【不法原因給付】愛人契約で動産を贈与?不動産の場合は?/不法な原因が受益者のみにあるとき

▼この記事でわかること
愛人契約で動産を贈与のケース
不動産の場合の不法原因給付
不法な原因が受益者のみにあるとき
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

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不法原因給付
愛人契約で動産を贈与

事例1
A男とB子は愛人契約を結んだ。それにともなってB子は時価総額数百万ドルは下らないジュエリーをA男から贈与され受け取った。その後、二人の関係は冷め、A男はB子との愛人契約の無効を主張して清算しようと考えた。


 さて、いきなり昼ドラのような事例から始まりましたが、この事例1で、A男はB子に対し愛人契約の無効を主張して、ジュエリーの返還請求ができるでしょうか?
 まずは、A男とB子の愛人契約について考えてみます。
 まず、A男とB子の愛人契約は無効になります。無効になるというより、そもそもハナっから愛人契約は無効です。なぜなら、愛人契約は公序良俗違反だからです。
 公序良俗というのは、倫理とか道徳とか常識というようなことです。つまり、公序良俗違反とは、倫理や道徳や常識に反する違反ということです。
 契約というのは、契約自由の原則により、基本は自由ですが、あまりにも行き過ぎた内容のものは公序良俗違反により無効になります。例えば、殺人契約や人身売買契約なんか成立しませんよね?それは法律的な論理でいえば、公序良俗違反により無効ということです。そして、愛人契約も公序良俗違反により無効になります。
 すると事例1で、A男がB子に愛人契約の無効を主張して、ジュエリーの返還請求はできそうな気もします。
 しかし、そうはイカンのです。
 民法の規定はこちらです。

(不法原因給付)
民法708条
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。


 A男からB子への愛人契約によるジュエリーの給付は、民法708条条文にある「不法な原因のために給付」にあたります。
 したがって、A男はB子にジュエリーの返還請求はできません。
 民法708条の理屈を簡単に解説すれば「自分から法を犯したヤツは法で保護されない」ということです。
 そして、A男はB子と公序良俗違反の愛人契約を結んでいます。(法律的に無効の契約なのでそもそも成立しませんが)
 また、そもそも、自分から違反を犯しておいて返還請求という法律的な主張はできないのです。つまり、A男は自業自得ということです。

ジュエリーの所有権は?

 では、A男がB子に贈与したジュエリーの所有権はどうなるかというと、ジュエリーの所有権はB子のものになります。
 え?マジで?
 マジです。もちろん、法律的な理屈としてはAB間の贈与も無効ですので、本来ならジュエリーの所有権はA男に戻るはずです。しかし、そうなるとA男の返還請求を認めないことと矛盾してしまいます。
 そして、もしA男の返還請求を認めてしまうと「自分から法律に違反したヤツの法律的な主張」を認めてしまうことになってしまいます。そうなってしまうと、世の中の秩序がオカシクなってしまいます。
 では、どういう理屈でBのジュエリーの所有権が認められるかというと、こうなります。
「A男が返還請求できない反射的効果として、B子へのジュエリーの所有権の移転は有効」
 このような論理で、ジュエリーはB子の物になるのです。
 したがいまして、もし現在、事例1のようなケースで贈与された物を所持している女性の方は、その物は意地でも自分の手元に置いておいた方が良いかと存じます(笑)。
 もちろん、愛人契約は推奨できませんが。。。

不動産の場合
素材102マンション
事例2
A男とB子は愛人契約を結んだ。それにともなって、A男は自己所有の甲マンションをB子に贈与し引き渡した。その後、二人の関係は冷め、A男はB子との愛人契約の無効を主張して清算したいと考えた。


 さて、A男とB子の愛の行方はどうなるのか?じゃなかった(笑)。
 この事例2で、A男は愛人契約の無効を主張して、B子に甲マンションの返還請求ができるでしょうか?
 これは先ほどのジュエリーの場合と一緒で、そもそも公序良俗違反の愛人契約という不法な原因により給付したものは、返還請求はできません。よって、A男はB子に甲マンションの返還請求はできません。と普通に考えれば結論付けますが、、、
 実は、不動産の場合は少し違ってきます。なぜなら、不動産には登記という制度があるからです。
 そしてなんと、この登記の有無によって、A男はB子に返還請求できる場合があるのです。不法な原因による給付なのに!です。

【甲マンションが未登記の場合】
 これは、甲マンションがA男の登記もなくB子の登記もない場合です。
 例えば、A男がB子にマンションを買い与えたようなケースが考えられます。
 このような場合、判例では「引渡しをもって給付あり」としています。よって、甲マンションを引き渡してしまったA男は、B子に甲マンションの返還請求はできません。

【B子登記済みの場合】
 この場合は、言うまでもないと思いますが、A男はB子に甲マンションの返還請求はできません。

A男登記のままの場合

 この場合なんと、A男はB子に甲マンションの返還請求ができます!これは判例でそのような判断がなされているのです。
 先ほど、不動産には登記の制度があるから、と申しましたが、だからと言ってなんで?って感じですよね。不法原因給付の制度と完全に矛盾していますし。裁判所はA男に甘いのか?とも思ってしまいます。
 一応、理屈としてはこのようになっています。

「愛人契約による贈与は公序良俗違反により無効である。しかし、A男の甲マンションの返還請求権を認めないとなると、B子からA男への甲マンションの登記移転請求権を認めなければならなくなる。すると、公序良俗違反の贈与契約も認めなければいけなくなる。それはマズイ。しょうがない。ここはA男の返還請求権を認めざるを得ないな。スジとしてはオカシイが、致し方ない」

 このような理屈で、A男の返還請求権が認められるのです。
 納得できますかね?はい。納得しなくてもかまいません(笑)。とりあえず「こうなっているんだ」と、強引に結論とその理屈を頭に叩き込んでしまってください。
 勉強も人生も、たとえ納得できなくても進んでいかなけれなならないときがあるのです。

 というわけで、ここまでの解説からわかることは、もし事例2のようなケースでマンションを贈与した方は、登記を自分のままにしておけば、この先二人の関係が冷めても安心ですね(笑)。
 反対にマンションを贈与された側の方は、取り急ぎ登記を自分に移転しておくのがイイと思います(笑)。
 ただし!愛人契約は推奨しませんよ!公序良俗違反ですから!

不法な原因が受益者のみにあるとき
怪しい粉
事例3
AはBに事業資金を融資した。しかし実は、Bはこの資金を麻薬購入資金に充てるつもりでいた。Aはそんなこともつゆ知らず事業資金としてBに融資したのだった。


 さて、今度はなんだかアングラな事例の登場ですが、この事例3で、AのBへの融資資金の返還請求は認められるでしょうか?
 麻薬購入資金の融資は、当然に公序良俗違反であり不法原因給付です。そして、不法な原因で給付した者の返還請求は認められません。
 しかし!この事例3の場合、Aは単に事業資金として融資しています。AはいわばBに利用され、勝手に犯罪の片棒を担がされたに過ぎない被害者とも言えます。
 つまり、Aに不法はないのです。本質的な公序良俗違反Bだけにあるのです。
 となると、結論はどうなるのでしょうか?
 ここで今一度、民法の条文を確認してみましょう。 

(不法原因給付)
民法708条
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。


 民法708条の後半を見ると「不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない」とあります。これはまさに、事例3のケースが当てはまります。
 先ほど解説しましたとおり、事例3において、不法な原因は受益者であるBのみにあります。
 したがいまして、事例3の場合、AのBへの融資資金の返還請求は認められます。

 続いて、次のような事例の場合はどうなるでしょう?

事例4
大学受験を控える息子を持つAは、予備校教師のBから裏口入学の話を持ちかけられた。Aは息子を思うあまりその話に乗ってしまい、Bに500万円を給付した。


 これは、言ってみれば裏口入学契約ですよね。当然、こんなものは公序良俗違反で無効です。
 すると、この事例4のAは、不法原因給付の規定により、Bに給付した500万円の返還請求はできないということになります。ただし、事例3のときのように「不法な原因が受益者についてのみ存したときは」返還請求が可能になります。
 では、事例4の場合どうでしょう?
 裏口入学の話を持ちかけたのは予備校教師Bです。しかし、息子を思うあまりとはいえ、その話に乗ったのはA自身です。
 つまり「不法のきっかけ」は予備校教師Bにありますが、その「不法の原因の一部」にAは自らの意思で加担したことになります。
 よって事例4は、不法な原因が受益者(予備校教師B)のみにある訳ではありません。となると、Aの500万円の返還請求は認められないことになりますが、、、
 しかし!判例では、両者に不法な原因がある場合でも、受益者側の不法原因の方が著しく大きいと考えられる場合は、民法708条の「不法な原因が受益者についてのみ存したとき」の規定を適用するとしています。
 つまり、事例4のAは、予備校教師Bに対して給付した500万円の返還請求が認められる可能性があるということです。
 ただ、あくまで受益者側の不法原因の方が著しく大きい場合ですので、例えば、Aの方から「裏口入学できますか?」と話を持ちかけていたりしたら、その場合は、給付したお金の返還請求は認められない可能性が高いでしょう。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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