【債権者代位権】基本と要件と範囲/債権者代位権の転用とは/代位の代位は可能?

▼この記事でわかること
債権者代位権の超基本
債権者代位権の要件
債権者代位権の範囲
債権者代位権の転用
代位の代位
債権者の死亡
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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債権者代位権の超基本

 抵当権等の担保権を持たない一般債権者にとっては、債務者の責任財産(一般財産)が貸したお金の回収等の(債権実現のための)最後のよりどころです。
 なので、例えば、債務者がギャンブル三昧で散財している状態などは、債権者からすれば怖いものがあります。
 貸し倒れの危険性大です。闇金ウシジマくんでもなければお金の回収は相当キビしくなってしまうでしょう。
 しかし、たとえ債務者にお金を貸しているからといって、当然に債務者の生活に口出しできるわけではありません。
 なぜなら、債権の内容は「借りた金返せ」ということであって「散財するな」ではないからです。
 そもそも、債務者が自身のお金をどう使うかは債務者の自由です。債務者がちゃんと借りたものを返せるのであれば、ギャンブルしようが夜の街で遊ぼうが自由なのです。
 ですが、もし債務者が無資力(一文無し)の状態であるのにそれを放置し、または自らで無資力状態を作り出した場合には、債権者として何らかの手を打つことはできないのでしょうか?
 それが、あります。
 まずは事例をご覧ください。

事例1
AはBに金1000万円を貸し付けた。Bの財産はCに対する1000万円の売掛金債権だけである。しかし、BはCの弁済期が到来しているにもかかわらず、Cに対し1000万円の取立てをしない。


 これは、Aに対して1000万円の借金を背負っているBが、その財産がCに対する売掛金債権1000万円しかない状態で借金1000万円の弁済期が到来しているのに、Bはその唯一の財産である売掛金債権1000万円の取り立てをして借金返済のためにCからお金を回収しようとしない、という事例です。

 貸金債権  売掛金債権
A  →  B  →  C
  1000万    1000万
         
      取り立てない
       (B唯一の財産)

 さて、ではこの事例1で、AはBでなくCに対して、直接自己に1000万円支払えと請求できるでしょうか?

 貸金債権  売掛金債権
A  →  B  →  C
  1000万    1000万
    A       C
   (直接支払え)
      
    できる?

 この事例1でのポイントは、BはCに対する貸付金を除けば無資力(一文無し)だという点です。
 つまり、Bに1000万円貸し付けたAとすれば、BがCから1000万円を取り立てて初めて自己の弁済を受けられることになります。
 しかし、Bはその自己の権利を行使しない、すなわちCへの取り立てを行わない状況です。
 そして、この状況は、Bが自己の無資力を放置しているということになりますよね。
 この状況のまま放置し続けて、BのCに対する売掛金債権が消滅時効にかかってなくなりでもしたら、Bは本当の意味で一文無しになります。
 そうなれば、おそらくAのBに対する貸付金は、貸し倒れになってしまうこと必至です。

 本来、AB間の金銭消費貸借契約は、AとBの間だけの話であって、他の誰かとは関係ありません。
 なので、AB間でどんな約束をしてもOKですし(契約自由の原則)、逆に、AはBに「金返せコラ」と請求することはできても、B以外の者に「金返せコラ」と請求することはできないはずです。
 しかし、Bの無資力という状況が生じると、Aは自分の債権を満足させるために、(その売掛金債権1000万円の範囲内で)Cに対し支払いを請求できます。
 これが、債権者代位権です。
 本来ならばAB間にしか効力のない債権をもとに、第三者であるCにも請求することができるのです。
 また、これを「債権の対外的効力」といいます。
 そして、債権者代位権についての民法の条文はこちらです。

(債権者代位権の要件)
民法423条
債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。


 この民法423条を事例1にあてはめて考えるとこうなります。
 まず、「債権者」はAのことです。
「自己の債権を保全するため」というのは「(Aが)Bに対する貸付金の返済を受けられるようにするため」という意味です。これは「Bの無資力」を指していると解釈されます。
「債務者に属する権利」とは、BがCに対し持っている「売掛金債権」のことです。
 したがいまして、事例1にあてはめると、上記民法423条はAはBが無資力の場合には、BがCに対して持っている売掛金債権を行使することができる」と言っているのです。
 このような形で、Aは自己の債権実現(債権回収)のための最後のよりどころとなるBの責任財産を充実させる(売掛金債権を回収させる)ことができるのです。
 Bがやるべきことをしないから、Aが代わって(代位して)本来の姿を作り出す訳です。寝ている債務者(B)を無理矢理起こす手段とも言えますね。

債権者代位権の要件

 債権者代位権の要件は、原則として債権者の債権の弁済期が到来していることです。
 つまり、事例1では、原則としてAのBに対する貸付金債権の弁済期が到来していれば、Aは債権者代位権を行使して、Cに対し直接「私に1000万円支払え!」と請求することができます。
 これが、事例1の問いかけについての答えになります。
 あれ?BのCに対する売掛金債権の弁済期の到来は必要ないの?
 もちろんそれも必要です。ですが、事例1においては、BのCに対する売掛金債権の弁済期が到来していることは記されていますよね。それに、そもそも、Bの売掛金債権の弁済期が到来しているのにもかかわらず、BがCに対し取り立てをしないからやむなくAは債権者代位権の行使という手段に至る訳です。

【補足】
 債権者代位権は、裁判外で行使することができます。
 つまり、要件を満たせば、訴訟を起こさずとも債権者代位権の行使は可能です。

なぜAはCに直接支払えと請求できる?その理由
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 本来のスジで考えれば、債権者代位権は、債務者Bの財産状況が悪い場合にその責任財産(一般債権者であるAが差し押さえることのできる財産)を充実させることを目的としています。
 ということは、AはCに対し「Bに支払え」と請求できても「私に直接支払え」とは請求できないはずです。
 そもそも、Cが支払債務を負っている相手はBです。
 したがって、Aが、第三者Cに対して「Bに支払え」と請求することは当然に可能です。
 そして、Bに対してCが支払いをし、後にAがBの責任財産を差し押さえる、というのが債権者代位権の制度の本来のカタチです。
 しかし、事情をよく考えてみましょう。
 なぜ、BはCに対する売掛金債権を回収しようとしないのでしょうか?
 それは、例えば、Bはすでにかなりの多重債務に陥っていて自暴自棄になってしまっていることが考えられます。
 Bに群がる債権者は事例で記されたA以外にも他にたくさんいるかもしれません。
 では仮に、Bに対して1000万円の債権を持っている債権者がAを含めて5人いたとすれば、Bに対する債権の総額は5000万円ですが、Bの財産はCに対する売掛金債権1000万円分だけです。
 すると、Aを含めた5人の債権者は債権者平等原則に従い2割配当でそれぞれ200万円ずつの弁済を受けることになり、各自残りの800万円分は平等に泣いてもらうことになるはずです。
 しかし、判例は「BがもしCからの支払を拒絶した場合には、Aの債権者代位権が行使できなくなる」という理由で、AによるCへの直接の支払請求を認めています。
 したがいまして、AはCから1000万円を直接受領することができるのです。
 ただし、この1000万円は本来はBが受け取るべきものです。元々はBの売掛金債権ですので。
 なので、AはBに対しこの1000万円を返還する必要が生じます。
 そうすると、AB間は以下の状況になります。

 1000万返せ
A  →  B

 1000万返せ
A  ←  B

 つまり、AとBはお互い金1000万円の債権を持ち合うことになります。

A  B

 あれ?BもAに対して債権を持つことになるの?
 はい。この1000万円はBの売掛金でもあるので。
 しかし、Aは「相殺」することにより、自分の債権と相手方であるBの債権を打ち消し合うことができます。
 ABは、お互いに同額の債権を持つことで、(相殺することにより)お互いに現実に払う必要がなくなるというわけです。
 結果的に、AはBから1000万円の弁済を受けたことと同じことになるのです。
(相殺についての詳しい解説は「【相殺の超基本】自働債権と受働債権って何?」をご覧ください)
 そんなこんなで、現金1000万円はAの手元に残り、ABの債権債務関係はなくなります。
 あれ?でもそうするとAが優先弁済されてることになるよね?債権者平等原則に反するんじゃね?
 確かにそうです。しかし、これについては、相殺を禁じる規定がない以上はAの相殺の主張は認めざるを得ないと、判例で結論づけられています。
 この結論は、民法改正前と改正後で変化はありません。(民法改正後も相殺を禁じる規定は無いままです)
 以上、ここまでが、債権者代位権の基本になります。

債権者代位権の範囲

 ここから、さらに債権者代位権について掘り下げて解説して参ります。
 まずは、こちらの事例をご覧をください。

事例2
AはBに対する金1000万円の債権を保全するため、BのCに対する金1200万円の債権を代位行使しようとしている。


 さて、この事例で、AはBの債権をいくらまで代位行使できるでしょうか?1000万円?1200万円?
 債権者代位権は、自己の債権を保全するために行使するものです。なので、その限度でのみ行使できます。それ以上は、被代位者(事例のB)に対する過度の干渉になるからです。
 したがいまして、結論。
 Aは、BのCに対する1200万円の債権のうち、1000万円の限度で代位行使することができます。

Aの債権の弁済期が未到来の場合

 それでは、事例で、Aの債権の弁済期が来ていない場合、Aは債権者代位権の行使はできるのでしょうか?
 原則として、弁済期が到来していないときは債権者代位権の行使はできません。自己の権利自体が行使可能ではないからです。
 しかし、裁判上の代位のケースと保存行為の場合であれば、弁済期未到来でも代位権を行使できます。
 したがいまして、試験等の問題で、単純に「債権者代位権は被保全債権(事例においてAの債権のこと)の弁済期が到来しない限り行使できない」という肢があれば、それは誤りの肢となります。

【補足】
 Bが自己の債権を行使した場合、Aは債権者代位権を行使できるのか?
 これはできません。
 本来、Bの債権はBが行使するものです。それをBが自分自身が行使した訳ですから、当然ですよね。

・注意点
 では逆に、Aが債権者代位権を行使した場合、その後にBが自己の債権を行使することはできるのか?
 これはできます。
 実は、民法改正前は、この場合にBは自己の債権を行使することはできませんでした。
 しかし、民法改正により結論が変わりましたので、改正前の民法で覚えていた方はくれぐれもご注意ください。
ここがポイント女性
債権者代位権の転用

事例2
AからB、BからCへと甲不動産が転売された。しかし、登記はいまだAにある。なお、Bは無資力ではない。


 さて、この事例2で、Cは自己の登記請求権を保全するために(守るために)、BのAに対する登記請求権を代位行使できるでしょうか?

      (甲不動産)      
   転売  転売
  A → B → C
登記
  A  B  C
  登記請求
  
Cが代位行使できる?   

 この事例2は、債権者代位権の転用の問題になります。
 元来、債権者代位権の行使は、債務者の無資力を要件とします。
 ということは、この事例2では「Bは無資力ではない」とあるので、債権者代位権の要件を満たせず終了~となりそうですが…。
 でも、事例2のCが欲しいのは甲不動産の登記であり、金銭ではありません。
 ということは、Bが無資力かどうかは、Cにはどうでもいいことなんです。
 結論やいかに?
 結論。CはBの登記請求権を代位行使することができます。(判例)
 なぜこれが認められるかといいますと、中間省略登記か原則として不可能な登記制度のもとでは、これを認めなければCに自己の登記を実現する手段がないからです。金銭債権のときのように、自己に直接払えという請求が、登記請求権の代位行使の場合、制度上できないのです。
 なるほど。でもBが無資力じゃないこともそうだけど、そもそも債権者代位権を登記請求権に使えるの?
 はい。これこそが「債権者代位権の転用」なのです。
 転用とは、本来は債務者の無資力を要件とした金銭債権保全のための債権者代位権の規定を、それとは直接の関係のない特定債権に「転用」する、ということです。

代位の代位は可能か

 甲不動産がAからB、BからC、CからDへと転売された場合に、未だ登記名義がAにあるとき、DはAに対してBへの所有権移転手続を請求できるでしょうか?
 これはつまり、Cの債権者代位権をDが代位行使できるのか、すなわち代位の代位は可能か?という問題です。
 結論。代位の代位は可能です。
 したがいまして、DはAに対してBへの所有権移転手続を請求することができます。

【補足】
 金銭債権以外にも、動産の引渡し債権の場合も、要件を満たせば自己に直接引き渡せという請求が可能です。
 例えば、時計がA→B→Cと転売されたケースで、Bが時計の受領を拒絶した場合(時計はAの手元のまま)、CはAに直接「私に引き渡せ」と請求できます。
 また、建物の賃借人が、賃貸人(オーナー)に代位して、建物の不法占拠者に対して目的建物を直接自己に引き渡すことを請求することも可能です。

【補足】債権譲渡について
 AがBに債権譲渡した場合に、BがAに代位して債権譲渡通知をすることはできません。
 債権譲渡通知は、債権という権利をBに譲ったA自身がするからこそその信憑性があります。権利を失うという自己に不利な通知をわざわざ自分でするからこそ信用できるというわけです。
 したがいまして、譲受人による債権譲渡通知の代位行使はできません。

債権者の死亡

続いて、次のようなケースではどうなるでしょうか。

事例3
Aは甲不動産を資産家Zに売却した後に死亡した。Aの代金請求権の共同相続人はBCの2名である。


 さて、ではこの事例3で、Bが所有権移転登記に協力しないとき、CはZのBに対する登記請求権を代位行使できるでしょうか?

    甲不動産
(死亡) 売却
 A    →    Z
 ↓相続
  BC

   登記請求権
B    Z
     
Cが代位行使できる?

 本事例では、共同相続人の1人であるCは、Aから相続した代金請求権を行使したいのです。Zに甲不動産の売却代金を支払って欲しいわけです。
 しかし、Zは甲不動産の所有権移転登記との同時履行を主張し、代金を支払わないません。
 そこで、CがZのBに対する登記請求権を代位行使し、Z名義の登記を実現させることにより、Cは甲不動産の売却代金の支払いを受けられるか、という話です。
 この事例3は、金銭債権実現のための債権者代位権です。
 ということは、その要件としてZが無資力であることが求められますが、Zは資産家です。お金はたんまりあるわけです。
 しかし、判例は、この事例で無資力は不要であるとしました。
 その理屈は、本事例は、表面的には金銭債権の話ですが、Cの債権の実現とZの資力の有無とは何の関係もないからです。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
関連記事

【行政書士試験とは】その内容と特徴/受験生を悩ます記述式/足切り科目の一般知識等とは?

▼この記事でわかること
行政書士試験とは
宅建試験と行政書士試験の違い
受験生を悩ます記述式問題
各科目と問題数の配分
行政書士試験のワナ「足切り科目」一般知識等とは?
(上記クリックorタップでジャンプします)
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 かつて私は、独学で行政書士試験に臨み合格しました。
 元バンドマンでギタリストを志し法学部出身でもない私が、です。
 そもそも、なぜ私が行政書士試験にチャレンジするに至ったかと申しますと、それ以前に宅建試験に独学で一発合格していたからです。
 さて、冒頭から手前味噌の前置き、大変失礼しました。
 今回は、かつての私の経験が、その時考えたこと実行したことが、この記事をご覧になってくださった方にとって、何か少しでも役に立つことがあればと思い、記します。

行政書士試験とは

 そもそも、行政書士試験とは、一体どのような試験なのでしょうか。
 宅建試験は、四肢択一式全50問です。
 それに対し、行政書士試験は
五肢択一式+多岐選択式+記述式の計60問
です。
 この2つの試験を比べて、一番重要な違いとなるポイントはどこでしょう。
 それはやはり、行政書士試験における記述式問題の存在ではないでしょうか。
 宅建試験の場合は四肢択一式問題のみなので、ALLマークシートです。
 しかし、行政書士試験の場合は、マークシートの解答用紙の裏面に、記述式問題解答用のマスが印刷されています。
 実に気を重くさせるマスです(笑)。
 しかも、この記述式問題は計3問あり、3問合計すると、その得点配分は、なんと全得点の20%を占めてしまい、多くの受験者を悩ませる大きな原因のひとつとなっているのです。

宅建試験と行政書士試験の違い

 ところで、肝心の合格点(合格ライン)はどうなっているのでしょうか。
 ここまで、宅建試験との比較で見てきていますが、宅建試験と行政書士試験では、合格点(合格ライン)に大きな違いがあります。
 宅建試験の場合は、合格率で合格点が決まる相対評価の試験です。
 一方、行政書士試験は、あらかじめ決められた合格点で決まる絶対評価の試験です。
 この事実だけ見ると、行政書士試験の方がわかりやすくて良さそうな気がしますね。
 宅建試験の場合、例年の合格ラインギリギリの点数を取ってしまうと、合格発表までずっとやきもきしながら過ごすことになり、いわば生殺し状態で1ヶ月以上放置されてしまうことになります。だから自己採点はしない!と強気なのか弱気なのかよくわからない人もたまに見かけます。強気を装った弱気のような気がしますがどうでしょう(笑)。

 では、行政書士試験は絶対評価だから安心かというと、これがまたそうでもないのです。
 どういうことかといいますと、先述の全得点の20%を占める記述式問題が、大きく影響を及ぼすのです。

受験生を悩ます記述式問題
試験中悩む女子高生
 行政書士試験は、全60問300点満点という構成になっております。

[五肢択一式]
1問4点×44問
[多岐選択式]
1問8点×3問
[記述式]
1問20点×3問


 ちなみに、多岐選択式問題はいわゆる穴埋め問題で、1つの設問ごとに4つの穴を埋めていくという構成になっており、実質は1問2点×12問となっています。
 そして、合格点は180点です。
 つまり、6割の点数を取れば合格です。
 先述にもありますが、行政書士試験は絶対評価の試験なので、180点取れれば確実に受かります。宅建試験のように毎年度毎の合格率で合格点が上下することはありません。
 しかし、行政書士試験には厄介なカラクリがあります。
 それが、記述式問題の存在です。

 行政書士試験は絶対評価の試験ですが、実は記述式問題で合格率を調整しているのです。
 どういう事かといいますと、記述式問題以外の平均点数が高い年は、記述式問題の採点基準が厳しくなります。逆に、記述式問題以外の平均点数が低い年は、記述式問題の採点基準が緩めになります。
 なら記述式問題以外で180点取ればいいんじゃね?
 それは可能です。
 しかし、よく考えてみてください。
 記述式問題の得点割合は全体の20%を占めます。ということは、記述式問題以外で180点を取ろうとすると、240点中の180点なので、7.5割の点数を取らなくてはなりません。これは、司法書士試験と同等程度の難易度になります。
 少なくとも私は、本番形式での問題演習で、記述式問題以外だけで180点を超えたことは一度もありません。なので、うまいことできている試験だな、と思います(笑)。
 そして、もうひとつ、行政書士試験にはちょっとしたワナがございます。
 それは、いわゆる「足切り」です。

「足きり」とは
各科目と問題数の配分

 まず、行政書士試験における各科目と問題数の配分を見ていきます。

憲法・基礎法学 7問
行政法 19問
民法 9問
商法・会社法 5問
一般知識等 14問
多岐選択式(行政法・憲法) 3問
記述式(行政法1問・民法2問) 3問


 こう見ていきますと、まず行政法の問題数の多さが目につきます。
 しかし、私がここで注目するポイントは一般知識等です。
 そう、この一般知識等が足切り科目なのです。
 行政書士試験は300点満点中180点以上で合格の絶対評価の試験です。
 しかし、実はそれだけではなく基準点」というものが存在します。

(1)法令等科目の得点が122点以上
(2)一般知識等科目の得点が24点以上

 全体で180点以上得点という条件以外にも、上記2つの条件をクリアしなければ合格にはなりません。
 (1)の法令等科目とは、一般知識等以外の科目全部を指します。これについては、特に気にしなくても問題ございません。
 ここで問題なのは(2)です。

行政書士試験のワナ
こども悪魔
足切り科目の一般知識等とは?


 行政書士試験における一般知識等とは、一体どんな科目なのでしょうか。
 一般知識等という科目は、わかりやすく言うと大学のセンター試験における「現代社会」みたいなものです。
 つまり政治・経済」ですね。小学校で言うところの「社会」、中学校で言うところの「公民」といったところでしょうか。
 それにプラスしまして、文章理解情報通信個人情報保護法関係からの出題があります。

 文章理解とは、いわゆる国語の問題です。
 問題文を読んで空欄箇所の段落に当てはまる文章を選んだり、問題文を理解して選択肢の中から相応しい趣旨を述べているものを選んだり、といった感じです。得意不得意はあるかと思いますが、知識を問われる訳ではないので、何度か演習を重ねれば解けるようになると思います。
 情報通信とは、PC・インターネット関係です。 IPAのITパスポート試験に出てくるような問題が出題されます。
 個人情報保護法関係とは、そのものズバリ、個人情報保護法からの出題になります。

 なお、出題配分としましては、文章理解から3問出題される事以外は、その年ごとにまちまちです。
 また、一般知識等の問題数は合計14問になります。

足切りというワナ

 さて、ここからは、この一般知識等という科目のワナの部分「足切り」について見ていきます。
 まず、この一般知識等という科目には基準点という最低ラインが存在します。
 最低ラインは6問正解です。これを下回ってしまうと、たとえ一般知識等以外で180点以上得点しようとアウトになってしまいます。
 イヤ〜な感じですよね。
 しかも、一般知識等という科目は、勉強ポイントを絞り辛い科目です。
 政治・経済といっても幅広いですし、毎年必ずここから出る!といったものもない。唯一、比較的得点しやすい個人情報情報保護法関係も、せいぜい出題数は2問か3問といったところ。文章理解は毎年3問出題されますが、解くのに時間がかかります。
 どうでしょう。中々、厄介な科目ではないでしょうか。
 これから行政書士試験を受験される方にとっては、なんだか不安を煽るようなことばかり書いてしまい申し訳ございません。
 念のため付け加えて申し上げておきますと、私が実際に、模試を含め問題演習を繰り返した経験からすると、一般知識等で正答数が6問未満になったことはほとんどありません。
 ですので、落ち着いて取り組めばまず問題ないと思います。
 ちなみに、私の場合は、むしろ得意科目で得点源でした。
 なんやそれ?とツッコミが入るでしょうか(笑)。
 ただ、行政書士試験におけるこの一般知識等という科目のシステムが、受験生にとって余計なストレスとプレッシャーを与える存在であることは間違いありません。
 そのストレスとプレッシャーが、試験を受けるにあたり厄介になりうる、ということです。


 以上、行政書士試験の特徴についてになります。
 むしろ、これを読んで不安になってしまった方もいるかもしれません。
 しかし、合格するには、まずはどんな試験なのかを知ることは不可欠です。
 あとは、その不安な気持ちを勉強のエネルギーに昇華していくだけです。
 ここに記しました内容が、これから行政書士試験を受験される方への、学習の準備となれば幸いです。
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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