
【抵当権の超基本】その特徴と意味とは?抵当権の強さの理由とは?一般財産って何?初学者にもわかりやすく解説!
▼この記事でわかること
・担保物権の超基本~抵当権ってなに?
・抵当権の意味
・抵当権の特徴
・なぜ抵当権は強いのか
・「一般財産」の意味
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者にもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。

担保物権(抵当権)の超基本
そもそも抵当権ってなに?
日常でもよくある、一般的にもっとも馴染みのある抵当権のケースは、住宅ローンです。
ですので、住宅ローンの例で解説いたします。
例えば、Aさんが住宅ローンを組んでマイホームを購入したとしましょう。
このとき、Aさんに融資をした(お金を貸した)銀行が債権者、Aさんは債務者です。
そして債権者である銀行は、万が一、Aさんが住宅ローンを返済できなくなったときのために、そのマイホームを住宅ローンの担保として確保します。
「住宅ローンの担保として確保する」とは、わかりやすく言えば「住宅ローンの保証にする」ということです。
住宅ローンの保証にするとはつまり「もし住宅ローンが返済できなくなったらこの不動産(マイホーム)を売っぱらってそのお金をローンの返済にあてます」ということです。
そして、もし債務者のAさんが住宅ローンの返済ができなくなった場合、債権者である銀行は、担保にした不動産(Aのマイホーム)を強制的に売っぱらって(競売)、その売却代金からお金を回収できます。
これが抵当権です。
そしてこの場合、債権者である銀行が抵当権者となり、債務者であるAさんは抵当権設定者となります。
また、このとき担保にしたマイホームを、債務(住宅ローン)の担保に供した不動産(抵当不動産)、といいます。
抵当権の意味
さて、ではここからは、事例とともに抵当権についてより具体的に考えていきます。
事例1
AはBから「店を始めるのでお金を貸してくれ。絶対にこの商売を成功させて返すから!」と頼まれた。そこで、AはBにその事業資金として200万円を貸した。それからしばらく、Bの店の経営は順調だったが、ある時からBの店の売り上げはどんどん下がっていき、次第に店の経営状況は悪化し、それと共にBの財産状況も悪化した。金に困ったBはサラ金に手を出し、サラ金業者Cから100万円を借金した。それでも足りないBはさらにクレジット会社Dからも100万円を借金した。そして結局、その後、Bは破産した。なお、Bに残っている財産は200万円の不動産だけである。
[関係図]
A(200万返せ)
↙︎
B(残財産200万円)←サラ金業者C(100万返せ)
↖︎
クレジット会社D(100万返せ)
さて、この事例1で、破産してしまった債務者Bから、債権者A・C・Dの3者が回収できる金額は次のとおりです。
各債権者へのは配当割合
→200万÷400万=50%
したがって
Aが返済を受ける額
→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額
→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額
→200万×50%=50万円
債権者平等原則により、各債権者は平等に扱われ、上記のような結果になります。
(債権者平等原則についての詳しい解説は「【差押え&強制執行&破産の超基本】借金で考える債権の世界~債務者に財産が無いとどうなる?わかりやすく解説!」をご覧ください)
ところで、Aは結局、Bに貸した200万円のうち、返済を受けられたのは半額の100万円でした。
これって、ハッキリ言って、Aとしては貸し損ですよね。
しかし、これが債権者平等原則による結果です。
それでは、Aは債権者として、何か取るべき手段はなかったのでしょうか?
それが、あるのです。
そして、その取るべき手段というのが抵当権(担保物権)なのです。
担保物権の代表:抵当権の特徴

担保物権にはいくつかの種類が存在しますが、抵当権はその中でもっとも現実に利用されている代表的な存在です。
ではなぜ、抵当権が担保物権の中でもっとも現実に多く利用されているのか?
それは抵当権の持つ性質と特徴に起因します。
まずは抵当権についての民法の条文を見てみましょう。
(抵当権の内容)
民法369条
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
上記、民法369条条文中に、抵当権についての非常に重要なポイントが2つあります。
それは「占有を移転しないで」と「他の債権者に先立って」です。
それではこの2つのポイントから、抵当権のその性質・特徴について解説していきます。
・「占有を移転しないで」とは
これは、債務の担保に供した不動産を抵当権者(債権者)が占有する必要がない、という意味です。
先の住宅ローンの例ですと、Aさんが購入したマイホームはあくまでA自身で占有して、銀行はその不動産(マイホーム)を占有しなくていいということです。
これは抵当権の大きな利点です。
債権者はわざわざ担保にした不動産を占有する必要がないし、債務者は担保にした不動産を使用し続けることができるので、債権者と債務者双方にとって有難いことです。
・「他の債権者に先立って」とは
これが、債権者にとってはかなりアツイ、抵当権の特徴になります。
どういうことかといいますと、抵当権を付けておけば、万が一、債務者が破産してしまっても、抵当権を設定した不動産については、優先的にお金を回収することができます。
え?どういう意味?
はい。
ということで、ここで再び事例1に戻ります。
A(200万返せ)
↙︎
B(残財産200万円)←サラ金業者C(100万返せ)
↖︎
クレジット会社D(100万返せ)
このような状況で、各債権者が回収できる金額は、債権者平等原則により次のようになります。
Aが返済を受ける額
→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額
→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額
→200万×50%=50万円
そしてここからが肝です。
もしAが200万円の貸金について、Bの不動産に抵当権を付けていたとしましょう。
すると、なんと結果は次のようになります。
Aが返済を受ける額→200万円
Cが返済を受ける額→0円
Dが返済を受ける額→0円
これが「他の債権者に先立って」の意味です。
これは債権者としてかなりデカイですよね。
つまり、抵当権は、債権者平等原則をすっ飛ばせる強力な効果があるのです。
抵当権の強さ

抵当権とは、金融機関などが融資(お金を貸すこと)を行う際、その融資したお金が回収できない場合の担保として不動産を確保して、実際にお金が回収できないような事態になったときは、強制的にその不動産を競売に出して(売っぱらって)、他の債権者に優先してその売却金からお金を回収できる権利です。
さて、ここで再び先ほどの事例を見て見ましょう。
事例
AはBから「店を始めるのでお金を貸してくれ。絶対にこの商売を成功させて返すから!」と頼まれた。そこで、AはBにその事業資金として200万円を貸した。それからしばらく、Bの店の経営は順調だったが、ある時からBの店の売り上げはどんどん下がっていき、次第に店の経営状況は悪化し、それと共にBの財産状況も悪化した。金に困ったBはサラ金に手を出し、サラ金業者Cから100万円を借金した。それでも足りないBはさらにクレジット会社Dからも100万円を借金した。そして結局、その後、Bは破産した。尚、Bに残っている財産は200万円の不動産だけである。
このケースで、各債権者の回収できる金額は次のとおりです。
Aが返済を受ける額
→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額
→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額
→200万×50%=50万円
これが債権者平等原則による結果です。
ところが、Aが200万円の貸金についてBの不動産に抵当権を付けていた場合は、各債権者の回収できる金額は次のようになります。
Aが返済を受ける額→200万円
Cが返済を受ける額→0円
Dが返済を受ける額→0円
抵当権は、抵当不動産について「他の債権者に先立って」自己の弁済を受けることができる権利です。
したがって、AはBの不動産に抵当権を付ければ、抵当権者として、CとDに優先して、Bの不動産200万円からお金を回収することができます。
これが抵当権の強みです。
抵当権はなぜそんなに強いのか?

CとDにしてみれば、AがBの不動産に抵当権を付けていたというだけで、1円も回収することができなくなってしまいます。
その理由は、民法で「他の債権者に先立って」と規定されているから、と説明してもいいのですが、こう説明することもできます。
抵当権は担保物権です。
すなわち、抵当権は物権なのです。
民法の原則として、物権は債権よりも強い権利です。
特定の者が特定の者に対して主張できる権利が債権なのに対し、物権は不特定多数の全ての者に対して主張できる権利です。
したがって、物権は債権に勝ります。
ですので、担保物権という物権である抵当権は債権に勝り、抵当権者は他の債権者に優先して、抵当不動産からお金を回収することができるのです。
なお、抵当権は登記できます。
これも、抵当権が物権として強力な権利であることを示していますね。
「一般財産」の意味
抵当権者以外(正確に言うと担保物権者以外)の債権者を、一般債権者といいます。
そして、一般債権者が差し押さえることができる財産を一般財産といいます。
(差し押さえについての詳しい解説は【差押え&強制執行&破産の超基本】借金で考える債権の世界~債務者に財産が無いとどうなる?わかりやすく解説!をご覧ください)。
つまり、一般財産というのは、債務者の総財産から「抵当不動産などの担保として確保された財産」を差し引いた財産のことです(よく借金問題や破産事件などで「一般財産」という言葉を聞くことがあると思いますが、その言葉の意味は、今回ご説明申し上げた担保物権(抵当権)の仕組みを理解しないと、本当の意味ではよくわからないのではないかと思われます)。
したがいまして、事例で、AがBの不動産に抵当権を付けていた場合は、サラ金業者Cとクレジット会社Dは、あてにできるBの財産は一般財産だけで、一般財産がなければアウトということです。
また、もしBの不動産が300万円のもので、Aの貸金を回収してもなお100万円残っていれば、その100万円をCとDは50万ずつ分け合うことになります。
つまり、抵当権者がライオンなら、一般債権者はハイエナです。
先にライオンが食い散らかした財産を、後からハイエナ達が食い合うようなものです。
以上、抵当権の基本についての解説なります。
こうやって考えていくと、なぜ住宅ローンを組むときに、金融機関が購入した不動産に抵当権を付けるのか、その意味がよくわかりますよね。
また、余裕がございましたら「【債務不履行&損害賠償&過失責任の原則】債権債務の世界を超基本からわかりやすく徹底解説!」から順に、今回の記事までお読みいただくと、より債権というものについての理解が深まるかと思いますので、よろしければ是非。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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・担保物権の超基本~抵当権ってなに?
・抵当権の意味
・抵当権の特徴
・なぜ抵当権は強いのか
・「一般財産」の意味
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今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者にもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。

担保物権(抵当権)の超基本
そもそも抵当権ってなに?
日常でもよくある、一般的にもっとも馴染みのある抵当権のケースは、住宅ローンです。
ですので、住宅ローンの例で解説いたします。
例えば、Aさんが住宅ローンを組んでマイホームを購入したとしましょう。
このとき、Aさんに融資をした(お金を貸した)銀行が債権者、Aさんは債務者です。
そして債権者である銀行は、万が一、Aさんが住宅ローンを返済できなくなったときのために、そのマイホームを住宅ローンの担保として確保します。
「住宅ローンの担保として確保する」とは、わかりやすく言えば「住宅ローンの保証にする」ということです。
住宅ローンの保証にするとはつまり「もし住宅ローンが返済できなくなったらこの不動産(マイホーム)を売っぱらってそのお金をローンの返済にあてます」ということです。
そして、もし債務者のAさんが住宅ローンの返済ができなくなった場合、債権者である銀行は、担保にした不動産(Aのマイホーム)を強制的に売っぱらって(競売)、その売却代金からお金を回収できます。
これが抵当権です。
そしてこの場合、債権者である銀行が抵当権者となり、債務者であるAさんは抵当権設定者となります。
また、このとき担保にしたマイホームを、債務(住宅ローン)の担保に供した不動産(抵当不動産)、といいます。
抵当権の意味
さて、ではここからは、事例とともに抵当権についてより具体的に考えていきます。
事例1
AはBから「店を始めるのでお金を貸してくれ。絶対にこの商売を成功させて返すから!」と頼まれた。そこで、AはBにその事業資金として200万円を貸した。それからしばらく、Bの店の経営は順調だったが、ある時からBの店の売り上げはどんどん下がっていき、次第に店の経営状況は悪化し、それと共にBの財産状況も悪化した。金に困ったBはサラ金に手を出し、サラ金業者Cから100万円を借金した。それでも足りないBはさらにクレジット会社Dからも100万円を借金した。そして結局、その後、Bは破産した。なお、Bに残っている財産は200万円の不動産だけである。
[関係図]
A(200万返せ)
↙︎
B(残財産200万円)←サラ金業者C(100万返せ)
↖︎
クレジット会社D(100万返せ)
さて、この事例1で、破産してしまった債務者Bから、債権者A・C・Dの3者が回収できる金額は次のとおりです。
各債権者へのは配当割合
→200万÷400万=50%
したがって
Aが返済を受ける額
→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額
→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額
→200万×50%=50万円
債権者平等原則により、各債権者は平等に扱われ、上記のような結果になります。
(債権者平等原則についての詳しい解説は「【差押え&強制執行&破産の超基本】借金で考える債権の世界~債務者に財産が無いとどうなる?わかりやすく解説!」をご覧ください)
ところで、Aは結局、Bに貸した200万円のうち、返済を受けられたのは半額の100万円でした。
これって、ハッキリ言って、Aとしては貸し損ですよね。
しかし、これが債権者平等原則による結果です。
それでは、Aは債権者として、何か取るべき手段はなかったのでしょうか?
それが、あるのです。
そして、その取るべき手段というのが抵当権(担保物権)なのです。
担保物権の代表:抵当権の特徴

担保物権にはいくつかの種類が存在しますが、抵当権はその中でもっとも現実に利用されている代表的な存在です。
ではなぜ、抵当権が担保物権の中でもっとも現実に多く利用されているのか?
それは抵当権の持つ性質と特徴に起因します。
まずは抵当権についての民法の条文を見てみましょう。
(抵当権の内容)
民法369条
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
上記、民法369条条文中に、抵当権についての非常に重要なポイントが2つあります。
それは「占有を移転しないで」と「他の債権者に先立って」です。
それではこの2つのポイントから、抵当権のその性質・特徴について解説していきます。
・「占有を移転しないで」とは
これは、債務の担保に供した不動産を抵当権者(債権者)が占有する必要がない、という意味です。
先の住宅ローンの例ですと、Aさんが購入したマイホームはあくまでA自身で占有して、銀行はその不動産(マイホーム)を占有しなくていいということです。
これは抵当権の大きな利点です。
債権者はわざわざ担保にした不動産を占有する必要がないし、債務者は担保にした不動産を使用し続けることができるので、債権者と債務者双方にとって有難いことです。
・「他の債権者に先立って」とは
これが、債権者にとってはかなりアツイ、抵当権の特徴になります。
どういうことかといいますと、抵当権を付けておけば、万が一、債務者が破産してしまっても、抵当権を設定した不動産については、優先的にお金を回収することができます。
え?どういう意味?
はい。
ということで、ここで再び事例1に戻ります。
A(200万返せ)
↙︎
B(残財産200万円)←サラ金業者C(100万返せ)
↖︎
クレジット会社D(100万返せ)
このような状況で、各債権者が回収できる金額は、債権者平等原則により次のようになります。
Aが返済を受ける額
→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額
→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額
→200万×50%=50万円
そしてここからが肝です。
もしAが200万円の貸金について、Bの不動産に抵当権を付けていたとしましょう。
すると、なんと結果は次のようになります。
Aが返済を受ける額→200万円
Cが返済を受ける額→0円
Dが返済を受ける額→0円
これが「他の債権者に先立って」の意味です。
これは債権者としてかなりデカイですよね。
つまり、抵当権は、債権者平等原則をすっ飛ばせる強力な効果があるのです。
抵当権の強さ

抵当権とは、金融機関などが融資(お金を貸すこと)を行う際、その融資したお金が回収できない場合の担保として不動産を確保して、実際にお金が回収できないような事態になったときは、強制的にその不動産を競売に出して(売っぱらって)、他の債権者に優先してその売却金からお金を回収できる権利です。
さて、ここで再び先ほどの事例を見て見ましょう。
事例
AはBから「店を始めるのでお金を貸してくれ。絶対にこの商売を成功させて返すから!」と頼まれた。そこで、AはBにその事業資金として200万円を貸した。それからしばらく、Bの店の経営は順調だったが、ある時からBの店の売り上げはどんどん下がっていき、次第に店の経営状況は悪化し、それと共にBの財産状況も悪化した。金に困ったBはサラ金に手を出し、サラ金業者Cから100万円を借金した。それでも足りないBはさらにクレジット会社Dからも100万円を借金した。そして結局、その後、Bは破産した。尚、Bに残っている財産は200万円の不動産だけである。
このケースで、各債権者の回収できる金額は次のとおりです。
Aが返済を受ける額
→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額
→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額
→200万×50%=50万円
これが債権者平等原則による結果です。
ところが、Aが200万円の貸金についてBの不動産に抵当権を付けていた場合は、各債権者の回収できる金額は次のようになります。
Aが返済を受ける額→200万円
Cが返済を受ける額→0円
Dが返済を受ける額→0円
抵当権は、抵当不動産について「他の債権者に先立って」自己の弁済を受けることができる権利です。
したがって、AはBの不動産に抵当権を付ければ、抵当権者として、CとDに優先して、Bの不動産200万円からお金を回収することができます。
これが抵当権の強みです。
抵当権はなぜそんなに強いのか?

CとDにしてみれば、AがBの不動産に抵当権を付けていたというだけで、1円も回収することができなくなってしまいます。
その理由は、民法で「他の債権者に先立って」と規定されているから、と説明してもいいのですが、こう説明することもできます。
抵当権は担保物権です。
すなわち、抵当権は物権なのです。
民法の原則として、物権は債権よりも強い権利です。
特定の者が特定の者に対して主張できる権利が債権なのに対し、物権は不特定多数の全ての者に対して主張できる権利です。
したがって、物権は債権に勝ります。
ですので、担保物権という物権である抵当権は債権に勝り、抵当権者は他の債権者に優先して、抵当不動産からお金を回収することができるのです。
なお、抵当権は登記できます。
これも、抵当権が物権として強力な権利であることを示していますね。
「一般財産」の意味
抵当権者以外(正確に言うと担保物権者以外)の債権者を、一般債権者といいます。
そして、一般債権者が差し押さえることができる財産を一般財産といいます。
(差し押さえについての詳しい解説は【差押え&強制執行&破産の超基本】借金で考える債権の世界~債務者に財産が無いとどうなる?わかりやすく解説!をご覧ください)。
つまり、一般財産というのは、債務者の総財産から「抵当不動産などの担保として確保された財産」を差し引いた財産のことです(よく借金問題や破産事件などで「一般財産」という言葉を聞くことがあると思いますが、その言葉の意味は、今回ご説明申し上げた担保物権(抵当権)の仕組みを理解しないと、本当の意味ではよくわからないのではないかと思われます)。
したがいまして、事例で、AがBの不動産に抵当権を付けていた場合は、サラ金業者Cとクレジット会社Dは、あてにできるBの財産は一般財産だけで、一般財産がなければアウトということです。
また、もしBの不動産が300万円のもので、Aの貸金を回収してもなお100万円残っていれば、その100万円をCとDは50万ずつ分け合うことになります。
つまり、抵当権者がライオンなら、一般債権者はハイエナです。
先にライオンが食い散らかした財産を、後からハイエナ達が食い合うようなものです。
以上、抵当権の基本についての解説なります。
こうやって考えていくと、なぜ住宅ローンを組むときに、金融機関が購入した不動産に抵当権を付けるのか、その意味がよくわかりますよね。
また、余裕がございましたら「【債務不履行&損害賠償&過失責任の原則】債権債務の世界を超基本からわかりやすく徹底解説!」から順に、今回の記事までお読みいただくと、より債権というものについての理解が深まるかと思いますので、よろしければ是非。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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