2018/01/20
占有を奪われたときは?占有回収の訴え
事例Aはあともう少しで甲土地を時効取得するところである。そこで、Aに甲土地を時効取得されたくない血気盛んなBは、実力行使でAの占有を排除した。
なんだかエモーショナルな事例ですが、この場合、Aの占有は途切れてしまい、Aは甲土地を時効取得することができなくなってしまうのでしょうか?
(占有の中止等による取得時効の中断)
民法164条
第百六十二条の規定による時効は、占有者が任意にその占有を中止し、又は他人によってその占有を奪われたときは、中断する。
上記の条文のとおり、Aは他人のBによって占有を奪われています。ということは、条文どおり時効は中断し、Aは甲土地を時効取得することができなくなりそうですね。Bにとってはしてやったりという感じです。しかし!民法では、Aのような人間を救うべく、下記のような規定も置いています。
(占有回収の訴え)
民法200条
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
上記の条文に基づいて、AはBに対し「占有回収の訴え」を起こし、勝訴して甲土地を取り戻せば、無事Aの占有は継続していたことになります。
占有期間はリセットされないの?
リセットはされません。繰り返しますが、占有回収の訴えを起こし、勝訴して甲土地を取り戻すことができれば、Aの甲土地の占有期間は継続していたことになります。ですので、Aの甲土地の時効取得への影響はありません。参考となる条文はこちらです。
(占有権の消滅事由)
民法203条
占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。
ちなみに、上記の条文を読むと、占有回収の訴えの提起さえすれば占有継続が認められそうですが、実際には、勝訴して土地を取り戻すところまでいかないと、占有が継続していたことにはなりません。ですので、Aとしては、占有の継続を取り戻し甲土地を時効取得するためには、裁判を起こし勝訴して実際に甲土地を取り戻すところまでいかなければならないのです。これは中々の負担ですよね。ということは、Aとすれば、事前に占有を奪われることを防止するのが最良ですよね。そこで民法では、次のような規定も存在します。
(占有保全の訴え)
民法199条
占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。
つまりAは、血気盛んなBが甲土地の占有を妨害しそうだと判断したら、あらかじめ「占有保全の訴え」を起こし、事前に法的な予防線を張ることができます。
また、占有を奪われるまではいかないが、占有の妨害を受けたときには民法198条(占有保持の訴え)により、妨害の停止および損害賠償の請求をすることができます。
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