2017/10/14
民法改正・敷金関係(原状回復義務、特約など)
今回は民法改正の中の敷金関係について触れて参りたいと思います。改正民法では、部屋を借りる際に必要となる敷金の原則返還のルールが明確化されるとのことです。従来の民法では敷金の返還についての明確なルールは存在しませんでした。これが今回の民法改正により、個別法である借地借家法ではなく一般法である民法で明記されることになる訳ですから、部屋を借りる側としてみれば有難いことでしょう。背景にはやはり敷金関係のトラブルが絶えない現状があるのだと思います。裁判の判例やガイドラインを基準になんとかここまでやってきたがもうそろそろ法律で明確化した方がよくね?となったのではないかと。
敷金と原状回復義務
ところで、そもそも敷金と原状回復義務についてはお分かりになりますかね?敷金というのは部屋を借りるときに貸主に一旦預けるお金です。貸主は万が一借主の賃料の未払いや部屋の毀損などがあった場合は預かった敷金から差し引く事ができます。要は敷金は部屋を借りるための担保のようなものです。もちろん現実では敷金だけでは万が一の事態のための担保としては不十分なので、貸主としてはさらに借主に保証人を付けさせたり家賃保証会社と保証契約をさせたりしてより安全を確保します(敷金ゼロ!保証人不要!と謳った物件も存在しますが、それにはそれの理由があります。それについてはまた別の機会でお話しできれば)。
原状回復義務というのは、借りた部屋を返す時、つまり引っ越し等で賃貸借契約を終わらせて部屋を出る時に部屋を元の状態(原状)に戻す義務のことです。現状ではなく原状です。なので元に戻す原状回復となるのです。原状回復については現在はガイドラインでかなり細かく決められています。昔はそのガイドラインすらおぼつかなく貸主側の不動産業者から相当無茶な請求をされるなんて事もありました。もちろん今でもそういう輩は存在しますし地方では都内よりもまだまだヤバイなんて話も聞きます。
原状回復義務は何もかも元に戻す義務ではない
借主は原状回復義務を負います。それは改正民法でも変わりません。しかし、何もかも元に戻せ!というのは違います。先ほど原状回復とは元に戻すことだと申し上げましたが、物には経年劣化があります。人が年を取って老いていくように物も年を取って老いていきます。この自然な劣化を経年劣化といい、経年劣化による修繕は借主に負担する義務はありません。そして通常の使用の仕方による損耗(傷や汚れ)の負担は家賃に含まれていると考え、これも借主の負担の義務はありません。この通常の使用の仕方による損耗を通常損耗といいます。
まとめますと、経年劣化と通常損耗による修繕の負担は借主の義務ではない、ということです。そこを改正民法では明確化しようとのことのようですね。もちろんあくまで経年劣化と通常損耗での話であって、あきらかにおかしな使い方で汚したり故意に傷つけたりルールを破ってやらかしたものに関しては当然のごとく借主が責任を負います。
補足・特約の存在
実は現在のガイドライン上でも経年劣化と通常損耗は原則貸主負担となっています。実態はそうなっていないことが多々ありますが。それともうひとつ厄介なのが特約の存在です。特約で借主負担にしてしまっていることもしばしば見かけます。もちろんあまりに借主に不利な内容の特約は無効になりますが。もし機会がございましたら原状回復ガイドラインをご覧になってみて下さい。あれ?そうだったの?と思うこともあるかと思います。
いずれにせよ今回の民法改正により、一般法である民法から、謂わば借りる側の保護のボトムアップがはかられることは間違いなさそうです。
という訳で、今回も最後までお読み頂き有難うございます。