【相続人と相続分】誰がどれだけ相続するのか?わかりやすく解説!/相続回復請求権とは?

▼この記事でわかること
相続人と相続分~誰がどれだけ相続するのか?ケース毎に具体的に解説!
同時死亡の推定
相続人の不存在
相続回復請求権とは
相続回復請求権に関する判例紹介
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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相続の基本

 相続についての解説を始めるにあたりまして、まずは相続人および相続分の確定からスタートします。
 わかりやすく、具体的な事例に沿って解説します。
 なお、相続は死亡によって開始します。(民放882条)
 したがいまして、ある人物の相続事件において、その人物の死亡以前に死亡した人には相続人の資格がありません。
 これを同時存在の原則と言います。これは、相続の問題を考える上での基本事項です。

相続人と相続分
※すべて「Aが死亡し、誰がどの割合でAを相続するか?」が問題となります。

ケース1
Aと配偶者Bの間には嫡出子Cがいる。


 まず、配偶者常に相続人となります。
 そして、第1順位の相続人です。
 よって、両者が相続人となります。
 配偶者と直系卑属※が相続人となる場合、配偶者の取り分が2分の1と決められています。
 したがって、このケースは、BとCが相続人であり、相続分は両者が2分の1です。
※直径卑属とは直系の子供や孫等のこと。直系尊属は直系の親や祖父・祖母等のこと。この辺りの詳しい解説は「【親族と親等】【血族と姻族とその違い】【相続と戸籍】【親子関係と戸籍の届出】【家族法と財政問題】」をご覧ください。

ケース2
Aには配偶者Bおよびその間の嫡出子C、非嫡出子Dがいる。


 まず、配偶者Bおよび子CDが相続人です。
 この場合、配偶者Bの取り分が2分の1です。
 その残りをCDの2人で分けますが、嫡出子と非嫡出子の相続分は同じです。
 したがって、このケースの相続分は、配偶者Bが4分の2、CおよびDが4分の1ずつです。 

ケース3
Aには配偶者Bおよびその間の嫡出子CDがいた。しかし、DはAの死亡以前に死亡している(子が親に先立った)。Dに子EFがいる


 まず、配偶者Bの取り分が2分の1です。
 その残りを子CDで分けるところですが、DはAの死亡以前に死亡しているので相続しません。そこで、Dの取り分をDの子EFが分け合います。
 これを代襲相続といいます。(民法887条2項)
 相続分はEFが各1、Aが2、配偶者Bが4です。
 つまり、Eは8分の1、Fも8分の1、Cが8分の2、Bが8分の4となります。

ケース4
Aには配偶者Bがいる。しかし子はいない。Aに実親X、養親YZがいる場合


 まず、子がいない場合の第2順位の相続人は直系尊属です。
 そして、直径尊属と配偶者が相続人となる場合、配偶者の取り分は3分の2です。
 したがって、この場合、XYZの取り分が各1、配偶者Bの取り分が6です。
 つまり、X・Y・Zはそれぞれ9分の1、Bが9分の6です。

ケース5
Aには配偶者Bがいる。しかし子はいない。Aに実親XおよびYがいたが、YはAの死亡以前に死亡した。しかし、Yの親Zは存命である。


 相続人は配偶者BとXのみです。
 直系尊属が相続人となる場合は、親等の近いものが先順位です。
 つまり、この場合、代襲相続の逆パターンは存在しないのです。
 結論として、このケースの相続人はBとXであり、相続分はB3分の2、X3分の1です。
 もっとも、本事例で、XYの双方が死亡していれば、Zは相続します。(代襲相続ではない)

ケース6
Aには配偶者Bがいる。しかし、Aに子と直径尊属はいない。Aには同じ両親から生まれた弟YZがいる。しかし、ZはAの死亡以前に死亡した。Zに子Cがいる場合。


 まず、子および直径尊属がいない場合の第3順位の相続人は兄弟姉妹です。
 そして、兄弟姉妹と配偶者が相続人となる場合、配偶者の取り分は4分の3です。
 この事例の相続人は、配偶者Bおよび弟Y、弟Zを代襲するZの子C(甥または姪)です。
 相続分は、YCが各1、配偶者Bが6です。
 つまり、Yが8分の1、Cが8分の1、Bが8分の6です。

【補足】甥の子は相続するか
 ケース6で、Aの死亡以前にCが死亡しその子Dがいたとしても、DはCを再代襲しない。(民法889条2項は887条2項を準用するが、887条3項を準用していない)
 つまり、甥の子が、祖父を相続分することはあり得ない。
 この点、被相続人のひ孫が相続し得ることと相違があります。
 通常、甥の子と祖父は、顔も知らない仲ということが多いでしょう。なので、民法は相続人の範囲を甥姪のところで打ち切っているのです。

ケース7
Aには配偶者Bがいる。しかし、Aに子とに直系尊属はいない。Aには同じ両親から生まれた弟Yと、片親を共通するZがいる。


 まず、このケースでは、両親が同じ弟であるYの取り分がZの倍となります。
 したがって、相続分は、Zが1、Yが2、配偶者Bが9です。
 つまり、Zが12分の1、Yが12分の2、Bが12分の9です。

ケース8
Aは配偶者Bと死別している。AB間には嫡出子CDがいるが、DはAの死亡以前に死亡している。AはDの子Eと養子縁組をしている。


 まず、このケースでは、CおよびEが相続人となります。
 問題は、Eが養子としての取り分の他に、Dの代襲相続人としての地位において相続をすることができるという点です。
 結論をいえば、相続できます。
 したがって、Cの相続分が3分の1、Eの相続分が3分の2です。
 孫を養子とするケースは、実務でもわりと見かけます。この場合、当事者の意思として孫を跡取りと考えています。
 したがって、養子となった孫の、二重の資格での相続を認めても不合理ではないのです。

ケース9
AはYZ夫婦の養子となった。YZ間には嫡出子BおよびCがいるが、AはBと婚姻をした。Aに子がなく、YZおよびAの実親もすでに他界している。


 ます、BはAの配偶者でもあり兄弟姉妹でもあります。
 この場合に、Bが配偶者の他に兄弟姉妹の地位における相続分を主張することができるでしょうか?
 結論。これはできません。
 基本的に民法は、配偶者の取り分を多めに設定していると考えています。
 したがって、この場合、二重の資格での相続は認められません。
 このケースではBの相続分が4分の3、Cの相続分が4分の1です。

同時死亡の推定

 例えば、親子が死亡したが、どちらが先に死亡したかが不明な場合があります。
 同一の事故で死亡した場合もあるし、一方は病院で死亡し年月日時分まで明確であるが、他方の死期が曖昧であって先後が不明な場合もあります。
 この場合には、親子は同時に死亡したものと推定されます。(民法32条の2)
 その結果、親子は、お互いがお互いを相続しないという結論となります。
 なお、この場合に孫が存在すれば、孫が代襲相続をすることは可能です。

相続人の不存在

 相続人がいない、あるいは、いるかどうかが不明な場合には、相続財産は法人となります。
 この場合の手続の概略は、以下のとおりです。

1・家庭裁判所が相続財産管理人の選任をする。
2・相続人探索、相続債権者および受遺者に対する公告をする
 →相続人がいた場合、手続終了します。
3・相続人不存在が確定した場合
 →相続財産管理人が相続債権者および受遺者に弁済をします。
 →残余財産が、特別縁故者(例えば内縁の妻)への分与の対象となります。(民法958条の3)
 →特別縁故者の申し出がないか、あっても家庭裁判所に認められなかった場合には、相続財産は国家に帰属します。(民法959条)
 ただし、相続財産が共有持分権であれば他の共有者に帰属します。(民法255条)

相続回復請求権

 表見相続人(相続人ではないが相続人らしい外観をする者)が、相続財産を侵害している場合に、真実の相続人は相続回復の請求をすることができます。(民法884条)
 この請求権は、相続人(または法定代理人)が、相続権を侵害された事実を知った時から5年間、あるいは、相続開始時から20年間経過すると時効により消滅します。
 この制度は、短期の消滅時効期間を設け、相続権の帰属に伴う法律関係を早期に確定させる趣旨であると言われています。

相続回復請求権に関する判例アラカルト
裁判所
1・相続回復請求権の5年の短期消滅時効の起算時である「相続権を侵害された事実を知る」とは、単に相続開始の事実を知るだけでなく、自分が真正相続人であることを知り、かつ、自分が相続から除外されていることを知るということを意味する。

2・共同相続人のうちの1人または数人が、相続財産のうち自己の本来の持分を超える部分についても自己の相続分であると主張してこれを占有管理し、真正相続人の相続権を侵害している場合、本条の適用を否定する理由はないが、その者が悪意であり、またはそう信じることについて合理的な理由がない場合には、他の共同相続人からの損害の排除の請求に対して相続回復請求権の時効を援用することができない。

3・相続回復請求権の消滅時効を援用しようとする者は、相続権侵害の開始時点において、他に共同相続人がいることを知らず、かつこれを知らなかったことに合理的理由があったことを主張立証しなければならない。

4・単独相続の登記をした共同相続人の1人が、本来の持分を超える持分が他の共同相続人に属することを知っていたか、あるいは単独相続をしたと信じるについて合理的理由がないために、他の共同相続人に対して相続回復請求権の消滅時効を援用できない間は、その者から不動産を譲り受けた第三者も消滅時効を援用できない。

 以上、相続回復請求権の消滅時効が成立するかどうかに関する判例です。
 これらは、時効が成立すれば相続回復が不可能となるので、最高裁まで事件がもめているのです。  
 基本的に、2~4の判例の趣旨は、長男が「財産は全部俺のものだ」と、他の兄弟がいることを知りつつ遺産を独り占めしているケースにおいては、長男が相続回復請求権の5年の短期消滅時効を援用することはできないということです。(そんなヤツの時効の主張は許されない)
 なお、民法884条は、元来は全く相続権のない者が、真正相続人の相続権を侵害している場合を典型例として規定しています。
「共同相続人のうちの1人または数人が~真正相続人の相続権を侵害している場合、本条の適用を否定する理由はないが」というのは、そういう意味です。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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カテゴリ別項目一覧

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【後見人】未成年後見と成年後見の違いとは?/解任と辞任/後見人になれる者とは?

▼この記事でわかること
未成年後見と成年後見の違い
後見人の解任と辞任
後見人になれる者
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 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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後見人

 後見人には、未成年後見人と、成年後見人があります。
 未成年後見人とは、未成年者に親権者がいない場合(または、いてもその親権者に管理権がない場合)の後見人です。
 成年後見人とは、被後見人が事理弁識能力を欠く常況にあるときに選任される後見人です。
 どちらも、被後見人(未成年後見人の場合、未成年自身のこと)の法定代理人です。

未成年後見と成年後見の違い

 未成年後見と成年後見では、その目的が違います。
 未成年後見人の場合、未成年の子に意思能力がある場合があります。
 例えば、健康で17歳の少年であれば意思能力があります。
 なので、未成年者が法律行為をし、未成年後見人がこれに同意をするという取引形態も可能です。(もちろん、後見人が未成年者を代理することも可能)。
 これに対し、成年後見人は事理弁識能力を欠く常況にありますから、通常は意思能力がありません。本心に復するとしても(意思能力を取り戻したとしても)それは一時的な話です。
 ですので、成年後見人が法律行為をし、後見人がこれに同意をするという取引形態は予定されていません。
 仮に、この形態をとった場合であっても、法律行為は取消しが可能です。
 なお、未成年後見人と成年後見人は、その目的が違うので、未成年者が事理弁識能力を欠く常況にある場合は、双方が併存し得ます。
 つまり、成年後見人は未成年者についても選任される場合があります。

解任と辞任

 後見人には、親権者の場合と類似する制度が存在します。
 (なお、民法が単に後見人という場合には、成年後見人、未成年後見人の双方のことを指します)

・後見人の解任
 後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときに、家庭裁判所は解任することができます。(民法846条)

・後見人の辞任
 正当な事由があれば、家庭裁判所の許可を得て辞任をすることができます。(民法844条)

【補足】親権の辞任
 親権の辞任は、やむを得ない事由がある場合に限られます。(民法837条1項)
 この点で、後見人の場合に比べて辞任がしにくくなっています。もちろん、家庭裁判所の許可も要します。
 親を辞める方の要件が厳しいのは当然と言えますよね。

後見人になれる者

 さて、次の者は後見人となることができるでしょうか?

1、未成年者
2、破産者

 上記はいずれも後見人にはなれません。
 民法847条は、この他に、次の者も後見人となることができないと規定しています。

・家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人
 例えば、一度、親権喪失の宣告を受けると、その者は決して後見人にはなれません。誰を被後見人とする場合でもなれません。

・被後見人に対して訴訟をし、またはした者並びにその配偶者および直系血族
 これは、被後見人との利害対立が推測されるからです。

・行方の知れない者

 なお、後見人の数には制限がありません。
 成年後見、未成年後見は、そのいずれも複数後見が可能です。(民法840条2項、民法843条3項)
 また、後見人は法人がなることもできます。(未成年後見につき民法840条3項、成年後見につき民法843条4項)
 また、後見監督人を法人とすることもできます。
 
 後見人は、家庭裁判所が選任することが通常ですが、未成年後見人については、これを親権者が指定するという制度が存在します。(民法839条)

・未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で未成年後見人を指定することができる
 ただし、管理権のない者は不可です。(身上監護権のみの親権者は上記の指定ができないということ)
・親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は遺言で未成年後見人を指定することができる
 これは、財産管理を行うための未成年後見人です。

【補足】後見人と利益相反取引
 被後見人と後見人の利益相反取引については特別代理人の選任を要します。
 ただし、後見監督人がいる場合は、後見監督人が本人(被後見人)を代理することができますので、特別代理人の選任は要しません。(民法860条)


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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【親権】【親権の喪失・停止・回復】【利益相反行為】誰が親権者になるか?様々なケースも紹介

▼この記事でわかること
親権の基本
親権の喪失
親権の停止
親権の回復
子の出生前の離婚ケースの親権者
親権者・監護者の変更ケースの親権者
未成年後見人の指定、選任と共同親権
利益相反行為について
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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親権の基本

 親権には、2つの内容があります。

1・身上監護権
2・財産管理権

 すなわち、未成年者の養育をし、また、その財産管理をするのが親権の内容です。
 未成年者に財産と呼べるほど大それたものは存在しないのが通常ですが、場合によっては、相続・遺贈等により生まれながらの億万長者もいますから、この場合には、親権者にしっかりその財産管理をしてもらう必要が生じるでしょう。

(財産の管理における注意義務)
民法827条 
親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。


 通常は、実親が親権者となりますが、養子縁組をすると、養親が親権者となります。
 未成年者が15歳未満であれば、その法定代理人である実親が養子縁組の代諾をするのですから、そうしたいきさつから考えても、養親が親権者となるのは、ごく自然の考え方です。

親権の喪失

(親権喪失の審判)
民法834条 
父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。


 この民法834条は、ざっくり言えばろくでもない親から親権を奪い取るための規定です。
 この他、財産管理権の喪失宣告という制度もあります。(民法835条)
 こちらは、浪費家の親であって、子の財産を使い込むような人物の場合であり、親権のうち財産管理権のみを奪う制度です。この場合、浪費家の親は親権者ではありますが、身上監護権のみを行使することができます。
 なお、身上監護権のみの喪失という制度は存在しません。

 ところで、親権または財産管理権の辞任という制度があります。これは、親の方から親権を辞めたいとか、子の財産管理権を辞めたいと言い出す場合です。
 この場合、やむを得ない事由があり、かつ家庭裁判所の許可があれば辞任が許されます。

 さて、では親権者が存在しなくなりますと、その後はどうなるのでしょうか?
 未成年者に対して親権を行う者がいないときや管理権を行う者がいない場合には、未成年後見が開始します。(民法838条)
 親権喪失の問題の裏返しとして、未成年後見人には次の2種類が存在することとなります。
1・身上監護と財産管理を行う未成年後見
2・財産管理のみを行う未成年後見人

親権の停止

 親権の停止とは、幼児虐待と言われる状況が増えたので、政府が作った仕組みです。とはいえ、親権の喪失となるとちょっと行き過ぎじゃね?ということで、その前段階の様子見という仕組みを設けたというわけです。
 その要件は、父または母による親権の行使が困難または不適当であることにより子の利益を害するときとなっています。(民法834条の2第1項)

 以下、親権の喪失と停止に関する注意点です。

1、審判がなされることとなる要件の相違
・親権喪失の審判の場合
 親権の行使が著しく困難または不適当であることにより子の利益を著しく害するときに家庭裁判所が審判します。
・親権停止の審判の場合
 親権の行使が困難または不適当であることにより子の利益を害するときに家庭裁判所が審判します。

 上記2点の違いは、親権喪失の審判の要件から2つの「著しく」が抜けると、親権停止の審判の要件となります。

2、親権喪失と親権停止のすみわけ
 親権停止の期間は、2年を超えることができません。(民法834条の2第2項)
 これに対して、親権喪失の審判は、その原因となる事実が2年以内に消滅する見込みがあるときはすることができません。
 なぜかといえば、2年以内に消滅の見込みがあれば、親権停止の審判で足りると考えられるからです。
 
親権を行うことができない者

 親権の喪失、辞任の場合の他にも、親であって親権を行うことができない者がいます。
・行方不明の場合
・受刑中
・精神に著しい障害があるとき(成年被後見人、被保佐人は親権者となることはできないと考えるのが通説です)

親以外の者が親権を行使するケース

 これは、婚姻をしていない未成年の女性が子を出産したケースです。
 未成年者が親権者となることはできません。
 そこで、この場合はその未成年の女性の親権者(子から見れば祖父母の双方または一方)が、この親権を行使します。(民放833条)
 この他、未成年後見人が未成年者に代わって親権を行使するパターンも存在します。(民法867条1項)

親権の回復

 次に挙げる場合、実親の親権は回復するでしょうか?
1・未成年の子が養親と離縁をした場合
2・未成年の子が養親と死別をした場合

1について
 回復します。実親が親権者となります。

2について
 実親の親権は回復せず、未成年後見が開始します。
 離縁の場合には、養親との関係を切るという明確な意思があります。
 また、特に15歳未満の未成年の子の離縁は、離縁後に法定代理人となる者(通常は実親)が代諾して、養親との協議で行いますから、未成年の子の実親の親権の回復は自然な姿なのです。
 しかし、死別の場合は話が異なります。
 養子縁組をしたということは、実親に子供を育てるについて差し障りがあったケースも考えられます。
 そういう状況であるにもかかわらず養親の死亡により実親の親権を回復するのは、子供の福祉を考える上で問題があります。
 そこで、死別の場合には、いったん未成年後見を開始し、家庭裁判所がその適役を選任します。
 もちろん、この場合、実親が未成年後見人となるケースは多いに違いありませんが、その適格性について家庭裁判所が審査をする機会を設けるたに未成年後見を開始させるのです。

民法838条 
後見は、次に掲げる場合に開始する。
一号 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
二号 後見開始の審判があったとき。


 一号は未成年後見、二号は成年後見の開始事由です。

誰が親権者になるのか?様々なケース
ここがポイント女性
 ここからは、このケースでは誰が親権者になるのか?を具体的に解説して参ります。

事例
婚姻外のA男とB女の間に未成年の子であるCがいる。


 さて、このケースで、Cの親権は誰が行うのでしょうか?
 結論。この場合、Cの親権はB女が単独で行います。
 A男の認知前は、Cの法律上の親は母であるBのみです。

 では、この事例で、A男がCを認知した場合はどうなるでしょうか?
 結論。この場合も親権者は変わりません。Cの親権はB女が単独で行います。
 ただし、このケースでは、AB間で父Aを親権者とする協議をする事ができます。この協議により親権者を父Aに変更する事が可能です。(民法819条4項)

子の出生前の離婚

事例
A男とB女は婚姻中であったが、子の出生前に離婚をした。


 さて、この場合、子の親権者は誰でしょうか?
 結論。子の親権者は母Bです(民法819条3項)。ただし、子の出生後に父母の協議で親権者を父に変更することができます。

 では、子の氏はどうなるでしょうか?
 結論。子は父Aと同一の氏となります。
 子は離婚の際の父母の氏を称します。(民法790条1項ただし書)
 妻が夫の氏を称する通常のケースでは、子の氏は夫の氏となります。

親権者・監護者の変更

事例
A男とB女は、B女を親権者かつ監護者と定めて離婚をした。


 さて、この事例で、後日に父母の協議で親権者を変更できるでしょうか?
 結論。親権者の変更はできません。
 基本的に、親権者の変更は家庭裁判所か行います。(民法819条6項)
 その要件は、子の利益のために必要があり、子の親族が変更の請求をすることです。
 つまり、いったん決めた親権者の変更は、親の都合ではできません。
 子の利益のために家庭裁判所がこれを行います。

 なお、父母が協議で親権者を定めることができる場合は、以下のケースが民法で明文化されています。
・離婚の際
・離婚後に出生した子の親権者を父に変更するとき
・父が子を認知し、親権者を父に変更するとき
・15歳未満の養子が離縁をするときに、実親が離婚をしており、その一方を離縁後の親権者と定めるケース(その者が離縁の代諾をすることになります)

 なお、上記において、協議が調わない場合、または協議をすることができない場合は、家庭裁判所が協議に代わる審判をすることができます。

事例
A男とB女は、B女を親権者かつ監護者と定めて離婚をした。


 さて、上記は先ほどの事例ですが、後日に父母の協議で監護者の変更はできるのでしょうか?
 結論。監護者の変更は、いつでも当事者の協議ですることができます。
 父母が協議上の離婚をする場合には、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定めます。(民法766条1項前段)
 ここまでは、離婚の際の親権者についての協議の問題と同様です。
 しかし、監護者についてのその後の考え方は、親権の場合とは大きく異なります。

1・監護者は親である必要はない
 監護者とは、現実に子の面倒をみる者を指します。
 だから、若い夫婦が離婚し、幼少の子の面倒をみる財力や時間がなければ、たとえば、その子の祖父母がこれを監護してもかまいません。

2・監護者は、当事者が自由に変更できる。
 たとえば、上記の事例で、数年後に祖父母が体を壊し、その頃には実母が経済的に立ち直っていれば実母を監護者とすればよいのです。

補足1
未成年後見人の指定、選任


 未成年後見人の出現の方法は、次の2つがあります。

1・最後に親権を行う者が遺言で指定する。(民法839条1項)
 ただし、財産管理権のない親権者はこの指定ができません。
 また、片親が生存するケースでもその者に財産管理権がなければ、完全な親権を持つ者が遺言で指定をすることができます。(民法839条2項)
2・家庭裁判所が選任する。(民法840条)
 未成年後見人がある場合でも、家庭裁判所は一定の者の請求または職権により、さらに未成年後見人を選任することができます。(民法840条2項)
 つまり、成年後見、未成年後見のいずれにおいても複数後見が可能となっています。

補足2
共同親権


 父母が婚姻中であれば、親権は共同して行います。(民法818条3項)
 しかし、父母が婚姻中でない場合には、親権はどちらかが行います。単独親権です。
 この点については例外が存在します。
 それは、親権者の指定のない離婚届が誤って受理されたときです。(離婚の際、未成年の子がいれば、離婚後の親権者を定めなければならない。民法819条1項)。
 本来、離婚後の親権者を指定していない離婚届は受理してはいけません。ですが、戸籍係員が誤ってこれを受理した場合には、父母の双方が親権者と考えるしかないとされています。
 また、15歳以上の養子が養親と協議離縁をしたケースで、実親が離婚していれば、その瞬間が共同親権となります。
 上記、いずれの場合も、いったんは共同親権となりますが、その後、協議により親権者を定めることになります。

利益相反行為について
NG男性
 親権者(通常は親)は、子の利益のために行動します。
 そして、親権者が子の利益に反する行動をしたときは、それは利益相反行為となります。

(利益相反行為)
民法826条
1項 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2項 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。


 では、利益相反行為に該当するか否かの判断基準は何なのでしょうか?
 これについて判例は、行為の外形からみて、子供に損害を与えることがあり得るかどうかで判断します。
 以下、話を単純化するために、子が父の単独親権に服する事例で解説します。

 例えば、父が子に贈与するのであれば、利益相反取引(行為)にはなりません。
 続いて、子が銀行から借入をし、父が自己所有の不動産に担保を設定する場合(物上保証のケース)を考えて参ります。
 この場合、借入金は子のものとなります。父の側には、子が債務を弁済しなければ自己の不動産を競売にかけられてしまうという危険だけが生じます。
 したがって、子に有利、親に不利であり利益相反取引は存在しません。
(なお、子が借入金の返済をするのは経済行為として当然のことであり、子の不利益とはいわない)

 では、親が銀行から借入れをし、子が自己所有の不動産に担保を設定する場合(子が物上保証人となるケース)はどうでしょうか?
 この場合、借入金は父のものとなります。子の側には、父が債務を弁済しなければ自己の不動産を競売にかけられてしまうという危険だけが生じます。
 したがって、父に有利、子に不利であり利益相反取引は存在します。
 さて、以上の原理で話を打ち切るのが利益相反取引に該当するかどうかを判断する場合の判例理論であり、行為の外形からのみ判断するということの意味です。
 例えば、最初のケースで、子が債務者、父が物上保証人ではあるが、実はこの父は借入金を横領してギャンブルに使うつもりであったとしても、利益相反取引ではありません。
 また、後のケースで、父が債務者、子が物上保証人の形ではあるが、借入れの目的が子の養育費や教育費のためだけであったとしても、行為の外形から見れば利益相反です。
 では、なぜ判例は、この問題について実質的な判断をせず、行為の外形だけで判断するのでしょうか?
 それは取引の安全のためです。
 つまり、利益相反取引にあたれば取引が無効となります。この点が、父の内心により、ある場合には無効、ある場合には有効という制度にしてしまうと、その結果、世の中が混乱するのです。
 だから、裁判所は行為の外形だけで判断すると決めたのであり、それが、この点に関する法律実務上の明確な基準となっています。

【補足】間接取引のケース
 父Aと子Cが共に、第三者の連帯保証をすることは利益相反取引に該当します。
 この場合、連帯保証契約の当初には、父と子の利益相反取引は存在しません。
 しかし、将来において、父子の間に共同保証人間の求償権の問題を生じ得ます。
 そこで、こうした間接取引の場合にも、利益相反取引とされるのです。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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【離縁】【死別と離縁と血族関係】【特別養子】【特別養子と離縁】【15歳未満の未成年者の離縁】

▼この記事でわかること
死別と血族関係
裁判上の離縁
離縁と血族関係
15歳未満の未成年者の離縁
特別養子
特別養子の離縁
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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離縁と死別

 離縁により法定血族関係は解消します。
 しかし、死別の場合には、縁組により生じた法定血族関係は切れません。

死別の場合

 死別の場合、縁組を解消しようという当事者の意思が存在しません。
 そこで、当事者の一方が死亡しても、諸々の事情はそのまま存続し、何も変化がないことが原則です。

1、縁組により生じた法定血族関係はそのまま(もちろん死者との血族関係は解消しますが、その他の関係はそのまま存続します)
2、養親が死亡しても養子の氏はそのまま

 ただし、民法には死後離縁という制度が存在します。
 縁組の当事者の一方が死亡した場合、生存当事者が離縁をすることができるのです。
 死亡した当事者の血族からの死後離縁という制度はありません。
 例えば、養親が死亡した場合、養子が死後離縁をすると養子と養親の兄弟(養子から見れば叔父)との法定血族3親等の関係が切れる結果となります。
 この制度は、婚姻の場合の死後の姻族関係終了の意思表示(生存配偶者が憎き姑との縁を切るケース)と類似した制度です。
 しかし、そこには決定的な違いがあります。
 それは、死後離縁の場合には家庭裁判所の許可がいるということです。
 民法の規定はこちらです。

民法811条6項
縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。


 なぜ、死後離縁の場合、家庭裁判所の許可が必要なのでしょうか?
 それは、親子関係を切るというのは、話が穏やかではないと民法が考えているからです。
 離婚と離縁を比べると、一般に離縁の方がその要件が厳しいのです。

裁判上の離縁

 裁判上の離婚と類似の制度に、裁判上の離縁があります。
 法定された離縁原因は以下のとおりです。(民法814条1項)

・他の一方から悪意で遺棄されたとき
・他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
・その一方の生死が3年以上明らかでないとき

 さて、離婚原因は5つありました。では、離婚原因にはなるが離縁原因にはならない理由とは何でしょう?
 それは、次の2つです。

1・配偶者に不貞な行為があったとき
2・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき

 上記の1、つまり、不貞が離縁において問題とならないのは当然です。
 しかし、2の方は違います。
 つまり、民法では、亭主が病気だから離婚するということはあり得ますが、親が病気だから離縁するという態度は許さないということになります。
 この点からもわかるように、親子関係を切るというのは、話が穏やかではないのです。

離縁の場合

 離縁は、協議による場合も、訴えによる場合も、いずれも、当事者において相手方との関係を絶つという明確な意思が存在します。
 そこで、従来の状況が変化することが原則です。

1・縁組により生じた法定血族関係は一挙に解消します。(民法729条)
 当然のことながら、離縁をした養親子は、お互いがお互いを相続しません。
2・養子の氏は、当然に縁組前の氏に復します。(民法816条1項本文)
 ただし、養親が夫婦の場合、その一方のみ離縁しても(養子が成人であれば可能)、復氏はしません。他方との養親子関係が継続するからです。

 しかし、2についてのみ、次の例外が存在します。
 離縁により復氏した者は、離縁の日から3ヶ月以内に限り、戸籍の届出をすることにより、離縁の際に称していた氏に復帰できます。(民法816条2項)
 ここまでは、離婚の時の復氏と同様なのですが、離縁の日から3ヶ月以内というだけでなく、もう1つの規制があります。
 それは、縁組の日から7年間を経過した場合でなければ、上記の復氏の届出をすることができないことになっているのです。

【補足】15歳未満の未成年者の離縁

 15歳未満は縁組の問題に関しては、法定意思無能力であるから、協議離縁は、養親と離縁後に養子の法定代理人となるべき者との協議をします。(民法811条2項)
 なお、法定代理人とは、実親(親権者)か、親権者がいない場合には、未成年後見人です。
 ついでに言いますと、15歳未満に限った話ではありませんが、未成年者が離縁をする場合に家庭裁判所の許可を要するという規定はありません。
 15歳に達した未成年者は、単独で養親と離縁の協議をすることができます。これは、縁組の段階でも同様ですし、15歳に達すれば完全な意思能力が認められます。

特別養子
指差し男性
 特別養子は、本当に特別なケースにおいてのみ成立する縁組関係です。
 その特徴は、実親との縁(従前の養親がいればそれも含めて)を完全に切るということです。
 そうなれば、もはや実親とはお互いに相続もしませんし、扶養義務も発生しません。親族ですらなくなるからです。
 ただ、唯一、近親婚の禁止という規制だけは残ります。
 つまり、直系血族間、3親等内の傍系血族間の婚姻を禁止する規定です。
 生理的に血が繋がっている以上、血が濃くなるという規定だけは外せないからです。(民法734条2項)

 特別養子は、養子を戸籍上も実子と同様に取り扱う仕組みです。
 養子は幼児に限り(原則6歳未満。この年齢を過ぎると実子として育てる事には無理がある)、実親の戸籍に入っていた幼児を、その戸籍から抜きます。
 そして、幼児を筆頭者とする戸籍を作ります。
 こうして、戸籍上も、実親との関係を切ります。
 その後に、幼児だけの戸籍から、特別養子縁組をした養親の戸籍に嫡出子として入籍します。
 こうすれば、その幼児が養子であることは、素人目にはわからなくなるのです。

 では、以下に特別養子縁組の要件を記載します。

・家庭裁判所の審判による。(民法817条の2第1項)
 幼児にとって、実方との断絶という重大な結果が発生しますから、家庭裁判所の審判がなければ縁組をすることができません。
 審判の確定により効力が発生します。戸籍の届出は報告的届出ということになります。

・幼児は6歳未満、ただし、養親となる者が6歳になる前からその子を養育していれば8歳未満。(民法817条の5)

・養親は夫婦に限る。(民法817条の3)もちろん共同縁組です。
 ただし、例えば、妻の嫡出子を特別養子とするときは夫の単独縁組も可能です。
 といっても、妻の嫡出子が実子か特別養子である場合に限ります。
 特別養子は、二親の元で実子として子を育てる制度ですから、妻の嫡出子(普通養子)を特別養子とする場合には、共同縁組となります。

・養親の年齢は、25歳以上であることを要する。(民法817条の4)
 ただし、片方は20歳以上でよいので、結局、25歳と20歳の夫婦であれば、養親となることができます。

・養親による6ヶ月以上の監護の実績を要する。(民法817条の8第1項)
 養親と特別養子が、本当に親子として暮らすことができるのか、その試験期間が6ヶ月以上必要です。

 以上、5つの要件を挙げましたが、特別養子の成立のための要件は他にもあります。
 それは、「実親(場合によっては養親)による、幼児の監護が著しく困難または不適当であることその他特別の事情があり、なおかつ、子の利益のために特に必要があると認められるとき」という要件です。(民法817条の7)

【補足】
 特別養子の成立には、実父母(養父母がればその者も)の同意も要件とされる(817条の6本文)。しかし、上記に述べた事例のように、同意を得ることが困難な事例もあります。そこで、父母がその意思を表示できない場合、または父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する理由がある場合は、父母の同意を得ることなく特別養子縁組を成立させることができるという規定が存在します。(民法817条の6ただし書)

特別養子の離縁

 ここまでの解説から、離縁が容易ではないということはおわかりかと思います。
 特別養子の離縁をするためには、以下の要件をすべて満たさなければなりません。

・家庭裁判所の審判による。(民法817条の10)
 離縁届だけで離縁できるわけではありません。
 なお、離縁請求の申立ては、養子、実父母、検察官のみに認められます。
 養親からの申立ては、することができません。

・養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。(民法817条の10第1項1号)
 6ヶ月間の試験期間は、無駄であったということです。

・実父母が相当の監護をすることができること。(民法817条の10第1項2号)
 この要件の成立も厳しいでしょう。元々、実父母が監護をすることができない事情があって、特別養子縁組が認められた訳ですから。

 ちなみに、「実父母による相当の監護をすることができる」という要件は、子が監護を要する状態であることが前提です。
 つまり、離縁が可能なのは、子が成人する前です。
 特別養子の離縁は、子が成人するとできなくなります。

 なお、上記要件すべてを満たし、特別養子の離縁が認められた場合には、離縁の日から実父母と子の間に親族関係が復活します。(民法817条の11)


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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