2018/04/23
人を担保にする?保証人・保証債務の超基本
事例AはBに200万円を貸し付けた。その後、返済期限が過ぎても、Bは一向にその借金を返済しない。
さて、この事例で、Aは困っています。なぜなら、貸し付けた200万円をBが返済しないからです。このままいけば、Aが取るべき手段は、そのまま諦めるか訴訟を提起するかのどちらかです。そのまま諦めれば、貸した200万円はドブに捨てたようなもんです。となると、Aとしては訴訟を提起して、なんとか200万円を回収したいところです。訴訟を提起して裁判で勝訴すれば、AはBに対して強制執行の手続きを取ることができます。そして、Bの一般財産を差し押さえて、強制競売によりお金を回収することになります(強制執行と差押えについて詳しくはこちらの記事へ)。それで一件落着...と言いたいところですが、この方法にはリスクがあります。というのも、もしBに財産がなかったら、たとえ強制執行したところで、お金は回収できません。「無い袖は振れない」というヤツです。ましてや、裁判をするとなると、手間も時間もお金もかかります。それで強制執行して1円も回収できなかったら、まさに「骨折り損のくたびれもうけ」です。さらに、たとえBに財産が残されていたとしても、他にも債権者がいた場合は、他の債権者とその財産を分け合うこととなり、全額の回収は非常に難しくなります(現実の債務者破産のケースに至っては、債権の1割が回収できればマシだとされています)。
従いまして、強制執行は、債務者Bの意思に関係なく、国家権力を使って強制的にお金を回収することができますが、実はリスクも大きいのです。
他にAの取れる手段は本当にないの?
あります。ただそれは、お金を貸し付ける段階で取っておくべき手段になります。すなわち、事前に取っておくべき手段です。
それはどんな手段?
まずひとつは、抵当権(担保物権)です。貸し付ける300万円の担保として、Bの不動産を確保する方法です。これなら、担保にしたBの不動産については、300万円という貸金の回収のための財産として、確実に確保しておくことができます(抵当権について詳しくはこちらの記事へ)。
他には?
あります。これも、お金を貸し付ける段階で取っておくべき手段で、保証人を立てる方法です。
保証債務とは
冒頭の事例で、債権者のAは、債務者のBに、貸したお金を返してもらえない、という事態に陥ってしまいました。当然、Aは貸したお金をきっちり回収したいはずです。そこで、Aはあらかじめこのような事態に陥った場合を想定して、Bにお金を貸し付ける段階で、Bの保証人と保証契約を結ぶことができます。保証人との保証契約とは、要するに「債務者Bがお金を返せなかったとき、保証人か肩代わりしますよ」という約束です。つまり、Bの保証人と保証契約を結んでおけば、Bが300万円の返済を滞らせても、Aは保証人に対して300万円を取り立てることができます。
保証人は、いわば人的担保です。抵当権が、いざというときに担保として確保した不動産をおさえるのに対し、保証債務は、いざというときに保証人という「人そのもの」をおさえます。だから「人的担保」なのです。
尚、Bが保証人を立てた場合、保証人のAに対する債務を保証債務、BのAに対する債務を主債務といい、Bは主債務者という立場になります。
主債務者 債権者
B ← A → 保証人
(主債務) (保証債務)
ここで2つ、注意点があります。
・保証債務の付従性
保証債務は、あくまで主債務の存在が前提です。したがって、主債務者Bの債務、すなわち主債務が、無効であったり取り消されたりしたような場合は、保証債務も成立しなくなります。このような保証債務の性質を、付従性といいます。
・主債務の保証債務はあくまで別個の契約
先述のとおり、保証債務は主債務の存在が前提に成り立っています。ただし、保証契約の当事者は、あくまで債権者と保証人です。つまり、Bの債務の保証のためとはいえ、保証契約を結ぶのはAと保証人であって、Bの保証人が結ぶわけではありません。したがって、AがBの保証人と保証契約を結ぶと、AB間の主債務の契約と、Aと保証人の保証契約の2つの契約が並立することになります。
債権者ー主債務者←主債務の契約
⇅(並立)
債権者ー保証人←保証契約
→続いての記事はこちら
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