この世の中は契約社会~民法は私達の生活に直結している

 皆さんは、民法と聞いて何かピンと来ますか?
 おそらく、法学生や仕事で法務に携わっている方以外は、中々ピンと来ないのではないかと存じます。
 民法とは一体何なのでしょう。

この世の中は契約社会

 当サイトをご覧になってくださっている方で、アパートやマンションあるいは一軒家を借りて住んでいる、いわゆる賃貸不動産にお住いの方は多いと思います。実はその不動産賃貸借に関する規定が、民法の中に存在します。
 民法の条文は、全部で1050条存在します。その中に賃貸借というカテゴリーがあり、そこに不動産賃貸借(家の貸し借り)に関係する規定が存在します。
 例えば、賃貸人(貸主、つまり家主・大家のこと)は賃貸物(賃貸している物件のこと)の修繕義務を負うとか、賃貸人に無断で転貸(また貸し)してはいけない等々。
 ちなみに、今挙げた例は、皆さんが家を借りる(貸す)時に交わした契約書の中にも、盛り込まれていると思います。もしご面倒でなければ、今一度ご覧になってみてください。
 民法というものはこのように、実は我々の生活に密接に関わっています。
 先ほど挙げた不動産賃貸借の例ですが、これは不動産賃貸借契約になります。つまり、契約の一種ということですね。

 ところで皆さん。この世の中は契約社会というのはご存知でしょうか?
 まあ、いきなり契約社会と言われても、はぁ?て感じですよね(笑)。
 ですので、具体例を挙げてご説明いたします。
素材101
 皆さんも普段、当たり前にコンビニなどで買い物をしますよね。実はこれも契約です。その契約の流れはこうです。

1、購入の申し込みをする(レジに商品を持っていく)
2、申し込みの承諾を受ける(店員が商品をスキャンする)
3、代金を支払う
4、商品の引渡しを受ける(買った商品を受け取る
)


 コンビニでモノを買うということは、実はこのような流れの売買契約になります。
 え?こんなことも契約になるの?
 はい。これも立派な売買契約という契約なのです。
 それではここで問題です。上記の「コンビニでモノを買う」という売買契約ですが、この契約が成立するのは、契約の流れの中の1~4の内、一体どの時点だと思いますか?
 正解は2です。つまり、購入の申し込みの承諾を受けた時点で契約が成立します。
 このような契約を民法上、諾成契約といいます。読み方は「だくせいけいやく」です。承諾の諾に成る契約ということですね。
 契約には民法上、他にも◯◯契約というものが複数存在します。

 さて、どうでしょうか。何となく、民法が身近なものに感じて来たのではないでしょうか?
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保証債務における債権譲渡の通知は主債務者と保証人どちらにすべき?

▼この記事でわかること
保証債務における債権譲渡
主債務者に債権譲渡の通知をした場合
保証人に債権譲渡の通知をした場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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保証債務の債権譲渡
主債務者に債権譲渡の通知をした場合

 保証債務において、債権者が債権譲渡すると一体どうなるのでしょうか?
(債権譲渡とは何なのか?について詳しくはこちらをご覧下さい)
 まずは事例をご覧ください。

事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そしてAは、この債権をDに譲渡し、その通知をBにした。


 これはどういう事例かというと、Bに150万円を貸している債権者Aが、その「150万円返せ」という貸金債権をDに譲渡(債権譲渡)して「Dに債権を譲渡しました」という通知をBにした、という話です。
 BからDに債権譲渡されて、当事者の関係図はこのようになります。

(債権譲渡前)
債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

(債権譲渡後)
債権者       主債務者
 D「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

  債権譲渡の通知
債権者A → 主債務者B

 さて、ではこの事例1で、債権者Dは保証人Cに対して、保証債務の履行を求めることができるでしょうか?
 結論。Dは保証人Cに対して保証債務の履行を求めることができます。
 債権譲渡の通知はBにしかされてないのに?
 はい。債権者Aが主債務者Bに債権譲渡の通知を行なったことにより、AはBに対して対抗要件を備えたことになります。対抗要件を備えたということは、それで法律的にOK!ということです。
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 すると、その効果はCの保証債務にも及びます。
 そして、AがBに対して債権譲渡の対抗要件を備え、その効果がCの保証債務にも及んだ、ということが意味するのは、Aから債権譲渡されたDは、債権譲渡の通知を受けていない保証人Cに対しても、法律的に堂々と「150万円返せ」と保証債務の履行を請求することができる、ということです。
 主債務に生じた効果は、原則として全て保証債務にも及びます。つまり、保証債務とは、そういったことも織り込み済みで保証するものなのです。

保証人に債権譲渡の通知をした場合

 続いて、次のような場合はどうなるでしょう?

事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そしてAは、この債権をDに譲渡し、その通知をCにした。


 今度は、Dに債権譲渡をしたAが、その通知を主債務者Bではなく保証人Cにした、という事例です。
 当事者の関係図は以下です。

(債権譲渡前)
債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

(債権譲渡後)
債権者       主債務者
 D「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

  債権譲渡の通知
債権者A → 保証人C

 さて、この場合に、Dは保証人Cに対して、保証債務の履行を求めることができるでしょうか?
 結論。なんとこの場合、Dは保証人Cに対して、保証債務の履行を求めることができません。
 え?どうして?
 その理由は、保証債務に生じた弁済以外の効果は、主債務に影響がないからです。
 つまり、保証人Cに対する債権譲渡の通知は、主債務者Bに対しては何の効力を持ちません。
 そして、主債務者Bに対して何の効力を持たないということは、結局、保証人Cに対しても何の効力を持たないということになってしまうのです。
 したがって、保証人Cに対する債権譲渡の通知は、主債務者Bに対してのみならず、保証人Cに対してすら対抗要件を備えたことにはなりません。
 保証人Cに対して債権譲渡の通知をしたところで、法律上それは何の意味も成さないのです。法律上の効果ゼロ、それ法律的に全然意味なーし!ということです。
 したがいまして、事例2の場合、Dは保証人Cに対して、保証債務の履行を求めることができないのです。
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保証債務と付従性~催告・検索の抗弁権/保証額の上限と違約金の約定

▼この記事でわかること
保証債務とは
保証債務の性質
保証人の催告の抗弁権
保証人の検索の抗弁権
保証債務の金額の上限と違約金の約定について
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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保証債務とは

 これはもう事例を見ちゃうのが手っ取り早いので、まずは事例をご覧ください。
 
事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。


 このように、保証人を立てる債務を保証債務と言います。
 そしてこの場合、AB間の債務を主債務と言い、AC間の債務が保証債務となります。
 また、Cが保証人なのは言うまでもありませんが、債権者Aに対して、Bは主債務者という立場になります。

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

 そして保証人は、主たる債務者(主債務者)がその債務を履行しないときに、その債務を履行する責任を負います。
 したがって、上記の事例1では、主債務者のBが債権者Aに150万円を返せなかったとき、保証人のCがその借金150万円を肩代わりすることになります。
 なお、ここでひとつ注意点があります。
 保証人Cが保証債務の契約を結ぶ相手は債権者のAです。主債務者のBではありません。
 したがって、事例1は「AB間の主債務の契約」「AC間の保証債務の契約」が並立するような形になります。

      並立
      ∧
主債務の契約 保証契約
  A―B    A―C

 この点はくれぐれもご注意ください。

保証債務の性質

 それではここから、今回の本題である保証債務の性質についての解説に入ります。
 保証債務は、主たる債務(主債務)の存在を前提とします。
 当たり前ですよね。主債務を保証するのが保証債務ですから。主債務が存在しなければ、保証しようにもしようがありません。
 このように、主債務の存在を前提として成り立っている性質を、保証債務の付従性と言います。
 では、ここからさらに、保証債務の付従性について掘り下げていきます。

事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。その後、AB間に要素の錯誤※があったことがわかり、Bの主債務は取消しになった。

※要素の錯誤について詳しくはこちらをご覧ください

 さて、この事例2で、Bの主債務が要素の錯誤で取消しになったことにより、Cの保証債務はどうなるのでしょうか?

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C
  取消し
債権者主債務者
 A → B
   ↘︎←どうなる?
    保証人
     C

 これはすぐわかると思います。
 保証債務は主債務の存在を前提に成り立っています。保証債務の付従性ですね。
 結論。Bの主債務が取消しなので、Cの保証債務は成立しません。
 
 続いてこちらの場合はどうでしょう?

事例3
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。その後、AC間に要素の錯誤があったことがわかり、Cの保証債務は取消しになった。


 今度は、AC間の保証債務が取消しになったケースです。
 さて、この場合、AB間の主債務の成立への影響はあるのでしょうか?

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C
  どうなる?
債権者主債務者
 A → B
   ↘︎←取消し
    保証人
     C

 結論。AB間の主債務の成立への影響はありません。
 したがって、AB間の債権債務関係だけが存続することになります。

 事例2のように、主債務が無くなると、それに伴って保証債務も無くなります。
 一方、事例3のように、保証債務が無くなっても主債務は存続します。
 この違いはくれぐれもご注意ください。

補足・保証契約は様式契約

 保証契約は、書面(または電磁的記録)でしなければ、その効力を生じません(要式契約)。つまり、債権者が保証人と保証契約を結ぶには、書面(または電磁的記録)で行わなければ成立しない、ということです。
 それがなにか?
 これは売買契約と比べるわかりやすいと思います。
 売買契約は「買います」という申し込みと「売ります」という承諾の意思表示だけで成立します(諾成契約)。つまり、民法上、売買契約は口約束だけでも成立します。
 それに対して保証契約は、意思表示(口約束)だけでは成立しません。つまり、法律上、保証契約は売買契約に比べて慎重に扱われているということです。
 その理由は、保証人の責任が重いからです。
 保証人は、それこそヘタしたら、主債務者の借金を肩代わりして財産を根こそぎ持っていかれて人生どん底に突き落とされる可能性もあります。
あああ!
 そんな重~い責任を背負わされる保証契約が、口約束だけで成立してしまったら、世の中混乱してしまいますよね。
 したがって、保証契約は書面(または電磁的記録)で行われなければ成立しないのです。
 こういった部分にも、保証人の責任の重さが表れていると言えます。

保証人の催告の抗弁権

事例4
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そしてAは、Cに対して保証債務の履行を求めてきた。


 これは、債権者のAが、主債務者のBに対して主債務の履行を求めるよりも先に、保証人のCに対して保証債務の履行を求めてきた、という事例です。

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎先に請求
          保証人
           C

 さて、この場合に、保証人Cは債権者Aに対して「私よりも先に主債務者のBに請求しろよ」と主張できるでしょうか?
 結論。保証人Cは債権者Aにたいして「私よりも先に主債務者のBに請求しろよ」と主張することができます。
 そして、この保証人Cの主張を、催告の抗弁権と言います。
 これは保証人としての当然の主張ですね。なぜなら、保証人はあくまで主債務者が債務不履行(金が払えなくなった等)になった場合にその責任を負うわけですから。債権者がいきなり主債務者をすっ飛ばして保証人に請求するのはスジ違いな話です。保証人がいきなり請求されても「オレかよ!?」」となっちゃいます。
 ただし、主債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、またはその行方が知れないときには、保証人は催告の抗弁権を主張できません。
 なぜなら、いずれの場合もすでに主債務者は、事実上、債務不履行に陥っているようなもので、もはや主債務者が弁済することは現実的に相当厳しいからです。
 したがって、もし事例4の主債務者Bが、破産手続開始の決定を受けたか、その行方が知れないときは、保証人のCはいきなり債権者Aから「オマエが金返せ」と保証債務の履行を求められても「私よりも先に主債務者のBに請求しろよ」と、催告の抗弁権を主張することはできません。

保証人の検索の抗弁権

事例4
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そしてAは、Cに対して保証債務の履行を求めてきた。


 再び先ほどの事例です。
 さて今度は、保証人Cは債権者Aに対して「私に請求する前に主債務者のBの財産に強制執行しろよ」と主張できるでしょうか?
 結論。保証人Cは債権者Aに対して「私に請求する前に主債務者のBの財産に強制執行しろよ」と主張することができます。
 そして、この保証人Cの主張を、検索の抗弁権と言います。
 ここで注意点です。
ここポイント
 保証人が検索の抗弁権を主張するには、一定の要件を満たさなければなりません。その要件とは「主債務者に弁済する資力があり、かつ、執行が容易であることの証明」です(民法453条)。
 したがって、保証人Cは債権者Aに対して検索の抗弁権を主張するには、主債務者であるBに弁済する資力があること(Bに150万円の借金を返すだけの財産があること)、そして、Bに対する執行が容易なこと証明しなければならない、ということです。
(強制執行とは何かについて詳しくはこちらをご覧下さい)

補足・催告の抗弁権と検索の抗弁権は現実にはほとんどありえない

 さて、保証人の2つの抗弁権について解説して参りましたが、ここで身も蓋もないことを申し上げます。
 現実には、保証人が催告の抗弁権と検索の抗弁権を主張できることはほとんどありません。
 え?そうなの?
 はい。それはなぜなら、現実の保証契約はそのほとんどが連帯保証だからです。
 ここまで、保証債務について解説して参りましたが、それらは全て連帯保証ではなく、連帯ではないただの保証契約についてです。
 そもそも連帯じゃない保証契約なんてあるんだ!
 そう思いますよね。むしろそう思うのが普通だと思います。
 したがいまして、当サイトの解説で「連帯保証(契約・債務)」とは記さない保証(契約・債務)は、現実ではほとんど見ることのない、ただの保証契約だということをあらかじめご了承いただければと存じます。
 ただ、そんなただの保証契約も、民法の学習には必須になりますので、そこは割り切って学習してください。

保証債務の金額の上限と違約金の約定について

 保証債務とは、主債務が履行されない場合に、主債務者の代わりに、保証人がその債務を履行する責任を負うものです。わかりやすく言えば、保証債務は、主債務者がその借金を返せないとき、保証人がその借金を肩代わりする、というものです。
 ところで、保証債務の金額には上限があるのでしょうか?
 例えば、主債務を超えた金額を、保証債務の金額にすることはできるのでしょうか?

事例
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。


 この事例で、主債務者Bの債務の金額、すなわち主債務の金額は150万円です。この場合に、保証人Cの債務、すなわち保証債務の金額を200万円にすることは可能なのでしょうか?
 結論。Cの保証債務の金額を200万円にすることはできません。
 あくまで保証債務は、主債務が履行されない場合に、主債務者に代わって保証人が責任を負うものです。
 したがって、保証債務の責任主債務の責任よりも重くなるなどあり得ません。
 もし保証債務の金額を、主債務の金額を超えたものにしてしまった場合は、主債務の限度に減縮されます(民法448条)。つまり、Cの保証債務を200万円にしても、150万円に減縮されます。
 ただし!ここでひとつ注意点があります。
ここがポイントだよ
 民法447条1項では「保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他の債務に従たるすべてのものを包含する」とあります。
 これはどういう意味かと言いますと、もし主債務者の債務不履行により遅延損害金などが発生していた場合、その分も保証人は責任を負う、ということです。
 つまり、事例で、主債務者のBの債務不履行により遅延損害金などが発生していて、その分も加えた債務の額が200万円になってしまった場合は、Cは保証人として、その200万円全額の支払い義務を負うことになるのです。
 保証債務の責任は、主債務の責任を超えることはありません。しかし、主債務が膨れ上がれば、同じように保証債務も膨れ上がります。この点はくれぐれもご注意ください。
 なお、当事者間の特約により、保証債務の保証範囲元金のみとすることは可能です。
 したがって、AC間、つまり債権者と保証人の間でそのような特約を結んでおけば、主債務者Bの主債務の額が遅延損害金などにより200万円に膨れ上がったとしても、Cの保証債務は150万円のままです。なぜなら、AC間の特約により、Cが責任を負うのは元金のみだからです。

違約金の約定はできるのか

 元金のみを保証する旨の特約は可能なのはわかりました。
 では今度はその逆に、違約金または損害賠償の額を約定することは可能か、つまり、あらかじめ違約金または損害賠償の額を決めておくことはできるのでしょうか?
 結論。違約金または損害賠償の額を約定することは可能です。ただ、それができるのは保証債務についてのみです。
 違約金または損害賠償の額の約定って?
 例えば「保証人が(保証)債務を履行しない場合、違約金として金◯円を支払う」というようなことを、あらかじめ約束することです。
 あれ?主債務より重い責任は負わないんじゃないの?
 このような約定は、あくまで保証債務の履行を確実にするためのものであり、保証債務の責任が主債務より重くなるとは考えません。
 この辺り、少々ややこしく感じるかもしれませんが、くれぐれもご注意くださいませ。
 したがいまして、事例で、債権者Aと保証人Cの間の約定により、Cの保証債務について、あらかじめ違約金または損害賠償の額を決めておくことは可能です。
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連帯の免除~絶対的免除と相対的免除とその後の求償関係

▼この記事でわかること
連帯の絶対的免除
連帯の相対的免除
相対的免除の事後処理(求償関係)について
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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連帯の免除

 連帯債務は、その連帯を免除することができます。
 そして、連帯の免除の仕方には絶対的免除相対的免除の2種類があります。

絶対的免除

事例1
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。その後、AはBCDの連帯を免除した。


 これは連帯債務者全員の連帯を免除したケースです。これが絶対的免除です。
 そして連帯が絶対的免除されると、その債務は分割債務となります。
 分割債務になるということは、相互に別個独立の債務となります。

(連帯免除前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(連帯免除後)
   「50万円払え」→B
A〈 「50万円払え」→C 〉連帯関係なし
   「50万円払え」→D

 このようになります。
 したがって、連帯免除後は、AはB・C・Dに対して各自それぞれに50万円ずつしか請求できません。なぜなら、BCDの連帯が免除されたからです。
 なお、連帯が免除されて分割債務になったことによって、BCDは求償関係もなくなります。なぜなら、分割債務は相互に別個独立のもので連帯関係にないからです。
 この点もご注意ください。
(分割債務について詳しくはこちら、連帯債務の求償について詳しくはこちらをご覧ください)

相対的免除

事例2
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。その後、AはBの連帯を免除した。


 これは連帯債務者の一部だけ連帯を免除したケースです。これが相対的免除です。
 そして一部が免除されるということは、分割債務と連帯債務が併存する形になります。

(連帯免除前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(Bの連帯免除後)
  「50万円払え」→B
A〈           〉連帯関係なし
  「150万円払え」→C
         ↘︎   〉連帯関係
          D

 このようになります。
 Bの連帯が免除されたことにより、Bの債務は分割債務になります。
 分割債務になるということは、Bは連帯関係から外れて、Bの債務だけ別個独立のものになります。

相対的免除の事後処理(求償関係)

 事例2で、Bの連帯が免除され、Bの債務だけ別個独立の分割債務となりました。
 ということは、例えば、連帯債務者Cが1人で債権者Aに150万円全額を弁済した場合に、Cが「私(C)が弁済した金額のうちいくらかはオマエも私に払え」と求償できるのは、Dに対してだけとなるのでしょうか?
 
(Bの連帯免除後)
  「50万円払え」→B
A〈           〉連帯関係なし
  「150万円払え」→C
         ↘︎   〉連帯関係
          D   ←↑
Cが全額弁済すると求償できるのはDだけ?

 結論。この場合でもCはDに対してだけでなくBに対しても求償し得ます。
 このときの求償できる額は、それぞれに対して(各自負担分の)50万円ずつです。

Dが無資力(金がない状態)の場合
金欠
 では次のような場合はどうでしょう。
 先ほどのように、事例2のケースでCが150万円全額弁済した場合に、Dが無資力(金がない状態)だとCの求償はどうなるのでしょうか?

(Bの連帯免除後)
  「50万円払え」→B
A〈           〉連帯関係なし
  「150万円払え」→C
         ↘︎   〉連帯関係
          D(無資力)   
        Cの求償はどうなる?

 BCDが通常の連帯関係であれば、Dが無資力(金がない状態)になってしまった場合、Dの無資力(金が無いこと)について、BとCは連帯債務の負担割合に応じて、Dの無資力を分担して負担します。つまり、負担割合が均一なのであれば、Dの負担部分50万円をBとCで分担して25万円ずつ負担します。その結果、BとCの連帯債務は75万円ずつの負担ということになります(これについて詳しくはこちらをご覧下さい)。
 ところが、今度の場合、Bは連帯から外れてしまっていますよね。つまり、CはDの無資力(金が無いこと)について、Bに分担して25万円を負担してもらうことを求めることができない。となると、Cは1人でDの無資力の負担(その結果150万円全額の債務)を背負わなくてはならなくなってしまう。。
 しかし!この場合も、CはBに対して求償することができます。このときの求償できる金額は75万円です。つまり、実質BCDが通常の連帯関係でDが無資力になった場合と一緒です。
 したがって、Bが連帯を免除されDが無資力になったケースでも、Cが150万円全額弁済したような場合は、CはBに対して
「各自負担分50万✛D無資力の分担分25万=75万円を私(C)に払え」と求償することができます。
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連帯債務~債権譲渡による混同と更改?連帯債務が相続されると?

▼この記事でわかること
連帯債務の債権譲渡
債権譲渡による混同
債権譲渡による更改
連帯債務者の1人が死亡(連帯債務の相続)
債権者は連帯債務者の相続人に対していくら請求できるのか
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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債権譲渡による混同と更改

 連帯債務者の1人が、債権者から債権譲渡を受けた場合、その連帯債務はどうなるのでしょうか?(債権譲渡については詳しくはこちらをご参照ください)。

事例1
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。各自の負担割合は均一である。その後、BはAから当該貸付金債権の譲渡を受けた。


 この事例1では、連帯債務者の1人のBが債権者Aから、その連帯債務についての債権を譲渡されました。
 つまり、債権譲渡により連帯債務者の1人が債権者になってしまった、というケースです。

混同の場合

 事例1で、債権者Aから連帯債務者Bに債権譲渡されたことにより、AB間の債権債務関係は消滅します。
 なぜなら、債権者と債務者が同一人物となり、その債権債務関係の意味がなくなるからです。
 これを混同と言います。
 つまり、事例1で起こる結果を民法的に言えば、AB間の債権債務関係はABの債権譲渡により混同が生じて消滅する、となります。
 そして民法440条では、混同の絶対効が規定されています。
 これは何を意味しているかと言いますと、AB間の債権譲渡により混同が生じてAB間の債権債務関係が消滅すると同時に、それは連帯債務者Bが債権者Aに対して150万円全額を1人で弁済したのと同じことになります。
 ということは必然的に、連帯債務者Bは同じく連帯債務者のC・Dに対する求償権を取得することになります(連帯債務の相殺について詳しくはこちらをご覧ください)。
 したがいまして、AB間の債権譲渡前と債権譲渡後の当事者の関係を図で示すと、次のようになります。

(債権譲渡前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(債権譲渡後)
B「50万円ずつ払え」→C
          ↘︎
           D

 ここでひとつ注意点があります。
ここポイント  
 債権譲渡後にBがC・Dに対して50万円ずつ請求する権利は、あくまで求償権です。
 AB間の債権譲渡により、AからBに連帯債務の債権者が移ったわけではありません。
 AB間の債権譲渡により混同が生じて、混同の絶対効によりBが求償権を得たのです。 
 だからこそ、債権譲渡後は「150万円払え」ではなく「50万円ずつ払え」なのです。
 細かい話ではありますが、この点はくれぐれも間違えないようにご注意ください。

更改の場合

 では、続いては、連帯債務者の1人が債権者と契約更改をした場合について解説します。

事例2
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。各自の負担割合は均一である。その後、BはAと債務の契約更改をした。


 この事例2では、連帯債務者の1人のBが、Aとの間で債務の契約更改をしました。
 さて、ではAB間で債務の契約更改が行われたことにより、AC間・AD間の連帯債務はどうなるのでしょうか?
 まずはその前に、更改とは何なのか?ご説明します。

 更改とは、既存の債務を消滅させ、別の新しい債務を成立させる契約です。
 もっとわかりやすく言うと、元々あった契約を新しい契約で上書きすることです。
 ポイントは、契約更改は上書きなので、元々の契約は消滅します。ですので、当然に債務も、元々の債務に新しい債務が上書きされ、元々の債務は消滅します。
 したがって「更新」ではなく「更改」なのです。

 それでは話を事例2に戻します。
 AB間で債務の契約更改が行われたことにより、AC間・AD間の連帯債務はどうなるのでしょうか?
 結論。AB間で契約更改が行われたことにより、AC間・AD間の連帯債務は消滅します。
 民法438条では、連帯債務者の1人と債権者の間に更改があったときには、連帯債務についての債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅すると規定されています(更改の絶対効)。
 そして、AB間での債務の更改は、連帯債務者Bによる債務の全額弁済と同じ効果をもたらします。
 つまり、連帯債務者Bは債権者Aと債務の契約更改をしたことにより、150万円全額をB1人で弁済したのと同じ意味になるのです。
 したがって、AB間の契約更改により、AとBCDとの間の150万円の連帯債務は消滅し、BはC・Dに対して「50万円ずつ払え」という求償権を得ます。

(更改前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(更改後)
B「50万円ずつ払え」→C
          ↘︎
           D

連帯債務者の1人が死亡した場合

 連帯債務において、連帯債務者の1人が死亡した場合、どうなるのでしょうか?

事例3
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。その後、Dが死亡した。Dの相続人は、Dの子供E・Fである。


 このような場合、気になるのが、EとFがDを相続して、連帯債務がどうなるのか?ということです。

          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          (死亡)
        相続↓↘相続
          E  F
     Dの連帯債務はどうなる?

 この問題については、債権者Aの立場から考えるとわかりやすいので、そのような形で解説して参ります。

債権者Aは相続人EFに対してはいくら請求できるのか

 債権者Aとして一番気になるのが、EとFに対していくら請求できるのか?です。
 他の連帯債務者と同様に150万円請求できるのか?あるいは?
考える
 これについては、次の2つの考え方が存在します。

1・EとFは150万円の債務の連帯債務者になる
2・EとFは(死亡した)Dの債務を相続分で分けた限度で連帯債務者になる

 それでは上記の2つの考え方について、ひとつひとつ解説します。

1・EとFは150万円の債務の連帯債務者になる
 この考え方の場合、債権者AはC・D・E・Fに対して、各自それぞれに150万円全額を請求することができます。
 つまり、債権者Aとしては、連帯債務者が1人増えたような感じです。

          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↓↘︎
         F E

 この考え方による結論は、債権者Aとしてはむしろありがたい展開かもしれませんね。
 連帯債務者が1人増えたということは、150万円を請求できる相手が1人増えたということなので、それだけ150万円を回収しやすくなります。

2・EとFは(死亡した)Dの債務を相続分で分けた限度で連帯債務者になる
 この考え方の場合、債権者Aは、B・Cに対しては従来どおりそれぞれに150万円請求できますが、E・Fに対してはそれぞれに75万円ずつしか請求できません。
 
なぜそのようになるのか?その理由は、EとFは連帯債務150万円を相続分に応じて相続した、と考えるからです。
 そしてE・Fの相続分は2分の1ずつです(法定相続)。つまり、EとFは連帯債務150万円を75万円ずつ相続したと考えるわけです。
 したがって、債権者AはE・Fに対してはそれぞれに75万円しか請求できないのです。

          B
         ↗︎
  「150万円払え」→C
A〈
  「75万円払え」→E         
         ↘︎
          F

 なお、この場合のB・C・E・Fの債務も連帯債務です。
 ただ、Dの死亡による相続で、その中身が通常の連帯債務とは異なっただけです。
 注意点として、AとB・CAとE・Fで、債権債務関係が別々になる訳ではありません。Dの死亡による相続後も、あくまでB・C・E・Fの債務は連帯債務のままです。
 この点はくれぐれもお間違いないようお気をつけください。

 それで結局どっちの考え方が正しいの?
 結論。判例は2の考え方を採用しています。
 したがって、事例3の債権者Aは、B・Cに対しては従来どおりそれぞれに150万円全額請求できますが、E・Fに対してはそれぞれに75万円ずつしか請求できません。
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連帯債務者の弁済の事前・事後通知義務~通知忘れは?求償の制限?前後通知忘れが重なると?

▼この記事でわかること
弁済の事前通知義務
事前通知忘れのペナルティ~求償の制限
弁済の事後通知忘れ
事後通知忘れのペナルティ
事前通知忘れと事後通知忘れが重なった場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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連帯債務者の弁済の事前通知義務

 連帯債務において、連帯債務者の1人が弁済等(お金を支払う等)をする場合、債権者から履行の請求(例→金払え)を受けたことを、事前に他の連帯債務者に通知する義務があります。
 なぜなら、他の連帯債務者が、債権者に対して何らかの抗弁(例→債権)を持っている可能性があるからです。

事例1
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。また、CはAに対する150万円の反対債権を持っている。そして、BはAから履行の請求をされた。


 さて、この事例1で、債権者Aから「金払え」と履行の請求をされた連帯債務者Bが、同じく連帯債務者Cに連絡をせずに債権者Aに150万円を弁済したらどうなるでしょう?
 まず、そうなるとCが困ってしまいます。なぜなら、連帯債務者Cは債権者Aに対して反対債権を持っているからです。
「反対債権を持っている」というのは、連帯債務者Cも債権者Aに対して債権を持っているという意味です。

         B
        ↗︎
A「150万支払え」C「150万支払え」
        ↘︎  (反対債権
         D

 反対債権を持っているということは、Cはその反対債権をもって、Aに対し相殺をしようと考えているかもしれません(連帯債務の相殺)。
 Bが事前に知らせてくれれば、Cは「弁済するのはちょっと待ってくれ。連帯債務は私の反対債権で相殺したいんだ」と、Bの弁済を止めることができます。
 つまり、Bが弁済することをCに事前に知らせてくれないと、Cは相殺したくてもできなくなってしまうのです。
 そもそもなんでCは相殺できなくなると困るの?
 それは、もしAが無資力の状態(お金がない状態)であれば、Cは相殺しない限り、その反対債権を回収することができないからです。
 ん?どゆこと?
 どういう意味かというとこうです。
 連帯債務者C.には債権者Aに対する150万円の連帯債務があると同時に、Aに対して「150万円支払え」という債権(反対債権)も持っていますよね。そして、Aが無資力(お金がない状態)になったとします。
 すると、CはAから150万円の支払いを受けることができなくなります。なぜなら、Aにはそのお金がないからです。「ない袖は振れない」というヤツです。
 しかし、CにはAに対する150万円の連帯債務は残ったままでです。そこで、Cはこう考えます。
「Aから150万円の支払いを受けることは無理だ。でも、その150万円の債権と連帯債務150万円を相殺して、その後、B・Dに負担分を求償すれば、結果的にAから150万円を回収したのと同じことになる!」
 つまり、相殺ができれば、Cは無資力になってしまったAからも、実質的に150万円を回収したのと同じ効果を得られるのです。
 逆に相殺ができなければ、Cは無資力になってしまったAからは150万円の回収が不可能になる上、Aに対する150万円の連帯債務は残ったままです。
 この違いは相当デカイですよね。
素材109なるほど
 さて、なぜ反対債権を持っている連帯債務者Cが、同じく連帯債務者Bの弁済について事前連絡がないと困るのか、その理由ははハッキリしました。
 そして、ここで冒頭に申し上げたことに戻ります。
 民法443条1項では、Cのような者を保護するために、連帯債務者の1人が債権者から履行の請求を受けた場合、そのことを事前に他の連帯債務者に通知をする義務を定めています。
 つまり、債権者Aから「金払え」と履行の請求をされた連帯債務者Bは、その請求に応じてAに弁済する前に、債権者Aから履行の請求をされたことを他の連帯債務者C・Dに知らせなければならない、ということです(事前通知義務)。

事前通知忘れのペナルティ~求償の制限

 連帯債務者が弁済の事前通知を忘れてしまった場合のリスクはまだ他にもあります。
 事例のBが弁済の事前通知をし忘れてしまうと、その後の「Aに弁済した内の各自負担分50万円を僕(B)に支払え!」というBからCへの求償(連帯債務者から連帯債務者への求償)に対して、なんとこう主張できます。
「アンタは私(C)に事前に通知しなかったよね。だから私はアンタの求償には応じないよ。そのかわり、私(C)がAに対して持っている反対債権のうち50万円分をアンタにあげるから、アンタが自分でAに取り立てなさい!」
 ちなみに「反対債権のうち50万円分」というのは、連帯債務のCの負担部分、すなわちBがCに対して求償できる金額です。

(事前通知せず弁済)
       ↗︎ 求償しても...
A「150万支払え」C「150万支払え」
        ↘︎   (反対債権
         D ↗
C<これを使って50万円分を
  自分でAから取り立てろ!
  Bからの求償に対し主張可


 つまり、事前の通知を怠ったBは、Cに対して求償しても、Cが先ほどの主張をした場合は、Cから50万円の支払いを受けることはできず、かわりにCのAに対する反対債権のうちの50万円分の反対債権をもらって、Cに代わってBは自分でAから50万円を回収しなければならなくなるというわけです。

         B
        ↗︎
A「150万支払え」C「150万支払え」
        ↘︎   (反対債権
         D  ↗
   この内の50万円分を
Cに代わってBがAから取り立てる


 民法443条1項に規定された事前通知を怠った連帯債務者Bには、このようなペナルティがあるのです。
(なお、相殺についての超基本はこちら、連帯債務における相殺についての基本はこちらをご参照ください)

弁済の事後通知忘れ

 連帯債務者の弁済の事前通知義務の必要性と理由はわかりました。
 では、連帯債務者の1人が弁済をした後に、それを知らずに他の連帯債務者も弁済をしてしまった場合はどうなるのでしょうか?

事例2
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。そして、BはAに150万円を弁済した。しかし、Bがその通知をしない間に、CもAに150万円を弁済してしまった。


 この事例2は、連帯債務者Bが債権者Aに150万円を弁済した後に、それを知らずに同じく連帯債務者Cも債権者Aに150万円を弁済してしまった、というケースです。
 要するに、BもCもAに150万円(合わせて300万円)を弁済をしてしまった、ということです。

         B
        ↗︎   
A「150万支払え」→C
        ↘︎     
         D

    B
  ↙ 150万弁済(合計300万円)   
A  C 
           
    D

 この場合、Cはすでに債務が存在しないのに弁済してしまったことになります(これを非債弁済と言う)。
 つまり、Cはもはや支払う必要のない150万円をAに支払ってしまったということです。
 ですのでこの場合、CはAに対して150万円を不当利得として返還請求ができます(不当利得について詳しくははこちらへ)。
素材112債権
 要するに、CはAに対して「すでにBから弁済を受けていた君が、私からさらに150万円の支払いを受けるのはオカシイから、その150万円は返せ!」と請求できる、ということです。

 さて、連帯債務者の1人が弁済等(お金を支払うなど)をする場合、債権者から履行の請求(例→金払え)を受けたことを、事前に他の連帯債務者に通知する義務があることはすでに解説いたしました。
 実は、このような通知義務は、何も事前のものだけではありません。事後通知の義務もあります(民法443条2項)。
 つまり、連帯債務者の1人が連帯債務について弁済をした場合、その後、弁済したことを他の連帯債務者に通知しなければならないということです。
 その理由って?
 それは、まさしく今回の事例2のような事態を避けるためです。もし連帯債務者Bが弁済したことをしっかりと同じ連帯債務者Cに通知していれば、Cはわざわざ債権者Aに支払わなくてもいい150万円を支払ってしまうようなミスを犯さないで済みますよね。
 でもその150万円はどうせAから返してもらえるんだから別によくね?
 これがそうでもないんです。なぜなら、もし債権者Aがその後すぐに無資力(金がない状態)になってしまったらどうでしょう?
 その場合、CはAからその150万円を返してもらえなくなる可能性が高くなります。
 それはCとしてはマズイですよね。大損もいいとこです。
 したがって、連帯債務者の1人が連帯債務について弁済をした場合、弁済したことを他の連帯債務者に通知しなければならない事後通知義務が定められている、という訳です。

事後通知忘れのペナルティ

 もしAが無資力になってしまった場合、Cは150万円を返還してもらえない危険を背負います。
 でも、これってどうでしょう?Cがそんな危険を背負わなければならなくなったのは、そもそも、事後通知義務を怠ったBに責任がありますよね?それなのに、その危険をCが背負うのはオカシイと思いませんか?
 ということで、民法443条2項では、連帯債務者の1人が事後通知を怠ったために他の連帯債務者も弁済してしまった場合、後から弁済した他の連帯債務者自己の弁済した方を有効とすることができるとしています。
 これはどういう意味かと言いますと、Cが自分の弁済の方を有効な弁済とみなして、Bの弁済の方を非債弁済(余計な弁済)にすることができる、という事です。
 要するに、Cが自分で「自己の弁済を有効」とみなせば、Cの弁済が有効になりBの弁済は非債弁済(余計な弁済)となるので、もしAが無資力(金が無い状態)になってしまった場合は、Aの無資力という危険Bが背負うことになる、という訳です。
ペナルティ
 Bには厳しいルールですが、これはいわば、事後通知を怠った連帯債務者へのペナルティです。つまり、事後通知を忘れてしまったBへのペナルティなのです。

事前通知忘れと事後通知忘れが重なった場合

 弁済の通知義務は、事前と事後の両方あることがわかりました。
 では、事後通知忘れと事前通知忘れが重なった場合はどうなるでしょう?
 先ほどの事例2で、Bは弁済の事後通知を怠っています。それはBのミスです。
 でもどうでしょう。その後、Cが事前に「これからAに弁済します」とBに知らせていれば、Bは「あ、わたし、弁済しましたよ」とBに伝えることもできますよね?
 結論。Bの事後通知忘れとCの事前通知忘れが重なった場合は、Bの弁済が有効になります。

〈どちらの弁済が有効か一本勝負〉
事後通知忘れB vs 事前通知忘れC  

 この対決の勝者はBということです。
 したがって、この場合は、Cの弁済は非債弁済(余計な弁済)になり、もしAが無資力(金が無い状態)になった場合、Aからお金を回収できない危険はCが背負うことになります。
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