【共有物の分割】3通りの分割協議の基本/共有物分割協議の第三者参加&協議の解除とは?わかりやすく解説!

【共有物の分割】3通りの分割協議の基本/共有物分割協議の第三者参加&協議の解除とは?わかりやすく解説!

▼この記事でわかること
3通りの分割
共有者間の協議が調わなかった場合(協議をすることができない場合)
共有物分割協議への第三者の参加
共有物分割請求ができない場合
共有物分割協議の解除
遺産分割協議の解除
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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共有物の分割


 共有は、一つの物には一つの所有権(物権)という民法の一物一権主義の例外と言われます。
 例外ということは、民法の原則としては、あくまで一物一権ということです。
 なぜなら、一つの物を複数人が共有するというのは、権利関係が複雑になりがちだからです。
 民法としては、そのような共有状態をあまり望ましく思わないのです。

 そこで、民法は、そのような共有状態を解消する手段を規定しました。
 それは、共有物の分割請求です。(分割については後で詳しく解説します)

 各共有者は、いつでも、分割請求をすることができます。
 また、共有物分割請求権は消滅時効にもかかりません。
 したがって、各共有者は、いくら時間が経過しても、いつでも、分割請求ができます。


3通りの分割

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 分割には、3通りの方法が考えられます。

1【現物分割】
 これは言葉のとおりで、共有物を割る方法です。
 例えば、ABCの3者の共有の土地があった場合に、その土地を3つに分割して、各区画をABCそれぞれ1人の単独所有にします。

2【価格賠償】
 これは、共有物を1人の所有物にして、あとはお金で解決する方法です。
 例えば、車がABCの3者共有物だった場合に、分割しようにも、土地のように現物を分割することはできません。
 このような場合に、共有物の車をAの単有にして、BCにはしかるべき価格(金銭)を支払って解決します。

3【代金分割】
 これは、共有物を売却して、その売却代金を共有者間で分け合う方法です。
 例えば、車がABCの3者共有物だった場合、その車を売って、売って得たお金をABCの3者で分け合います(土地のように現物分割ができるものでも、この代金分割の方法で、土地を売却してその売却代金を共有者で分け合うことは可能)。


 これら3つの手段のどれかをとって、共有物の分割をすることができます。
 こうした共有物の分割は、共有者全員の協議で行います。


共有者間の協議が調わなかった場合(協議をすることができない場合)


 必ずしも、共有物の分割について、共有者間の協議が整うとは限りません。
 また、そもそも協議をすることができない場合もあるでしょう。
 では、もし共有者間の協議が整わなかった場合や、そもそも協議をすることができない場合は、一体どうすればいいのでしょうか?
 民法の条文はこちらです。

(裁判による共有物の分割)
民法258条
1項 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2項 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

 上記、民法258条の規定により、共有者間の協議が整わないときは、裁判所に分割を請求することができます。


裁判による分割は現物分割が原則

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 民法258条2項を読むとわかりますが、裁判による共有物の分割は、現物分割が原則であり、例外的に競売による代金分割の方法をとります。

 あれ?価格賠償は?

 そうなんです。
 実は民法では、裁判による共有物の分割について、価格賠償の方法は想定していないのです。

 そして、そのようになっていることには理由があります。
 その理由はこうです。
 例えば、ABCの三人の共有物について、裁判所が「共有物をAに取得させ、AはBCに対し価格の賠償をせよ」と判決を下したとします。
 しかし、現実にAが価格の賠償をしなかったとき、裁判所としてはその責任を負えないという事情があるのです。
 ですので、民法の規定上、裁判による共有物の分割に、価格賠償の方法が想定されていないのです。

 ただし、そうした懸念がないなど、特段の事情がある場合は、裁判による分割でも価格賠償をすることができるとした判例があります。
 したがいまして、裁判による共有物の分割は、原則は現物分割で、例外的に代金分割の方法をとり、民法の規定上、価格賠償は想定していません。
 ただし、特段の事情がある場合は、価格賠償の方法をとることもできる、ということになります。


共有物分割協議への第三者の参加


 共有物分割の協議は、共有者間で行うものです。
 しかし、民法260条1項の規定により、共有物について権利を有する者と各共有者の債権者は、協議に参加することができます。

(共有物の分割への参加)
民法260条
共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。

※共有物について権利を有する者とは
→共有物が土地の場合、その土地の抵当権者(担保物権)や地上権者(用益物権)
※共有者の債権者とは
→共有者に金銭等を貸付している債権者(一般債権者)や、共有物の賃借人(共有物が土地なら、その土地の借地人)

 この民法260条1項の規定により、 共有物について権利を有する者各共有者の債権者は、協議に参加することができます。
 しかし!
 この規定、実は、実際にはあまり役に立たないザル規定なんです。
 その理由は以下です。

・協議に参加する費用は権利者および債権者側が負担
 例えば、東京で行う共有物分割協議に北海道に住む権利者が参加するには、その行き帰りの旅費は全て自己負担ということ。
 これはイタイ!

・共有者側に権利者および債権者に対する告知義務がない
 つまり、権利者および債権者にはヒミツにして、こっそり勝手に共有物分割協議ができてしまうということ。
 これだけでも役立たずのザル規定なのは明白じゃね!?

・協議に参加しても権利者および債権者側の意見に拘束力はない
 権利者および債権者が協議に参加して意見を述べたところで、共有者側はその意見をシカトしてもまったく問題ないということ。
 意味ナーイじゃーん!

 以上のことから、民法260条1項の第三者の共有物分割協議への参加についての規定はほとんど役立たずなのです。
 ただ、決してその規定がまったく意味がないという訳ではありません。
 もし第三者が協議への参加請求をしたのにもかかわらず、共有者側がその参加請求を無視して勝手に分割してしまったら、共有者側はその分割を参加請求者に対して対抗できなくなる、という法的効果があります。
 しかし、これも結局、参加請求者にはしっかりと協議に参加させた上で、その意見をシカトすれば良いだけのことなので、やはり役立たずのザル規定なのは否めないでしょう。


共有物分割請求ができない場合

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 当然、共有物だからといって何でもかんでも分割請求できる訳ではありません。
 次に挙げるものは、共有物の分割請求ができせん。

・境界線上の境界標など(民法229条の共有物)
 境界標とは、土地の境界を示す標のことです。
 要するに「境界標からこっちはAさんの土地。境界標からあっちはBさんの土地」というものです。
 この境界標は、分割することはできません。
 なぜなら、分割してしまったら境界標の意味がなくなるからです。

・区分建物の敷地利用権
 これは分譲マンションの専有部分の所有権(区分所有権)と一体になっている土地の持分権(敷地利用権)です。
 それを分割するというのは訳の分からない話で、そんなことは当然できません。

・区分建物の共有部分
 これはマンションのエレベーターや階段部分のことです。
 当たり前ですが、そんなものが分割できる訳ないですよね。


共有物不分割特約


 各共有者はいつでも共有物の分割請求をすることができますが、民法256条1項但し書きの規定により、共有物を分割しないという契約を共有者間ですることができます。
 ただし、分割しない期間は5年を超えてはなりません。
 分割しない期間を6年間と定めたら、その定めは無効になります。
 分割しない期間は5年以内でなければ有効になりません。
 なお、この共有物不分割特約は登記事項です。その旨の登記をすることで、その不分割を第三者に対抗することができます。


共有物分割協議の解除


 共有物分割協議により共有関係は終了します。
 現物分割であれば、各共有者は分割された物の単独の所有者になります。

 ところで、もし共有物分割協議の内容に、当事者が意図しないような不公平が発生してしまった場合、一体どうなるのでしょうか?

 当事者が意図しないような不公平が発生した場合とは、例えば、共有物が土地で、その土地を各共有者ごとに等分に分割したら、そのうちの一区画だけが地盤が弱くて、財産価値が他の区画よりも著しく劣ることが後から判明したようなケースです。
 そのようなケースで、財産価値が著しく劣る区画の所有者になってしまった者が「こんな分割協議はおかしい!この協議はナシだ!」と、分割協議を解除して、協議自体をなかったことにできるでしょうか?

 結論。
 共有物分割協議の解除は可能です。
 その根拠となる民法の規定はこちらになります。

(分割における共有者の担保責任)
民法261条
各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。

 この民法261条の条文だけだとちょっとわかりづらいですが、要するに、共有者は分割した物について「売主の担保責任」と同じ責任を負うということです。
「売主の担保責任」は、民法改正により「売主の義務」となったものです。
 これは、売買した物について、場合によって買主から売主に対する損害賠償請求や代金減額請求や契約解除を認める規定です。(売主の義務についての詳しい解説は「【売主の義務(旧:担保責任)】履行の追完&解除&代金減額&損害賠償の請求についてわかりやすく解説!」をご覧ください)
 したがって、共有物分割協議の解除は可能なのです。

 ただし!
 裁判により共有物の分割が行われた場合は、その解除はできません。
 裁判による判決を、一般私人の一方的な意思表示で「なかったこと」にできてしまったら、世の中の秩序が乱れておかしなことになってしまいますよね。
 そんなことは日本のような法治国家ではあり得ません。


遺産分割協議の解除


 共有物の分割に似た制度に、遺産分割があります。
(遺産分割についての解説は「【共同相続と登記】遺産分割協議と相続人&相続放棄者の勝手な不動産譲渡問題/遺言による相続と登記をわかりやすく解説!」もご参照ください)
 そして遺産分割の場合も、遺産分割協議というものがあります。

 ところで、遺産分割協議の解除はできるのでしょうか?
 遺産分割協議後にもめそうなケースとしては、夫が亡くなり、相続人が妻と息子二人で、長男には母の介護を条件として多めの財産を与えていたのに、長男がその義務を果たさなかったような場合です。このような場合に、遺産分割協議を解除することができるのか?

 結論。
 遺産分割協議の解除はできません。
 なぜなら、それができてしまうと法的安定性が損なわれるからです。

 というのは、遺産分割は、特定の資産を分割する共有物分割よりも、分割する資産の規模がずっと大きいことの方が多いでしょう。
 それだけ大きい資産となると、そこに絡む第三者の存在などの法律問題、そのややこしさも、特定の資産の共有物分割の比ではありません。
 ですので、遺産分割協議が解除されてなかったことになってしまうと、ややこしい法律問題が一気に噴出してしまうのです。
 それはまさしく、法的安定性を損なうことになります。
 したがって、遺産分割協議の解除はできないのです。

 なお、遺産分割協議の合意解除可能です。
 合意解除とは、相続人間で「この遺産分割協議はなかったことにしよう」とする新たな契約です。
 こういった形の解除であれば可能になります。


【補足】

 ある財産の分割が、共有物分割なのか遺産分割なのかを見極める基準として、両分割には以下の違いがあります。

共有物分割→地方裁判所の管轄
遺産分割→家庭裁判所の管轄

 共有物分割の裁判であれば地方裁判所を利用することになり、遺産分割であれば家庭裁判所を利用することになります。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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