2017/12/24
無権代理行為の相手方の催告権と取消権
事例2Bは代理権がないのにもかかわらず、お金持ちのAの代理人と称して、軽井沢にあるC所有の甲別荘の売買契約を締結した。その後、Aに代理権がないことが発覚すると、Cは厄介な法律問題には関わりたくないと思い、さっさと別の買主を見つけて甲別荘をなんとかしてしまいたいと考えた。
さて、この事例2では、無権代理行為の相手方Cは、無権代理人Bとの甲別荘の売買契約をナシにしてしまいと考えています。では、甲別荘の売買契約がナシになる場合というのは、どういうケースがあるでしょうか?
それは、本人Aが追認しないか、表見代理が不成立になるかです。しかし、これだと相手方Cは困りますよね。なぜなら、まず本人Aが追認するかしないかの決断を待たなければなりません。本人の決断が出るまでは、不確定無効の状態が続きます。Cとしては、その間にも別の買主を探したいでしょう。もちろん、その間にも別の買主を探すことはできますが、もし本人Aが追認したならば、途端にBの無権代理行為は有効になり、Cには甲別荘の引渡し義務が生じます。なので、Cとしては動きづらいんです。そして「なら他の買主は諦めてAに買ってもらおう」と思っても、Aが追認してくれるならいいですが、そうでない場合は、表見代理が成立しなければなりません。そのためにお金と時間を使って裁判して立証して...となると、Cも大変です。そもそも事例2で、Cは法律問題には関わりたくないと考えています。
そこで民法では、このように無権代理行為で困ってしまった相手方に、そのような状況を打破するための権利を用意しました。それが今回のテーマである、無権代理行為の相手方の催告権と取消権です。
催告権
これは、無権代理行為の相手方が、本人に対して相当の期間を定めた上で「追認するか、しないか、どっちだコラ」と答えを迫る権利です。そしてもし、期間内に本人が返事を出さなかったらそのときは、本人は追認拒絶したとみなされます。無権代理行為の相手方の、本人に対する催告権には、このような法的効果があります。
従いまして、事例2の相手方Cは、本人Aに対して相当な期間を定めた上で「追認するか、しないか、どっちだコラ」と催告し、本人Aが追認すれば、無権代理人Bが行った甲別荘の売買契約が有効に成立し、本人Aが追認しないかあるいは期間内に返事をしなかった場合は、本人Aは追認拒絶したとみなされ、無権代理人Bが行った甲別荘の売買契約は無かったことになり、Cはさっさと次の買主探しに専念できます。
取消権
無権代理行為の相手方が本人に対して取消権を行使すると、無権代理行為は無かったことになります。すると当然、本人は追認ができなくなります。したがって、事例2で、法律問題には関わらないでさっさと他の買主を見つけたい相手方Cは、本人Aに取消権を行使すれば、手っ取り早く解決できます。
補足
無権代理行為についての追認について、民法ではこのような条文があります。
民法113条2項
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
この条文がまさに、今回の事例2で重要になってくるのです。というのは、もし本人Aが追認したいと考えていた場合はどうでしょう?相手方Cは、むしろ別の買主に売りたいと考えていますよね。すると、状況としては「本人Aの追認が先か相手方Cの取消権行使が先か」というバトルになります。そしてこのときに、本人Aが無権代理人Bに追認の意思表示をしていたらどうなるでしょう。それだと相手方Cは、本人が追認したかどうかがわかりませんよね。その間に相手方Cが本人Aに対して取消権を行使したら、そのときは相手方Cの勝ちです。ということを、民法113条2項では書いているのです。
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