
【保証債務の超基本】人が担保の保証人&物が担保の物上保証~そして代位弁済とは?初学者にもわかりやすく解説!
▼この記事でわかること
・保証人&保証債務の超基本
・物上保証とは
・物上保証人と保証人の違い
・代位弁済とは?法定代位と任意代位
・主債務者1人に対して「弁済による代位者」となるべきものが複数いる場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者にもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。

保証人・保証債務の超基本
事例1
AはBに300万円を貸し付けた。その後、返済期限が過ぎても、Bは一向にその借金を返済しない。
さて、いきなり事例から始まりましたが、この事例で、Aは困っています。
なぜなら、貸し付けた300万円をBが返済しないからです。
このままいけば、Aが取るべき手段は、そのまま諦めるか訴訟を提起するかのどちらかです。
そのまま諦めれば、貸した300万円はドブに捨てたようなもんです。
となると、Aとしては訴訟を提起して、なんとか300万円を回収したいところです。
訴訟を提起して裁判で勝訴すれば、AはBに対して強制執行の手続きを取ることができます。
そして、Bの一般財産を差し押さえて、強制競売によりお金を回収することになります。
(強制執行と差押えについての詳しい解説は「【差押え&強制執行&破産の超基本】借金で考える債権の世界~債務者に財産が無いとどうなる?わかりやすく解説!」をご覧ください)
それで一件落着......と言いたいところですが、この方法にはリスクがあります。
というのも、もしBに財産がなかったら、たとえ強制執行したところで、お金は回収できません。
「無い袖は振れない」というヤツです。
ましてや、裁判をするとなると、手間も時間もお金もかかります。
それで強制執行して1円も回収できなかったら、まさに「骨折り損のくたびれもうけ」です。
さらに、たとえBに財産が残されていたとしても、他にも債権者がいた場合は、他の債権者とその財産を分け合うこととなり、貸し付けたお金の全額の回収は非常に難しくなります(現実の債務者破産のケースに至っては、債権の1割が回収できればマシだとされる。
したがいまして、強制執行は、債務者Bの意思に関係なく、国家権力を使って強制的にお金を回収することができますが、実はリスクも大きいのです。
他にAの取れる手段は本当にないの?
あります。
ただそれは「お金を貸し付ける段階で取っておくべき手段」になります。
すなわち、事前に取っておくべき手段です。
それはどんな手段?
まずひとつは、抵当権(担保物権)です。
貸し付ける300万円の担保として、Bの不動産を確保する方法です。
これなら、担保にしたBの不動産については、300万円という貸金の回収のための財産として、確実に確保しておくことができます。
(抵当権について詳しい解説は「【抵当権の超基本】その特徴と意味を徹底解説!抵当権の強さの理由とは?一般財産って何?わかりやすく解説!」をご覧ください)。
他には?
あります。
これも「お金を貸し付ける段階で取っておくべき手段」で、保証人を立てる方法です。
保証債務とは

冒頭の事例で、債権者のAは、債務者のBに、貸したお金を返してもらえない、という事態に陥ってしまいました。
当然、Aは貸したお金をきっちり回収したいはずです。
そこで、Aはあらかじめこのような事態に陥った場合を想定して、Bにお金を貸し付ける段階で、Bの保証人と保証契約を結ぶことができます。
保証人との保証契約とは、要するに「債務者Bがお金を返せなかったとき、保証人か肩代わりしますよ」という約束です。
つまり、Bの保証人と保証契約を結んでおけば、Bが300万円の返済を滞らせても、Aは保証人に対して300万円を取り立てることができます。
保証人は、いわば人的担保です。
抵当権が、いざというときに担保として確保した不動産をおさえるのに対し、保証債務は、いざというときに保証人という「人そのもの」をおさえます。
だから「人的担保」なのです。
なお、Bが保証人を立てた場合、保証人のAに対する債務を保証債務、BのAに対する債務を主債務といい、Bは主債務者という立場になります。
主債務者 債権者
B ← A → 保証人
(主債務) (保証債務)
ここで2つ、注意点があります。
・保証債務の付従性
保証債務は、あくまで主債務の存在が前提です。
したがって、主債務者Bの債務、すなわち主債務が、無効であったり取り消されたりしたような場合は、保証債務も成立しなくなります。
このような保証債務の性質を、付従性といいます。
・主債務の保証債務はあくまで別個の契約
先述のとおり、保証債務は主債務の存在が前提に成り立っています。
ただし、保証契約の当事者は、あくまで債権者と保証人です。
つまり、Bの債務の保証のためとはいえ、保証契約を結ぶのはAと保証人であって、Bの保証人が結ぶわけではありません。
したがって、AがBの保証人と保証契約を結ぶと「AB間の主債務の契約」と「Aと保証人の保証契約」の2つの契約が並立することになります。
債権者A ー 主債務者B ←主債務の契約
⇅(並立)
債権者A ー Bの保証人 ←保証契約
物上保証

抵当権は、債務者の不動産を担保とします。
これに対し、保証人は「保証人そのもの」を担保とする、いわば人的担保です。
さらに、債務者以外の「人の物(財産)」を担保にすることもできます。
それが物上保証です。
そして、物上保証の場合の保証人は、物上保証人となります。
事例2
BはA銀行から事業資金を借り入れようとしていたが、担保にできるような財産を持っていなかった。そこで、大地主の娘である妻Cが、夫Bのために自らの財産(不動産)をその事業資金の融資のための担保にした。
これが、物上保証の典型的なケースです。この事例2は、Bが銀行から融資を受けるために、Bの妻Cが、BのためにC自身の財産(不動産)を担保にした、という話です。
もう物上保証の意味は、おわかりになりますよね。
このとき、A銀行は債権者、Bは主債務者、Cは物上保証人、という立場になります。
債権者
A銀行
(貸金債権)↙︎ ↘︎(抵当権)
B C
主債務者 物上保証人
物上保証人と保証人の違い
ところで、保証人は「保証人そのもの」を担保とするいわば人的担保ですが、それに対して、物上保証人は「保証人の財産」を担保とします。
ん?それで何が違うの?
実は、この「保証人そのもの」と「保証人の財産」の違いは、かなり重要な意味があります。
保証人の場合
保証人は、主債務者が債務を履行しないときに、その債務を肩代わりします。
例えば、BがAから借金をしていて、Bの保証人がCの場合、Bが借金を返せないときに、CがBの借金を肩代わりすることになります。
Bの借金が100万円なら100万円、1000万円なら1000万円を、Cが肩代わりすることになります。
くわえて、遅延損害金があれば、それも合わせてCが肩代わりしなければなりません。
さらにそれだけではありません。
もし保証人Cが主債務者Bの借金を肩代わりしなければならなくなった場合に、保証人Cが「そんな金払えるか!」と言って支払わないとなると、債権者Aは、保証人Cに対して訴訟を提起することができます。
つまり、保証人Cは、場合によってはBの借金のために、債権者Aから裁判を起こされる可能性があるのです。
マジで?保証人キッツイわ~!
はい。マジ、キッツイです。
ということで、保証人の責任には限度がないのです。
これを、保証人の無限責任といいます。
そして、この「保証人の無限責任」こそ、保証人は「保証人そのもの」を担保にする、ということの真の意味です。
(厳密に言えば、保証人にもいくつかの種類があり、その種類ごとに責任の重さも異なりますが、それについては、また別途改めて解説いたします)
物上保証人の場合
物上保証は、物上保証人の「特定の財産」を担保にします。
例えば、BがAから借金をしていて、Bの物上保証人がCの場合、Bが借金を返せないときに、CがBのために担保にした不動産を競売に出して、その売却金をBの借金返済にあてることになります。
ん?保証人とどう違うの?
全然違います。
なぜなら、物上保証人Cは、いざBの借金返済のために持って行かれる財産は、Bのために担保にした不動産のみです。
もう少しわかりやすく詳しく説明すると、Bの借金が1000万円で、物上保証人CがBのために担保にした不動産が500万円相当だったとしても、いざBの借金返済のために持って行かれるCの財産は、500万円相当の不動産のみです。
残りの借金500万円に関しては、Cに責任は及びません。
担保にした不動産が競売に出されて、そこでCの責任は終了です。
Bの借金がいくら残っていようが、もはやCには関係ありません。
なぜなら、物上保証人Cが責任を負うのは、あくまで担保にした不動産だけであって、Bの借金そのものの責任を負うわけではないからです。
したがって、物上保証人の責任には限度があります。
保証人の責任は無限責任ですが、物上保証人の責任は有限責任なのです。
以上が、保証人と物上保証人の違いになります。
この違いを理解すると、そもそも保証人とは何なのか?物上保証人とは何なのか?ということが、よく理解できるかと思います。
保証人は無限責任、物上保証人は有限責任。
皆さん、誰かの保証人になろうとするときは、ここでご説明した内容をよく理解した上で、どうぞご判断ください。
代位弁済
最後に、保証人の弁済とも繋がる「代位弁済」というものについて、解説いたします。
法定代位と任意代位
【法定代位】
民法では「弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する」と規定されています。
これは「弁済による代位=代位弁済」のことですが、どういう意味かというと、保証人・物上保証人等が主債務者に代わって弁済をすれば、債権者に属する担保権等の権利は保証人・物上保証人等に移転するということです。
もっと噛み砕いてわかりやすく言うと、保証人・物上保証人等が主債務者に代わって弁済をすれば、その後は、保証人・物上保証人等が債権者に代わる(代位する)ということです。
そしてこれは、そうなれば法律上当然に適用される法定代位です。(そうなれば問答無用で適用されるルールということ)
【任意代位】
一方、法定代位に対して、任意代位というものもあります。
先ほど「弁済をするについて正当な利益を有する者」というフレーズが出てきました。
これはわかりやすく言ってしまえば、保証人や物上保証人のことです。
つまり、保証人や物上保証人が弁済した場合に法定代位の問題になるのです。
では「弁済をするについて正当な利益を有しない者」が弁済した場合はどうなるのでしょうか?
「弁済をするについて正当な利益を有する者」が保証人や物上保証人を指す、ということは「弁済をするについて正当な利益を有しない者」とは、保証人や物上保証人以外の者ということになります。
したがって「弁済をするについて正当な利益を有しない者」が弁済した場合とは「保証人や物上保証人以外の者が弁済した場合」ということです。
具体例を挙げると、保証人でもない親が子供の借金を肩代わりしたような場合です。
これが任意弁済です。
ではこの場合、保証人や物上保証人が弁済したときと同じように、債権者に属する担保権等の権利は親に移転するのでしょうか?
この場合にも弁済による代位は生じます。
つまり、債権者に属する担保権等の権利は親に移転します。
ただし、そのためには次の2つの要件を満たす必要があります。
1・債権者の同意
2・対抗要件としての債権者から債務者(子)への通知または債務者の承諾
つまり、親が子供の借金を肩代わりした場合に「弁済による代位(任意代位)」が生じるには「親が債務者(子)の借金を肩代わりすること」を債権者が同意して、そのことを「債権者から債務者(子)へ通知」または「債務者(子)が承諾」することが必要だということです。
以上が、法定代位と任意代位です。
補足:
主債務者1人に対して「弁済による代位者」となるべきものが複数いる場合

いずれの者が弁済しても、弁済者は主債務者に対して全額の求償ができます。
(保証人の求償についての詳しい解説は「【保証人の求償権】委託を受けたか受けないかで違う?求償の制限と事前求償権とは?わかりやすく解説!」をご覧ください)
しかし、主債務者が無資力(金が無い状態)の場合もあります。
そして、その場合のルールはあらかじめ定められています。
では、どういうルールに基づき弁済者は債権者に代位(債権者に代わって債権者の権利を行使)するのでしょうか?
1【保証人と第三取得者のケース】※
※第三取得者とは、抵当権が設定された後にその不動産を取得した者。
(これについての詳しい解説は「【抵当権の消滅請求と代価弁済】どう違う?第三取得者が抵当不動産について費用を支出すると?わかりやすく解説!」をご覧ください)
・保証人が弁済した場合
この場合、保証人は第三取得者に対して代位できます。
ただし、そのためには弁済後、第三取得者が登場する前に保証人名義の抵当権等の移転登記を受けることが必要です(弁済当時に存在する第三取得者との関係では登記不要)。
・第三取得者が弁済した場合
この場合、第三取得者は保証人に対して代位できません。
そもそも、第三取得者は抵当付きの不動産を安く買い叩いているはずなので、代位の必要性はないと考えられます。
2【第三取得者と第三取得者のケース】
・第三取得者の1人が弁済した場合
各不動産の価格に応じて、弁済した第三取得者は他の第三取得者に対して代位します。
例えば、1000万円の甲土地を取得したA、2000万円の乙土地を取得したBがいて、債権額1500万円の抵当権が、甲土地(負担額500万円)、乙土地(負担額1000万円)に設定されていたとします。
そして、Aが1500万円全額弁済した場合、AはBに対して1000万円(甲土地の価格)の限度で乙土地の抵当権に代位できます。
3【物上保証人と物上保証人のケース】
・物上保証人の1人が弁済した場合
各不動産の価格に応じて、弁済した物上保証人は他の物上保証人に対して代位します。
考え方は前述の2のケースと同じです。
4【保証人と物上保証人のケース】
・保証人と物上保証人のいずれかが弁済した場合
頭数に応じて代位します。
以上が、代位弁済についての端的な解説になります。
なお、代位弁済については、抵当権の基本についての理解の前提がないとわかりづらいかと思います。
よろしければ、
「【抵当権の超基本】その特徴と意味を徹底解説!抵当権の強さの理由とは?一般財産って何?わかりやすく解説!」
もしくは、
「【抵当権の基本】被担保債権と付従性の緩和とは?登記にも勝る強力な随伴性とは?わかりやすく解説!」
をお読みいただければ、代位弁済についての理解が深まるかと存じます。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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・保証人&保証債務の超基本
・物上保証とは
・物上保証人と保証人の違い
・代位弁済とは?法定代位と任意代位
・主債務者1人に対して「弁済による代位者」となるべきものが複数いる場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者にもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。

保証人・保証債務の超基本
事例1
AはBに300万円を貸し付けた。その後、返済期限が過ぎても、Bは一向にその借金を返済しない。
さて、いきなり事例から始まりましたが、この事例で、Aは困っています。
なぜなら、貸し付けた300万円をBが返済しないからです。
このままいけば、Aが取るべき手段は、そのまま諦めるか訴訟を提起するかのどちらかです。
そのまま諦めれば、貸した300万円はドブに捨てたようなもんです。
となると、Aとしては訴訟を提起して、なんとか300万円を回収したいところです。
訴訟を提起して裁判で勝訴すれば、AはBに対して強制執行の手続きを取ることができます。
そして、Bの一般財産を差し押さえて、強制競売によりお金を回収することになります。
(強制執行と差押えについての詳しい解説は「【差押え&強制執行&破産の超基本】借金で考える債権の世界~債務者に財産が無いとどうなる?わかりやすく解説!」をご覧ください)
それで一件落着......と言いたいところですが、この方法にはリスクがあります。
というのも、もしBに財産がなかったら、たとえ強制執行したところで、お金は回収できません。
「無い袖は振れない」というヤツです。
ましてや、裁判をするとなると、手間も時間もお金もかかります。
それで強制執行して1円も回収できなかったら、まさに「骨折り損のくたびれもうけ」です。
さらに、たとえBに財産が残されていたとしても、他にも債権者がいた場合は、他の債権者とその財産を分け合うこととなり、貸し付けたお金の全額の回収は非常に難しくなります(現実の債務者破産のケースに至っては、債権の1割が回収できればマシだとされる。
したがいまして、強制執行は、債務者Bの意思に関係なく、国家権力を使って強制的にお金を回収することができますが、実はリスクも大きいのです。
他にAの取れる手段は本当にないの?
あります。
ただそれは「お金を貸し付ける段階で取っておくべき手段」になります。
すなわち、事前に取っておくべき手段です。
それはどんな手段?
まずひとつは、抵当権(担保物権)です。
貸し付ける300万円の担保として、Bの不動産を確保する方法です。
これなら、担保にしたBの不動産については、300万円という貸金の回収のための財産として、確実に確保しておくことができます。
(抵当権について詳しい解説は「【抵当権の超基本】その特徴と意味を徹底解説!抵当権の強さの理由とは?一般財産って何?わかりやすく解説!」をご覧ください)。
他には?
あります。
これも「お金を貸し付ける段階で取っておくべき手段」で、保証人を立てる方法です。
保証債務とは

冒頭の事例で、債権者のAは、債務者のBに、貸したお金を返してもらえない、という事態に陥ってしまいました。
当然、Aは貸したお金をきっちり回収したいはずです。
そこで、Aはあらかじめこのような事態に陥った場合を想定して、Bにお金を貸し付ける段階で、Bの保証人と保証契約を結ぶことができます。
保証人との保証契約とは、要するに「債務者Bがお金を返せなかったとき、保証人か肩代わりしますよ」という約束です。
つまり、Bの保証人と保証契約を結んでおけば、Bが300万円の返済を滞らせても、Aは保証人に対して300万円を取り立てることができます。
保証人は、いわば人的担保です。
抵当権が、いざというときに担保として確保した不動産をおさえるのに対し、保証債務は、いざというときに保証人という「人そのもの」をおさえます。
だから「人的担保」なのです。
なお、Bが保証人を立てた場合、保証人のAに対する債務を保証債務、BのAに対する債務を主債務といい、Bは主債務者という立場になります。
主債務者 債権者
B ← A → 保証人
(主債務) (保証債務)
ここで2つ、注意点があります。
・保証債務の付従性
保証債務は、あくまで主債務の存在が前提です。
したがって、主債務者Bの債務、すなわち主債務が、無効であったり取り消されたりしたような場合は、保証債務も成立しなくなります。
このような保証債務の性質を、付従性といいます。
・主債務の保証債務はあくまで別個の契約
先述のとおり、保証債務は主債務の存在が前提に成り立っています。
ただし、保証契約の当事者は、あくまで債権者と保証人です。
つまり、Bの債務の保証のためとはいえ、保証契約を結ぶのはAと保証人であって、Bの保証人が結ぶわけではありません。
したがって、AがBの保証人と保証契約を結ぶと「AB間の主債務の契約」と「Aと保証人の保証契約」の2つの契約が並立することになります。
債権者A ー 主債務者B ←主債務の契約
⇅(並立)
債権者A ー Bの保証人 ←保証契約
物上保証

抵当権は、債務者の不動産を担保とします。
これに対し、保証人は「保証人そのもの」を担保とする、いわば人的担保です。
さらに、債務者以外の「人の物(財産)」を担保にすることもできます。
それが物上保証です。
そして、物上保証の場合の保証人は、物上保証人となります。
事例2
BはA銀行から事業資金を借り入れようとしていたが、担保にできるような財産を持っていなかった。そこで、大地主の娘である妻Cが、夫Bのために自らの財産(不動産)をその事業資金の融資のための担保にした。
これが、物上保証の典型的なケースです。この事例2は、Bが銀行から融資を受けるために、Bの妻Cが、BのためにC自身の財産(不動産)を担保にした、という話です。
もう物上保証の意味は、おわかりになりますよね。
このとき、A銀行は債権者、Bは主債務者、Cは物上保証人、という立場になります。
債権者
A銀行
(貸金債権)↙︎ ↘︎(抵当権)
B C
主債務者 物上保証人
物上保証人と保証人の違い
ところで、保証人は「保証人そのもの」を担保とするいわば人的担保ですが、それに対して、物上保証人は「保証人の財産」を担保とします。
ん?それで何が違うの?
実は、この「保証人そのもの」と「保証人の財産」の違いは、かなり重要な意味があります。
保証人の場合
保証人は、主債務者が債務を履行しないときに、その債務を肩代わりします。
例えば、BがAから借金をしていて、Bの保証人がCの場合、Bが借金を返せないときに、CがBの借金を肩代わりすることになります。
Bの借金が100万円なら100万円、1000万円なら1000万円を、Cが肩代わりすることになります。
くわえて、遅延損害金があれば、それも合わせてCが肩代わりしなければなりません。
さらにそれだけではありません。
もし保証人Cが主債務者Bの借金を肩代わりしなければならなくなった場合に、保証人Cが「そんな金払えるか!」と言って支払わないとなると、債権者Aは、保証人Cに対して訴訟を提起することができます。
つまり、保証人Cは、場合によってはBの借金のために、債権者Aから裁判を起こされる可能性があるのです。
マジで?保証人キッツイわ~!
はい。マジ、キッツイです。
ということで、保証人の責任には限度がないのです。
これを、保証人の無限責任といいます。
そして、この「保証人の無限責任」こそ、保証人は「保証人そのもの」を担保にする、ということの真の意味です。
(厳密に言えば、保証人にもいくつかの種類があり、その種類ごとに責任の重さも異なりますが、それについては、また別途改めて解説いたします)
物上保証人の場合
物上保証は、物上保証人の「特定の財産」を担保にします。
例えば、BがAから借金をしていて、Bの物上保証人がCの場合、Bが借金を返せないときに、CがBのために担保にした不動産を競売に出して、その売却金をBの借金返済にあてることになります。
ん?保証人とどう違うの?
全然違います。
なぜなら、物上保証人Cは、いざBの借金返済のために持って行かれる財産は、Bのために担保にした不動産のみです。
もう少しわかりやすく詳しく説明すると、Bの借金が1000万円で、物上保証人CがBのために担保にした不動産が500万円相当だったとしても、いざBの借金返済のために持って行かれるCの財産は、500万円相当の不動産のみです。
残りの借金500万円に関しては、Cに責任は及びません。
担保にした不動産が競売に出されて、そこでCの責任は終了です。
Bの借金がいくら残っていようが、もはやCには関係ありません。
なぜなら、物上保証人Cが責任を負うのは、あくまで担保にした不動産だけであって、Bの借金そのものの責任を負うわけではないからです。
したがって、物上保証人の責任には限度があります。
保証人の責任は無限責任ですが、物上保証人の責任は有限責任なのです。
以上が、保証人と物上保証人の違いになります。
この違いを理解すると、そもそも保証人とは何なのか?物上保証人とは何なのか?ということが、よく理解できるかと思います。
保証人は無限責任、物上保証人は有限責任。
皆さん、誰かの保証人になろうとするときは、ここでご説明した内容をよく理解した上で、どうぞご判断ください。
代位弁済
最後に、保証人の弁済とも繋がる「代位弁済」というものについて、解説いたします。
法定代位と任意代位
【法定代位】
民法では「弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する」と規定されています。
これは「弁済による代位=代位弁済」のことですが、どういう意味かというと、保証人・物上保証人等が主債務者に代わって弁済をすれば、債権者に属する担保権等の権利は保証人・物上保証人等に移転するということです。
もっと噛み砕いてわかりやすく言うと、保証人・物上保証人等が主債務者に代わって弁済をすれば、その後は、保証人・物上保証人等が債権者に代わる(代位する)ということです。
そしてこれは、そうなれば法律上当然に適用される法定代位です。(そうなれば問答無用で適用されるルールということ)
【任意代位】
一方、法定代位に対して、任意代位というものもあります。
先ほど「弁済をするについて正当な利益を有する者」というフレーズが出てきました。
これはわかりやすく言ってしまえば、保証人や物上保証人のことです。
つまり、保証人や物上保証人が弁済した場合に法定代位の問題になるのです。
では「弁済をするについて正当な利益を有しない者」が弁済した場合はどうなるのでしょうか?
「弁済をするについて正当な利益を有する者」が保証人や物上保証人を指す、ということは「弁済をするについて正当な利益を有しない者」とは、保証人や物上保証人以外の者ということになります。
したがって「弁済をするについて正当な利益を有しない者」が弁済した場合とは「保証人や物上保証人以外の者が弁済した場合」ということです。
具体例を挙げると、保証人でもない親が子供の借金を肩代わりしたような場合です。
これが任意弁済です。
ではこの場合、保証人や物上保証人が弁済したときと同じように、債権者に属する担保権等の権利は親に移転するのでしょうか?
この場合にも弁済による代位は生じます。
つまり、債権者に属する担保権等の権利は親に移転します。
ただし、そのためには次の2つの要件を満たす必要があります。
1・債権者の同意
2・対抗要件としての債権者から債務者(子)への通知または債務者の承諾
つまり、親が子供の借金を肩代わりした場合に「弁済による代位(任意代位)」が生じるには「親が債務者(子)の借金を肩代わりすること」を債権者が同意して、そのことを「債権者から債務者(子)へ通知」または「債務者(子)が承諾」することが必要だということです。
以上が、法定代位と任意代位です。
補足:
主債務者1人に対して「弁済による代位者」となるべきものが複数いる場合

いずれの者が弁済しても、弁済者は主債務者に対して全額の求償ができます。
(保証人の求償についての詳しい解説は「【保証人の求償権】委託を受けたか受けないかで違う?求償の制限と事前求償権とは?わかりやすく解説!」をご覧ください)
しかし、主債務者が無資力(金が無い状態)の場合もあります。
そして、その場合のルールはあらかじめ定められています。
では、どういうルールに基づき弁済者は債権者に代位(債権者に代わって債権者の権利を行使)するのでしょうか?
1【保証人と第三取得者のケース】※
※第三取得者とは、抵当権が設定された後にその不動産を取得した者。
(これについての詳しい解説は「【抵当権の消滅請求と代価弁済】どう違う?第三取得者が抵当不動産について費用を支出すると?わかりやすく解説!」をご覧ください)
・保証人が弁済した場合
この場合、保証人は第三取得者に対して代位できます。
ただし、そのためには弁済後、第三取得者が登場する前に保証人名義の抵当権等の移転登記を受けることが必要です(弁済当時に存在する第三取得者との関係では登記不要)。
・第三取得者が弁済した場合
この場合、第三取得者は保証人に対して代位できません。
そもそも、第三取得者は抵当付きの不動産を安く買い叩いているはずなので、代位の必要性はないと考えられます。
2【第三取得者と第三取得者のケース】
・第三取得者の1人が弁済した場合
各不動産の価格に応じて、弁済した第三取得者は他の第三取得者に対して代位します。
例えば、1000万円の甲土地を取得したA、2000万円の乙土地を取得したBがいて、債権額1500万円の抵当権が、甲土地(負担額500万円)、乙土地(負担額1000万円)に設定されていたとします。
そして、Aが1500万円全額弁済した場合、AはBに対して1000万円(甲土地の価格)の限度で乙土地の抵当権に代位できます。
3【物上保証人と物上保証人のケース】
・物上保証人の1人が弁済した場合
各不動産の価格に応じて、弁済した物上保証人は他の物上保証人に対して代位します。
考え方は前述の2のケースと同じです。
4【保証人と物上保証人のケース】
・保証人と物上保証人のいずれかが弁済した場合
頭数に応じて代位します。
以上が、代位弁済についての端的な解説になります。
なお、代位弁済については、抵当権の基本についての理解の前提がないとわかりづらいかと思います。
よろしければ、
「【抵当権の超基本】その特徴と意味を徹底解説!抵当権の強さの理由とは?一般財産って何?わかりやすく解説!」
もしくは、
「【抵当権の基本】被担保債権と付従性の緩和とは?登記にも勝る強力な随伴性とは?わかりやすく解説!」
をお読みいただければ、代位弁済についての理解が深まるかと存じます。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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