【復代理】任意代理人と法定代理人の場合では責任の度合いが違う/代理を丸投げできるケースとは

▼この記事でわかること
任意代理人の場合の復代理
任意代理人が代理を丸投げできる2つのケース
法定代理人の場合の復代理
復代理人のヘマの責任を代理人は負うのか
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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復代理
任意代理人の場合

 復代理とは「代理の代理」です。
 復代理について考えるとき、任意代理法定代理の場合で異なってきます。
 ということで、まずは任意代理の場合の復代理について解説して参ります。(任意代理と法定代理についての詳しい解説は「【任意代理と法定代理】法定代理に表見代理はあり得るのか」をご覧ください)。

事例
Aは何かと多忙のためBに代理を頼んだ。しかし、代理人Bも忙しくなってしまい、BはさらにCに代理を頼んだ。


 さて、この事例のBは任意代理人ですが、任意代理人BはCに代理の仕事を「丸投げ」できるでしょうか?
 結論。代理の丸投げは原則としてできません。
 なぜ代理の丸投げができないかというと、事例でAはBに代理を頼んだ訳ですが、AがBに代理を頼んだのには理由がありますよね?
 もちろん時と場合と内容にもよると思いますが「Bだから頼んだ」と考えるのが普通だと思います。つまり、誰でもいい訳ではないということです。
 ということは、もしBが他人に代理を丸投げできてしまうとなると、Aが「Bを選んで代理を頼んだ」意味が吹っ飛んでしまいます。それでは本人Aは困りますよね。
 したがって、任意代理人が他者に復代理を頼む場合は、原則として丸投げはできないのです。
 さて、もうお気づきの方もいらっしゃると思いますが、任意代理人が復代理を頼むときは「原則」丸投げできない、ということは、例外的に丸投げをできる場合があるということです。

任意代理人が代理を丸投げできるケースは2つある
二本指女性
 それでは、任意代理人が代理を丸投げできる2つのケースを見ていきます。

1【本人が承諾したとき】

 これは、任意代理人が他者に代理を「丸投げ」することを、本人が「OK!」と認めたときです。

2【やむを得ない事由があるとき】

 これは、任意代理人が事故や病気などで動けなくなってしまったようなときです。
 このようなときは、本人の了承がなくても丸投げできます。というのは、代理人が急ぎで動かなければならないような仕事を頼まれていたときには、いちいち本人に了承をとっていたら、それこそ本人にとって大きな損害が生じかねません。
 したがいまして、このようなケースでは、任意代理人は本人の了承がなくとも、他者に代理の仕事を丸投げできます。

 さて、任意代理人が他者に復代理を頼むときは「原則」丸投げすることはできず、2つの例外的なケースでは丸投げすることも可能ということがわかりました。
 ところで、先の事例で、代理人BはCに代理を頼み、Cが復代理人となりました。このときに、元々の代理人であるBの「代理人としての権限」はなくなってしまうのでしょうか?
 結論。Bの代理人としての権限はなくなりません。
 つまり、代理人BがCに代理を頼み、Cが復代理人になったところで、Bが本人Aを代理することは問題なくできます。
 ですので、事例で本人Aを代理する者は、代理人Bと復代理人Cの二名存在することになり、代理人Bと復代理人Cのいずれも本人Aを代理することが可能です。
 復代理とは「代理人の交代」ではありませんので、この点はご注意ください。

法定代理人の場合

 法定代理人は任意代理人(委任による代理)とは違い、本人に「代理よろしく」と頼まれてなるものではなく、法律の定めによってなるものです。
 では、法定代理人が復代理人を選任するときはどうなるのでしょうか?
 任意代理人は復代理人の選任にあたり、原則、丸投げはできなかったり、本人の承諾が必要であったりなどの要件がありますが、法定代理人は自由に復代理人を選任できます。
 え?なんで?
 なぜ法定代理人は自由に復代理人を選任できるかと言いますと、こう考えるとわかりやすいと思います。
 赤ちゃんの法定代理人は、通常は親ですよね?例えば、赤ちゃんが相続により土地を取得したときに、その土地について法律的な争いが生じて裁判になったとしましょう。すると、赤ちゃん自身が法廷に立つことは当然できませんので、法定代理人である親が赤ちゃんの代わりにその対応を行わなければなりません。このときに、赤ちゃんの法定代理人である親が、弁護士に訴訟代理(訴訟代理人)を依頼すると、代理人の親が弁護士に「復代理人を依頼した」ということになります。
 このようなケースで、もし復代理人(弁護士)を依頼するにあたり本人(赤ちゃん)の承諾が必要となると、法定代理人(親)は困ってしまいますよね?赤ちゃんに「この弁護士の先生に訴訟代理を頼んでもいい?」と承諾を求めたところで「バブバブ」という答えしか返ってこないでしょう。Dr.スランプアラレちゃんに出てくるターボくんでもなければ、マトモな答えが返ってくるはずがありません。
 そして何よりも問題なのは、親(法定代理人)が弁護士(復代理人)を依頼できないことによって、赤ちゃん(本人)自身に大きな損害が生じかねないということです。
 よって、法定代理人は本人の承諾もなしに、自由に復代理人を選任することができるのです。
赤ちゃん
【補足】
 赤ちゃんは法律行為ができません。それは赤ちゃんが未成年者であり制限行為能力者だからというのもありますが、そもそも法律上、赤ちゃんには意思能力がないとされます。これは何も赤ちゃんに限らず、泥酔した者も同じように意思能力がないとされます。
 そして、意思能力がない者が結んだ契約は無効です。
 民法の条文はこちらです。

民法3条2項
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。


 上記、民法3条2項により、意思能力がない者の契約は無効で、法律上、意思能力がないとされる赤ちゃんには、法律によって定められた法定代理人(通常は親)が保護者になり、法定代理人は赤ちゃんの代わりに法律行為をすることができ、赤ちゃんの承諾なしに弁護士を依頼することも可能なのです。
 なお、人間(自然人)の権利能力の始期や終期といったことについて解説は「【不法行為】権利能力の始期~人間はいつから権利能力を持つのか」をご覧ください。

復代理人のヘマの責任を代理人は負うのか

 代理人は復代理人を選任できます。そして、復代理人を解任するのも代理人です。
 さて、それでは復代理人がヘマをやらかしてしまった場合、代理人もその責任を負わなければならないのでしょうか?
 責任というのは、本人に対する責任です。つまり、復代理人がヘマをやらかしたとき、代理人が本人に対し「私にも責任があります」となるのか?ということです。
 まず結論として、代理人は復代理人のやらかしたヘマの責任を負います。
 しかし、任意代理人と法定代理人でその中身が異なってきますので、それぞれ解説して参ります。

法定代理人の場合

 法定代理人の負うべき責任は非常に重くなっております。
 その重さはというと、なんと法定代理人は復代理人のやらかしたヘマについて、その全責任を負います。
 マジで?でもどうして?
 なぜなら、法定代理人は自由に復代理人を選任できるからです。本人の承諾もなしに自分の判断で行えます。
 だからこそ、復代理人のやらかしたヘマについて負うべき法定代理人の責任は、非常に重いものとなっています。
 ただし、いついかなるときでも全責任を負うという訳ではありません。
 これについて、民法では以下のように規定します。

(法定代理人による復代理人の選任)
民法105条
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみ
を負う。

 この民法105条の規定により、法定代理人は、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみ負います。(やむを得ない事由があるときは、本来、法定代理人が負うべき責任より軽くなるということ)。
 選任及び監督って何?
 ここで重要なのは、復代理人のやらかしたヘマについて、やむを得ない事由があるときは全責任は負わなくていいということです。なので、試験などで「法定代理人は復代理人の行為について当然に全責任を負う」と来たら、それは×です。まずはここを押さえておいてください。
 ただ、逆に言うと、やむを得ない事由があるとき以外は、法定代理人は復代理人のやらかしたヘマについて、原則、全責任を負わなければならないということにもなります。
 自由と責任は表裏一体なのです。これは何も法律に限らず、全ての物事に言えることですよね。肝に銘じておかなければなりません。

任意代理人の場合

 続いて、任意代理人の場合ですが、実はこちらについての民法の規定は、民法改正により削除されました。

(復代理人を選任した代理人の責任)
民法105条
1項 代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。

2項 代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。

 結果的に、任意代理人が負う責任は、債務不履行の一般規定により規律されることになります。
 で、どうなんの?
 結論だけ簡単に申し上げると、例えば、委任による任意代理人である場合「選任及び監督以外の責任を含む」責任を負います。(委任契約上の受任者としての責任)


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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