2021/08/20
【双方代理と自己契約】その問題点とは/使者とは?犬・猫・鳩も使者になれる?
▼この記事でわかること・双方代理・自己契約とは?またその問題点とは
・使者について
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

双方代理・自己契約
まずは2つの事例からご覧ください。
事例1
売主Aの代理人Bと買主Cの代理人Bの間で売買契約を締結した。
事例2
売主Aは代理人Bと買主Bとの間で売買契約を締結した。
なんだかとんちみたいな感じですよね(笑)。
もちろんそうではなく、これは双方代理と自己契約の事例です。
代理人BがAとC双方の代理人を行っている事例1が双方代理、買主Bが自ら代理人となってAと売買契約を行っている事例2が自己契約になります。
それではまず、双方代理と自己契約についての民法の条文を見てみましょう。
(自己契約及び双方代理)
民法108条
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
上記、民法108条の「相手方の代理人として」というのは自己契約を指し「当事者双方の代理人」というのは双方代理を指します。
つまり、民法では自己契約と双方代理を行った場合、それは無権代理として扱うと規定しています。
これは、要するに、民法は自己契約及び双方代理を原則認めていないということです。
なんで?
なぜかというと、公正な取引が行われない可能性があるからです。
双方代理の問題
例えば、事例1で、代理人Bが売主Aからだけ贈り物なんかをもらっていたらどうでしょう?
そうなると代理人Bが売主Aに肩入れして、売主Aに有利に取引を進めかねませんよね。それだと、売主A・買主B双方の代理人として、公正中立な立場での代理行為が行われなくなってしまいます。
自己契約の問題
例えば、事例2で、買主Bは売主Aの代理人も兼ねていることをいいことに、買主としての自分に有利なように買い叩いた金額で売買契約を結びかねません。
すると売主Aは困ってしまいますよね。しかし、Bは売主Aの代理人として、そんなことも簡単にできてしまいます。買主でもあるBだけ大喜びです。
こんな不公正な取引、ダメですよね。
ということで、民法では双方代理と自己契約を原則認めていないのです。
ただし!民法108条には続きがあります。
民法108条続き
ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
この民法108条ただし書きで何を言っているのかといいますと、売主と買主の間で、売買の条件交渉が終了した後、その売買契約の債務の履行(代金の支払い・商品の引渡し等)についてだけであれば、たとえ双方代理・自己契約でも、もはや代理人の恣意(自分勝手な意思)が働く余地がないので、そのような双方代理・自己契約であればやってもいいですよ、という意味です。
ちなみに、不動産売買を行ったことがある方はご存知かと思いますが、基本的に登記移転は司法書士が行いますよね?このとき、司法書士は売主・買主の双方の登記代理を行いますよね。もちろんこれは問題ありませんし、判例においても、民法108条に反しないと結論づけられています。
【補足】
(双方代理・自己契約の)代理人が結んだ契約内容が、当事者にとって納得いく公正なもので、当事者がその契約の履行を望むのであれば、追認することによってその契約を有効なものにできます。
あれ?なんか無権代理に似てるような?
そうなんです。これが「無権代理として扱う」ということの意味です。過去の実際の判例においても、自己契約・双方代理の法的効果を完全に無効とせずに、無権代理と同様に不確定無効としています。ですので、後から追認することも可能なのです。
使者

民法の条文には存在しませんが、代理人と似て非なるものに使者というものがあります。
「使徒」であれば、エヴァンゲリオン等で聞きなれた方も多いかもしれませんが、「使者」は意外と日常であまり聞かないかもしれません。「日曜日よりの使者」というザ・ハイロウズの名曲もありますが。
なんて余談はさておき、使者とは本人が決定した事項をただ伝えるだけの役目です。
例えば「お使い」なんかがそうです。つまり「はじめてのお使い」ならぬ「はじめての使者」です(笑)。
事例3
Aは飼っている犬のポチに、必要なお金と注文書きを入れた買い物カゴをぶら下げさせて、近所の商店にお使いに行かせた。
さて、この場合、お使いに行った犬のポチはAの使者ということになるのでしょうか?
結論。犬のポチはAの使者になります。
なんと、使者には意思能力は不要なのです。
事例4
Aは飼っている猫のタマに、必要なお金と注文書きを入れた買い物カゴをぶら下げさせて、近所の商店にお使いに行かせた。
さて、この場合、猫のタマはAの使者になるのでしょうか?
もちろん使者になります。夏目漱石先生も納得の結論でしょう。もし猫がホワッツマイケルや忍者ハットリくんの影千代やセーラームーンのルナなら、代理人にもなれるかもしれません(笑)。
このように使者は意思能力が不要なので、本人さえ良ければ、ほぼ誰でもなれるといっていいかもしれません。(この場合の意思能力とは、法的な意味の意思能力のことです。あしからず)
伝書鳩なんかも使者と言えるでしょうね。
さて、ここからは真面目な話に戻しますが、、
ふざけてたんかい!
そういう訳ではないのですが(笑)、例えば、こんなことが起こってしまったらどうなるでしょう。
お使いに出した使者が伝達事項を間違えてしまったら?
この場合はなんと、錯誤の問題になります。
犬のポチでも?
それは…知りません。
猫のタマでも?
それも…知りません。
伝書鳩のポッポでも?
それも…もうええわ!
どうも、ありがとうごさいました~(漫才風)
蛇足:代理は中々難しい
民法の学習において「代理」分野はひとつの山と言っていいかもしれません。
代理という制度自体はそんなに難しいように感じないのですが、学習を進めていくにつれ、頭がどんどんごちゃごちゃになっていったりします。
私がそうだったのですが、代理程度でこんなに苦戦していたら民法の勉強なんか無理なんじゃないか?と焦ったりもすると思います。
しかし、焦る必要はないです。なぜなら、代理は難しいです。もっと言えば、代理の分野をしっかり理解できれば民法の基礎はバッチリ!かもしれません。
ですので、代理の分野でつまづいたとしても、焦らず、繰り返し繰り返し、徐々に理解を深めていってください。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです
最後までお読みいただきありがとうございます。