【養子縁組】【縁組障害】【縁組取消しと離縁】【請求権者とその期間】様々な縁組と離縁をわかりやすく解説!

▼この記事でわかること
養子縁組の基本
縁組障害
配偶者ある者(夫or妻がいる者)がする未成年の養子との離縁
法定意思無能力
縁組取消しの請求権者とその期間
配偶者ある者がする縁組
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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養子縁組の基本

 養子縁組をすると、養子は縁組の日から養親の嫡出子(婚姻した男女間の子)の身分を取得します。(民法809条)
 つまり、養親である男女の間に生まれた子と同じ身分を取得するということです。
 また、養子縁組により養親子の間のみならず、この関係を介して他の血族との間にも法定血族関係が生じます。
 では、どの範囲で血族関係が生じるのでしょうか。

(縁組による親族関係の発生)
民法727条 
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。


 この民法727条の意味することとは、こうです。
 養子縁組により血族関係が生じるのは、親子と養親の血族の間であり、養親と養子の血族の間ではありません。

       他人
  養親の親        実親
   (血族)    (血族)
 養親    養子
    (血族)  


 つまり、養親の親と養子の間柄は直系血族2親等になりますが、養親と養子の実親の間柄は、アカ他人です。

 それでは、ここから事例と共に、具体的に解説して参ります。

事例1
AはZの養子となった。その後、Aには子Bができた。


 さて、この事例1で、ZB間に血族関係は生じるでしょうか?
 結論。生じます。
 養子縁組後の子(A)の子(B)と、養親(Z)の間には血族関係が生じます。
 つまり、養親ZにとってBは孫になります。
 養親子関係が成立してから出生した養子の子は、一度成立した法定血族関係の延長として、血族関係で結ばれます。

事例2
AはZの養子となった。その後、Aには子Bができた。その後、Aが死亡し、その後さらにZが死亡した。


 さて、この事例2で、子BはAを代襲してZを相続するでしょうか?
 これは、養子(A)が死んだ後に養親(Z)が死亡し、養子の子(B)が、養親を相続できるのか?という問題です。
 結論。子Bは養親Zを相続します。
 子が親より先に死亡し、その後に親が死亡したケースで、子に子がいれば、その子(Zから見れば孫であるB)が親を相続します。
 子に代わり孫が相続をする、このケースを代襲相続と言います。
 事例2では、BはAを代襲してZを相続します。

事例3
Aには子Bがいる。その後に、AがZの養子となった。


 さて、この事例3で、ZB間に血族関係は生じるでしょうか?
 結論。血族関係は生じません。
 養子の血族(B)と養親(Z)の間には、法定血族関係が生じません。
 つまり、養子の連れ子と養親の間には血族関係は生じないという事です。この点、事例1との違いにご注意ください。

事例4
Aには子Bがいる。その後に、AがZの養子となった。その後、Aが死亡し、その後さらにZが死亡した。


 さて、この事例4で、BはAを代襲してZを相続するでしょうか?
 結論。BはZを相続しません。
 BはZの血族ではないからです。したがって、代襲相続は生じません。
 これは先述の事例3と同じ理屈です。子Bが養子Aの連れ子だからです。

参考条文
(子及びその代襲者等の相続権)
民法887条2項
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。


 上記、887条2項条文中にある、被相続人の子の子であって「被相続人の直系卑属でない者」とは、養子縁組前の養子の子のことを指しています。つまり、これは事例3、4のBを指します。
 したがって、Bは代襲相続できないとなるのです。

【補足】実親との関係
 養子縁組をした場合に、養子と実親との関係はどうなるのでしょうか?
 養子が、未成年であれば、養親が親権者となります。
 しかし、養子縁組をしても、養子と実親の血族関係が切れる訳ではありません。
 養子の戸籍には養父母と並んで実父母の名が記載され、相変わらず血族1親等の関係が継続します。
 つまり、養子は養父母の相続人でもあるし、実父母の相続人にも該当することとなります。

縁組障害
NG男性
 養子縁組については、婚姻の規定の多くが準用されていて、基本的な考え方は似ている点が多いです。
 そのひとつが、婚姻障害に類似した縁組障害です。
 縁組障害があるにもかかわらず、縁組届が誤って受理された場合には、次に挙げる4を除いて、縁組取消の問題が発生します。
 縁組取消は、婚姻の取消しの場合と同様、家庭裁判所への訴えによります。

 では、以下に、民法が規定する7つの縁組障害を列挙します。

1、養親は成年者であることを要する。(民法792条)
 
2、尊属または年長者を養子とすることはできない。(民法793条)
 例えば、甥が叔父を養子にすることはできません。
 これに対して、孫を養子にするとか、妹を養子にするということは可能です。

3、後見人が被後見人を養子とする場合、家庭裁判所の許可を要する。(民法794条)
 この許可を欠けば、縁組の取消事由となります。

4、配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。
(民法795条、ただし、一方が意思表示できない場合は別論)

 民法は、縁組の問題に関しては、特に未成年者を養子とする場合に細かい規則を置きます。
 成年者を養子とする場合には、基本的に当事者間で合意に達すれば、国家が口を挟む筋合いはありません。
 しかし、未成年者を養子にする場合の話は別です。
 家庭裁判所は子の福祉を第一に考えるからです。
 そして、民法は、未成年者はなるべく二親そろった家庭で育てたいと考えています。
 そこで、この規則を置きました。
 しかし、配偶者の嫡出子を養子とする場合、夫婦そろって縁組はする必要はありません。
 例えば、妻に先夫との嫡出子があり、その子を連れ子として再婚したケースです。この場合には再婚相手の後夫が単独で子と縁組をすることができます。
 しかし、妻の連れ子が非嫡出子であれば、夫婦共同縁組が必要です。
 そうしないと、子が夫の嫡出子、妻の非嫡出子となり、バランスが悪いからです。

【補足】
 養子が成年者であれば、夫婦の片方が養親となる縁組をすることができます。

妻のみが養子となるケース

 養子は養親の氏を称するのが民法の決まりですが(民法810条)、婚姻により夫の氏を称している妻が、単独で養子になる場合はどうでしょう。
 この場合、妻が養親の氏を称すれば、夫婦別姓になってしまいます。
 現行法では夫婦別姓は認められません。そこで、このケースのみは、養子は養親の氏を称せず、夫の氏を名乗ることになっています。(民法810条ただし書)

配偶者のある者(夫or妻がいる者)がする未成年の養子との離縁

 養親が夫婦である場合において未成年者である養子と離縁をするには、夫婦が共にしなければなりません。(民法811条の2 ただし、一方が意思表示ができない場合は別論)。これは、夫婦共同縁組の逆バージョンです。
 なお、養子が成年者であれば、夫婦である養親の片方とだけ離縁をすることができます。離縁をすると、妻子の氏は縁組前の氏に戻るのが原則です(民法816条1項本文)が、この場合、つまり、夫婦の片方との離縁であれば復氏はしません。他方との養親子関係が持続しているからです。(民法816条ただし書)

 縁組障害のうち、民法795条(配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組)のみ、縁組の取消事由となっていません。
 基本的に、配偶者と共にしなかった未成年者との縁組は、取り消すまでもなく無効です。

5、配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。(民法796条 ただし、一方が意思表示できない場合は別論)
 配偶者が養子縁組をすると、相続関係が悪化します。そのため、他方配偶者の同意を要するのです。
 例えば、ABが夫婦である場合、他に相続人がいないとすれば、BはAの全財産を相続します。しかし、AがCを養子とすれば、Aが死亡した場合の相続財産は、BとCが2分の1ずつ取得することになります。
 これは、ほんの一例ですが、夫婦の片方の縁組は、相続関係に変化を及ぼすことになりますので、他方配偶者の同意が必要となります。
 この同意を欠く縁組は、同意をすべき者から取り消すことができます。

6、養子となる者が15歳未満の場合、その法定代理人が未成年者に代わって縁組の承諾をする。(民法797条1項)
 この場合、妻子となる者の父母でその監護をする者または、養子となる者の父母で親権を停止されている者が他にあれば、その者の同意を要します。(民法797条2項)
 民法において、親権者監護者別の概念であり、例えば、父母の離婚後に父が親権者で母が監護者ということがあり得ます。
 この場合、15歳未満の子の、縁組の代諾をするのは親権者(法定代理人)である父ですが、監護者である母の同意がなければ代諾をすることはできません。
 この同意を欠けば、母が縁組を取り消すことが可能です。
 また、父母の双方が親権者でも、例えば、母の親権が停止されているときは、養子縁組の代諾は父が行いますが、これについて母の同意を要することとなります。

法定意思無能力

 養子縁組に関して、15歳未満の者には意思能力が認められません。なので、これらの者が縁組をしても、それは取り消すことのできる縁組ではありません。無効な縁組です。
 そういうわけで、15歳未満の者が縁組をする場合には、その法定代理人が縁組の承諾をします。
 ところで、承諾をした者に代諾権がなかったらどうなるでしょう?
 判例のケースは、他人の子を実子として届け出た者の代諾による縁組です。
 この場合、縁組は無効となりますが、それは無権代理による無効だという考え方になります。したがって、子が15歳に達して、縁組を追認すれば有効な縁組に転化することとなります。

7、未成年者を妻子にする場合、家庭裁判所の許可を要する。(民法798条)

 家庭裁判所は、未成年者の福祉の問題には厳格な対処をします。
 例えば、幼児と養子縁組をしようというようなケースであれば、家庭裁判所のスタッフは、養親の候補者である夫婦の自宅を訪ね、その夫婦の人柄から職場、さらには、どこに幼児を寝かせるのかまで細かく調べあげて、縁組が子供の幸せに繋がるかどうかを綿密にチェックします。
 しかし、未成年者を養子とする場合にも、家庭裁判所の許可が不要な場合があります。それは、自己または配偶者の直系卑属(子、孫等)を養子とするケースです。
 この場合には、子の福祉の上での問題点はないと思われ(他人の養子となるわけではない)、したがって、家庭裁判所の許可が不要なのです。
 なお、自己の子を養子にするという意味がよくわからないかもしれませんが、自己の子が非嫡出子の場合、これと養子縁組をすれば、子が嫡出子の身分を取得できるので、この点に意味と実益があります。

縁組取消しの請求権者とその期間

 まず、基本として、縁組取消しの場合は検察官請求権者に入っていません。
 ここが急所です。(検察官は風紀委員だから性風俗には口を出すが縁組は管轄外)
 次に、縁組取消しの場合、請求期間が6ヶ月というものが多いです。
 この点、婚姻取消しは3ヶ月を基本とすることと比較しましょう。

・詐欺または強迫による縁組の取消しの場合(民法808条1項、747条)
請求権者 詐欺または強迫により縁組をした者
請求期間 詐欺を発見し、強迫を免れてから6ヶ月以内

 上記は、詐欺または強迫により、民法792条2項の同意(法定代理人が代諾する場合の監護者の同意)をした者の取消権についても同様。

・養親が未成年者である場合(民法804条)
請求権者 養親またはその法定代理人
請求期間 養親が成年に達して6ヶ月以内(または追認するまで)

 上記は、養親側の保護を制度趣旨とします。ですので、養子側の請求は認められません。養子も当然に未成年であろうが、こちらの保護は他の制度で十分に図られているからです。

・尊属養子、年長者養子(民法805条)
請求権者 各当事者またはその親族
請求期間 定めなし→瑕疵の治癒があり得ない

・後見人と被後見人の無許可縁組(民法806条)
請求権者 養子またはその実方の親族
請求期間 管理の計算終了後6ヶ月以内(または追認するまで)

 上記は、被後見人の保護を制度趣旨とします。
 提訴権者に「実方」を入れるのは、「養方」の親族を排除する趣旨です。

・配偶者の同意のない縁組(民法806条の2)
請求権者 同意をしていない者
請求期間 縁組を知った後6ヶ月以内(または追認するまで)

・子の監護をすべき者の同意がない場合(民法806条の3)
請求権者 同意をしていない者
請求期間 養子が15歳に達した後6ヶ月以内(または追認するまで)

・養子となる者の父母で親権を停止された者の同意がない場合(民法806条の3)
請求権者 同意をしていない者
請求期間 養子が15歳に達した後6ヶ月(または追認するまで)

・養子が未成年である場合の無許可縁組(民法807条)
請求権者 養子、その実方の親族または養子に代わって縁組の承諾をした者
請求期間 養子が成年に達した後6ヶ月以内(または追認するまで)

配偶者のある者の縁組
主婦
事例5
B女は前配偶者のC子を連れ子としてA男と婚姻をした。なお、子Cは未成年者である。

 
 さて、この事例5で、AがCと縁組する場合、Bの同意を要するでしょうか?
 結論。同意を要します。
 このケース、一見すると、Bにとっては自分の連れ子を再婚相手の養子にしてもらうのはありがたい話であって文句を言う話ではないように思えます。
 しかし、そうではありません。A死亡時の相続関係が変化するので、Bには同意権があります(民法796条)。Bの同意なく縁組をすれば、縁組の取消事由となります。
 なお、このケースは、Aは養親として、Bは実親として子、共にCに対する親権を共同して行うことになります。
 ただし、本事例には例外があり、仮にBがその意思を表示することができない場合は同意を要しません。(民法796条ただし書)

(配偶者のある者の縁組)
民法796条 
配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。


 事例5で、AがCと縁組をする場合にBの同意を要することはわかりました。
 では、家庭裁判所の許可は必要でしょうか?
 結論。AがCと縁組をするのに家庭裁判所の許可は不要です。
 Aは自己の配偶者(B)の子Cと養子縁組をするからです。(民法798条ただし書)

事例6
B女は婚姻外の子Cを連れ子としてA男と婚姻をした。なお、子Cは未成年者である。


 では、この事例6でも、事例5と同じ問題を考えて参ります。  
 まず、AがCと縁組をする場合にBの同意を要するのか?です。
 結論。同意は不要です。この場合は、CがBの非嫡出子であるため、未成年子(C)との縁組は、A男とB女の夫婦による共同縁組となるからです。(民法795条本文)
 つまり、Bは縁組に同意をする立場ではなく、自らもCと縁組をすべき立場です。
 続いて、家庭裁判所の許可を要するのかどうか?ですが、これも不要です。
 Aは自己の配偶者(B)の子と養子縁組をするからです。(民法798条ただし書)

事例7
B女は子Cを連れ子としてA男と婚姻をした。なお、子は成年者である。


 さて、この事例7で、子CがB女の嫡出子である場合、A男と子Cが縁組をする場合、B女の同意を要するでしょうか?
 結論。同意を要します。(民法796条)
 では、子CがB女の非嫡出子の場合はどうでしょうか?
 結露。その場合もB女の同意を要します。(796条)
 この事例7では子Cが成年であるため、夫婦共同縁組が強制されません。A男と子Cの単独縁組が可能となります。そのAC間の単独縁組に対しBが同意権を持つということです。
 同意の結果、子Cは養親Aの嫡出子になり、かつ、実母Bの非嫡出子でもあるという結論になります。

事例8
A男は非嫡出子である子Cを連れ子として、B女と婚姻をした。


 さて、この事例8で、子Cが成年者である場合に、A男が子Cと養子縁組をするにはB女の同意を要するでしょうか?
 結露。同意を要します(民法796条)。子Cが成年であるため、夫婦共同縁組が強制されません。A男と子Cの単独縁組が可能です。
 同意の結果、子Cは養親かつ実親Aの嫡出子となり、BC間の関係は親子ではなく親族1親等となります。
 では、子Cが未成年者である場合はどうでしょう?
 結論。その場合は同意を要しません。事例8は養子が未成年者でありかつA男の非嫡出子ですから、A男とB女の夫婦による共同縁組となるからです。(民法795条本文)
 つまり、B女は縁組に同意をする立場ではなく、自らも子Cと縁組をすべき立場です。

 養親が夫婦である場合に未成年者と縁談をするには、夫婦が共にしなければなりません。(夫婦の一方がその意思を表示することができないときを除く。民法811条の2)
 この規定は、未成年者は二親がいる環境で育てたいという考え方が基本となっています。
 なお、未成年者が離縁をするときに家庭裁判所の許可を要するという規定はありません。
 この点、未成年者の縁組の場合と相違するので注意が必要です。

補足:
情交関係にある者との養子縁組


 縁組が有効であるか無効であるかが争われた事実があります。
 縁組の当事者に男女の情交関係があったという事案です。
 判例は、情交関係が偶発的で、事実上の夫婦同然の関係とはいえず、いわゆる、人目をはばかる関係であったのであれば、この縁組を、縁組意思を欠くとして無効とすることはできないと判示しました。
 情交関係がある者の間でも、養親子関係を構築しようという意思はあり得るという判断です。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
関連記事

【嫡出子と非嫡出子と認知】【嫡出推定】【準正】成年・死後・婚姻外の認知/無効と撤回/非嫡出子の相続権と遺産分割

▼この記事でわかること
嫡出子と非嫡出子
嫡出推定
推定される嫡出子と推定されない嫡出子
嫡出推定の及ばない子
父を定める訴え
認知の基本~成年の認知と死後の認知
認知の無効、認知の撤回、法定代理人の同意
婚姻外の認知
非嫡出子の相続権と遺産分割
準正
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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嫡出子と非嫡出子

 嫡出子とは、婚姻関係の夫婦間の子のことです、
 非嫡出子とは、婚姻していない男女間の子のことです。
 例えば、夫Aと妻Bの子は嫡出子であり、夫Aと愛人Cの子は非嫡出子となります。ですが、嫡出子と非嫡出子はいずれも夫Aの子です。
 嫡出子が夫Aの子となるためにAの認知は不要です。しかし、非嫡出子は認知によって初めて法律上の夫Aの子となります。

非嫡出子と父母

 民法779条は、嫡出でない子は、その父または母がこれを認知することができると規定します。
 通常、問題になるのは父の方です。父が認知をしなければ、子は法律上、父のない子となります。子は母の戸籍に入り、その戸籍上の父の欄は空欄となるのです。
 昔、カルメンマキの「時には母のない子のように」という歌がありましたが、父が認知しない子は「父のない子のように」なってしまいます。なんて余談はさておき...
 これに対して、母と子の関係認知がなくても分娩により当然に発生します。つまり、認知せずとも母と子は(分娩により)法律上の親子となります。

嫡出子

 嫡出子とは、婚姻による子です。
 母の懐胎の期間中、ずっと父母が婚姻中であれば、嫡出子かどうかについての疑義は生じません。
 つまり、父母が婚姻をして1年後に母が父の子を懐胎し、そのまま出産した子が嫡出子であることは誰の目にも明らかです。
 しかし、婚姻してすぐに生まれた子、あるいは離婚後に生まれた子の場合には、果たして嫡出子の身分を取得するのでしょうか?
 この点については、母の懐胎期間のうち、一部でもその父母の婚姻期間に該当すれば嫡出子になると考えることができます。
 例えば、婚姻後すぐに子が出生した、いわゆる出来ちゃった婚の場合でも、嫡出子出生届出は受理されるのが実務の取扱いです。
 また、離婚後の子でも、離婚前に懐胎していれば、嫡出子の身分を取得することができます。
 
 以上、ここまでは、子が父母の子であることを前提としての解説です。
 それでは、父母の子ではない子を嫡出子として届け出るとどうなるのでしょうか?

非嫡出子

事例1
婚姻中の父母が、アカの他人の子を嫡出子として出生届を出した。


 この事例1の場合、父母と子の間に親子関係は生じません。
 この出生届は虚偽の届出あり無効です。
 また、この出生届を養子縁組の意思によるものと考えることもできません。
 そもそも出生と縁組では、その意味するところが違います。
 出生届は自然血族の発生に関する届けであるのに対して、養子縁組は法的血族関係の発生に関する届けであり、その性質がまったく異なるのです。
 
 続いては、こちらの事例をご覧ください。

事例2
婚姻中の父母が、父が愛人に生ませた子を嫡出子として出生届を出した。


 この場合は、父と愛人の子に法律上の親子関係が生じます。
 事例2の場合、愛人の子とはいえ、確かに父の子ではあります。
 そこで、この出生届に認知届としての意味を持たせるのが判例の考え方です。
 出生届には、自己の子であることの申告という意思が含まれていますから、その点で、認知としての効力が発生するということです。
 したがって、事例2の場合は、非嫡出子として法律上の父子関係が生じます。

嫡出推定
妊婦(胎児)
 子の父が誰かは母しかわからない、と言われることがあります。
 これはある意味核心かもしれません。
 そしてこの点は、民法のおいても大きなテーマであり、少々ややこしい規定が存在しています。
 基本的な考え方としては、民法は嫡出推定という制度を設け、夫婦間の子は夫の子であると推定します。(あくまで推定)
 そして、この推定を覆すためには、嫡出否認の訴えという、きわめて厳格な訴訟手続による方式だけを認めています。
 これは、身分関係の安定を優先した民法の態度の現れと言えるでしょう。
 民法の規定はこちらです。

(嫡出否認の訴え)
民法775条 
前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。


(嫡出否認の訴えの出訴期間)
民法777条 
嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない。


 この民法775条と民放777条が、嫡出される子について、夫が「俺の子じゃない」と父子関係を切るための方法を定めた条文です。

 出訴期間は、子の出生を知った時から1年です。
 この期間は、法律実務の感覚からすれば、極めて短いと言えます。
 そして、この期間を経過すれば、夫が子の法律上の関係を切る方法は存在しなくなります。DNA鑑定をしても無駄なことです。

 嫡出否認の訴えの被告(訴える相手)は、子または親権を行う母です。
 通常は、子は幼少であるでしょうから、親権を行う母を被告とします。
 これが存在しない場合、つまり、母がいないか、いても母に親権がない場合には、裁判所が特別代理人を選任します。
 もちろん、特別代理人は子を代理します。子が被告であり、その代理人という意味です。
 しかし、子に意思能力がある場合、または、子が成人している場合(この場合母に親権はない)には、子を被告席に座らせることができます。
 このケースは、夫が子の出生を、出生日からかなりの月日が経ってから初めて知った、そして、その時点から1年以内に嫡出否認の訴えを提起したという極めて例外的な場合です。
 以上が、嫡出否認の訴えの概要です。
 この訴訟は、推定される嫡出子の、その推定をひっくり返すことを目的とします。 

【補足1】親権を行う母を被告とするわけ
 子を代理するのは法定代理人です。
 なので、子に意思能力がなければ、法定代理人が被告となります。
 これが民法の常識です。
 ではなぜ、民法は、この嫡出否認のケースに限り被告を親権を行う母に限定したのでしょうか?
 答えは簡単です。
 ここで先述にもある話が出て来ます。
 そう。子の真実の父は母しか知らない、です。
 事情が本当にわかるのは母しかいないので、原則として母が被告なのです。

【補足2】嫡出の承認
 民法776条は、先述の出訴期間を経過せずとも、夫が子の出生後に、子の嫡出性を承認したときには否認権を失うとしています。
 ここで問題になるのが、子の出生届です。夫が役所で子の嫡出子出生届を出した場合、民法776条のいう嫡出性の承認に該当するのでしょうか?そうだとすれば、夫は子の嫡出性を争うことは不可能になります。
 しかし、判例はこの考え方を採用しません。つまり、夫は戸籍法が定める公法上の義務として出生届を提出した(提出しない場合、過料の規定がある)に過ぎず、その事をもって嫡出性を承認したことにはならないのです。

推定される嫡出子と推定されない嫡出子

 実は、嫡出子には、推定される嫡出子と推定されない嫡出子がいます。
 どちらも、嫡出子には違いないのですが、嫡出否認の制度は、あくまでも推定される嫡出子の嫡出性を否認する制度であり、推定されない嫡出子とは無関係です。
 では、民法は、どういう場合に子の嫡出子の推定(夫の子であるという推定)が働くしているのでしょうか?
 民法の規定はこちらです。

(嫡出の推定)
民法772条 
1項 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2項 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。


 この民法772条の規定により、ある夫婦が存在したとして、その婚姻届を出した日から200日後、そして、離婚、死別、婚姻取消から300日以内に生まれた子が、夫の子と推定される嫡出子となるのです。
 ということは、例えば、デキちゃった婚で婚姻届を出してから半年後(つまり200日以内)に生まれた子がいた場合、この子は嫡出子の身分は取得するが、夫の子であるという推定は働かない子であるということになります。
 この場合に、夫が「この子は俺の子じゃない」と思ったらどうすればいいのでしょうか?
 この子に対しては、嫡出否認の訴えなどという厳格な手続は要しません。
 つまり、民法上の推定を覆そうと汗を流す必要はないのです。
 単に、親子関係不存在確認の訴えを提起し、勝訴すれば父子関係を切ることができます。
 親子関係不存在確認の訴えは、文字通り「この子は俺のじゃない」のでその事実をご確認願います、というだけの意味です。事の性質上、出訴期間の定めなどありません。
 つまり、子の出生を知ってから何年経過しようがこの訴えの提起は可能です。

嫡出推定の及ばない子

 推定の及ばない子と推定されない嫡出子は別の概念です。
 嫡出推定の及ばない子の場合、父母は婚姻中なのです。しかし、それにも関わらず嫡出子の推定が及ばないのです。
 以下に具体例を挙げます。
・明らかに異人種の子
・夫が長期海外出張中の子
・夫に生殖機能がないことが医学的に明らかな場合
 こういう事例では、子には嫡出推定が及びません。
 したがって、夫による「この子は俺の子じゃない」という主張は、親子関係の不存在確認という形ですることができます。

父を定める訴え
裁判所
 再婚禁止期間中に女が再婚をし、この婚姻届が誤って受理されると、その後に出生した子の出生日が「前婚の解消または取消しから300日以内」であり「後婚の成立の日から200日を経過した後」、という困った事態が生じ得ます。
 子の嫡出推定が重なり、前婚と後婚の双方の父の嫡出子と推定されてしまう訳です。
 この場合、民法773条は、裁判所がその子の父を定めると規定しています。
 これを、父を定める訴えと言います。
 この訴えに出訴期間の定めはありません。(何年経過しようが訴え可能)

認知

 認知は、戸籍の届出によってします。(民法781条1項)
 また、遺言によりすることができます。(民法781条2項)
 民法は、遺言によりすることができることを厳格に定めます。
 それは、遺言は、相続がらみの問題を生じるので、紛争を避けるために遺言の要式やその内容をきっちりと決めておく必要があるからです。

 遺言による認知を認めた趣旨は、父である男の側に、生きている間は認知をしにくいという事情もあろうかという点を考慮してのことです。
 認知は、戸籍に記載されますから、万一、愛人の子の存在が妻に知れたら「男は非常に困る」ことがあり得るのです。
 そこで、妻に怒られる心配のない、死と同時の認知を制度化したのです。
 認知により子は父を相続することができますから、子の福祉にも適うわけです。

成年の子の認知

 成年の子は、その承諾がなければこれを認知することはできません(民法782条)。これは、例えば、父が成人した子を認知する場合の規定です。
 子はすでに成人しています。したがって、父による扶養の必要はないと考えられます。
 しかし、今後、父は老います。したがって、認知により父子間に血族関係が生じると子の父への扶養義務が生じ得ます。
 つまり、成人の子を認知するということは、父は自らは子の扶養をしなかったにもかかわらず、その老後の扶養を子に求めることになりかねません。それはつまり、父の身勝手とも言えるので、認知をするために子の承諾がいるとされています。 

死後の認知

 続いて、次のような場合の認知はどうなるのでしょうか?

事例3
A男には婚姻外の子がいたが、幼少時に死亡した。


 この事例3は、婚姻していない男女の間に生まれた幼い子供がいたが、まだ幼いうちにその子が死亡してしまった、という話です。
 さて、ではA男は、子の死後に認知をすることができるのでしょうか?
 結論。認知をすることはできません。
 子の死後においては、通常の場合、認知をすることはできないのです、
 なぜなら、認知できたとしても、子が扶養を受けることもなく、子が父を相続することもありません。
 つまり、子の死後に認知をすることができても、子にとって実益がないのです。
 しかし、子にも子がいるケースは例外です。
 例えば、A男に成人の子がいて、その子にも子(A男にとっての孫)がいるケースです。
 この場合、父が子を認知することにより、父と孫が直系血族となります。となると、孫は父に扶養を請求できますし、また孫が父を相続することもできます。
 つまり、このケースなら、孫の福祉に適うから死後の子の認知が認められるのです。(民法783条2項)
 しかし、先述の成人の子の場合と同様、孫が成人であれば、その者の承諾がなければ認知をすることはできません。
 認知をするには、父または母が未成年者または成年被後見人であっても、その法定代理人の同意は要しません。(民法780条)
 身分行為については、本人に意思能力があれば、その意思によるべきであり、第三者の同意はなじまないのが原則なのです。

色々な認知
認知の無効、認知の撤回、法定代理人の同意


 ここから、さらに認知の様々なケースについて、事例とともに解説して参ります。
 なお、Aが父、Bが子、という前提です。

事例4
第三者が父Aの名を語り認知届を出した。なお、父Aと子Bの間には真実の父子関係かある。

 
 さて、この事例での認知は有効でしょうか?
 結論、この認知届は無効です。
 認知は、法律上の父子関係を創設する意思表示と考えられますから、認知者本人の意思に基づかなければ無効です。
 つまり、認知とは、単に父子であるという事実の申告ではなく、法律上の父子になろうという意思の申告なのです。

事例5
父Aが認知届を出した後死亡した。


 さて、この事例で、父Aと子Bの間に父子関係がない場合、子Bは認知の無効を主張できるでしょうか?
 結論。認知の無効を主張できます。
 届出上の父子間に実際の血縁関係が存在しないので、認知は無効なのです。
 父の生前は父を被告として、父の死後は検察官を被告として、子Bは上記の無効主張をすることになります。
 この事例5では、父は死亡しており、その代理人という存在はあり得ませんから、やむを得ず検察官が被告(無効主張する相手)となります。

参考条文
(認知に対する反対の事実の主張)
民法786条 
子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。


事例6
父Aは認知届を出した。しかし、その後に気が変わった。


 さて、この事例で、父Aは認知の撤回をすることはできるでしょうか?
 結論。一度した認知の撤回は不可能です。
 認知をした父または母は、その認知を取り消すことができません。(民法785)
 ここに言う取消しとは、撤回の意味であると解釈されています。

事例7
未成年の父Aは、子Bの認知をしようとした。


 さて、この事例で、未成年の父Aは、子の認知をするために法定代理人の同意を要するでしょうか?
 結論。法定代理人の同意は要しません。
 民法780条の規定「認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない」により、父が未成年であっても、法定代理人の同意は要しません。

認知と子の氏
赤ちゃん
 民法790条2項は、嫡出でない子は母の氏を称すると規定しています。
 婚姻外の子は母の戸籍に入り、母と同じ氏を称します。
 さて、ここで父が認知をするとどうなるのでしょうか?
 どうにもなりません。
 子の氏は、子に独立のものですから影響を受けないのです。
 しかし、この場合は、子が父または母と氏を異にする場合に該当しますから、家庭裁判所の許可を得て、父の氏に変えることができます。(民法791条1項)
 このケースでは、父母が婚姻中ではありませんから、家庭裁判所の許可は必須です。
 また、父が子を認知しても親権者は母のままですが、父母の協議で父を親権者と定めたときは、父が親権者となります。(民法819条4項)

【補足】胎児の認知
 父が胎児の認知をすることは可能です。しかし、そのために母の承諾を要します。
 常識的に考えても「お前のお腹の子は俺の子だ」という態度は、女性に対して失礼ですよね。なので、母の承諾を要するのです。(民法783条1項)

婚姻外の認知

事例8
A男とB子が、内縁関係を始めて、200日経過後に娘Cが出生した。


 さて、この事例で、娘CはA男の子と推定されるでしょうか?
 まず、この問題は嫡出推定の話とは直接の関係はありません。
 なぜなら、A男とB子が法律上の夫婦ではないので、嫡出子になるわけはないのです
 しかし、この場合、判例は、娘CはA男の子であると事実上推定されるとしています。
 すなわち、AC間に血の繋がりがあるかどうかが、裁判上の争点となったとき、事実上の問題として、娘CはA男の子と推定され、これを否定する場合、A男の側に親子ではないことの立証が求められることになります。

事例9
A男とB子の間に、婚姻外の娘Cがいる。しかし、A男は認知をしない。


 さて、この事例で、娘CからA男に対して認知を強制することはできるでしょうか?
 結論。できます。強制認知という方法が存在します。
 民法の規定はこちらです。

(認知の訴え)
民法787条 
子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。


 上記、民法787条の規定により、この訴訟は、父が生存中であれば、いつでも提起することができます。
 この場合、父子間に血縁関係が存在するかどうかが争点となります。

事例10
A男とB子の間に、婚姻外の娘Cがいる。その後、A男が死亡した。


 さて、この事例で、娘CがA男の認知を求めることはできるでしょうか?
 結論。父または母の死亡後は、死亡の日から3年間に限り、認知の訴えを提起することができます。(民法787条ただし書)
 この訴えの被告は検察官です。民法上、死者の代理人は考えにくいからです。(代理は本人に権利義務を帰属させる制度です。死者には権利能力がないからその代理という仕組みは基本的に存在しません)
 なお、訴えが可能な時期は、死亡後3年までであり、子が父の死亡の事実を知った時から3年ではありません。

【補足】
父の死後に強制認知をした非嫡出子の相続権

 認知の効力は子の出生にさかのぼります。(民法784条)
 したがって、死後に認知された場合でも、子は出生のときから父の子です。
 つまり、父の死亡時にも子として存在したことになります。なので、父の死後に強制認知をした非嫡出子には相続権が発生します。

非嫡出子の相続権と遺産分割
指差し男性
 遺産分割とは、共同相続人が死者の遺産分けをすることを言います。あの土地は長男、株は次男、預貯金は三男という具合です。
 遺産分割は、相続人全員でしなければその効力を発生しません。
 なので、例えば、死者が生前に認知した非嫡出子の存在を知らずに(まさか故人に愛人の子がいるとは知らなかったケース)、他の共同相続人が遺産分割をしても、それは無効です。
 しかし、相続の開始後、認知によって相続人となった者がいる場合、つまり、典型的には死後の強制認知の場合に、他の共同相続人が認知前にした遺産分割協議は無効とはなりません。(民法910条)
 この場合には、認知された子は価額のみによる支払の請求額を有することになります。
 すなわち、他の共同相続人の遺産分けは有効だが、認知された子の取り分はお金を渡すという形になるわけです。

【補足】胎児の権利能力

 胎児は認知の訴えの提起はできません。
 それは、認知の訴えの提訴権者が「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人」と規定されているから(民法787条)でもありますが、一般論として胎児には権利能力がないので、訴訟の場合に、訴状に原告胎児とは書けないからとも言えます。
 なお、例外的に、次のケースでは、胎児の権利能力が認められています。いずれも、生まれてくる子の財産を確保しようという趣旨の規定です。
・不法行為の損害賠償請求権(民法721条)胎児が加害者に損害賠償請求をすることができる。
・相続権(民法886条1項)胎児の相続権が認められます。
・受遺能力(民法965条)胎児に対する遺贈は有効である。

準正

 準正は、非嫡出子が、嫡出子の身分を取得する仕組みです。
 その要件は次の2つです。
・父母が婚姻すること
・父が子を認知すること
 上記2つの要件がそろえば、例外なく、子は嫡出子の身分を取得します。
 元々、婚姻中の父母の子であれば、嫡出子の身分を取得できますので、父母の婚姻、認知の2つの要件が時期をずらして満たされた場合でも、子が嫡出子となるという仕組みです。

 婚姻によって準正が生じる場合、つまり、認知先行型を婚姻準正と言います。
(準正)
民法789条1項
父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する。


 認知によって準正が生じる場合、つまり、婚姻先行型を認知準正と言います。
(準正)
民法789条2項
婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得する。


 この民法789条の条文が言っていることは極めて明快です。
 1項の認知先行型、すなわち婚姻準正の場合は、婚姻により非嫡出子は嫡出子となります。
 2項の婚姻先行型、すなわち認知準正の場合は、認知により非嫡出子は嫡出子となります。

 では、どの場合に準正が生じ得るのか?いくつかのケースに分けて解説して参ります。

1・父が死亡した場合

 これは、例えば、子の出生後に父母が婚姻し(この時点では父が子を認知していないから父と子の関係は姻族1親等であり法律上の親子関係は存在しない)、その後に父が死亡した場合です。
 一例として、父の死後3年以内に子が認知の訴えを提起し、これが認められれば認知準正が生じます。

2・母が死亡した場合

 準正が生じる事があり得ます。
 例えば、子の出生後に父母が婚姻し、その後に母が死亡したとします。
 その後、父が子を認知すれば準正が生じ、子は嫡出子の身分を取得します。

3・子が死亡した場合

 準正が生じる事があり得ます。
 例えば、子の出生後に父母が婚姻し、その後に子が死亡したが、その子にさらに子(父母から見れば孫)がいたため、父が死亡した子を認知することができたケースです。

〈参考条文〉
民法789条3項
前二項の規定は、子が既に死亡していた場合について準用する。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
関連記事

【財産分与と離婚と慰謝料】【財産分与と内縁】【損害賠償請求と財産分与請求】内縁の妻が相続財産を承継する方法?

▼この記事でわかること
財産分与の基本
離婚の時期と慰謝料
財産分与と詐害行為取消権と債権者代位権
財産分与と内縁
損害賠償請求と財産分与請求
内縁の妻が夫の相続財産を承継する方法
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。 
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財産分与の基本

 協議上の離婚(裁判じゃない離婚)をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができます。(民法768条1項)
 なお、この民法の規定は、裁判上の離婚と婚姻解消の双方に準用があります。(民法771条、749条)
 つまり、裁判上の離婚でも婚姻解消でも、財産分与を請求できるということです。
 したかって、裁判上の離婚でも婚姻解消の場合でも、協議離婚の場合と同様に財産分与の問題が生じることになります。

[参考]婚姻取消に準用される離婚の条文(民法749条)
・姻族関係の終了(民法728条1項)
・離婚後の子の監護に関する事項の定め(民法766条)
・離婚による復氏等(民法767条)
・財産分与(民法768条)
・離婚による復氏の際の権利の承継(民法769条)
・子の出生前の離婚と子の氏(民法790条1項ただし書)
・離婚の場合の親権者(民法819条2項、3項、5項、6項)

 財産分与は、婚姻中の共同財産の分配と、離婚後の一方当事者の生計を図ることを目的とします。
 世の中で多いケースは、男が元妻に財産分与をするというケースです。
 ですので、そのケースに沿って解説して参ります。

 夫が婚姻中に「自己の名で得た」財産であっても、分与の対象になります。
 妻の内助の功を評価するわけです。
 財産分与の制度は、元妻の夫に対する扶養請求権という実質を持ちます。
 もちろん、未成年子がいてその子を妻が育てるのであれば、その成人までの養育費も含まれます。
 つまり、財産分与は、国が元妻の生活保護をしなくてもいいようにという、国家財政にとって都合のよい制度です。
 そういう趣旨ですから、財産分与の問題については、男の側の有責性は要件ではありません。
 男の側に落ち度がなくても、元妻は財産分与の請求をすることができます。
 なお、財産分与は、当事者の協議により行いますが、協議が調わない、あるいは、協議そのものができない場合には、家庭裁判所に、協議に代わる処分を請求することができます。
 しかし、これには期間制限があり、「離婚の時から2年」を経過すると、財産分与の協議に代わる処分を、家庭裁判所に請求することができなくなります。(民法768条2項)

財産分与と離婚の時期

 財産分与請求権は、離婚により生じます。
 その証拠に、民法768条1項には、協議上の離婚をした者は~財産分与を請求できると書いてあります。
 したがって、実際に分与するのは、離婚後です。
 仮に、離婚前に分与をすれば、税務署はこれを夫婦間の贈与とみなし、贈与税を賦課します。
 贈与税は税率が高いです。ですので、実務上も、離婚届→財産分与の順が当たり前の順序です。
 なお、離婚前に財産分与の協議が成立した場合、その効果は離婚の時に発生すると考えられています。
 この場合(例えば夫所有のマンションの所有権を元妻に財産分与した場合)の登記原因日付は、離婚の日(離婚届を出した日)になります。

財産分与と慰謝料

 離婚の際の財産分与と慰謝料はごっちゃに考えがちですが、一応は、別のものと考えられます。
 慰謝料というのは、不法行為における精神的損害の賠償のことです。
 ですので、慰謝料の場合には、男の側の有責性(故意・過失)が要件となります。
 つまり、責任がないのであれば慰謝する必要なし、というのがこの場合の考え方なのです。

判例の考え方

 判例は、財産分与と慰謝料は別物であると考えています。
 両者は性質が違うので、財産分与後に慰謝料の請求をすることもできます。
 しかし、判例は、財産分与の範囲を広く取る傾向にあります。
 そして、すでにした財産分与の中に、実質的に慰謝料分が含まれる場合があり、この場合は、重ねて慰謝料の請求をすることはできないという結論を取ります。

財産分与と詐害行為取消権

 財産分与により分与者の財産が減少する場合に、その者に対する債権者が財産分与を詐欺行為として取り消すことができるのでしょうか?
 判例は、一般的にはこれを否定します。離婚に伴う元妻や子の養育費が、夫の債権者に優先するということです。
 しかし、財産分与が不相当に過大であり、財産分与に仮託してなされた財産の処分であると認められる特段の事情がある場合に限り、詐害行為取消権の対象になり得るとしています。

財産分与と債権者代位権

 離婚に伴う財産分与請求権を被保全債権として、債権者代位権の行使は可能なのでしょうか?
 わかりやすく言えば、離婚の際の離婚相手に対する「その財産分けてよこせ」という財産分与請求権(すなわち債権)を持つ債務者に対して、その債権を、債権者は代位行使できるのか?(すなわち債権者代位権を行使できるのか?)という事です。
 この問題について判例は、当事者間の協議または審判により財産分与請求権の内容が具体化するまでは、単に財産分与といっても、その範囲が不明確であり、したがって、そうした段階での債権者代位権の行使はすることができないとしています。
 これは、どういう財産の分与を受けるかという点が不明瞭のまま、単なる将来の見込みに基づく債権者代位権の行使はできないという趣旨です。
 まあ、これは当然と言えば当然と言えます。どんな財産をどれだけ受かられるかもハッキリしていない債権について「これぐらいはもらえるんじゃね?」という見込みだけで、債権者代位権の行使を可能としてしまうのはアカンやろ?という話です。

財産分与と内縁
離婚
 内縁とは、事実上の婚姻ではあるが、婚姻届を欠く場合を言います。
 例えば、10年間同棲しているが婚姻届は出していない、みたいな男女です。
 婚姻届が出されていない以上、これは法律上の婚姻とは認められません。
 いくら二人が愛を育んでいようとも関係ありません。
 では、法律上の婚姻と内縁の違いとは何でしょうか?
 法律上の婚姻と内縁の決定的な違いは、内縁の場合には、お互いがお互いを相続しないということです。
 法律上の婚姻においては、配偶者(パートナー)は当然に相続人となりますから、この点は大きな違いです。

 実は、民法には、内縁に関する条文は存在しません。
 しかし、世の中には内縁という状態も数多く存在しますから、これに関する裁判例も多く存在します。
 そして、この数々の裁判例が判例法となって、民法の不備を補完する形となっています。
 その際の裁判所の基本的な考え方は、内縁においても、事実上の婚姻生活は存在するわけですから、なるべく、法律婚に関する条文を類推して適用しようということです。
 最初に挙げた相互の相続権(お互いがお互いを相続する権利)は、その性質上、法律婚にしか認められません。(そうでなければ戸籍において相続人を確定しようとする民法の理想に反します)
 しかし、性質上、類推可能な条文、つまり、婚姻届の存在が必須の前提条件であるとは考えられない規定は、そのまま内縁関係にも適用をするといのうが判例の基本的な方向性です。

損害賠償請求と財産分与請求

事例1
AはBとの内縁関係を不当に破棄した。


 さて、この事例で、BはAに損害賠償請求をすることができるでしょうか?
 結論。損害賠償請求は可能です。
 その根拠として、婚姻予約の不履行または不法行為を理由として損害賠償を請求できるという判例が存在します。
 この点、離婚に際して、一方から他方への損害賠償請求があり得ることと同様です。
 また、内縁関係に不当な干渉をしてこれを破綻させた第三者が、不法行為による損害賠償責任を負うという判例もあります。 

 続いては、こちらの事例をご覧ください。

事例2
AとBは内縁関係を解消した。


 さて、この事例2で、BはAに対して財産分与の請求をすることができるでしょうか?
 結論。BはAに対して財産分与の請求は可能です。
 離婚のケースで財産分与請求ができるのと同様、内縁の解消の場合でも財産分与の請求は可能なのです。
 ただし、死別の場合、すなわち当事者の一方が死亡した場合には、財産分与請求はできないという判例があります。
 死別の場合に財産分与を認めると、事実上、内縁の者に相続権を与えたのと同様の結論となり、相続に関する民法の基本的な理念に反することになるからです。

 なお、内縁に類推適用される規定は他にもあります。
・婚姻費用の分担(民法760条)
・日常家事債務の連帯責任(民法761条)
・夫婦別産制(民法762条)
 上記の規定も、内縁に類推適用されます。

オマケ:内縁の妻が夫の相続財産を承継する方法
ここがポイント女性
 裏技という訳でもないですが、一応、内縁の妻が相続財産を承継する方法はあるっちゃあります。
 その方法を以下に解説します。

・夫に相続人がいる場合
 内縁の妻には相続権がありません。夫の財産を相続することはできません。
 この場合、夫の生前に「内縁の妻に遺贈する」という遺言を書いてもらうことが、内縁の妻に残された、夫の相続財産を承継するための最終手段だと言えます。
 逆に言えば、遺言が存在せず、生前の贈与または死因贈与を受けていなければもうお手上げです。

・夫に相続人がいない場合
 相続人が存在しない場合、内縁の妻は、その特別縁故者として夫の相続財産の付与の審判を求める申立てを家庭裁判所に対してすることができます。(民法958条の3)
 この申立てを家庭裁判所が認めれば、内縁の妻が夫の財産を承継することが可能になります。

 内縁の妻の方は、上記の方法で、夫の相続財産を承継することができますので、早めに手を打っておいた方が良いかもしれません(笑)。

【補足】
 相続人が不存在の場合に、家庭裁判所が相続財産を取得させる審判をすることができる特別縁故者とは以下の者です。(民法958条の3)
・被相続人と生計を同じくしていた者(内縁の妻はここに含まれます)
・被相続人の療養看護に努めた者(ここには法人も含まれます。例:福祉法人など)
・その他被相続人と特別の縁故があった者
 なお、上記の特別縁故者からの相続財産付与の申立てがないか、または、その請求が家庭裁判所に認められなかった場合、被相続人の財産は、原則として国庫に帰属します。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
関連記事

【婚姻解消~離婚と死別】【子の氏】【協議離婚と裁判上の離婚】【有責配偶者からの離婚請求】をわかりやすく解説!

▼この記事でわかること
死別による婚姻解消
離婚による婚姻解消
子の氏について
協議離婚と裁判上の離婚
有責配偶者(不貞した側)からの離婚請求
裁判による婚姻
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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婚姻の解消~離婚と死別

 離婚によるものも死別によるものも、婚姻は解消します。
 しかし、その後の状況はそれぞれ異なります。
 では、一体どう違うのか?ひとつひとつ解説して参ります。
 なお、前提として、婚姻により妻が夫の氏を名乗るパターンで解説することをあらかじめご了承ください。
 夫婦別姓だなんだなどと議論に挙がる世の中ではありますが、これは一般的にイメージしやすくするためですので、余計な思考は及ばせないでください。(現行法では婚姻する場合どちらかの氏を双方が名乗ることになる←民法750条)

死別の場合

 死別の場合、婚姻を解消しようという当事者の意思が存在しません。
 そこで、当事者の一方が死亡しても諸々の事情はそのまま存続し、何も変化がないことが原則です。
1・婚姻により生じた姻族関係はそのまま
2・夫が死亡した場合の妻のもそのまま
 しかし、いずれの場合においても、生存配偶者の側で上記の関係を変化させることができます。

1について
 生存配偶者は、いつでも姻族関係を終了させる意思表示をすることができます。
 俗にわかりやすく言えば、残された妻が憎き姑との縁を切るということです。(民法728条2項は、姻族関係終了の意思表示をすることができる期間を規定していません。したがって「いつでも」できます)
 なお、民法は、生存配偶者(例えば生きている妻)からの姻族関係終了の意思表示だけを規定しています。したがって、姑(例えば死んだ夫の母)の側から姻族関係を切る手続きは存在しません。
 つまり、残された妻側から姑に対して姻族関係の縁を切ることはできても、姑の側からはできません。

2について
 妻はいつでも、婚姻前の氏に復する事ができます。(民法751条1項)
 つまり、夫と死別した妻は、いつでも旧姓に戻る事もできますし、そのまま夫の姓を名乗る事も可能です。

【補足】
 身分行為の問題は必ずしも連動しません。生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をしても、氏は従来のままです。また、婚姻前の氏に復氏はしますが、姻族関係は切らないということも可能です。

離婚の場合

 離婚は、協議による場合も訴えによる場合も、いずれも、当事者における相手方配偶者との関係を絶つという明確な意思が存在します。
 そこで、従来の状況が変化することが原則です。

1・婚姻により生じた姻族関係は一挙に解消します。(民法728条1項)
 当然のことながら、離婚をした夫婦は、お互いがお互いを相続しません。

2・妻の氏は、当然に姻前の氏に復します。(民法767条1項)

 しかし、2についてのみ、次の例外が存在します。
 離婚により婚姻前の氏に復した者は、離婚の日から3ヶ月以内に限り戸籍の届出をすることにより、離婚の際に称していた氏を称することができます。(民法767条2時)
 つまり、離婚をした場合でも、妻は上記の3ヶ月以内の届出により、元夫の氏を名乗ることができます。

 ところで、この離婚の際の復氏の届けは、実務上、数多く存在します。
 その理由とは?
 離婚とは、相手と関係を絶つことなので、婚姻前の氏に復帰したいのが当然と考えられるところ、わざわざ元夫の氏になりますという届出をする人は、相当数存在します。
 これは、夫婦間に子供がいるケースです。
 これについて、順を追って解説して参ります。
 
 まず、夫婦間に子がいるとします。
 ここで、夫婦が離婚すると、妻の氏は、先述の3ヶ月以内の届出をしない限りは、婚姻前の氏に復します。
 では、この場合、子供の氏はどうなるのでしょうか?
 もちろん、変化はありません。
 つまり、子供は夫の氏のままなのです。
 そうすると、離婚後の妻の氏と子の氏が異なってしまうことになるのです。

【補足】
 民法790条1項は、子の出生前に父母が離婚した場合、生まれた子は、離婚の際における父母の氏(通常は夫の氏)を称するとしています。つまり、この場合にも、離婚後の妻と子の氏の齟齬が生じる(妻の氏と子の氏が異なってしまう)ことがあり得ます。
 なお、嫡出でない子(婚姻していない男女間の子)は母の氏を称します(民法790条2項)。このケースは、母を筆頭者とする戸籍に父の欄が空白のまま、子が記載されます。

 このように、妻が夫の氏を名乗る通常の婚姻のケースにおいては、離婚により母と子の氏が異なることになるのです。
 この事態を嫌えば、子を母の氏とするか、逆に母が子の氏になるしか手がありません。
 そして、この場合に、子を母の氏とすることが難しいのです。
 民法791条1項は
「子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる」
と規定しています。
 つまり、子の氏を婚姻前の母の氏にしようとすれば、この点についての家庭裁判所の許可必要なのです。
 これが、離婚後に子の氏を母の氏にそろえることが難しい理由です。
 そこで、この方法をらとらずに、母が子の氏(元夫の氏)を名乗ることにより母子の氏をそろえるのが、こうしたケースの一般的な形となるのです。
 こちらの方は、家庭裁判所の許可は不要であり、離婚から3ヶ月以内に届出をすれば簡単に母が元夫の氏を称することができるからです。

【親権と氏】
 双方にも直接の関係はありません。例えば、離婚後に母子の氏が異なっても、母が親権者であることは可能です。
 母子の氏をそろえたい思うのは母子の情の問題であり、親権等の身分上の問題とは直接の関係はないのです。

父母が婚姻中の子の氏

 民法は、子を独立の人格と考え(戦前の家制度の否定)、子の氏は子独自のものと考えています。なので、父母の婚姻中にも子の氏と父母の氏が異なるという事態はあり得ます。
 例えば、婚姻中の父母が第三者の養子になるケースがあります。この場合、養子は養親の氏を称するので、父母は縁組をした相手方の養親の氏を称することになります。
 しかし、子の氏は変わりません。従前のままです。
 結婚した夫婦が第三者の養子になるという稀なケースですが、その夫婦は養親の氏を名乗ることになるので、その結果、父母の氏と子の氏(その夫婦とその子の氏)に齟齬が生じる訳です。
 ですが、この場合には、簡単に子の氏を父母の氏にそろえることができます。民法791条2項は、父母が婚姻中に限り、家庭裁判所の許可なく戸籍の届出により子の氏を父母の氏とすることができると規定しています。

未成年の子の氏

 子が15歳未満の場合、民法791条1項(父母婚姻外:要:家裁の許可)の規定による子の氏の変更は、その法定代理人(通常は親)が子に代わってすることができます。(民法791条3項)
 問題はこの後です。
 民法791条1~3項の規定により、子が氏を改めた場合、子は成年に達した時から1年以内に戸籍の届出をして従前の氏に復することができます。(民法791条4項)
 これなども、子の氏は子の人格の現れであり、親とは別の人格主体であるという民法の個人主義の現れの条文であると言えます。

協議離婚と裁判上の離婚
裁判所
 離婚には、協議によるものと、裁判によるものが存在します。
 夫婦は、その協議で離婚をすることができます。(民法763条)
 しかし、相手方が協議に応じない場合や、離婚に合意しない場合には、裁判によって離婚するしか手がありません。

※注意:離婚と婚姻取消しの違い
 離婚は、婚姻自体に瑕疵(欠陥)はないが、その後の事情により夫婦が別れるケースです。一方、婚姻取消しは、婚姻の成立そのものに瑕疵(欠陥)があるケースです。

 裁判上の離婚原因は次の5つです。(民法770条)
・配偶者に不貞な行為があったとき(例えば不倫など浮気)
・配偶者から悪意で遺棄されたとき
・配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
・その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

裁量棄却

 裁判上の離婚については、他の訴訟においては考えにくい状況が生じることがあります。
 それは、裁判所による裁量棄却という制度です。
 通常、裁判は、原告側の主張がもっともだということになれば原告が勝ちます。民法の条文に書いてある法律要件にあたる事実が存在すれば、その法律効果が発生し原告が勝訴します。
 この原理によれば、民法770条が、離婚原因に配偶者の不貞を挙げているのだから、離婚の訴えを提起した者が、相手方配偶者の不貞(俗に言う浮気)の事実を証明すれば、原告勝訴、すなわち、離婚請求は認められるはずです。
 しかし、民法770条2項は、この場合であっても、すなわち、浮気の事実など先述の離婚原因が認められても「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるとき」は、離婚の請求を棄却することができると規定しています。
 もっとわかりやすく噛み砕いて言うと、離婚したいと訴える原告の主張はもっともでも、原告を負けとして離婚を認めないという判決を出してもよいと、民法に規定されているのです。
 これを裁量棄却と言います。
 要するに、裁判官の裁量で請求を棄却することができる制度という訳です。
 具体例をあげればこうです、
 確かに夫は浮気した。しかし、一度きりの過ちであるし本人も深く反省している。また、二人の間にいるまだ幼少の子どもの福祉を考えれば、必ずしも離婚という結論が適切とは言えないと裁判官が判断すれば、妻からの離婚請求を棄却することが可能。

【補足】
 裁量棄却は、離縁の訴え(民法814条2項、770条2項)や株主総会決議取消の訴え(会社法831条2項)などでもあります。

有責配偶者からの離婚請求

 裁判上の離婚について、有責配偶者からの離婚請求は可能なのでしょうか?
 これはどういう事かといいますと、浮気した夫(あるいは妻)側から、離婚原因(配偶者の不貞)が存在するということを理由に、妻(あるいは夫)との離婚の訴えを提起することができるのか?という話です。
 わかりやすく言えば、浮気をしたなど不貞行為を働いた側から離婚請求ができるのか?という事です。
 この点について、有責配偶者(不貞行為を働いた側)からの離婚請求は認められないという考え方が一般的です。
 テメーで離婚原因を作りながら相手方に離婚を迫るなんてアカンやろ?という考え方です。
 これを有責主義と言います。
 一般論として、判例もこの立場と考えて間違いありません。
 つまり、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。
 まあ、これは当然と言えば当然ですよね。どのツラ下げて離婚請求しとんねん、て感じですからね(笑)。盗っ人猛々しいというか。

 しかし、次の特殊な事例において、判例では有責配偶者(不貞をした夫)からの離婚請求を認めています。

・夫婦がその年齢および同居期間と対比して相当の長期間別居している(具体的には同居10年、別居36年だった)
・夫婦間に未成熟の子がいない(上記別居期間から当然のことながら、事例においては未成熟子(幼い子供)はいない)
・相手方配偶者が離婚によって極めて過酷な状況に置かれる等、離婚請求により認容が著しく社会正義に反する特段の事情がある場合ではない(離婚により妻が過酷な状況に置かれるとは言えないという意味)

 上記3つの要素がそろえば、有責配偶者からの請求であるという一事をもって、離婚請求が許されないとすることはできないと判例は言っています。
 夫婦共同生活が事実上破綻している場合には、たとえ、有責配偶者からの離婚請求であっても認めてもよいという考え方を破綻主義と言います。
 破綻主義とは、なんだか坂口安吾なんかを思い起こさせるようなインパクトのある言葉ですよね(笑)。

【補足】
 配偶者の生死が不明の場合、裁判上の離婚原因にもなり得るが、失踪宣告(民法30条)の要件を満たせば、家庭裁判所に失踪宣告を求めることができる。この場合には、失踪者は死亡したものとみなされるから(民法31条)、財産法上は相続が発生し、身分法上は婚姻が死別により解消し、残された一方配偶者の再婚が可能となります。

裁判による婚姻

 ここまで、裁判等による離婚について解説して参りましたが、逆に、裁判による婚姻はあるのでしょうか?
 これについては、裁判所に婚姻を請求することはできないと考えられます。
 判例においては、内縁の妻が婚約の強制履行(すなわち婚姻の成立)を求めた裁判で、この請求を棄却しました。
 婚姻を成立させるかどうかは、あくまで、届出時の当事者の自由意思に任せるという趣旨です。
 当たり前と言えば当たり前の結論ですよね。仮にこの婚姻を認めたとしても、後に今度は離婚だなんだで揉めることが目に見えて明らかですし。
 なお、身分法上の問題として、婚約の強制履行はできませんが、婚約の不当な破棄が財産法上、婚姻予約の不履行または不法行為による損害賠償の問題を生じ得ることはあります。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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