担することになり、150万円を弁済した保証人Cは、言ってみれば保証人Dの負担分75万円を肩代わりしたことになります。
したがいまして、保証人Cは保証人Dに対して「私(C)が肩代わりした分の75万円をあなたは私に払え」と求償することができます。
なぜ事例2の保証人Cは保証人Dに対して求償できないのか
主債務者
B
↗︎ 75万弁済
債権者A →← 保証人C(75万円負担)
↘︎
D
保証人(75万円負担)
保証人間で求償できるのは、自己の負担部分を超える額を弁済した場合です。
つまり、1人の保証人が自己の負担分の金額を超えて支払った場合です。
ところが、事例2の場合、保証人Cが弁済した金額は自己の負担分75万円です。つまり、保証人Cは自己の負担分を超える額を弁済したわけではないのです。これが100万円弁済したとなれば、保証人Cは保証人Dに対して自己の負担分を超えた額=25万円を求償することができます。
したがいまして、事例2の保証人Cの場合は、もう1人の保証人Dに対して求償することができないのです。
補足:保証連帯
「保証人同士で連帯して各保証人それぞれが債務の全額を弁済する義務を負う」という特約をすることもできます。
これを保証連帯と言います。
連帯保証とは違うの?
連帯保証の場合、債権者に対しての関係で主債務者と保証人は連帯します。
しかし、保証連帯はあくまで保証人間での特約です。
ですので、保証連帯の特約をしても、債権者に対しての関係で主債務者と連帯するわけではないので、連帯保証人とはなりません。
したがって、保証連帯の特約をしても、各保証人には催告の抗弁権・検索の抗弁権は認められます。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。