
【共有】持分権とは/共有物の使用方法&変更&管理&保存について/解除権の不可分性の例外とは/持分権の主張、共有物の明渡し請求等を初学者にもわかりやすく解説!
▼この記事でわかること
・共有の基本
・持分権とは
・共有物全体の問題「共有物の使用方法・変更・管理」について
・共有物の保存、解除権の不可分性の例外
・共有の補足~持分権の主張、共有物の明渡し請求等
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者にもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。

共有の基本
1つの物を、1人ではなく複数人で所有することを共有といいます。
共有関係が生まれるとき
共有関係は、法律の規定によって生じます。
また、当事者の合意によっても生じます。
法律の規定によって生じる場合とは、例えば相続です。
地主が死亡し、その地主の相続人が二人いれば、法律の規定により、問答無用にその土地は相続人二人の共有になります。
その後、相続人の相続放棄や遺産分割協議により相続の内容が変わる可能性はありますが、まずは法律の規定によって、そのようになるのです。(遺言による相続についてはここでは省きます)
当事者の合意によって生じる場合とは、例えば、夫婦で1000万円ずつ出し合って不動産を購入するような場合です。
このように、共有関係は、法律の規定による場合と、当事者の合意による場合とがあります。
共有は一物一権主義の例外
物に対する権利である物権の世界では、一物一権主義というものがあります。
「一つの物には一つの物権」という原則です。(排他的支配権)
そして、共有はその「一物一権主義の例外」とも言われます。
なぜなら、一つの物を複数人で共有するからです。
ただ、共有の場合でも、共有者はそれぞれ持分権というものがあり、各持ち分に対しては一つの持分権しか存在しません。
そして、持分権は各自で自由に処分できます。
例えば、一つの土地をAとBが相続すると、その土地はAとBの共有物になり、AとBはそれぞれ各持ち分に対して持分権を持ちます。
このとき、Aが自分の持ち分を売ったりするのは自由です。
もちろん、Bが自分の持ち分を売ったりするのも自由です。
ただし、AがBの持ち分を売ったりすることはできません。
ということなので、持分権は、各々の各持ち分に対しては、所有権と同じようなものなのです。
そう考えていくと、共有も、一物一権主義にしっかりと則っていると言えます。
持分権
共有について考える場合は、共有物全体の問題なのか、各持分権の問題なのか、そこを見極めた上で考えていかないと、よくわからなくなってしまいます。
ですので「共有物全体」と「各持分権」とを分けた上で、まずは持分権から解説して参ります。
さて、先ほど持分権は、各持ち分については所有権と同じようなものだとご説明いたしました。
実際「共有持分権の法的性質は所有権である」と説明されます。
その共有持分権の法的性質を表す典型例で、現実にもよくあるのは、分譲マンションです。

~分譲マンションの性質を考えれば共有持分権の法的性質が分かる?~
冒頭に、共有のパターンとして相続による共有と夫婦の共有の例を挙げましたが、日常的にもっとも起こっている共有のケースは何か?となると、それはおそらく、分譲マンションのケースになるでしょう。
分譲マンションでの所有は区分所有とも言われ、その所有権は区分所有権とも言われます。
分譲マンションにおいてその建物の各区分は、それぞれ別の所有者が存在し、そこには個々独立の所有権が成立しています(一つのマンションに複数の所有権が独立しながら存在、つまり、一つのマンションに複数のオーナーが存在する)。
じゃあマンションで何を共有しているの?
分譲マンションにおいて、共有になっているのは土地です。
土地というのは、そのマンションが建っている敷地です。
つまり、ある土地に分譲マンションが建っていて、そのマンションが100の専有部分(わかりやすく言えば100戸)に分かれていれば、その土地には100の持分権が存在することになります。
もしあなたがその分譲マンションのオーナーだったとすると、通常の場合、あなたが所有しているのは、そのマンションの所有権(区分所有権)と、その土地の100分の1の持分権です。
そして、あなたがそのマンション(所有権)を誰かに売るのは自由ですよね。
あなたがそのマンション(所有権)を誰かに売れば、当然それに伴ってその持分権も一緒に売られることになりますが、その際、他の99人のオーナーの承諾はいらないですよね。
これが「共有持分権の法的性質は所有権」の具体例と説明になります。
共有持分権の法的性質、そのイメージは掴んでいただけたかと存じます。
共有物全体について
続いては、共有物全体の問題「共有物の使用方法・変更・管理」について、解説して参ります。
共有物の使用

例えば、1台の車をA・B・Cの3人で共有しているとします。
そしてA・B・Cの持ち分はそれぞれ3分の1ずつです。
この場合、3人の共有物である車の使用方法は一体どうなるのでしょうか?
これについて該当する民法の条文はこちらです。
(共有物の使用)
民法249条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
共有物の使用について、民法では上記のような規定を置いています。
しかし、どうでしょう。
正直これだとよくわからないですよね。
まさか、車(共有物)を使用するときは常に「ABC3人一緒に仲良くドライブ♫」という訳にもいかないでしょう。
結局、車(共有物)の使用方法はどうなるの?
これについては、結局、A・B・Cの3人の協議(話し合い)で決めることになります。
したがって、共有物の使用方法については一概には言えず、協議による決定内容によって変わってきます。
共有物の変更
続いて、共有物の車全部を第三者に売る場合について考えて参ります。
これについて、民法では下記の規定を置いています。
(共有物の変更)
民法251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
上記、民法251条条文中の「変更」という言葉がわかりづらいと思いますが、共有物の売買は、共有物の「変更」にあたります(農地転用などの地目変更もこの「変更」に含まれます)。
したがって、共有物の車の売買は、民法251条(共有物の変更)の規定が適用されます。
また、条文中の「他の共有者の同意を得なければ」というのは、共有者全員の意思表示が必要という意味です。
ということなので、3人の共有物である車全部を売る場合は、ABC3人全員の「売る」という意思表示が必要になります。
3人全員が売るという意思を示さない限りは、売ることはできません。
共有物の管理
続いて、共有物の車を第三者に賃貸する(貸す)場合について、考えて参ります。
これについて、民法では下記の規定を置いています。
(共有物の管理)
民法252条
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
上記、民法252条条文中の「管理」という言葉には、共有物の賃貸も含まれます。
ですので、共有物を賃貸するには、各共有者の持分の価格に従って、その過半数で決定するということです。
株主総会の決議に似てますね。
したがって、共有物の車を第三者に賃貸する場合は、ABCの持分はそれぞれ3分の1ずつですので、3人中2人の賛成で車の賃貸をすることが可能です。
共有物の保存、解除権の不可分性の例外
共有物を売る場合、共有者全員の意思表示か必要です。(共有物の変更)
共有物を賃貸する場合、共有者の持分の価格に従い、その過半数の賛成が必要です。(共有物の管理)
では、共有物が不法占拠されていた場合は、一体どうなるのでしょうか?
共有物の保存

例えば、一台の車をA・B・Cの3人で共有していて、持ち分はそれぞれ3分の1だった場合に、その共有物である車が第三者に不法占拠されたとき、共有者の意思は、どのように決められるのでしょうか?
これについての民法の規定はこちらです。
民法249条
保存行為は、各共有者がすることができる。
上記、民法249条冒頭の「保存行為」という言葉がピンと来づらいと思いますが「不法占拠されている物を取り戻すこと」は保存行為になります。(ちなみに自動車の修理なども保存行為です)
「各共有者がすることができる」というのは、各共有者が1人でできるという意味です。
つまり、共有物が不法占拠された場合、各共有者がそれぞれ単独で、共有物全体についての返還請求権を行使することができます。
したがいまして、共有物の車が第三者に不法占拠された場合、ABCの3人は、それぞれが単独で、不法占拠者に対して返還請求をすることができます。
【保存行為の補足】
なお、保存行為には次のようなものもあります。
・共有物への妨害排除請求
例→共有地(土地)上の不法建築物の撤去請求など
・不法な登記名義の抹消
例→すでに消滅した抵当権の抹消登記請求など
共有物の賃貸借契約の解除
先ほども解説いたしましたが、共有物の賃貸を行うには、各持分の価格に従い、その過半数の賛成が必要です。
3人でそれぞれ3分の1ずつの持分で共有している共有物を賃貸するなら、2人以上の賛成が必要です。
さて、それでは、賃貸している共有物の賃貸借契約を解除する場合は、どうなるのでしょうか?
共有物の賃貸借契約の解除は、民法252条(共有物の管理)に含まれます。
つまり、共有物の賃貸借契約を解除する場合は、共有物を賃貸する場合と一緒で、各持分の価格に従い、その過半数の賛成が必要です。
例えば、3人で持分3分の1ずつで不動産を共有していて、その不動産を賃貸している場合、その不動産の賃貸借契約を解除する際は、2人以上の賛成が必要ということです。
解除権の不可分性の例外
本来、解除権は分けることができません。(解除権の不可分性)
それは次の民法の条文で規定されています。
(解除権の不可分性)
民法544条
当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
なぜ民法で、このように解除権の不可分性を定めているかの理由は、一部の者のみの解除を認めるとその後の法律関係が複雑になるので、その事態を避けるため、とされています。
しかし、共有物の賃貸借契約の解除については、その例外なのです。

この点は試験ではよく問われるものなので、資格試験等で民法の学習をされている方は、是非覚えておいてください。
なお、共有物を売却した後に、売買契約を解除する場合は、共有者全員の合意が必要になります。
こちらは同じ解除でも、売買契約の解除なので「共有物の管理」ではなく「共有物の変更」に該当し、共有者全員の合意が必要になるということです。
この点も併せて覚えておいてください。
共有の補足
持分権の主張、共有物の明渡し請求等
持分権の主張
共有者が、その持分権を処分・主張するのは自由です。
また、持分権の取得時効を主張することもできます(つまり持分権を時効取得することも可能ということ)。
その場合は他の共有者は無関係です。
さて、持分権の処分といえば売買や担保設定がありますが、持分権の主張というと、一体どのような場合があるのでしょうか?
【持分確認請求権】
これは、他の共有者または第三者に対して、自己の持分権の確認を求める権利です。
【持分権の登記請求】
これは、他の共有者または第三者に対して、自己の持分権の登記を求める権利です。
【持分権による時効の中段】
共有物が第三者に占有されていて時効取得されそうな場合に、共有者は「自己の持分のみ」の時効を中断することができます。
「自己の持分のみ」ということは、その中断の効果は他の共有者の持分には及びません。
例えば、ABCの共有物が占有されていて、Aの持分の時効が中断しても、BCの持分の時効は中断しないということです。
もし共有物全体、つまり共有物の所有権全体について時効の中段をするには、共有者全員(ABC三人全員)で請求しなければなりません。
【持分権による損害賠償】
共有物の侵害につき、持分に応じた損害賠償請求ができます。
ただし、あくまで各共有者が自己の持分に応じた損害賠償請求をできるのであって、他の共有者の持分の分まで賠償請求することはできません。
なお、損害賠償請求は金銭での賠償を求めるものですが、金銭債権は当然に分割することが可能です。
ですので、持分に応じて分割した賠償請求ができるのです。
共有物の占有の明渡し請求
共有物の使用方法は共有者間の協議によって決められます。
ところが、なんと、協議によらないで一人の共有者が勝手に共有物を占有してしまっていた場合、他の共有者は、勝手に一人で占有している共有者に対して「勝手に何やってるんだ!明け渡せ!」と、当然に明渡し請求をすることはできません。
これについては「なんで?」となりますよね。
ちょっと納得し難いですよね。
しかし、これは判例でこのようになっています。
ここは試験などで問われやすい箇所です。
したがって、資格試験等で民法の学習をしていらっしゃる方は、納得し難いかとは思いますが、このことは強引に覚えてしまってください。
なお、このような問題を解決するには「共有物の分割」を求めていくことになるのですが、それについては別途解説いたします。
【持分の推定規定】
各共有者の持分が不明な場合は、民法250条の規定により、その持分は相等しいものと推定されます。
ただし、これは「みなす」ではなく「推定」なので、後になって各持分が変わる可能性はあります。(推定の反証可能性)
【準共有】
所有権以外の財産を共有することを準共有といいます。
例えば、抵当権の準共有、地上権の準共有、といったものがあります。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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・共有の基本
・持分権とは
・共有物全体の問題「共有物の使用方法・変更・管理」について
・共有物の保存、解除権の不可分性の例外
・共有の補足~持分権の主張、共有物の明渡し請求等
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者にもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。

共有の基本
1つの物を、1人ではなく複数人で所有することを共有といいます。
共有関係が生まれるとき
共有関係は、法律の規定によって生じます。
また、当事者の合意によっても生じます。
法律の規定によって生じる場合とは、例えば相続です。
地主が死亡し、その地主の相続人が二人いれば、法律の規定により、問答無用にその土地は相続人二人の共有になります。
その後、相続人の相続放棄や遺産分割協議により相続の内容が変わる可能性はありますが、まずは法律の規定によって、そのようになるのです。(遺言による相続についてはここでは省きます)
当事者の合意によって生じる場合とは、例えば、夫婦で1000万円ずつ出し合って不動産を購入するような場合です。
このように、共有関係は、法律の規定による場合と、当事者の合意による場合とがあります。
共有は一物一権主義の例外
物に対する権利である物権の世界では、一物一権主義というものがあります。
「一つの物には一つの物権」という原則です。(排他的支配権)
そして、共有はその「一物一権主義の例外」とも言われます。
なぜなら、一つの物を複数人で共有するからです。
ただ、共有の場合でも、共有者はそれぞれ持分権というものがあり、各持ち分に対しては一つの持分権しか存在しません。
そして、持分権は各自で自由に処分できます。
例えば、一つの土地をAとBが相続すると、その土地はAとBの共有物になり、AとBはそれぞれ各持ち分に対して持分権を持ちます。
このとき、Aが自分の持ち分を売ったりするのは自由です。
もちろん、Bが自分の持ち分を売ったりするのも自由です。
ただし、AがBの持ち分を売ったりすることはできません。
ということなので、持分権は、各々の各持ち分に対しては、所有権と同じようなものなのです。
そう考えていくと、共有も、一物一権主義にしっかりと則っていると言えます。
持分権
共有について考える場合は、共有物全体の問題なのか、各持分権の問題なのか、そこを見極めた上で考えていかないと、よくわからなくなってしまいます。
ですので「共有物全体」と「各持分権」とを分けた上で、まずは持分権から解説して参ります。
さて、先ほど持分権は、各持ち分については所有権と同じようなものだとご説明いたしました。
実際「共有持分権の法的性質は所有権である」と説明されます。
その共有持分権の法的性質を表す典型例で、現実にもよくあるのは、分譲マンションです。

~分譲マンションの性質を考えれば共有持分権の法的性質が分かる?~
冒頭に、共有のパターンとして相続による共有と夫婦の共有の例を挙げましたが、日常的にもっとも起こっている共有のケースは何か?となると、それはおそらく、分譲マンションのケースになるでしょう。
分譲マンションでの所有は区分所有とも言われ、その所有権は区分所有権とも言われます。
分譲マンションにおいてその建物の各区分は、それぞれ別の所有者が存在し、そこには個々独立の所有権が成立しています(一つのマンションに複数の所有権が独立しながら存在、つまり、一つのマンションに複数のオーナーが存在する)。
じゃあマンションで何を共有しているの?
分譲マンションにおいて、共有になっているのは土地です。
土地というのは、そのマンションが建っている敷地です。
つまり、ある土地に分譲マンションが建っていて、そのマンションが100の専有部分(わかりやすく言えば100戸)に分かれていれば、その土地には100の持分権が存在することになります。
もしあなたがその分譲マンションのオーナーだったとすると、通常の場合、あなたが所有しているのは、そのマンションの所有権(区分所有権)と、その土地の100分の1の持分権です。
そして、あなたがそのマンション(所有権)を誰かに売るのは自由ですよね。
あなたがそのマンション(所有権)を誰かに売れば、当然それに伴ってその持分権も一緒に売られることになりますが、その際、他の99人のオーナーの承諾はいらないですよね。
これが「共有持分権の法的性質は所有権」の具体例と説明になります。
共有持分権の法的性質、そのイメージは掴んでいただけたかと存じます。
共有物全体について
続いては、共有物全体の問題「共有物の使用方法・変更・管理」について、解説して参ります。
共有物の使用

例えば、1台の車をA・B・Cの3人で共有しているとします。
そしてA・B・Cの持ち分はそれぞれ3分の1ずつです。
この場合、3人の共有物である車の使用方法は一体どうなるのでしょうか?
これについて該当する民法の条文はこちらです。
(共有物の使用)
民法249条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
共有物の使用について、民法では上記のような規定を置いています。
しかし、どうでしょう。
正直これだとよくわからないですよね。
まさか、車(共有物)を使用するときは常に「ABC3人一緒に仲良くドライブ♫」という訳にもいかないでしょう。
結局、車(共有物)の使用方法はどうなるの?
これについては、結局、A・B・Cの3人の協議(話し合い)で決めることになります。
したがって、共有物の使用方法については一概には言えず、協議による決定内容によって変わってきます。
共有物の変更
続いて、共有物の車全部を第三者に売る場合について考えて参ります。
これについて、民法では下記の規定を置いています。
(共有物の変更)
民法251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
上記、民法251条条文中の「変更」という言葉がわかりづらいと思いますが、共有物の売買は、共有物の「変更」にあたります(農地転用などの地目変更もこの「変更」に含まれます)。
したがって、共有物の車の売買は、民法251条(共有物の変更)の規定が適用されます。
また、条文中の「他の共有者の同意を得なければ」というのは、共有者全員の意思表示が必要という意味です。
ということなので、3人の共有物である車全部を売る場合は、ABC3人全員の「売る」という意思表示が必要になります。
3人全員が売るという意思を示さない限りは、売ることはできません。
共有物の管理
続いて、共有物の車を第三者に賃貸する(貸す)場合について、考えて参ります。
これについて、民法では下記の規定を置いています。
(共有物の管理)
民法252条
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
上記、民法252条条文中の「管理」という言葉には、共有物の賃貸も含まれます。
ですので、共有物を賃貸するには、各共有者の持分の価格に従って、その過半数で決定するということです。
株主総会の決議に似てますね。
したがって、共有物の車を第三者に賃貸する場合は、ABCの持分はそれぞれ3分の1ずつですので、3人中2人の賛成で車の賃貸をすることが可能です。
共有物の保存、解除権の不可分性の例外
共有物を売る場合、共有者全員の意思表示か必要です。(共有物の変更)
共有物を賃貸する場合、共有者の持分の価格に従い、その過半数の賛成が必要です。(共有物の管理)
では、共有物が不法占拠されていた場合は、一体どうなるのでしょうか?
共有物の保存

例えば、一台の車をA・B・Cの3人で共有していて、持ち分はそれぞれ3分の1だった場合に、その共有物である車が第三者に不法占拠されたとき、共有者の意思は、どのように決められるのでしょうか?
これについての民法の規定はこちらです。
民法249条
保存行為は、各共有者がすることができる。
上記、民法249条冒頭の「保存行為」という言葉がピンと来づらいと思いますが「不法占拠されている物を取り戻すこと」は保存行為になります。(ちなみに自動車の修理なども保存行為です)
「各共有者がすることができる」というのは、各共有者が1人でできるという意味です。
つまり、共有物が不法占拠された場合、各共有者がそれぞれ単独で、共有物全体についての返還請求権を行使することができます。
したがいまして、共有物の車が第三者に不法占拠された場合、ABCの3人は、それぞれが単独で、不法占拠者に対して返還請求をすることができます。
【保存行為の補足】
なお、保存行為には次のようなものもあります。
・共有物への妨害排除請求
例→共有地(土地)上の不法建築物の撤去請求など
・不法な登記名義の抹消
例→すでに消滅した抵当権の抹消登記請求など
共有物の賃貸借契約の解除
先ほども解説いたしましたが、共有物の賃貸を行うには、各持分の価格に従い、その過半数の賛成が必要です。
3人でそれぞれ3分の1ずつの持分で共有している共有物を賃貸するなら、2人以上の賛成が必要です。
さて、それでは、賃貸している共有物の賃貸借契約を解除する場合は、どうなるのでしょうか?
共有物の賃貸借契約の解除は、民法252条(共有物の管理)に含まれます。
つまり、共有物の賃貸借契約を解除する場合は、共有物を賃貸する場合と一緒で、各持分の価格に従い、その過半数の賛成が必要です。
例えば、3人で持分3分の1ずつで不動産を共有していて、その不動産を賃貸している場合、その不動産の賃貸借契約を解除する際は、2人以上の賛成が必要ということです。
解除権の不可分性の例外
本来、解除権は分けることができません。(解除権の不可分性)
それは次の民法の条文で規定されています。
(解除権の不可分性)
民法544条
当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
なぜ民法で、このように解除権の不可分性を定めているかの理由は、一部の者のみの解除を認めるとその後の法律関係が複雑になるので、その事態を避けるため、とされています。
しかし、共有物の賃貸借契約の解除については、その例外なのです。

この点は試験ではよく問われるものなので、資格試験等で民法の学習をされている方は、是非覚えておいてください。
なお、共有物を売却した後に、売買契約を解除する場合は、共有者全員の合意が必要になります。
こちらは同じ解除でも、売買契約の解除なので「共有物の管理」ではなく「共有物の変更」に該当し、共有者全員の合意が必要になるということです。
この点も併せて覚えておいてください。
共有の補足
持分権の主張、共有物の明渡し請求等
持分権の主張
共有者が、その持分権を処分・主張するのは自由です。
また、持分権の取得時効を主張することもできます(つまり持分権を時効取得することも可能ということ)。
その場合は他の共有者は無関係です。
さて、持分権の処分といえば売買や担保設定がありますが、持分権の主張というと、一体どのような場合があるのでしょうか?
【持分確認請求権】
これは、他の共有者または第三者に対して、自己の持分権の確認を求める権利です。
【持分権の登記請求】
これは、他の共有者または第三者に対して、自己の持分権の登記を求める権利です。
【持分権による時効の中段】
共有物が第三者に占有されていて時効取得されそうな場合に、共有者は「自己の持分のみ」の時効を中断することができます。
「自己の持分のみ」ということは、その中断の効果は他の共有者の持分には及びません。
例えば、ABCの共有物が占有されていて、Aの持分の時効が中断しても、BCの持分の時効は中断しないということです。
もし共有物全体、つまり共有物の所有権全体について時効の中段をするには、共有者全員(ABC三人全員)で請求しなければなりません。
【持分権による損害賠償】
共有物の侵害につき、持分に応じた損害賠償請求ができます。
ただし、あくまで各共有者が自己の持分に応じた損害賠償請求をできるのであって、他の共有者の持分の分まで賠償請求することはできません。
なお、損害賠償請求は金銭での賠償を求めるものですが、金銭債権は当然に分割することが可能です。
ですので、持分に応じて分割した賠償請求ができるのです。
共有物の占有の明渡し請求
共有物の使用方法は共有者間の協議によって決められます。
ところが、なんと、協議によらないで一人の共有者が勝手に共有物を占有してしまっていた場合、他の共有者は、勝手に一人で占有している共有者に対して「勝手に何やってるんだ!明け渡せ!」と、当然に明渡し請求をすることはできません。
これについては「なんで?」となりますよね。
ちょっと納得し難いですよね。
しかし、これは判例でこのようになっています。
ここは試験などで問われやすい箇所です。
したがって、資格試験等で民法の学習をしていらっしゃる方は、納得し難いかとは思いますが、このことは強引に覚えてしまってください。
なお、このような問題を解決するには「共有物の分割」を求めていくことになるのですが、それについては別途解説いたします。
【持分の推定規定】
各共有者の持分が不明な場合は、民法250条の規定により、その持分は相等しいものと推定されます。
ただし、これは「みなす」ではなく「推定」なので、後になって各持分が変わる可能性はあります。(推定の反証可能性)
【準共有】
所有権以外の財産を共有することを準共有といいます。
例えば、抵当権の準共有、地上権の準共有、といったものがあります。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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