
▼この記事でわかること
・賃貸借契約の存続期間の基本~建物の場合
・借地(土地)の場合
・契約期間の満了と立ち退き請求の正当事由
・建物築造(再築)による借地期間延長と地主の承諾の有無
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

賃貸借契約の存続期間
賃貸借契約には、存続期間というものがあります。
賃貸借契約の存続期間とは、要するに契約期間のことです。
通常の住宅用不動産賃貸だと、契約期間は2年間で、解約の意思がなければ2年ごとに更新、というのが多いかと思います。
では、例えば、契約期間を10年とすることも可能なのでしょうか?
民法の規定を見てみましょう。
(賃貸借の存続期間)
民法604条
賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
上記、民法604条にあるように、賃貸借の契約期間は、50年までなら設定可能です。
したがいまして、賃貸借の契約期間を10年とすることは可能です。
なお、もし50年を超えた契約期間を定めた場合は、その賃貸借の契約期間は50年になります。
つまり、もし55年という契約期間を定めたとしても、民法の規定によりその契約期間は50年になる、ということです。
さて、では今度は逆に、契約期間を6ヶ月という短期間に定めることは可能なのでしょうか?
これについての規定はこちらです。
(建物賃貸借の期間)
借地借家法29条
期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
上記条文にあるように、契約期間を1年未満とする賃貸借は、期間の定めのない賃貸借契約となります。
したがいまして、賃貸借の契約期間を6ヶ月とすることはできず、もし契約期間を6ヶ月としても、その賃貸借契約は期間の定めのないものとなります。
なお、この規定は建物に限ります。
ですので、例えば「1日だけの駐車場の賃貸」というのは可能です。
借地の場合

さて、ここまでは建物の賃貸借を見て参りましたが、土地の賃貸借(つまり借地)の場合はどうなんでしょう。
借地の場合は、建物の場合などとは少々異なります。
(借地権の存続期間)
借地借家法3条
借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
借地の場合は、最低契約期間が30年です。
つまり、借地の期間を30年未満に設定することはできません。
もし借地契約の期間を30年未満に設定しても、上記の借地借家法3条の規定により、その契約期間は30年となります。
つまり、例えば、借地契約の期間を25年と設定しても、その借地契約は30年と扱われます。
また、30年より長い期間の借地契約の設定は可能です。
40年だろうが50年だろうが、30年よりも長い期間であれば、自由に設定できます。
【補足:地上権の存続期間】
地上権の場合、存続期間について、制約はありません。
つまり「存続期間永久!」という地上権を設定・登記することも可能です。
しかも、地上権は地代をタダにすることができるので「存続期間永久!地代は無料!」という、まるで何かのキャンペーン広告のような地上権を設定することも可能です。
なお、地上権の存続期間を定めなかった場合に、別段の慣習がなければ、地上権者は、その地上権をいつでも放棄することができます(民法268条1項)。
また、地上権の存続期間を定めなかった場合に、地上権者がその地上権を放棄しないとき、当事者の請求により、裁判所は、20年以上50年以下の範囲内で、その存続期間を定めることができます。(民法268条2項)
契約期間の満了と立ち退き請求の正当事由
借地借家法では、法定更新の制度があります。
法定更新とは、契約の定めにでなく、法律の定めによって契約が更新される、ということです。
法律の定めによって契約が更新されるという意味は、契約で取り決めていなくても、法律の定めによって自動的に更新されるという意味です。
これは、賃借人(借主)側を厚く保護する規定で、賃貸人(オーナー)側からの更新拒絶を厳しく制限しています。
もし、賃貸人(オーナー)側から更新を拒絶、つまり、賃借人(借主)に出てってくれとお願いする場合は、正当事由を要します。
正当事由とは、簡単に言うと「正しい理由」です。
そして、実はこの正当事由が、現実においてはかなり認められづらくなっています。
「正当事由が認められづらい」とは何を意味しているのかと言いますと、オーナー側から借主側に対して立ち退きを要求するときに「その要求を正当なものだとするための正しい理由」が裁判所に認められづらい、という意味です。
正当事由が認められなければ、立ち退き請求も認められません。
つまり、オーナー側から借主側に対して「出てってくれ!」と請求しても、出て行ってもらえないということです。
これが、いわゆる賃貸不動産の「立退き問題」の難しさに繋がっているのです。(この問題につきましては、また別途改めてご説明申し上げます)
なお、民法上では、賃貸借契約の期間が満了すると契約終了、ということになっています。
しかし、契約期間が満了しても、賃借人(借主)が目的物の使用収益を継続し、それに対して賃貸人(貸主・オーナー)が異議を述べなければ、その賃貸借契約は自動的に更新されます。
あくまで優先して適用されるのは借地借家法になりますが、この点も併せて覚えておいてください。
建物築造(再築)による借地期間延長
事例
BはA所有の甲土地について、存続期間30年の借地契約を結んだ。そしてBは、甲土地上に自己所有の建物を築造して住んでいる。20年後、甲土地上にあるB所有の建物が火災により焼失(滅失)した。そこでBは、甲土地上に自己所有の建物を再築した。
これは、借地人Bが地主Aと、契約期間30年の借地契約を結び、借地上に自己所有の建物を築造して住んでいたものの、20年後にその建物が火災により焼失(滅失)してしまったので、建物を再築した、という話です。
さて、この事例で、借地人Bは甲土地に築造した建物が火災により焼失してしまったので再築した訳ですが、借地人Bは、地主Aの承諾なく、勝手に建物を再築してしまってもいいものなのでしょうか?
結論。
借地人Bは、地主Aの承諾なく、勝手に建物を再築できます。
ただし!
再築の際、地主Aの承諾を得たか得ないかで、その後の法律的な扱いが変わります。
地主Aの承諾を得た場合

借地人Bが地主Aの承諾を得た上で建物を再築した場合は、借地借家法7条1項の規定により、Bの持つ借地権の存続期間が「地主Aの承諾があった日」または「建物が再築された日」の、いずれか早い日から20年間になります。
(建物の再築による借地権の期間の延長)
借地借家法7条1項
借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者又は転借地権者による取壊しを含む。以下同じ。)があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から二十年間存続する。ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。
事例で、甲土地上にあるB所有の建物は、借地権設定から20年経ってから焼失(滅失)して、それから再築しました。
となると、AとBの借地契約は期間30年のものなので、再築後の建物を使えるのは30-20=10年ということになります。
さて、これってどうでしょう?
せっかく再築した建物が10年しか使えないのって、もったいないと思いませんか?
かといってBは、建物を再築しないことには住む家がありません。
もちろん他の賃貸物件に引っ越すことも可能ですが、そうすると甲土地の借地権が無駄になります。
このようなケースで再築した建物の全てが、こんな「もったいない」事態に陥ってしまうのは、社会的な経済的損失も大きいでしょう。
そこで、借地借家法7条1項の規定により、地主の承諾を得た場合に限り、救いの手を用意しているのです。
したがいまして、事例で、借地人Bが地主Aの承諾を得た上で建物を再築した場合は、その再築時には、すでに甲土地の借地期間が残り10年となっていますが、借地借家法7条1項の規定により、その借地期間(借地権の存続期間)が「地主Aの承諾があった日」または「建物が再築された日」の「いずれか早い日から20年間」になります。
つまり、いずれにせよ10年間は甲土地の借地期間が延長されることになるのです。
なお、元々の借地権の残存期間が20年より長かったのであれば、元々の長い方の残存期間になります。
例えば、B所有の建物が借地権設定から5年後に滅失して再築していた場合、元々の借地期間が、まだ25年間残っていますので、その場合は、そのまま25年が借地権の残存期間となる、という訳です。
また、当事者同士が、借地借家法の規定よりも長い期間を定めたならば、その期間になります。
例えば、借地人Bと地主Aの間で、借地権の存続期間を再築した日から30年と定めたならば、その期間になるということです。
地主Aの承諾がなかった場合
地主Aの承諾がなくても、借地人Bは甲土地上に建物の再築を強行できます。
ただし、その場合は、借地借家法7条1項による、借地期間の延長のメリットは受けられません。
元々の取り決めのとおりに借地期間は満了します。
すると、借地人Bとしては、借地契約の更新という手段が残されていますが、このときに「地主Aの承諾なしに建物の再築を強行した」という事実が、不利に働く可能性があります。
要するに、地主A側の更新拒絶の正当自由が認められやすくなる可能性があるということです。
ということなので、借地上の建物を再築する際は、地主の承諾を得るにこしたことはないでしょうね。
地主がいつまでも返事しない場合

もし借地人Bが、地主Aに対して建物の再築の承諾を得ようと通知を出しているのにも関わらず、地主Aがいつまでも返事をしない場合、どうなるのでしょう?
そのような場合、借地借家法2項の規定により、2ヶ月以内に地主Aが建物再築について返事しないと、地主Aの承諾があったとみなされます。(みなし承諾)
つまり、2ヶ月以内に建物再築についての地主Aの返事がない場合は、それは法的に「地主Aの承諾があった」とみなされ、借地人Bは安心して建物の再築が行えます。
借地借家法7条2項
借地権者が借地権設定者に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後二月以内に異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき前項の借地権設定者の承諾があったものとみなす。
以上、賃貸借の存続期間(契約期間)についての解説でした。
ハッキリ言って、賃貸借については民法だけではお話になりません。
ですので、借地借家法の規定をしっかり押さえていただければと存じます。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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・賃貸借契約の存続期間の基本~建物の場合
・借地(土地)の場合
・契約期間の満了と立ち退き請求の正当事由
・建物築造(再築)による借地期間延長と地主の承諾の有無
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今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

賃貸借契約の存続期間
賃貸借契約には、存続期間というものがあります。
賃貸借契約の存続期間とは、要するに契約期間のことです。
通常の住宅用不動産賃貸だと、契約期間は2年間で、解約の意思がなければ2年ごとに更新、というのが多いかと思います。
では、例えば、契約期間を10年とすることも可能なのでしょうか?
民法の規定を見てみましょう。
(賃貸借の存続期間)
民法604条
賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
上記、民法604条にあるように、賃貸借の契約期間は、50年までなら設定可能です。
したがいまして、賃貸借の契約期間を10年とすることは可能です。
なお、もし50年を超えた契約期間を定めた場合は、その賃貸借の契約期間は50年になります。
つまり、もし55年という契約期間を定めたとしても、民法の規定によりその契約期間は50年になる、ということです。
さて、では今度は逆に、契約期間を6ヶ月という短期間に定めることは可能なのでしょうか?
これについての規定はこちらです。
(建物賃貸借の期間)
借地借家法29条
期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
上記条文にあるように、契約期間を1年未満とする賃貸借は、期間の定めのない賃貸借契約となります。
したがいまして、賃貸借の契約期間を6ヶ月とすることはできず、もし契約期間を6ヶ月としても、その賃貸借契約は期間の定めのないものとなります。
なお、この規定は建物に限ります。
ですので、例えば「1日だけの駐車場の賃貸」というのは可能です。
借地の場合

さて、ここまでは建物の賃貸借を見て参りましたが、土地の賃貸借(つまり借地)の場合はどうなんでしょう。
借地の場合は、建物の場合などとは少々異なります。
(借地権の存続期間)
借地借家法3条
借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
借地の場合は、最低契約期間が30年です。
つまり、借地の期間を30年未満に設定することはできません。
もし借地契約の期間を30年未満に設定しても、上記の借地借家法3条の規定により、その契約期間は30年となります。
つまり、例えば、借地契約の期間を25年と設定しても、その借地契約は30年と扱われます。
また、30年より長い期間の借地契約の設定は可能です。
40年だろうが50年だろうが、30年よりも長い期間であれば、自由に設定できます。
【補足:地上権の存続期間】
地上権の場合、存続期間について、制約はありません。
つまり「存続期間永久!」という地上権を設定・登記することも可能です。
しかも、地上権は地代をタダにすることができるので「存続期間永久!地代は無料!」という、まるで何かのキャンペーン広告のような地上権を設定することも可能です。
なお、地上権の存続期間を定めなかった場合に、別段の慣習がなければ、地上権者は、その地上権をいつでも放棄することができます(民法268条1項)。
また、地上権の存続期間を定めなかった場合に、地上権者がその地上権を放棄しないとき、当事者の請求により、裁判所は、20年以上50年以下の範囲内で、その存続期間を定めることができます。(民法268条2項)
契約期間の満了と立ち退き請求の正当事由
借地借家法では、法定更新の制度があります。
法定更新とは、契約の定めにでなく、法律の定めによって契約が更新される、ということです。
法律の定めによって契約が更新されるという意味は、契約で取り決めていなくても、法律の定めによって自動的に更新されるという意味です。
これは、賃借人(借主)側を厚く保護する規定で、賃貸人(オーナー)側からの更新拒絶を厳しく制限しています。
もし、賃貸人(オーナー)側から更新を拒絶、つまり、賃借人(借主)に出てってくれとお願いする場合は、正当事由を要します。
正当事由とは、簡単に言うと「正しい理由」です。
そして、実はこの正当事由が、現実においてはかなり認められづらくなっています。
「正当事由が認められづらい」とは何を意味しているのかと言いますと、オーナー側から借主側に対して立ち退きを要求するときに「その要求を正当なものだとするための正しい理由」が裁判所に認められづらい、という意味です。
正当事由が認められなければ、立ち退き請求も認められません。
つまり、オーナー側から借主側に対して「出てってくれ!」と請求しても、出て行ってもらえないということです。
これが、いわゆる賃貸不動産の「立退き問題」の難しさに繋がっているのです。(この問題につきましては、また別途改めてご説明申し上げます)
なお、民法上では、賃貸借契約の期間が満了すると契約終了、ということになっています。
しかし、契約期間が満了しても、賃借人(借主)が目的物の使用収益を継続し、それに対して賃貸人(貸主・オーナー)が異議を述べなければ、その賃貸借契約は自動的に更新されます。
あくまで優先して適用されるのは借地借家法になりますが、この点も併せて覚えておいてください。
建物築造(再築)による借地期間延長
事例
BはA所有の甲土地について、存続期間30年の借地契約を結んだ。そしてBは、甲土地上に自己所有の建物を築造して住んでいる。20年後、甲土地上にあるB所有の建物が火災により焼失(滅失)した。そこでBは、甲土地上に自己所有の建物を再築した。
これは、借地人Bが地主Aと、契約期間30年の借地契約を結び、借地上に自己所有の建物を築造して住んでいたものの、20年後にその建物が火災により焼失(滅失)してしまったので、建物を再築した、という話です。
さて、この事例で、借地人Bは甲土地に築造した建物が火災により焼失してしまったので再築した訳ですが、借地人Bは、地主Aの承諾なく、勝手に建物を再築してしまってもいいものなのでしょうか?
結論。
借地人Bは、地主Aの承諾なく、勝手に建物を再築できます。
ただし!
再築の際、地主Aの承諾を得たか得ないかで、その後の法律的な扱いが変わります。
地主Aの承諾を得た場合

借地人Bが地主Aの承諾を得た上で建物を再築した場合は、借地借家法7条1項の規定により、Bの持つ借地権の存続期間が「地主Aの承諾があった日」または「建物が再築された日」の、いずれか早い日から20年間になります。
(建物の再築による借地権の期間の延長)
借地借家法7条1項
借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者又は転借地権者による取壊しを含む。以下同じ。)があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から二十年間存続する。ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。
事例で、甲土地上にあるB所有の建物は、借地権設定から20年経ってから焼失(滅失)して、それから再築しました。
となると、AとBの借地契約は期間30年のものなので、再築後の建物を使えるのは30-20=10年ということになります。
さて、これってどうでしょう?
せっかく再築した建物が10年しか使えないのって、もったいないと思いませんか?
かといってBは、建物を再築しないことには住む家がありません。
もちろん他の賃貸物件に引っ越すことも可能ですが、そうすると甲土地の借地権が無駄になります。
このようなケースで再築した建物の全てが、こんな「もったいない」事態に陥ってしまうのは、社会的な経済的損失も大きいでしょう。
そこで、借地借家法7条1項の規定により、地主の承諾を得た場合に限り、救いの手を用意しているのです。
したがいまして、事例で、借地人Bが地主Aの承諾を得た上で建物を再築した場合は、その再築時には、すでに甲土地の借地期間が残り10年となっていますが、借地借家法7条1項の規定により、その借地期間(借地権の存続期間)が「地主Aの承諾があった日」または「建物が再築された日」の「いずれか早い日から20年間」になります。
つまり、いずれにせよ10年間は甲土地の借地期間が延長されることになるのです。
なお、元々の借地権の残存期間が20年より長かったのであれば、元々の長い方の残存期間になります。
例えば、B所有の建物が借地権設定から5年後に滅失して再築していた場合、元々の借地期間が、まだ25年間残っていますので、その場合は、そのまま25年が借地権の残存期間となる、という訳です。
また、当事者同士が、借地借家法の規定よりも長い期間を定めたならば、その期間になります。
例えば、借地人Bと地主Aの間で、借地権の存続期間を再築した日から30年と定めたならば、その期間になるということです。
地主Aの承諾がなかった場合
地主Aの承諾がなくても、借地人Bは甲土地上に建物の再築を強行できます。
ただし、その場合は、借地借家法7条1項による、借地期間の延長のメリットは受けられません。
元々の取り決めのとおりに借地期間は満了します。
すると、借地人Bとしては、借地契約の更新という手段が残されていますが、このときに「地主Aの承諾なしに建物の再築を強行した」という事実が、不利に働く可能性があります。
要するに、地主A側の更新拒絶の正当自由が認められやすくなる可能性があるということです。
ということなので、借地上の建物を再築する際は、地主の承諾を得るにこしたことはないでしょうね。
地主がいつまでも返事しない場合

もし借地人Bが、地主Aに対して建物の再築の承諾を得ようと通知を出しているのにも関わらず、地主Aがいつまでも返事をしない場合、どうなるのでしょう?
そのような場合、借地借家法2項の規定により、2ヶ月以内に地主Aが建物再築について返事しないと、地主Aの承諾があったとみなされます。(みなし承諾)
つまり、2ヶ月以内に建物再築についての地主Aの返事がない場合は、それは法的に「地主Aの承諾があった」とみなされ、借地人Bは安心して建物の再築が行えます。
借地借家法7条2項
借地権者が借地権設定者に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後二月以内に異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき前項の借地権設定者の承諾があったものとみなす。
以上、賃貸借の存続期間(契約期間)についての解説でした。
ハッキリ言って、賃貸借については民法だけではお話になりません。
ですので、借地借家法の規定をしっかり押さえていただければと存じます。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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