2018/02/14
借地人の対抗要件~建物滅失や親族名義など様々なケース
借地人は、その土地の賃貸借についての登記をしていなくても、借地上の建物の登記があれば、その土地の賃貸借の権利を法律の保護のもと主張できます。(これについて詳しくはこちらの記事をご参照下さい)建物が滅失するとどうなるか
事例
BはA所有の甲土地を借りて、甲土地上にある自己所有の登記をした建物に住んでいる。その後、Aは甲土地をCに売却し、その旨の登記をした。その後、B所有の建物が火災により滅失した。
さて、この事例において、借地人のBは、借地上の建物の登記があります。ということは、新地主のCに対し、甲土地の賃貸借を対抗(賃貸借の権利を法律の保護のもと主張)できます。たとえ新地主のCから「甲土地から出てけ!」と言われても「ワタシは甲土地の借地人だ!だから甲土地を利用する権利がある!」と主張することができます。
しかし、この事例には、ひとつ問題があります。それは、借地上の建物が滅失してしまった、ということです。建物が滅失してしまったということは、登記をした建物が消滅してしまったということです。存在しない建物の登記などはありえません。つまり、建物が滅失したことによって、その建物の登記は無効のものになってしまうのです。すると、借地人Bは、借地上に建物も無ければ登記も無い、という状態になってしまう訳です。となると、このような状態で借地人Bは、新地主Cに対して、甲土地の賃貸借を対抗(賃貸借の権利を法律の保護のもと主張)できるのか?ということが、この事例2で考える問題になります。
結論。借地人Bは、借地借家法10条2項の規定により、次のような対処をすれば、甲土地の賃貸借を対抗できます。
1・建物滅失の日と新建物築造の旨等を、その土地上に掲示する。
(甲土地上に掲示するとは、甲土地上に看板を立てるという意味。つまり、建物滅失の日と新建物築造の旨等を記載した看板を甲土地上に立てる、ということ)
2・建物滅失後、2年以内に、実際に新建物を築造し、その旨の登記をする。
以上の対処をすれば、借地人Bは、甲土地の賃貸借を対抗することができます。
従いまして、事例2の借地人Bが取り急ぎやらなければならないことは、甲土地に必要事項を記載した看板を立てることです。そして、それから2年以内に新しい建物を建てて登記をすれば、万事OKとなります。
その他のケース
建物滅失以外でも、借地人の対抗力(法律的な権利)について様々なケースが存在しますので、それらについて簡単に解説して参ります。
・建物の改築・増築等の変更登記をしていない場合
建物の改築・増築などをしたときは「建物表題部変更登記」をしなければなりません。この建物表題部変更登記をしていない場合、借地人の対抗力(法律的な権利)がどうなるのかですが、建物の同一性が認められれば、借地人の対抗力(法律的な権利)は維持されます。「建物の同一性」という要件が気になりますが、極端な改築・増築でなければ問題はないと思われます。
・所有権保存登記はせず表示登記のみの場合
建物の登記には、どんな建物かを示す表示登記(建物表題登記)と、建物の所有権などの権利関係がどうなっているかを示す権利部の登記があります。このうち、権利部の所有権保存登記をせず、表示登記(建物表題登記)のみで借地人の対抗力がどうなるのかですが、この場合、借地人の対抗力は認められます。
・土地を分筆して新番の土地に建物が存在しなくなった場合
分筆とは、土地を分けることです。例えば、Aという土地を2つに分割して、小さくなったAという土地と新たなBという土地に分けるようなことです。つまり、借地が分筆されて、その借地が建物の建っている部分とそうでない部分とで所有者が別になったような場合に、借地人の対抗力がどうなるのか?ということですが、建物が建っていない部分の土地ついても、借地人の対抗力は認められます。
・親族名義の登記の場合
これは例えば、借地上の建物の登記が、借地人本人ではなく、借地人の親名義の登記だったような場合に、借地人の対抗力がどうなるのか?ということです。このような場合、借地人の対抗力は認められません。対抗力が認められるためには、借地人本人名義の登記でなければなりません。
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