
▼この記事でわかること
・無権代理人の責任の基本
・無権代理人に救いの道はないのか?
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

無権代理人の責任
無権代理行為が行われた場合、相手方を救うための制度として表見代理があり、表見代理が成立すると本人が責任をとることになります。
表見代理による相手方の保護は、民法が重視する取引の安全性の観点からも重要です。
しかし、そもそも無権代理において一番悪いのは、無権代理人ですよね?
もちろん、民法では、無権代理人の責任についての規定もしっかり置いています。
(無権代理人の責任)
民法117条1項
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
この民法117条1項のこれ、実はかなり重~い責任なんです。
だって本人が追認してくれなかったら、無権代理人自身でなんとか事をおさめなきゃならないってことなので。
その責任の重さ、事例とともにご説明いたします。
事例
Bは代理権がないのにもかかわらず、お金持ちのAの代理人と称して、軽井沢にあるC所有の別荘の売買契約を締結した。
この事例で、無権代理人であるBは「Aの代理人Bです」という顕名を行なっています。
ですので、あとは表見代理が成立するか本人が追認するか、という問題です。
しかし、表見代理が成立せず本人Aが追認しなかったらどうなるでしょう?
はい。もうおわかりですよね。
そんなときに、先述の民法117条による重~い責任が、無権代理人Bに待ち受けています。
では、どんな重~い責任が無権代理人Bに待ち受けているのでしょうか?
まず、相手方Cが無権代理人Bに契約の履行を求めたなら、Bは別荘の売買代金を支払わなければなりません。
また、相手方Cが無権代理人Bに損害賠償を請求したなら、Bはそれに応じ、賠償金を支払わなければなりません。
しかも!
このときの損害賠償の範囲はなんと、履行利益です。
履行利益ということは、履行していれば得られたであろう利益を賠償するのです。
(履行利益については「【契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)】履行の追完請求と代金減額請求/事業上の損害の賠償請求は可能?解除は?権利の行使期間は?わかりやすく解説!」でも解説しています)
つまり、無権代理人Bは、契約の履行を迫られようが損害の賠償を迫られようが、いずれにしたって別荘の売買代金相当の支払いからは逃れられません。
これ、マジでシャレにならない責任の重さです。
表見代理が成立せず本人が追認しないときは、このように無権代理人には、地獄が待っているのです。
無権代理人に救いの道はないのか?

表見代理が成立せず本人が追認しないとき、無権代理人には地獄が待っている、ということはすでにご説明したとおりですが、それでもまだなんとか!無権代理人に救いの手立てはあります。
それがこちらの民法の条文で記されています。
民法117条2項
前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一号 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二号 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三号 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。
上記、民法117条2項の条文冒頭の「前項」とは、先述の民法117条1項のことです。
この条文からわかることは、相手方が善意無過失でなければ無権代理人は救われるということです。
つまり、事例の無権代理人Bは、相手方CがBの無権代理行為について、その事情を知っていたか(悪意)、もしくはCの不注意(過失)でBが無権代理人だということを見落としていたのなら、そのときは無権代理人Bは救われます。
また、もし無権代理人Bが制限行為能力者であった場合は、そのときも責任を免れます。(無権代理においても制限行為能力者の保護は厚いのです)
このように、表見代理が成立せず本人が追認しないときでも、無権代理人の救いの手立ては用意されています。
しかし、相手方が善意・無過失ではないことを立証する責任は、無権代理人の側にあります。
つまり、相手方の悪意・有過失の立証責任は無権代理人の側にあるのです!
ですので、表見代理が成立せず本人が追認しないときでも無権代理人には救いの手立てが残っているとはいえ、その手立てを使って責任を免れるのも容易ではないのです。
このことからも、無権代理人の、その重~い責任がよくわかります。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
⇒⇒⇒アガルートアカデミーで宅建試験・行政書士試験・公務員試験の合格講座を探す!
・無権代理人の責任の基本
・無権代理人に救いの道はないのか?
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

無権代理人の責任
無権代理行為が行われた場合、相手方を救うための制度として表見代理があり、表見代理が成立すると本人が責任をとることになります。
表見代理による相手方の保護は、民法が重視する取引の安全性の観点からも重要です。
しかし、そもそも無権代理において一番悪いのは、無権代理人ですよね?
もちろん、民法では、無権代理人の責任についての規定もしっかり置いています。
(無権代理人の責任)
民法117条1項
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
この民法117条1項のこれ、実はかなり重~い責任なんです。
だって本人が追認してくれなかったら、無権代理人自身でなんとか事をおさめなきゃならないってことなので。
その責任の重さ、事例とともにご説明いたします。
事例
Bは代理権がないのにもかかわらず、お金持ちのAの代理人と称して、軽井沢にあるC所有の別荘の売買契約を締結した。
この事例で、無権代理人であるBは「Aの代理人Bです」という顕名を行なっています。
ですので、あとは表見代理が成立するか本人が追認するか、という問題です。
しかし、表見代理が成立せず本人Aが追認しなかったらどうなるでしょう?
はい。もうおわかりですよね。
そんなときに、先述の民法117条による重~い責任が、無権代理人Bに待ち受けています。
では、どんな重~い責任が無権代理人Bに待ち受けているのでしょうか?
まず、相手方Cが無権代理人Bに契約の履行を求めたなら、Bは別荘の売買代金を支払わなければなりません。
また、相手方Cが無権代理人Bに損害賠償を請求したなら、Bはそれに応じ、賠償金を支払わなければなりません。
しかも!
このときの損害賠償の範囲はなんと、履行利益です。
履行利益ということは、履行していれば得られたであろう利益を賠償するのです。
(履行利益については「【契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)】履行の追完請求と代金減額請求/事業上の損害の賠償請求は可能?解除は?権利の行使期間は?わかりやすく解説!」でも解説しています)
つまり、無権代理人Bは、契約の履行を迫られようが損害の賠償を迫られようが、いずれにしたって別荘の売買代金相当の支払いからは逃れられません。
これ、マジでシャレにならない責任の重さです。
表見代理が成立せず本人が追認しないときは、このように無権代理人には、地獄が待っているのです。
無権代理人に救いの道はないのか?

表見代理が成立せず本人が追認しないとき、無権代理人には地獄が待っている、ということはすでにご説明したとおりですが、それでもまだなんとか!無権代理人に救いの手立てはあります。
それがこちらの民法の条文で記されています。
民法117条2項
前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一号 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二号 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三号 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。
上記、民法117条2項の条文冒頭の「前項」とは、先述の民法117条1項のことです。
この条文からわかることは、相手方が善意無過失でなければ無権代理人は救われるということです。
つまり、事例の無権代理人Bは、相手方CがBの無権代理行為について、その事情を知っていたか(悪意)、もしくはCの不注意(過失)でBが無権代理人だということを見落としていたのなら、そのときは無権代理人Bは救われます。
また、もし無権代理人Bが制限行為能力者であった場合は、そのときも責任を免れます。(無権代理においても制限行為能力者の保護は厚いのです)
このように、表見代理が成立せず本人が追認しないときでも、無権代理人の救いの手立ては用意されています。
しかし、相手方が善意・無過失ではないことを立証する責任は、無権代理人の側にあります。
つまり、相手方の悪意・有過失の立証責任は無権代理人の側にあるのです!
ですので、表見代理が成立せず本人が追認しないときでも無権代理人には救いの手立てが残っているとはいえ、その手立てを使って責任を免れるのも容易ではないのです。
このことからも、無権代理人の、その重~い責任がよくわかります。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
- 関連記事
-
-
【代理の超基本】表見&無権代理とは/3つの表見代理とは/表見代理に転得者が絡んだ場合をわかりやすく解説!
-
【無権代理行為の追認】催告権と取消権とは?その違いとは?/法定追認をわかりやすく解説!
-
【無権代理人の責任はかなり重い】無権代理人に救いの道はないのか?わかりやすく解説!
-
【代理行為の瑕疵】代理人&本人の善意・悪意について/特定の法律行為の委託とは?わかりやすく解説!
-
【代理人の権限濫用】それでも代理は成立している?裁判所の使う類推適用という荒技をわかりやすく解説!
-
【代理人の行為能力】表現代理人・無権代理人が配偶者の場合をわかりやすく解説!
-
【任意代理と法定代理】法定代理に表見代理はあり得るのか?わかりやすく解説!
-
【復代理】任意代理人と法定代理人の場合では責任の度合いが違う/代理を丸投げできるケースとは?わかりやすく解説!
-
【無権代理と相続】無権代理人が本人を&本人が無権代理人を相続した場合/本人が追認拒絶後に死亡した場合/相続人が複数の場合/相手方ができることをわかりやすく解説!
-