2021/06/25
今更聞けない!【敷金 礼金 保証金 敷引き 償却】【原状回復義務と経年劣化&通常損耗と特約】
▼この記事でわかること・敷金とは
・礼金とは
・保証金・敷引きとは
・償却とは
・原状回復義務~経年劣化・通常損耗
・特約について
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

敷・礼・保・敷引・償却の超基本
敷金・礼金
敷金・礼金(保証金・敷引き)は、賃貸物件を借りるときに必要になる費用です(不動産だけでなく、駐車場を借りるときに必要になるケースもあります)。よって、不動産賃貸借について考える上で、敷金・礼金は避けて通れません。
なのでまずは、そもそも敷金・礼金とは何なのか?という基本のキから解説して参ります。※
※「住宅用の不動産賃貸借」という前提で解説しますので、その点あらかじめご了承ください。
敷金とは
敷金とは、アパートでもマンションでも一軒家でも、賃貸物件(特に家屋)を借りるときに、借主である賃借人(借りる人のこと)が、賃料その他の債務を担保するために、貸主である賃貸人(または管理会社)に、あらかじめ差し入れるお金のことです。
そして、敷金は退去時に、滞納分の家賃、通常損耗・経年劣化以外の原状回復費用などを差し引いて、賃貸人から賃借人に返還されます。
なんか説明が小難しい...
すみません(笑)。それではめちゃめちゃ噛み砕いて簡単に言います。
敷金とは、借りる人が「この家を借りる担保(保証)として、このお金を一旦、家主に預けます」というものです。そして、退去時に差し引かれる分は差し引かれた上で返還されるのです。
なお、念のため申し上げておきますが、敷金の返還は、家を明け渡した後になります。家の明け渡しと敷金の返還は同時履行の関係ではありません。これは慣習であると同時に、判例においても「明渡しは先履行」と結論づけられています。
では、実際の敷金の返還時期はいつになるのかというと、これはケースによってまちまちです。2週間ぐらいのときもあれば、1ヶ月以上かかるときもあります。
礼金とは
これは敷金とは違い、一旦預けて退去時に返還されるものではなく、払いっぱなしの返還されない金銭です。
つまり、借りる側からすれば、仲介手数料と同じようなものです。ただ、仲介手数料は仲介業者に払うものですが、礼金は貸主に払う金銭になります。
保証金・敷引きとは
実は、関西(といっても京都・滋賀は除かれるとのこと)や九州の一部ではルールが異なっていて、敷金・礼金にあたるものが「保証金・敷引き」と呼ばれていたりします。
【保証金】
これは、敷金とほとんど変わりません。借りる人が家主(または管理会社)に一旦預け、退去時に差し引かれる分は差し引かれた上で返還される金銭です。
ただ、敷金と違う点は、保証金の場合、あらかじめ決められた敷引きされる分のお金は100%返還されません。
【敷引き】
これは、一旦預けた保証金の中から、確実に差し引かれる分をあらかじめ決めたものです。
例えば、家賃10万円で「保証金2ヶ月・敷引き1ヶ月」となっていたら、敷引き1ヶ月分の10万円は100%返還されることはありません。仮に退去時に、他にいっさい差し引かれる分がなかったとしても、返還される保証金は最大でも10万円になります。敷引き1ヶ月分の10万円は100%返ってきません。

補足:償却とは
実は関東などでも、敷引きと同じ意味合いで「償却」という形で、確実に差し引かれる分をあらかじめ決めているケースもあります。
例えば「敷金2ヶ月・償却1ヶ月」のようにです。これは、先述の「保証金2ヶ月・敷引き1ヶ月」と意味は一緒です。つまり、敷金として預けた家賃2ヶ月分は、仮に退去時に、他にいっさい差し引かれるものがなくても、1ヶ月分は償却金として確実に差し引かれるということです。ですので「敷金2ヶ月・償却2ヶ月」となっていたら、その敷金は全額返ってきませんので、ご注意ください。
ちなみに「礼金ゼロ!」とうたっておきながら、償却という形で、敷金から確実に差し引かれる分をあらかじめ決めている場合もあります。要するに、礼金ゼロ!で客を集めておいて、償却で確実に回収できる金額を定めておく、という寸法です。これは別に詐欺でもなんでもなく、貸主(オーナー)側からすると極めて合理的な方法なんです。
ただし、償却はあくまで敷金から差し引くものです。礼金とは違いますので、この点はお間違いないようお気をつけください。
原状回復義務
ここからは、不動産賃貸借における原状回復義務について解説して参ります。
なお、わかりやすくするために「住宅用の不動産賃貸借」という前提での解説となりますので、あらかじめご了承ください。
不動産賃貸借における原状回復義務とは、借りた家を返す時(退去時)、つまり、引越し等で賃貸借契約を終わらせてその家を出る際に、その家を元の状態(原状)に戻す義務のことです。
ちなみに「現状」ではなく「原状」です。現状とは、現在の状態のことです。原状とは、元の状態のことです。
したがって、元の状態に戻す義務「原状回復義務」なのです。
原状回復義務といっても何もかも元に戻さなければならない訳ではない
借主は、原状回復義務を負います。しかし!原状回復といっても、何もかも元の状態に戻さなければならない訳ではありません。
というのも、経年劣化と通常損耗については、原状回復義務には含まれないからです。
【経年劣化】
物には経年劣化というものがあります。
経年劣化とは、時間の経過による自然な劣化です。
つまり、人が時とともに年老いていくのと同じように、物も時とともに年老いていきます。無論、家も一緒です。
この経年劣化については、借主は修繕義務を負いません。つまり、経年劣化については原状回復義務には含まれないのです。
【通常損耗】
通常の使用の仕方による損耗を通常損耗と言います。
要するに、通常損耗とは、常識的な普通の使い方で不可抗力的にできる傷や汚れのことです。
この通常損耗による負担は「家賃に含まれている」と考え、通常損耗については、借主の原状回復義務には含まれません。
つまり、常識的な普通の使い方で不可抗力的にできる傷や汚れは、毎月払っている家賃でカバーしているので、退去・明渡しの際の原状回復義務には含まないということです。
以上のように、原状回復義務といっても、経年劣化と通常損耗を除いた上での原状回復になります。
原則として、原状回復費用には、経年劣化と通常損耗による修繕費用は含まれませんので、ご注意ください。
補足:特約の存在
ここでひとつ、やっかいな問題がございます。
それは特約の存在です。
どういうことかと言いますと、賃貸借契約書を交わす際に、契約書に特約事項という形で、本来なら経年劣化や通常損耗として原状回復義務には含まれないものも、退去時の借主負担として定めてしまっていることがあるのです。
そして、その特約事項の定めが、特段不当なものでなく、賃貸借契約を結ぶ際に、借主も理解し納得した上で定められていたのならば、その特約事項は借主の負担義務として有効なものとなります。
これは退去時に非常にトラブルになりやすい原因のひとつです。そして、このようなトラブルに関しましては、様々なケースがあり、ケースごとに考えなければなりません。
したがって、ここではこの問題に関しまして、これ以上の深入りはいたしません。詳しいことは「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」などをご参照ください。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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