この世の中は契約社会~民法は私達の生活に直結している

 皆さんは、民法と聞いて何かピンと来ますか?
 おそらく、法学生や仕事で法務に携わっている方以外は、中々ピンと来ないのではないかと存じます。
 民法とは一体何なのでしょう。

この世の中は契約社会

 当サイトをご覧になってくださっている方で、アパートやマンションあるいは一軒家を借りて住んでいる、いわゆる賃貸不動産にお住いの方は多いと思います。実はその不動産賃貸借に関する規定が、民法の中に存在します。
 民法の条文は、全部で1050条存在します。その中に賃貸借というカテゴリーがあり、そこに不動産賃貸借(家の貸し借り)に関係する規定が存在します。
 例えば、賃貸人(貸主、つまり家主・大家のこと)は賃貸物(賃貸している物件のこと)の修繕義務を負うとか、賃貸人に無断で転貸(また貸し)してはいけない等々。
 ちなみに、今挙げた例は、皆さんが家を借りる(貸す)時に交わした契約書の中にも、盛り込まれていると思います。もしご面倒でなければ、今一度ご覧になってみてください。
 民法というものはこのように、実は我々の生活に密接に関わっています。
 先ほど挙げた不動産賃貸借の例ですが、これは不動産賃貸借契約になります。つまり、契約の一種ということですね。

 ところで皆さん。この世の中は契約社会というのはご存知でしょうか?
 まあ、いきなり契約社会と言われても、はぁ?て感じですよね(笑)。
 ですので、具体例を挙げてご説明いたします。
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 皆さんも普段、当たり前にコンビニなどで買い物をしますよね。実はこれも契約です。その契約の流れはこうです。

1、購入の申し込みをする(レジに商品を持っていく)
2、申し込みの承諾を受ける(店員が商品をスキャンする)
3、代金を支払う
4、商品の引渡しを受ける(買った商品を受け取る
)


 コンビニでモノを買うということは、実はこのような流れの売買契約になります。
 え?こんなことも契約になるの?
 はい。これも立派な売買契約という契約なのです。
 それではここで問題です。上記の「コンビニでモノを買う」という売買契約ですが、この契約が成立するのは、契約の流れの中の1~4の内、一体どの時点だと思いますか?
 正解は2です。つまり、購入の申し込みの承諾を受けた時点で契約が成立します。
 このような契約を民法上、諾成契約といいます。読み方は「だくせいけいやく」です。承諾の諾に成る契約ということですね。
 契約には民法上、他にも◯◯契約というものが複数存在します。

 さて、どうでしょうか。何となく、民法が身近なものに感じて来たのではないでしょうか?


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【単純承認と限定承認】その手続と事例/相続財産の対象となる財産とは?一身専属権はどうなる?

▼この記事でわかること
限定承認について
単純承認について
相続財産の対象となる財産とは
一身専属権の相続問題
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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限定承認

 相続人は、熟慮期間中(相続があった事を知った時から3ヶ月間)に、相続放棄の他に限定承認をすることもできます。

(限定承認)
民法922条 
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる


 限定承認は、相続人にとって都合の良い制度です。
 被相続人の遺産が、プラスも大きいがマイナス(負債)もまた大きいというような場合を想定しています。
 この場合、プラスの財産のほうが大きいかもしれないので、相続の放棄をするのはもったいないのです。
 しかし、マイナスが多い可能性を考えれば、単純に承認をして権利義務の一切合財を承継することは危険です。
 そこで、限定承認という手を使うことができるのです。

限定承認の手続

 限定承認の手続は、まず、債権者等に対する公告をして被相続人の債権者等を探し出します。
 そして、被相続人の財産から債権者に対する弁済を行います。
 その残額があれば、遺贈を弁済します。
 さらに、その残りがあれば相続人がこれを承認するのです。
 仮に被相続人の遺産から債権者や受遺者への弁済をすることができなければ話はそれで終了であり、相続人が弁済をする必要はありません。
 つまり、被相続人の遺産で、債務を清算し、プラスが残れば相続人がこれを取得しますが、マイナスが残れば相続人は知らんぷりを決め込むことができるのです。
 このように、限定承認は相続人にとって都合のよい制度なのです。

【限定承認と家庭裁判所】
 限定承認手続は家庭裁判所の監督下に置かれます。相続人は限定承認をする旨を家庭裁判所で申述し、相続財産の目録を家庭裁判所に提出しなければなりません。つまり、勝手に相続財産を私物化することは許されなくなります。

限定承認の事例

事例1
Aが死亡し、BCDの3名が相続人である。


[問1]
BCの2名のみで限定承認をすることができるか?

 結論。BCのみの限定承認は不可能です。
 民法923条は、相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができると規定しています。
 さて、ではその理由は何でしょうか?
 限定承認は、死者の財産でのみ、死者の債務を弁済します。そのためには、死者の遺産と相続人の固有の財産を明確に分離する必要があるのです。
 民法922条が規定するように、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務および遺贈を弁済するためには、その前提として、どこまでが死者の財産であり、どこからが相続人固有の財産であるかがはっきりと分かれていなければなりません。
 ですから、相続人全員が団結して、とにかく限定承認の手続進行中は、死者の遺産を相続人の固有財産と混ぜ合わせないことが大事なのです。
 仮に、相続人の1人であるDが死者の遺産を単純に承認すれば、その限度で死者の遺産がDの固有資産と混じり合ってしまいます。
 だから、限定承認は共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができるのです。

[問2]
Dが相続を放棄した場合、BCの2名のみが限定承認をすることができるか?

 結論。相続を放棄したDはもはや相続人ではありません。したがって、相続人の全員であるBC両名が団結すれば限定承認できます。

単純承認

 相続の放棄もせず、限定承認でもないケースが単純承認です。
 世の中で一番多いパターンであり、単純に死者の遺産を相続人がまるごと承継する結果となります。
 単純承認をする場合には、家庭裁判所に行く必要はありません。
 民法921条2号は、熟慮期間が経過すれば相続人は単純承認をしたものとみなすと規定しており、世の中の相続事件の大半はこの規定により単純承認とみなされる結果となっています。
 上記のケースのように、相続人が単純承認の意思表示をしていないのにもかかわらず、民法の規定により単純承認をしたものとみなされるケースを法定単純承認といいます。
 では、ここからは事例とともに単純承認について具体的に解説して参ります。

事例2
Aが死亡した。Bが相続人である。


[問1]
相続の開始を知ったBは、亡Aの債権(Aの遺産の一部)を取り立ててこれを消費した。この後にBは相続の放棄をすることができるか?

 結論。Bは相続の放棄ができません。
 相続人が相続財産の全部または一部を処分すると単純承認をしたものとみなされます。(民法921条1号本文)
 債権の取立ては処分行為に該当します。いったん遺産を私物化しましたから、その後の放棄は認められません。
 つまり、相続の放棄をするのであれば、遺産には手をつけずにこれを行うことがスジであるにもかかわらず手をつけたので、その後の相続の放棄は認めないのです。

[問2]
BがA名義の建物の不法占拠者に立退き要求をした。この後にBは相続の放棄をすることができるか?

 結論。Bは相続の放棄ができます。
 この場合、Bの行為は、相続財産に対する保存行為です。
 民法921条1号ただし書は、相続人が保存行為や民法602条が規定する短期の賃貸をした場合には、単純承認とはみなされないと規定しています。遺産の私物化に該当しないからです。

【補足】短期賃貸借
 民法602条の短期賃貸借は以下のケースです。
・樹木の栽植または伐採を目的とする山林の賃貸借 10年まで
・土地の賃貸借 5まで
・建物の賃貸借 3年まで
・動産の賃貸借 6ヶ月まで

事例3
Aが死亡した。大きな負債を残したAには子Bがいる。


[問1]
Bは相続放棄をしたが、その後に相続財産である金員を私的に消費した。BはAの負債を免れるか?

 結論。相続放棄または限定承認をした場合、相続財産を私的に流用することは許されません。これを行った場合には、単純承認をしたものとみなされます。
 したがって、Bは負債を免れることはできません。

 民法921条3号は「相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠蔽し、私的にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかった(最後は限定承認のケース)とき」には、相続人は単純承認したものとみなされるとしています。
 これは、相続放棄をし債務を免れた上で、プラスの財産だけを承継しようというような相続放棄者の不正な目論見への民法上の制裁です。

【補足】相続の目録
 限定承認をするという申述の際、家庭裁判所に提出する被相続人の財産目録のこと。ここに悪意で記載をしない財産があるということは財産を隠したこと(隠蔽行為)になる。

[問2]
亡Aの父Cが存命であり、Bの相続放棄の後にCが相続を承認していた場合に、Bが相続財産である金員を私的に消費したとき、Bは単純承認したとみなされるか?

 結論。相続人(B)が相続の放棄をしたことによって相続人となった者(C)が相続の承認をした後に、相続人(B)が相続財産の隠蔽・私の消費をした場合には、相続人(B)が単純承認とみなされることはありません。(民法921条3号ただし書)
 すでに、相続債権者がCに対して弁済の要求をしているだけの段階であるため、これらの者に迷惑がかかるおそれがあるからです。

 以上、単純承認についての解説でしたが、下記の民法の条文も確認してみてください。

(法定単純承認)
民法921条 
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。


相続財産の対象となる財産
家 金 女性 悩む
 民法896条本文は、相続人は、相続開始の時から、被相続人に属した一切の権利義務を承継すると規定します。
 そこで、まず第一に、ある財産が被相続人に属しているのかどうかという問題点が生じます。
 この点について、事例を挙げて解説して参ります。

事例
Aが死亡した。その相続人がBである。Aは受取人をBとする保険金に入っていた。


 さて、この事例で、Aの死後支払われる保険金は、Aの相続財産に含まれるでしょうか?それとも、元々Bの財産であるのでしょうか?
 結論。これは、受取人がBであるから、生命保険金は相続人Bの固有財産であるというのが判例の考え方です。
 生命保険金は、その旨の約定に基づき、保険会社から直接Bに支払われるのであり、Aの相続財産を構成しません。

事例
Aが死亡した。その相続人がBである。Aの勤務先から死亡退職金が支払われることになった。


 さて、この事例で、死亡退職金はAの相続財産に含まれるのでしょうか?それとも、元々Bの財産であるのでしょうか?
 結論。死亡退職金は、遺族の生活保障の意味合いが強いとされており、これも相続人の固有財産であると考えられています。
 したがって、勤務先の支払規定に従って遺族が直接支給を受けるのであり、例えば、配偶者(内縁の妻を含む)を第一順位として支払うというような内規があれば、その規定に従い、配偶者の固有財産となります。

議論の実益

 上記の論点をどう解釈するかにより、遺族の取り分は大きく異なることになります。
 相続人が複数いるとしましょう。例えば、生命保険金を相続財産と考えれば、死者が遺言を残していない場合、生命保険金は法定相続分に従い相続人全員に帰属することになります。しかし、特定の受取人の固有財産と考えれば、その受取人が(生命保険金の)全額を取得する結果となります。 

【補足】
 死亡により終了する法律関係として、民法に明文が存在するものに、以下のような例があります。
1.委任の終了 
 委任者・受任者いずれかの死亡により終了する。(民法653条1号)
2.代理の終了
 本人・代理人のいずれかの死亡により終了する。(民法111条)
3.使用貸借の終了
 使用借人の死亡により終了する。(民法599条)
4.組合員たる地位
 組合員は死亡により組合を脱退し、相続人がその地位を引き継ぐことはない。(民法679条1号)

一身専属権の相続問題

 民法896条は、相続人は、相続開始の時から被相続人に属した一切の権利義務を承継するとしつつ、ただし、被相続人の一身に専属したものはこの限りではないと規定します。
 では、ある権利義務がこの一身専属権にあたるのかどうかを考えて参ります。

事例
Aが死亡した。その相続人がBである。


[問1]
Aが生活保護を受ける権利はBに相続されるか?

 結論。相続されません。
 憲法の判例として有名な朝日訴訟において、原告は生活保護基準の低劣を訴えましたが、最高裁は原告死亡により生活保護の受給権は消滅すると判示しました。
 将来の給付分はもちろんのこと、原告生存中ですでに未払いとなっているものも相続の対象にはならないという趣旨です。
 これは、生活保護受給権は、一身専属権であり、「生活困窮→給付」が不可分の関係にあるという考え方としています。

[問2]
Aが交通事故で死亡した場合、その精神的苦痛を慰謝するための損害賠償請求権はBに相続されるか?

 結論。相続されます。
 判例は、慰謝料請求権が発生する場合の被害法益は一身専属であるとしますが(痛いとか苦しいという精神的苦痛は死者に専属しているという意味)、しかし、これにより生じた慰謝料請求権という金銭債権は相続の対象となる判示をしています。
 つまり、死者を慰謝するための損害賠償を、相続人が加害者に請求することができるという結論となります。
 なお、判例は、現実には死者が慰謝料の請求を表明しなかったときにも、慰謝料請求権は発生し、それが相続人に相続されるものとしています。

[問3]
Aはある農村で土地の占有を継続していた。Aが死亡した場合、その相続人である東京にいる息子は占有権を相続するか?

 結論。占有権は相続され、死亡と同時に相続人に承継されます。
 占有は事実状態なので、東京にいる息子が、実際には農村にはいないのに、占有権を承継するというのはちょっと変な感じもしますが、判例は相続を認めています。
 こう解釈することにより、被相続人の死亡によっても占有は自然中断することはなく、例えば、被相続人が他人の土地を自主占有していた場合に、東京の息子がその土地の時効取得をすることが可能となります。

[問4]
Aが限度額と期間の定めのない継続的信用保証契約をしている場合、Aの死後に生じた主債務についての保証債務はBに相続されるか?

 結論。相続されません。
 限度額および期間の定めのない保証契約とは、すなわち、主債務者がケタ違いに高額な債務を負ってもすへて保証するし、しかも、いつまでが保証期間であるかも定めていないから永遠に保証しなければならないという、保証人にとってベラ棒に不利な契約です。
 これは、主債務者と保証人の特殊な人的関係を基礎とした契約であると考えられ、したがって相続人が上記の重すぎる保証契約を承継することはありません。

【補足】ゴルフ会員権
 会員が死亡した場合、会員資格を失うという規定のあるゴルフクラブにおける会員たる地位は一身に専属します。すなわち、相続人が会員権を相続することはできません。せいぜい、預託金(会員になる際、ゴルフクラブに預けたお金)の返還を求めることができる程度のことになります。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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【相続の放棄】相続放棄の連鎖?/誤った使用例/金貸しとの戦い/生前の放棄/数次相続の場合の相続放棄

▼この記事でわかること
相続の放棄の基本
相続放棄の連鎖
相続の放棄の誤った使用法
金貸しとの戦い
生前の放棄
数次相続の場合の相続放棄
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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相続の放棄

 相続は、包括承継の代表選手であり、原則として、被相続人の財産上の権利義務の一切が、被相続人の死亡の瞬間に相続人へと承継されます。
 しかし、財産上の権利義務の一切の承継ですから、当然のことながら被相続人の債務も承継されます。
 
 さて、モデルケースとして、夫婦と子供1人の家庭を考えてみましょう。
 夫が大借金を残して死亡したらどうなるでしょうか?
 実は、この事態は緊急事態です。
 というのは、このケースでは、すでに述べた家庭裁判所への申述による相続の放棄が可能です。
 しかし、これには厳格な期間制限があります。
 それは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月です。(民法915条1項)
 上記のモデルケースでは、残された母子が相続の開始を知ったのは、夫死亡の時というのが一般的でしょう。
 とすれば、そこから3ヶ月です。
 3ヶ月以内に、家庭裁判所に駆け込まなければ、夫の債務のすべては法律上当然に母子の債務となります。

相続放棄の連鎖

 夫が死亡し、妻と子が相続放棄した後はどうなるでしょうか?
 子がもともと相続人ではなかったことになるので、死亡した夫に直系尊属がいれば、その者が相続人となります。
 だから直系尊属は大借金を免れるために相続放棄をしなければなりません。
 その後どうなるのでしょうか?
 直系尊属がもともと相続人でなかったことになるから、死亡した夫に兄弟姉妹がいれば、その者が相続人となります。
 なので兄弟姉妹は、大借金を免れるために相続放棄をしなければなりません。

相続の放棄の誤った使用法

 夫婦と子供1人の家庭があるとして、夫の両親は死亡しているが夫の兄弟が1人存命というケース。
 このケースで夫が死亡し、死亡した夫にプラスの相続財産があったとします。
 このような場合に、残された妻が遺産を独占する目的で、子に相続の放棄をすすめることがあります。そして、子がこれに同意し、家庭裁判所で相続放棄の申述をすると悲劇が起こります。
 相続放棄の強力な効果により、子がもともと相続人ではなかったとみなされる結果、次順位の夫の兄弟が相続人となり、4分の1の相続分を取得することになるのです。
 つまり、妻の遺産独占の目論見は、もろくも崩れ去ることになります。
 こういう場合は、家庭裁判所などには行かず、母子間で母が全財産を承継する旨の遺産分割をすればよかったのです。

金貸しとの戦い

 従来、借金まみれの人物が死亡した場合、金貸しはすぐに相続人に電話をかけました。そして借金の返済を迫りました。しかし、逆にそのことにより相続人が死者の借金に気づいた結果、相続の放棄をされてしまうという事例が多発しました。
 そこで、金貸しは知恵をつけます。死亡後3ヶ月の間は取立てをせず、死亡から3ヶ月経過後に、はじめて返済を迫る電話をかけるのです。
 さて、この事案において残された相続人の運命はどうなるのでしょうか?
 この点について、判例は、民法915条がいう自己のために相続の開始があったことを知った時とは、単に被相続人の死亡とそのことにより自己が相続人となったことを知った時であるとは限らないと判示しました。
 つまり、相続人が相続財産は存在しないと信じていたようなケースでは、相続財産の存在を認識した時(つまり、借金があるとわかった時)、または通常認識できる時から熟慮期間の3ヶ月を起算すべきであるということになります、
 熟慮期間とは、民法915条が規定する相続の承認、放棄を決定すべき期間を一般にいいます。

【相続の効果】
 相続の放棄の効果は絶対的であるという判例があります。
 元々、先祖の負債が代々引き継がれることは非人道的であるという考え方からできた制度であるから、このような強力な効果が認められます。
 その具体的な意味は、相続放棄をした者は、そもそも相続人ではない(初めから相続人ではなかったことになる)ということです。

生前の放棄

事例1
Aの子はBである。


[問1]
BはAの生前に相続を放棄することができるか?

 結論。相続の開始前に相続の放棄をすることはできません。相続の放棄は被相続人の死亡後に限られます。
 この点は、推定相続人が被相続人から不当な圧迫を受けることを防ぐためと説明されています。

[問2]
BはAの生前に遺留分を放棄することができるか?

 相続の開始前に遺留分を放棄することは可能です。しかし、そのためには家庭裁判所の許可が必要です。放棄をしようという推定相続人の真意を確認するためです。(民法1043条1項)

事例2
Aの子がBである。BはAの死後、相続の放棄をした。


[問1]
熟慮期間内であれば、Bは相続の放棄を撤回することができるか?

 結論。相続放棄の撤回は、熟慮期間内においても認められません。(民法919条1項)

[問2]
Bの相続放棄の意思表示が、詐欺・強迫によるものであった場合、Bは相続の放棄を取り消すことができるか?

 結論。民法総則編の規定による取消しは認められています(民法919条1項)。つまり、詐欺による取消しの主張等は可能です。
 ただし、取消権の行使は追認をすることができる時(例えば詐欺強迫を脱した時)から6ヶ月または放棄の時から10年以内に家庭裁判所への申述により行わなければなりません。

数次相続の場合の相続放棄

 Aが死亡しBがこれを相続したが、Bがその熟慮期間中に何らの意思表示をせずに死亡しCが相続をした場合にどういう状況となるでしょうか?
 この場合、CはAB間とBC間の相続についての判断を迫られます。
 そして、その熟慮期間は、AB間BC間双方について、Cが自己のために相続の開始があったことを知ってから3ヶ月となります。(民法916条)
 Bの熟慮期間の残された時間でAB間の相続についての判断を迫られるのはCにとって酷であるからです。
 なお、この場合のCの判断について、以下に簡単に記します。
・CがBC間の相続を放棄すると、CはBの相続人としての地位を失うので、AB間の相続の承認・放棄のいずれもすることができなくなります。
・CがBC間の相続を承認したときは、CはBの相続人として、AB間の相続の承認・放棄のいずれもすることができます。
・CがBの相続人としてAB間の相続を放棄した後に、BC間の相続を放棄することができます。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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【相続欠落と相続廃除】欠落と廃除の違いとは?/欠落&廃除と代襲相続の関係について

▼この記事でわかること
相続欠落とは
相続廃除とは
相続欠落と相続廃除の違い
欠落&廃除と代襲相続の関係
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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 相続欠落と廃除はいずれも、相続権を剥奪する制度です。
 両者の違いは、相続欠落は国のルールとして一定の不正行為をした者に制裁を加えるものであり、廃除は被相続人の感情の問題として特定の相続人の相続権を奪うものであるという点にあります。

相続欠落

 以下の事由に該当すると、相続資格を失います。(民法891条)

・故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた者。
→故意による殺害が要件です。殺人、殺人未遂、殺人予備は含みますが、傷害致死は含まれません。
→刑に処せられることにより欠落事由に該当します。

・被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者
→その者に是非の弁別がなければ欠落事由に該当しません。
→殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であれば、欠落事由に該当しません。配偶者や直系血族の告発は人情においてしのびないであろうからです。

・詐欺、強迫によって被相続人の遺言、その撤回、取消し、変更を妨げた者。

・詐欺、強迫によって被相続人の遺言、その撤回、取消し、変更をさせた者。

・遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した者

 相続欠落の事由に該当すると、当然に相続資格喪失の効果が発生します。
 相続欠落は、国のルールとしての制裁であるので、被相続人の意思とは、制度上無関係です。

【参考】相続欠落に関する判例

・被相続人の、相続に関する遺言書が方式を欠き無効であるとき(遺言書に押印がなかった)、遺言者の死後に相続人が押印をしたケースは遺言書の偽造または変造にあたるが、遺言者の意思を実現する目的でなされたときは、その者は相続欠落に該当しない。

・相続に関する遺言書を破棄した場合でも、相続人の破棄行為が相続に不当な利益を目的としていなければ、その者は相続欠落に該当しない。

 以上のように、判例は相続欠落に該当するかどうかについて、その相続人の意図を問題としています。その意図が不正でなければ、形式的には偽造、変造、破棄に該当しても相続欠落者とはなりません。

相続廃除

 廃除とは、被相続人の感情を重視し、家庭裁判所の審判、調停により推定相続人の相続権を奪う制度です。
 推定相続人とは、ある人が現時点で死亡したと仮定した場合に相続人となるはずの人のことです。

 廃除の要件は以下の2つです。(民法892条)

・推定相続人に遺留分があること。
→遺留分のない相続人(兄弟姉妹および場合によっては甥姪)の廃除はできません。なぜなら、これらの者に相続財産を承継させたくないのであれば、遺言を書けば済むことであるので、わざわざ家庭裁判所に廃除の請求をする必要はありません。
 つまり、廃除は、推定相続人の遺留分を奪う制度です。
 遺留分とは、兄弟姉妹や甥姪以外の法定相続人に保障される、最低限の遺産取得割合です。

・推定相続人が、被相続人に対して虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行があった場合。

【補足】兄弟姉妹に遺留分がないわけ
 推定相続人が、被相続人の遺産を承継することをあてにしていた場合、その目論見が外れると、推定相続人の生活が困窮し国家が生活保護をしなければならない事態が生じ得ます。この事態を避けるために、推定相続人に一定割合の遺産を与えるための仕組みが遺留分の制度であることはすでに述べました。
 ところで、民法は、子が親の遺産をあてにする、また、親が子の遺産をあてにするというところまでは人情としてこれを許しています。
 しかし、兄弟の遺産をあてにするようでは、人間として失格であると考えています。よって、兄弟姉妹には遺留分がないのです。

相続欠落と廃除の違い
ここがポイント女性
・廃除をすることができるのは遺留分のある推定相続人だけ
→相続欠落はすべての相続人が対象

・廃除は遺言ですることができる。
→遺言による廃除の効果は、死亡にさかのぼる。だから、廃除された者は相続をすることはできません。

・被相続人は、いつでも、廃除の取消しを裁判所に請求できる。(民法894条1項 遺言による取消しも可能)
→相続欠落は国のルールだから、被相続人が「許してやる」という制度は民法上存在しません。

・廃除された者に遺贈をすることは可能。
 単に被相続人の感情の問題だからです。廃除はするが、多少の資産は残してやろうと思うのは自由です。
→相続欠落者は、被相続人から遺贈を受けることができません(民法965条)。国による制裁だからです。

欠落&廃除と代襲相続の関係

 代襲相続とは、子に代わって孫が親を相続する仕組みです(孫から見れば祖父を相続)。例えば、Aが死亡した場合にAの子のBも死亡していたとき、Bの子CがBに代わってAを相続(代襲相続)することです。
 では、相続欠落&廃除のケースでの代襲相続はどうなるのでしょうか?

事例
Aの子がB、Bの子がCである(CはAの直系卑属)。この状況で、Aが死亡し相続を開始した。


問1.BがAの相続につき欠落事由に該当する場合、Cは代襲相続するでしょうか?
 結論。Cは代襲相続します(民法887条2項)。つまり、CはAを相続します。

問2.BがAから廃除されている場合、Cは代襲相続するでしょうか?
 結論。Cは代襲相続します。(民法887条2項)

問3.Bが相続を放棄した場合、Cは代襲相続しますか?
 結論。Cは代襲相続をしません。相続の放棄の効力は絶対的です。BはもともとAの相続人ではなかったものとみなされます。
 相続人でない者の子が代襲相続をすることは考えられません。


【相続の放棄】
 プラスの相続財産を放棄することもできますが、一般には、相続放棄は被相続人が大借金を残したケースに利用される制度です。 
 相続の放棄は、その旨を家庭裁判所に申述することにより行う。(民法938条)
 申述とは申し述べることです。これにより、相続人は一切の負債を免れることができます。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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