【第三者による弁済】債務者以外の弁済?債務者の意思に反する場合は?債権者は拒絶できる?

▼この記事でわかること
第三者による弁済とは
債務者の意思に反する弁済
債権者の拒絶
債権者が受領(第三者弁済)を拒めないとき
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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第三者による弁済の基本

 第三者による弁済とは、債務者以外の者がその債務の弁済をすることです。
 第三者の弁済は、民法上も認められています。そして、債権者はこれを拒めません。
 ただし、次の場合、第三者は弁済をすることができません。

・当事者が第三者の弁済を禁じたとき
・債務の性質が第三者の弁済を許さないとき

・当事者が第三者の弁済を禁じたとき
 これは、当事者間で「第三者弁済禁止特約」というような約定をしているときです。そのようなときは、そもそも第三者は弁済をすることはできなくなります。

・債務の性質が第三者の弁済を許さないとき
 これは、有名画家が絵を描く債務などが当てはまります。(その有名画家本人が描かないと意味がないから)

 ここまでが、第三者による弁済の超基本です。
 そして、第三者による弁済で本格的に問題となってくるのは、あるケースにおいて、その第三者弁済が有効かどうかと、債権者が受領を拒めるかどうかです。

債務者の意思に反する弁済

事例
Cは、債務者Bの意思に反して債権者Aに弁済をした。


 さて、この事例で、第三者Cの弁済は有効でしょうか?
 まず、「第三者弁済禁止特約」のような約定がない場合でも、正当利益のない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることはできません。(民法474条2項)(正当利益のない第三者とは、法律上の利害関係がない第三者という意味と考えて良い)
 これが基本です。
 しかし、債務者の意思に反する弁済であることを債権者が知らないときは、その弁済は有効です。(民法474条2項)
 したがって、事例で、第三者Cによる弁済が、債務者Bの意思に反したものであることを債権者Aが知らなかったときは、Cの弁済は有効になります。
 一方、債務者Bの意思に反する弁済であることを債権者Aが知っていたときは、第三者Cの弁済は無効になります。
 簡潔にまとめると、正当利益のない第三者Cの弁済は、債務者Bの意思に反することについて債権者Aが善意であれば有効で、悪意であれば無効です。
 なんで債権者が善意のときは有効なの?
 それは、債権者が善意のときに無効になってしまうと、事情も知らないのに、一度受領したものを第三者に返還しなければならなくなり、それは善意の債権者には酷です。
 したがいまして、債務者の内心(意思)を知らない債権者を保護する規定を置いたのです。

債権者の拒絶

 正当利益のない第三者の弁済が有効になるときと無効になるときはわかりました。
 では、正当利益のない第三者の弁済を、債権者は拒むことができるのでしょうか?
 これは、拒むことができます。(拒むことができるということは、拒んでも法律上、受領遅滞とはならないことを意味する)
 正当利益のない第三者の弁済は、次の3パターンに分けられます。

1・その弁済が債務者の意思に反しないとき
2・その弁済が債務者の意思に反するが、債権者が善意のとき
3・その弁済が債務者の意思に反し、債権者が悪意のとき

 債権者は、上記3パターンの全てで、受領を拒絶することができます。
 つまり、債権者は、どのパターンであろうが正当利益のない第三者の弁済を拒むことができます。
 なぜ、どのパターンであろうが債権者が拒めるの?
 その理由ですが、債権者が受領を拒めば、後日、債務者や本人の内心、弁済の効力の有無を巡る紛争を防止できるからです。
 つまり、この受領拒絶の制度は、債権者を面倒な紛争に巻き込まないための仕組みなのです。もちろん、後の紛争の心配がなければ(あるいはそれも織り込み済みで)債権者の判断で受領することもできる、という訳です。

債権者が受領を拒めないとき

 正当利益のない第三者の弁済であっても、債権者が受領を拒めないケースがあります。
 それは、その第三者が債務者の委託を受けて弁済することを債権者が知っているときです。
 この場合、その弁済が有効なのはもちろん、後日、債務者との間で第三者弁済の効力を巡る紛争が起きる可能性がゼロだからです。つまり、誰も困らないのです。
 したがって、その第三者が債務者の委託を受けて弁済することを債権者が知っているときは、債権者は受領を拒むことはできないのです。

【補足】
「正当利益のない第三者」は、「法律上の利害関係のある第三者」と考えていいのですが、これについてはあまり深く考えないでください。
 例えば、サラ金の借金を抱える息子の親は、正当利益のない第三者です。なぜなら、たとえ親でもその借金についての法律上の利害関係は存在しないからです。
 じゃあ親が払うことはできないの?
 次の方法で事実上の弁済をすることが可能です。

・サラ金から債権を買い取る(債権譲渡に債務者(息子)の承諾は不要。通知だけで良い)
・息子の保証人になってから支払う(保証契約は、主たる債務者の意思に反してすることができる→主債務者の意思に反する無委託保証人)

 まあ、現実には親が息子に現金を渡して返済させることも多いと思います。
 しかし、その息子に異常な散財癖がある(金を渡した途端使っちゃう)場合などは、上記の方法を取ると、より確実に事実上の第三者弁済が可能となります。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
関連記事

【選択債権】選択権は誰にある?過失があった場合は?選択の撤回はできる?

▼この記事でわかること
選択債権の超基本
過失があった場合
買主側(債権者側)に選択権がある場合
選択の撤回
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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選択債権の超基本

 選択債権とは、2つの不動産のうち、どちらかを引き渡すことを目的とする債権のことです。
 少し難しい言い方ですが「数個の給付のうち選択によって定まる1個の給付を目的とする債権」と定義されます。

 選択債権で問題になることは、誰に選択権があるのか?という点です。
 原則は、債務者に選択権があります。
 したがって、原則は、2つの不動産のどちらを給付するかは債務者の方に選択権があるのです。
 ただし、弁済期が来ても債務者が選択しない場合には、債権者側から催告ができます。
 催告期間が経過しても債務者が選択しなければ、選択権は相手方に移ります。

 また、第三者が選択権を持つという特約も有効です。
 この場合に、第三者が選択できない場合や選択を欲しないときは、選択権は債務者に移ります。
 また、第三者の選択の意思表示債権者または債務者の一方にすればよいとされています。

 以上が、選択債権についての基本になります。
 それでは、ここからは事例と共に具体的に解説して参ります。

事例1
Aは自己所有の甲建物および乙建物のどちらかをBに売却する契約をした。


 さて、この事例で、契約前日に甲建物が滅失していた場合、契約の目的物はどちらになるでしょうか?すなわち、選択はどちらに決定するでしょうか?
 結論。契約の目的物は、乙建物に特定します。つまり。選択は乙建物に決定されます。
 この結論は、契約後に不可抗力で甲建物が滅失した場合も同じです。
 目的物の一方が滅失した以上、他方に特定するのです。当たり前といえば当たり前ですね。
 本格的な問題ここからです。
 それは、契約成立後に当事者の一方の過失により片方の建物が滅失したケースです。

過失があった場合

事例2
Aは自己所有の甲建物および乙建物のどちらかをBに売却する契約をした。しかし、Aの過失により甲建物が滅失した。なお、選択権はAにある。


 さて、この事例2で、契約の目的物はどちらになるでしょうか?
 結論。目的物は乙建物に特定します。
 この事例2では、選択権者である債務者Aの過失により甲建物が滅失しています。しかし、選択権のないBは、目的物がどちらに決まっても口出しする立場にはありません。
 そもそも、Aにどちらかを選択させるという前提の時点で、どちらに特定しようがBは困らないはずです(困るなら選択させないはず)。

買主側(債権者側)に選択権がある場合

事例3
Aは自己所有の甲建物および乙建物のどちらかをBに売却する契約をした。しかし、Aの過失により甲建物が滅失した。なお、選択権はBにあるという特約がなされている。


 さて、この事例3で、Bは甲建物を選択できるでしょうか?
 結論。Bは甲建物を選択する事ができます。
 理由は、本事例ではBに選択権があるからです。なので、Bは「乙建物はいらない」という権限もあるのです。
 では、Bが滅失した甲建物を選択するとどうなるのか?この場合、甲建物は滅失により履行不能となります。
 したがいまして、BはAに対し、過失による履行不能の損害賠償を請求するという流れになります。
 選択権を有しない当事者の過失によって給付が不能となったときは、目的物は特定しません。(民法410条2項)
 これは、第三者に選択権がある場合にも同様です。(例えば、事例で甲建物か乙建物かの選択権が第三者Cにある場合も同様ということ)

選択の撤回

 ところで、一度した選択の撤回はできるのでしょうか?
 一度した選択の撤回は、相手方の同意がなければできません。逆に言えば、相手方の同意があれば、一度した選択の撤回はできます。
 なお、第三者が選択した場合には、その撤回には当事者双方の同意が必要になります。
 ちなみに、第三者が選択権を有するときには、その選択は、債権者または債務者に対する意思表示によってします。(債権者か債務者かどちらかに対する意思表示でよいということ)

【補足】
 選択権者が選択をした場合、その効力は、債権の発生の時にさかのぼって生じます。(民法411条)

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
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関連記事

【受領権者としての外観を有する者に対する弁済】ニセの債権者(盗人)への弁済も有効?

▼この記事でわかること
受領権者としての外観を有する者に対する弁済とは
受取証書の持参人への支払い
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 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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受領権者としての外観を有する者に対する弁済の超基本

 受領権者としての外観を有する者とは、受領権者らしい外観をしているが、実は受領権者ではない者のことを言います。
 ニセの受領権者、いわば受領権者モドキですね。 
 債権者のフリをしたニセの債権者が、まさにこれにあたります。

 典型例は、預金通帳と印鑑を盗み出した人です。
 この場合、その盗っ人がニセの債権者、すなわち受領権者としての外観を有する者(受領権者モドキ)で、銀行が債務者となります。
 そして、問題となるのは、このようなケースで、受領権者としての外観を有する者を真実の受領権者と誤信して弁済をした者の保護をどうするか?です。
 民法では次のように規定しています。

(受領権者としての外観を有する者に対する弁済)
民法478条 
受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、
その効力を有する。

 上記、民法478条の条文最後にある「その効力を有する」とは、弁済により「債権が消滅」するということです。
 したがいまして、上記条文で言っていることはこうです。
 受領権者としての外観を有する者(通帳と印鑑を盗んだ盗っ人)に銀行が預金の払戻しをした場合、銀行が善意でかつ過失がなかったとき(事情を知らず落ち度もなかったとき)であれば、弁済として有効だということです。
 その場合は、銀行は免責されるということです。
 ということは、後になって真の預金者が現れても銀行は二重払いをしないでもOKということです。

 ただ、あくまでも「善意でかつ無過失」の場合なので、もし銀行が印鑑照合でミスをして払戻しをしていたときは、弁済の効力はなく、銀行の支払義務は消滅しません。この場合に真の預金者が現れたら、銀行は真の預金者に二重払いをした上で、盗っ人に不当利得返還請求をするということになります。(不当利得についての詳しい解説は「【不当利得】受益者が善意か悪意かで返還すべき利益が変わる?」をご覧ください)
 なんだかナニワ金融道なんかで出てきそうな話ですが、現実でもある話です。

 それでは、ここからは事例とともに具体的に解説して参ります。

事例1
預金通帳と印鑑をA宅から盗んだBは、翌朝C銀行で預金を引き出した。なお、C銀行に過失はない。


 さて、この事例で、C銀行は盗っ人Bに支払った現金の返還請求が出来るでしょうか?
 結論。C銀行の支払い請求は認められません。
 C銀行は、民法478条の規定により、有効な弁済をしたことになります。つまり、預金者に払い戻したのと法的に同じになります。
 なので、C銀行は盗っ人Bに返還請求できなくとも問題ないのです。

 そして、AがC銀行に支払請求することもできません。
 C銀行は民法478条により有効な弁済をしたことになるからです。
 じゃあAはどうすればいいの?
 Aは盗っ人Bに対して、不法行為または不当利得を根拠に返還請求できます。
 これは当然です。(不法行為について詳しくは「【不法行為】その基本と過失相殺・権利行使期間について」をご覧ください)
 しかし、盗っ人Bはとっくにどこかに逃げてしまっているだろうし、返還請求は事実上は困難になってしまう可能性大です。
 それこそ闇金ウシジマくんに出てきそうな実に後味の悪い不条理な話ですが、そうなればAが泣くことになります。

【補足】
受取証書の持参人への支払い


 例えば、盗っ人が新聞屋から領収書を盗み出し、各家庭に新聞代金の集金をしてまわった場合どうなるでしょう?
 実はこの場合も、民法478条が適用されます。
 したがって、盗っ人に新聞代を支払った者が善意無過失であれば、その弁済は有効になります。
 その後、新聞屋が盗っ人に返還請求する、という流れになります。
 今の時代では考えづらいケースですが、民法の理屈としてはこのようになります。


 というわけで、今回は以上になります。
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関連記事

【代物弁済】債務消滅が目的の諾成契約?効力の発生は引渡し時?不動産の場合は?

▼この記事でわかること
代物弁済とは
代物弁済は諾成契約
不動産の場合
物に隠れた瑕疵があった場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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代物弁済の超基本

 代物弁済とは、本来の給付に代えて他の給付をすることで弁済と同一の効力を生じさせることを言います。
 わかりやすく簡単に言えば、お金の代わりに物で弁済するようなことです。
 そして、代物弁済は、通常は金銭の給付に代えて不動産や自動車を給付するという形で利用されます。

 代物弁済をするには、債権者の承諾が必要です。
 弁済者が勝手に「お金の代わりにこの車で勘弁してください」とすればそれでOKという訳にはいきません。
 代物弁済は債権者・債務者間の債務消滅を目的とする契約なのです。
 契約ということは、その内容は当事者の自由です。(契約自由の原則)
 なので、債権者が同意しているのであれば、300万円の金銭債権がある場合に200万円相当の車での代物弁済も可能です。それでも債権は消滅します。
 また、逆に、債権額を超える500万円相当の不動産で弁済することも可能です。債権者の同意があればこれもOKです。(ただし、本来の債権額に比べあまりにも高額の代物弁済は公序良俗違反で無効とされる可能性はあります)

代物弁済は諾成契約

 代物弁済は、他の給付を「現実にした」ときにその効力(債権の消滅)を生じます。
 ですが、代物弁済は諾成契約です
 民法改正以前は要物契約でしたが、改正民法では諾成契約となりました。
 したがって、代物弁済は諾成契約なので、申し込みと承諾で契約自体は成立しますが、その効力は他の給付を「現実にした」ときに発生するということです。
 この点、ご注意ください。

不動産の場合

 それでは、ここから事例とともに見て参ります。

事例1
AはBに対し金300万円の貸金債権を持っている。そしてBは、その所有する不動産で代物弁済をした。


 さて、この事例での代物弁済の効力はいつ発生するのでしょうか?
 代物弁済の効力の発生は現実の給付時です。
 したがって、通常の動産の場合には引渡し時に代物弁済の効力(債権の消滅)が発生します。
 しかし、不動産の場合は、登記の時点で効力が発生します。
 ちなみに、債権で代物弁済をすることも可能ですが、その場合には弁済者による(確定期日のある)債権譲渡の通知が第三債務者に到達した時点で効力が生じます。
 以上のことから、「第三者対抗要件を備えた時に債権が消滅する」というのがわかります。

物に隠れた瑕疵があった場合

 続いて、次のようなケースではどうなるでしょう。

事例2
AはBに対し金300万円の貸金債権を持っている。そしてBは、その所有するジュエリーで代物弁済をしたが、ジュエリーには隠れた瑕疵があった。


 この事例での問題は、代物弁済した物に隠れた瑕疵があった場合はどうなるのか?です。
 まず、ジュエリーの給付により代物弁済の効力は生じています。なので、債権はすでに存在しません。
 よって、その後に瑕疵が発覚しても代物弁済の効果は覆りません。
 したがいまして、債権者Aは債務者Bに瑕疵のないジュエリーの給付請求はできません。
 しかし、代物弁済は有償契約なので、売買の規定が準用されます。(民法559条)


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
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関連記事

【詐害行為取消権】債権者代位権との違い/詐害行為の類型/保証人や身分行為(婚姻等)が絡んだ場合

▼この記事でわかること
詐害行為取消権の超基本
転得者の問題
債務者の第三者への弁済
詐害行為の類型
詐害行為取消しの範囲
保証人がいる場合
婚姻等、身分行為が絡んだ場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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詐害行為取消権の超基本

 抵当権等の担保権を持たない一般債権者にとっては、債務者の責任財産(一般財産)が貸したお金の回収等の(債権実現のための)最後のよりどころです。
 なので、例えば、債務者がその財産を他者に贈与してしまった場合、債権者は困ってしまいます。
 そのようなとき、債権者に何か打つ手はないのでしょうか?
 まずは、こちらの事例をご覧ください。

事例1
AはBに金2000万円を貸し付けた。Bの財産は金2000万円相当の土地一筆だけである。しかし、Bはその土地を妻Cに贈与して登記も移転してしまった。


 これはまさに、債務者Bがその唯一の財産を贈与してしまって無資力(金無し状態)になり債権者Aが困ってしまう事例です。
 こうなってしまうと、たとえ債権者Aが貸金返還訴訟を起こして勝訴しても、債務者Bには差し押さえられる財産がないので、結局お金の回収はできません。
 いくら訴訟を起こしたところで、無い袖は振れないのです。
 さて、ではこの事例1で、債権者Aには何か手立てはないのでしょうか?
 まず、AとCはアカの他人(契約関係がない)ですので、AがCに何かを言える筋合いはありません。
 しかし、これが「Bの無資力」という事実により、話が変わってきます。
 一体どうなるのか?このままでは、Aの1000万円の債権が紙クズになってしまう…
 ということで、ここで「債権の対外的効力」が発生するのです。
 そして、それにより発生する権利が、詐害行為取消権です。

(詐害行為取消請求)
民法424条 
1項 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2項 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。


 上記、民法424条を事例1に当てはめるとこうてす。
 条文の「債権者」はA、「債務者」がBです。
 Bが土地の贈与によってAへの弁済が難しくなることを知っていれば、AはBC間の贈与を取り消すことができる、というのが1項本文です。
 1項ただし書の「その行為によって利益を受けた者」は、Cのことです。
 CがAを害するという事実を「贈与を受けた時」に知らなければ、取消しはできない、というのがただし書きの意味です。
 つまり、Cの立場からいえば「贈与を受けたあと」にAを害することを知った場合は、贈与を取り消される心配はありません。
 したがいまして、事例1のAは、唯一の財産である土地を贈与したBが、贈与時にその行為(贈与)がA(の2000万円の貸付債権)を害することを知っていて、かつ贈与を受けたCも贈与時にそれがAを害することを知っていた場合は、AはそのBC間の贈与を取り消すことができます。
 これが詐害行為取消権です。
 つまり、Aを害することについてBC双方共に悪意の場合は、Aは詐害行為取消権を行使してBC間の贈与を取り消すことができるというわけです。
 BC両方の悪意が要件てことか。要件が厳しめだね。
 そうなんです。
 本来、AがBC間の法律行為について口出しすることはハッキリ言って筋違いです。第三者が他人同士の契約を取り消す訳ですから。ですので、詐害行為取消権を行使するための要件は厳しいものとなっているのです。
 逆に言えば、BC双方ともに悪意というのは、BCがグルになってAからの借金2000万円を踏み倒そうと画策している可能性が高いです。
 その場合は、債権者Aに詐害行為取消権という手立てを与えないことには不公平じゃね?と考えることもできます。
 なお、詐害行為取消権は、裁判に訴えない限り行使できません。
 この点、裁判外でも行使できる債権者代位権とは異なりますのでご注意ください。

・注意点
ここがポイント女性
 民法改正以前では、AB間の債権はBC間の贈与よりも先に成立していなければ詐害行為取消権は行使できませんでした。
 しかし、民法改正後は、AB間の債権がBC間の贈与後に成立した場合でも、BC間の贈与が「詐害行為」として成立する可能性があります。
 つまり、民法改正後の現在では、AB間の債権がBC間の贈与後に成立した場合でも、 Aは詐害行為取消権を行使できる可能性があります。
 民法改正前の結論で覚えていた方は、この点ご注意ください。
 なお、債権者Aを害するBC間の贈与のような行為を「詐害行為」と言います。また、詐害行為取消権は、別名「債権者取消権」とも言われます。

【補足1】
 民法424条条文には「害することを知ってした行為」とあります。これは、債権者に対する債務者の「害意」ということです。
 ここでの害意とは、債務者がその債権者を害することを知ってしたことは要するが、必ずしも債権者を害することを意図し、もしくはこれを欲して行ったことは要しません。(判例)

【補足2】
 詐害行為取消権は、債務者が無資力(金がない状態)であるという要件を外すことはできません。
 この点は、債権者代位権の転用の場合とは異なりますのでご注意ください。
 また、詐害行為取消権においての被保全債権(詐害行為取消権で守りたい債権)は、原則として金銭債権に限られます。

 それでは、続いてはこちらの事例をご覧ください。

事例2
AはBに対し金200万円を貸し付けた。その後、Bが高級ジュエリーをCに贈与したので、Aは詐害行為取消権を行使しようと考えている。なお、贈与当時、Bには資力があったが、詐害行為取消権行使時には無資力だった。


 さて、この事例で、Bの贈与は詐害行為となるのでしょうか?Aは詐害行為取消権を行使できるでしょうか?
 結論。事例2のBの贈与は詐害行為となりません。したがって、Aは詐害行為取消権を行使することはできません。
 詐害行為とは、それをしたら債権者Aに弁済できなくなることを知りつつ債務者Bがその一般財産を減少させる行為です。
 贈与当時、ジュエリーを贈与してもなお債務者Bには資力がありました、資力がある時の贈与行為は詐害行為となりません。
 よって、Aは詐害行為取消権を行使できません。

事例3
AはBに対し金200万円を貸し付けた。その後、Bが高級ジュエリーをCに贈与したので、Aは詐害行為取消権を行使した。なお、贈与時のBは無資力だったが、詐害行為取消権行使時には資力が回復していた。


 さて、この事例3では、Bの贈与は詐害行為となるのでしょうか?Aはそのまま詐害行為取消権を行使できるでしょうか?
 この事例3では、贈与当時にBが無資力なので、BCに詐害意思があれば詐害行為が成立します。
 しかし、詐害行為取消権行使時に債務者Bの資力が回復しています。なので、そもそも詐害行為取消権を行使する実益がありません。
 よって、Aは詐害行為取消権を行使することはできません。
 債務者Bの資力は回復している訳ですから、債権者AはBに対し普通に取り立てればいいだけのハナシということです。
 詐害行為取消権を行使するための要件には、詐害行為時取消権行使時両時において債務者が無資力であることも求められます。
 逆に言えば、この両時の無資力という要件を満たしていない場合は、債務者に資力があるということに他なりませんから、わざわざ債権者は詐害行為取消権を行使する必要もないのです。

【補足】
詐害行為取消訴訟の被告(訴える相手)は誰か
 詐害行為取消訴訟をBC間の法律行為(贈与のこと)そのものを絶対的に取り消す行為と考えれば、被告はBC両名になるはずです。
 しかし、詐害行為の実質は、債務者Bの唯一の責任財産を債権者Aが取得するか受益者Cが取得するかです。つまり、債務者B唯一の責任財産をめぐる債権者A vs 受益者Cの争い」と考えられます。
 なので、実際の裁判では、被告は受益者または転得者のみとされています。

転得者の問題

 詐害行為取消権は、転得者に対しても行使することができます。
 まずは、こちらの事例をご覧ください。

事例4
AはBに対し金200万円を貸し付けた。その後、Bは害意を持って高級ジュエリーを善意のCに贈与した。その後、Cは高級ジュエリーを悪意のDに譲渡した。


 さて、この事例4で、債権者Aは悪意の転得者Dに対し詐害行為取消権を行使できるでしょうか?
 結論。債権者Aは悪意の転得者Dに対し詐害行為取消権の行使はできません。
 詐害行為取消権は、債務者受益者(事例のBとC)双方の悪意を要件とします。
 しかし、事例4は受益者のCは善意です。転得者Dは悪意ですが、転得者はあくまで受益者の付属品であると考えます。つまり、転得者Dは受益者Cの付属品に過ぎないないのです。
 これを、転得者付属品の原理といいます。
 したがいまして、債権者Aが転得者Dに対して詐害行為取消権を行使するためには、債務者Bと受益者Cと転得者Dの3者全員の悪意を要します。

 それでは、事例4で、さらに転得者Eが現れた場合はどうなるでしょうか?
 この場合、債権者Aが詐害行為取消権を行使するためには、債務者B・受益者C・転得者D・転得者Eの4者全員の悪意が必要です。
 なぜなら、転得者Dが受益者C、転得者Eは転得者Dのそれぞれ付属品だからです。

・注意点
指差し男性
 この転得者付属品の原理による結論は、民法改正後に改められた結論です。民法改正以前は違った結論でした。
 ですので、民法改正以前の内容で覚えていた方はお気をつけください。

第三者への弁済

 続いては、こちらの事例をご覧ください。

事例5
AはBに対し金200万円を貸し付けた。その後、Bは金200円をCに弁済した。Cの債権額も200万円だったのである。その結果、Bは無資力となった。


 さて、この事例5で、BのCに対する弁済行為は詐害行為にあたるでしょうか?
 これは、偏波行為(へんばこうい)が詐害性を有するかという問題です。
 偏波とは、偏るという意味です。つまり、2人いる債権者(事例のAとC)のうち、片方だけに弁済したことが偏った行為であり、それが詐害行為となるのか?というのがこの事例5です。
 結論。債務の弁済詐害行為にあたりません。よって、債権者Aは詐害行為取消権を行使することはできません。

 ただし、BC間に債権者Aを害することについて通謀があるとき、すなわち、債権者Aを害することについてBCがグルになっているときは話が変わってきます。
 次のいずれにもあたるときには、債権者Aは債権者行為取消権を行使することができます。

・支払不能のときに債務者Bが弁済したこと
(支払不能とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態のこと)(民法424条の3)

・BC間が通謀して債権者Aを害する意図(通謀的害意)で弁済を行ったこと
 ここでの「害意」とは、単なる悪意ではなく「害する意図」の害意を指します。つまり、BCがグルになって悪巧みしてBC間の弁済が行われたことを意味します。

 上記の要件を満たせば、詐害行為取消権の行使ができます。
 なお、仮に、BC間の弁済が、A債権のの弁済期前に行われていた場合は、たとえそのBC間の弁済が支払不能になる前30日以内に行われていたときでも、詐害性を有することとなります。

債権者AはCに対し直接支払請求できるか

 ここで再度、事例5をご覧ください。

AはBに対し金200万円を貸し付けた。その後、Bは金200円をCに弁済した。Cの債権額も200万円だったのである。その結果、Bは無資力となった。

 さて、では債権者Aが要件を満たし詐害行為取消権を行使できるとき、AはCに対し「直接私に200万円支払え」と請求できるでしょうか?
 詐害行為取消権は、債務者の責任財産保全のため(債権者の債権保全のため)詐害行為を取り消す権利です。なので「金200万円を債務者に返せ」と請求できるだけのはずです。
 しかし、金銭のように債務者Bが受領を拒絶できるものについては、債権者Aは直接自己に引き渡せと請求できます。
 したがって、債権者AはCに対し直接自己に200万円支払えと請求することができます。
 したがって、結果的にはAが優先弁済を受けるのと同様の結果になります。
 これに対して、不動産の贈与が詐害行為にあたる場合の登記名義のように債務者Bの受領拒絶がありえない場合には、債権者Aは債務者Bに対し登記をCからBに戻せと請求できるだけです。

 さて、Aは詐害行為取消権を行使してCに対し直接自己に200万円支払えと請求できることがわかりました。
 では、このときに、Cは200万円のうち半分の100万円の支払いを拒むことはできるでしょうか?
 債権者平等原則によると、AとCは200万円を平等に分け合い100万円ずつの弁済を受けられるはずです。となれば、Cは半分の100万円の支払いを拒めそうですが…
 しかし、判例はこの主張を認めません。なぜなら、その主張に法律上の根拠(該当する条文)がないためです。
(債権者平等原則についての詳しい解説は「【差押え&強制執行&破産の超基本】借金で考える債権の世界」をご覧ください)

詐害行為取消権は弁済期前に行使できるのか

 詐害行為取消権は、被保全債権の弁済期前に行使することができます。
 つまり、債権者Aが債務者Bの詐害行為を取り消すとき、A→Bの債権が弁済期前でもOKということです。
 理由は、債務者は弁済期前でも逃げる可能性があるからです。その場合、早くに詐害行為を行使できないと債務者の財産が散逸してしまいます。
 実際のケースとして多いのは、離婚した夫が養育費を踏み倒すケースです。この場合、将来の養育費について夫の詐害行為が成立し得ます。
 債権者代位権は、原則として、被保全債権の弁済期前には行使できませんが、詐害行為取消権は弁済期前でも行使できますので、この点ご注意ください。

詐害行為の類型
女性講師
 詐害行為となり得る行為には、他に一体どんなものがあるでしょう?

・代物弁済
 代物弁済とは、債務者が本来の負担する給付(通常は金銭)に代えて他の給付(例→不動産)をなすことを言います。
 要するに、お金の代わりに物で弁済することです。
 一般債権者への代物弁済は、詐害意思があれば、詐害行為となります。

・一部債権者への担保供与
 例えば、債務者Bと受益者Cが通謀して、債務者Bの唯一の財産である不動産を抵当に入れた場合(担保の用に供した場合)、それは詐害行為となります。(民法424条の3)

・不動産や重要な動産の相当な価格帯での売却
 例えば、債務者Bが自己所有の不動産を相当な価格で受益者Cに売却した場合、それは詐害行為となりません。
 相当な対価での財産の処分は、財産減少行為ではありません。
 したがって、原則として、この売買は詐害行為にあたりません。
 しかし、換価により(お金に換えることにより)財産の隠匿のおそれが生じるときは違います。
 その場合、次の3つのいずれにもあたるときには、詐害行為が成立し、債権者Aは詐害行為取消権を請求することができます。(民法424条の2)

1・債務者Bによる財産の隠匿等のおそれが現に生じる
2・債務者Bが売買の時に隠蔽等の意思を有していた
3・受益者Cが売買の時に上記の意思を知っていた

 民法改正以前は、財産を金銭に換価することは原則、詐害行為となりました。しかし、民法改正以降は、原則、詐害行為は成立しません。
 つまり、民法改正により原則と例外が逆になったということです。
 改正ポイントとして、この点くれぐれもご注意ください。

取消しの範囲

事例6
AはBに対し金200万円の貸付を行った。その後、Bは金300万円をCに贈与し、無資力となった。


 さて、この事例6で、債権者Aは詐害行為取消権を行使してBC間の贈与の全部を取り消すことができるでしょうか。
 ここでの問題は、AのBに対する債権が200万円なのに対し、BC間の贈与が300万円だということです。それで300万円全額分取り消せるのか?という話です。
 結論。全部の取消しはできません。取消しができるのは、Aの債権額にあたる金200万円分に限ります。

 では続いて、次のケースではどうなるでしょう。
 
事例7
AはBに対し金200万円の貸付を行った。その後、Bは金300万円相当のジュエリーをCに贈与し、無資力となった。


 この事例7で、Aは詐害行為取消権を行使してBC間の贈与の全部を取り消せるでしょうか?
 結論。この場合は全部の取消しができます。
 詐害行為の目的物(事例7ではジュエリー)が不可分のときは、その全部を取り消すことができます。(ジュエリーを200万円分と100万円分に分けることはできない)

保証人がいる場合

事例8
AはBに対し金200万円の貸付を行った。その後、Bはある法律行為により一般財産を失った。なお、Bには資力が十分な保証人がいる。


 さて、この事例8で、債務者Bの詐害行為は成立し得るでしょうか?
 結論。詐害行為は成立し得ます。
 これは一見、債務者Bには資力十分の保証人がいるので詐害行為が成立しないように思えます。
 確かに、債権者Aは保証人から200万円の弁済を受けることは可能です。
 しかし、債務者Bが責任財産(一般財産)を散逸したことに変わりはなく、保証人が将来Bに対し求償権を持つため(保証人が債務者Bに「私が肩代わりした200万円をオマエは私に払え」と請求する権利)、Bの責任財産を充実させる要請があるからです。

・債務者Bに物上保証人がいる場合
 それでは、事例8の債務者Bに物上保証人がいて、物上保証人所有の不動産(十分に価値のある)に担保設定を受けている場合には、詐害行為は成立するでしょうか?
 この場合、詐害行為は成立しません。
 債権者Aは、債務者Bの担保物(物上保証人所有不動産)から優先弁済を受けられるからです。
 ただし、担保物の価値が低ければ、債権額との差額についての詐害行為は成立します。
 例えば、担保物の価値が150万円だとしたら、債権額200万円との差額50万円分は詐害行為が成立します。

贈与後の場合

事例9
Bはその唯一の財産である甲不動産をCに贈与した。つぎに、AはBに対し金200万円の貸付を行った。その後、BからCへ甲不動産の移転登記がされた。


 さて、この事例9で、債権者AはBC間の移転登記を取り消せるでしょうか?  
 結論。取り消せません。
 登記は、すでに行われた法律行為について第三者対抗要件を備えるというだけの行為です。なので、BC間の登記移転が事実上は債権者Aに対する侵害行為になり得ても、法律上の取消しの対象にはならないのです。
 そもそも、この事例9でのBC間の贈与は、AがBに金200万円を貸し付ける以前に行われています。贈与後に行われている以上、Bが債権者Aから逃げたことにはならないのです。
 平たく言えば、すでに無資力のBに貸し付けたAがマヌケだったという話です。

婚姻等、身分行為が絡んだ場合

事例10
AはBに対し金200万円の貸付を行った。その後、Bはギャンブル狂いのCと婚姻し財産状況が悪化した。


 さて、この事例10で、債権者Aは債務者Bの婚姻を取り消せるでしょうか?
 結論。取り消せません。
 詐害行為取消権の対照となる法律行為は財産権を目的とする行為に限られます。(民法424条2項)
 したがいまして、婚姻、離婚、相続の放棄・承認などの身分行為は取消しの対象にはなりません。
 婚姻が事実上の詐害行為となっていたとしても、さすがに婚姻を取り消すとなれば過度の干渉です。それは民法も認めるところではありません。

 続いて、こちらではどうなるでしょう。

事例11
 Bは多額の債務を負っているが、優良な資産もある。しかし、Bは債権者Aからの追及を免れるため、妻Cと離婚したことにして、優良資産を財産分与の形でCに取得させた。


 さて、この場合、債権者Aは詐害行為取消権を行使してBC間の財産分与を取り消せるでしょうか?
 一般的に、財産分与は取消しの対象ではありません、しかし、財産分与に仮託された不相当に過大な財産分与であれば取消しは可能とされています。(判例)

【補足】
 離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意も、負担すべき額を超えた慰謝料の合意は、その超えた部分については新たな債務負担行為であり、詐害行為の対象となり得ます。
 また、遺産分割協議も、財産権を目的とする法律行為であり、詐害行為取消権の対象となり得ます。
 
詐害行為取消権の行使期間の制限

 詐害行為取消権には短期の消滅時効が定められています。
 取消しの原因を知った時から2年、行為の時から20年です。(民法426条)
 なお、債権者代位権には短期の消滅時効の規定はありません。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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