賃貸不動産の損傷&滅失~賃借人(借主)の同居人は履行補助者とは/不可抗力の建物損傷について

▼この記事でわかること
賃借人(借主)の同居人による建物損傷ケース
賃借人(借主)の同居人は履行補助者
誰の過失もなく建物が損傷・滅失した場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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賃貸不動産の損傷・滅失
賃借人(借主)の同居人による不動産損傷ケース

 例えば、賃貸マンションを借りて住んでいる借主(賃借人)が、不注意でそのマンションを損傷させてしまった場合、借主はその損害を賠償しなければなりません。
 では、次のような場合はどうなるのでしょうか?

事例
BはA所有の甲建物を賃借して、妻Cと共に暮らしている。ある日、Cの不注意により甲建物が損傷した。


 この事例で、甲建物の賃貸借契約を結んでいるのはオーナー(貸主・賃貸人)のAと借主(賃借人)のBです。つまり、契約関係にあるのはAとBになります。AとCは契約関係にはありません。
 さて、それではこの事例で、オーナー(貸主・賃貸人)Aと契約関係にない妻Cの不注意による損傷について、無過失(ミス・落ち度のない)のBは賃貸借契約上の損害賠償責任を負うことになるのでしょうか?
 結論。妻Cの不注意による損傷について、借主(賃借人)Bは損傷賠償責任を負います。
 これは、一般論として当たり前に納得できる結論ですよね。
 ただ、よくよく考えてみてください。オーナー(貸主・賃貸人)Aと契約関係にない妻Cの過失について、過失のない借主(賃借人)Bが責任を負うというのは、ちょっとオカシイような気もしますよね。

賃借人(借主)の同居人は履行補助者

 賃貸人(貸主)は賃借人(借主)に対して「目的物を使用収益させる義務」を負います。
 一方、賃借人(借主)は賃貸人(貸主)に対して、賃料債務(家賃支払い義務)を負うとともに「目的物について善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)」を負います。
 善管注意義務とは「一般的に常識的に求められる注意を持って管理する義務」ということです。
 つまり、甲建物の賃借人Bは、甲建物を一般的に常識的に求められる注意を持って管理しなければなりません。イライラして壁にパンチして建物を損傷させた、なんてもってのほかです。
 さて、賃借人Bが善管注意義務を負うことはわかりました。では、同居人の妻Cの過失について、賃借人(借主)Bが責任を負うというのは、一体どういう理屈なのでしょうか?
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 これについて判例では、同居人のCを、賃借人Bの負う「善管注意義務についての履行補助者」と考えます。
 そして、信義則上「賃借人Bの善管注意義務についての履行補助者」である同居人の妻Cの過失は、賃借人Bの過失と同視され(Bの過失と同じだと扱われる)、賃借人Bはその賠償責任を負うとしています。
 噛み砕いて簡単に言いますと、Bは、妻Cの過失について「嫁がやったことだし。オレじゃねーし」と主張することは許されない、ということです。

誰の過失もなく建物が損傷・滅失した場合

 賃借人(借主)または同居人の過失は、賃借人(借主)が責任を負います。
 反対に、賃貸人(貸主・オーナー)に過失がある場合は、賃貸人(貸主・オーナー)が責任を負います。
 では、誰の過失もなく、つまり、不可抗力で建物が損傷・滅失した場合(要するに誰も悪くない場合)は、一体どうなるのでしょうか?

(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)
611条
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
2項 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、
契約の解除をすることができる。

 結論。賃借人は、その賃借物の滅失割合に応じて、借賃の減額請求ができます。
 つまり、不動産賃貸借の場合、その不動産が不可抗力で一部損傷・滅失したときは、その不動産のダメージの割合に応じて、賃借人(借主)は賃貸人(貸主・オーナー)に対して家賃の減額請求ができます。
 ただ、これはあくまで賃借人(借主)の権利を定めたもので、賃貸人(貸主・オーナー)の義務を定めている訳ではありません。
 したがいまして、賃借人(借主)が実際に減額請求をしなければ、賃料は減額されません。
 また、損傷・滅失した賃借物が、残存部分だけでは賃借の目的を達することができなければ、契約の解除をすることができます。
 つまり、居住用の不動産賃貸借の場合、その居住用不動産が不可抗力で損傷・滅失したとき、残存部分だけでは住むことができないのあれば、賃借人(借主)は、賃貸借契約を解除できるということです。
 なお、民法611条の条文には「賃借人の責めに帰することができない」とありますが、これは、誰の過失でもない場合、つまり、不可抗力の場合にも適用されます。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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