【共有物の管理費用の立替】共有者が負担を履行しない場合は?/共有者と対抗の問題について

▼この記事でわかること
超基本と共有者が負担を履行しない場合
他の共有者の管理費用を立て替えた場合
共有者と対抗の問題
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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共有物の管理費用の立替

 共有物の管理費用などの負担は、どうなるのでしょうか?(共有の基本についての詳しい解説は「【共有】持分権とは」をご覧ください)
 まずは民法の条文をご覧ください。

(共有物に関する負担)
民法253条1項
各共有者は、その持分に応じ管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。


 この民法253条の条文だけではイメージしづらいと思いますので、具体例を挙げます。
 共有物が建物や土地などの不動産の場合、その固定資産税修繕費用管理費用は、各共有者は各自の持分に応じて負担を負います。

共有者が負担を履行しない場合

 例えば、建物や土地などの不動産の共有者の一人が、自己の負担分の費用を支払わない場合、どうなるのでしょうか?
 もし共有者が一年以内にその負担義務を履行しない場合は、他の共有者は、相当の賞金を支払ってその持分を取得することができます
「相当の賞金」という言葉が一瞬わかりづらくさせますが これはつまり、不動産の共有者の一人が一年以内に自己の負担分の費用を支払わないような場合は、その共有者の持分を他の共有者が、事実上、買い取ってしまうことができ、その者との共有関係を解消してしまうことができる、ということです。

他の共有者の管理費用を立て替えた場合

 さて、ここからがいよいよ今回の本題です。
 例えば、AとBが不動産を共有していて、AがBの負担すべき管理費用を立て替えた場合、どうなるでしょうか?
 この場合、当然にAはBに対して立て替えた費用を請求できます。
 では、Bがその持分権をCに売却してしまった場合はどうなるのでしょうか?
 この場合、AはCに対して、その立て替えた費用の請求ができます。
 その理由は、Bから持分権を譲渡されたCは、Aの立替金の恩恵を受けていると考えられるからです。(要はAが費用を立て替えた事でCが得したんじゃね?ということ)
 なお、今ご説明した、AがCに対して立替金を請求する権利ですが、公示はされません。
 公示されないということの意味は、つまり、誰にでも見える形で表に出ないということです。
 ですので、もしCがその事実を知らなかったのなら、不測の損害を受けることになります。
 それって制度的な不備じゃね?
 確かにそうなのですが、実はCがその事実を知らなかったというような状況は、ちょっと考えにくいです。
 というのは、Bがその共有不動産の持分権をCに売却する際、BC間の売買契約の間に入る不動産業者が、その管理費用の滞納状況(Bの負担すべき管理費用をAが立て替えたままの状況)を「重要事項説明」の一項目としてCに説明しているはずだからです。
 そして、この不動産業者の「重要事項説明」は法的な義務です。つまり、法的義務として実務上も必須な重要事項説明という形で、制度的な不備が補完されているのです。

【参考】
(重要事項の説明等)
宅地建物取引業法35条
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。

 上記、条文中の「次に掲げる事項」の中に、先ほど解説した「重要事項説明」が含まれます。
説明
 したがって、上記条文の規定に基づいて、不動産業者は管理費用の滞納状況を宅建士に「重要事項説明」の一項目として説明させなければなりません。

共有の補足:共有者と対抗の問題

 共有者と対抗の問題というのは、共有について考えるときの主要な問題からは外れます。
 したがいまして、ここからの解説は、共有についての理解を深めるための補足的なものとして、頭に入れておいていただければと存じます。
 まずは事例をご覧ください。

事例
AとBとCは、甲不動産を共有している。Cはその持分をDに譲渡したが、その旨の登記はしていない。


 さて、この事例でAとBは、Cの負担すべき甲不動産の管理費用を、誰に請求すべきでしょうか?
 結論。AとBが甲不動産の管理費用を請求すべき相手はになります。なぜなら、Dが登記をしていない以上、登記名義人はあくまでC(登記上の共有者はあくまでC)だからです。
 なお、登記をしていないDは、AとBに対して、甲不動産の共有者の1人となったことを対抗できません。これも先ほどと理由は一緒で、Dが登記をしていない以上、登記名義人はあくまでC(登記上の共有者はあくまでC)だからです。

補足

 実は、本来の不動産登記の対抗問題の原則から考えると、AとBに対し、Dが甲不動産の共有者の1人となったことを、登記をしていないことを理由に対抗できないとするのは、少し変に感じます。
 というのは、A・BとDの関係は、そもそも登記の有無が問題になるような対抗関係にあるのでしょうか?

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
民法177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。


 この民法177条の条文により、不動産の所有権(物権)争いは「早く登記した者勝ち」になります。
 しかし、これは1つの不動産を奪い合う場合です。今回の事例は、1つの不動産を奪い合っている訳ではありません。1つの不動産を持分ごとに所有し合っているだけです。対抗関係でなく共有関係なのです。AとBは、ただ管理費用を請求したいだけなのです。
 こう考えていくと、今回の事例には民法177条は当てはまらないはずで、Dは登記がなくとも甲不動産の共有者の1人であることを主張できるはずです。
 しかし、判例では、今回の事例のようなケースでも、民法177条の規定が適用し、登記が必要だと考えます。
 判例は、登記を要する物権変動には制限がないと考えます(無制限説)。
「登記を要する物権変動には制限がない」と考えるということは、不動産の所有権が移転するようなケースでは、それが通常の対抗関係になるようなケースだけでなく、共有関係のようなケースでも、そこに所有権移転といった物権変動があれば、民法177条の範囲内と考えるということです。
 したがって、登記がないDは甲不動産の共有者の1人であることをAとBに対抗できず、AとBが管理費用を請求する相手は登記名義人であるCとなるのです。
 理屈としては少しややこしく感じるかもしれませんが、以上が結論に至るまでの論理になります。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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