【消滅時効の基本】権利行使をできる時&知った時/様々な債権とその時効起算点(数え始め)

▼この記事でわかること
消滅時効とは
「権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」とは
「権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」とは
「できる時」と「できることを知った時」優先されるのは?
▽消滅時効の起算点と様々な債権
消滅時効の起算点(数え始め)
確定期限付きの債権の場合
不確定期限付きの債権の場合
不法行為による損害賠償請求権の場合
期限の定めのない債権の場合
弁済期の定めのない消費貸借の場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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消滅時効

 例えば、AがBから300万円借りて「○月〇日までに返す」と約束します。お互いがその期日を過ぎても、そのまま何もせず放置して10年が経過すると、Aの債務(Bに借金を返す義務)は消えます。 
 Aが訴訟をおこして裁判になっても、Bが「これは時効だ!」と主張(これを時効の援用という)すれば、Bの勝ちです。つまり、BはAに300万円を返さなくて済むのです。
 これが、消滅時効です。
 民法の条文はこちらです。

(債権等の消滅時効)
民法166条
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一号 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二号 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。


 上記、民法166条の条文を読むと、債権についての消滅時効のパターンが2つ記されていますよね。
 ひとつひとつ、解説して参ります。

権利を行使することが「できる時」から十年間行使しないとき

 まず先に民法166条二号の方から解説します。
 これはわかりやすいと思います。
 先ほど挙げた例で言えば「〇月〇日までに返す」と約束した期日「権利を行使できる時」になります。
 そして、その期日から10年間、BがAに対して「300万円返せ!」と請求しないと、消滅時効によりAの債務(Bに借金を返す義務)は無くなります。Aは借金踏み倒し完了、Bは泣き寝入り、という訳です。
 また、売買契約で言えば、買主Aが売主Bから不動産を買って「〇月〇日までに代金を支払う」と約束(契約)すると、その約束した(契約で決めた)期日「権利を行使できる時」になります。
 そして、その期日から10年間、売主Bが「代金払え」と請求しないと、消滅時効によりAの債務(Bに代金を支払う義務)は無くなります。Aは代金踏み倒し完了、Bは泣き寝入り、という訳です。

権利を行使することが「できることを知った時」から五年間行使しないとき

 貸した側や売った側が「〇月〇日までに返す」「〇月〇日までに払う」という期日を後から知ってから請求する、なんて事、ちょっと考えづらいですよね。
 では、一体どんなケースがあるかと言いますと、消費者ローンの過払金(不当利得)返還請求権などがあります。
 過払金とは、利息制限法所定の制限利率を超えて利息を支払った結果過払いとなった金銭です。要するに、必要以上に払い過ぎた(返済し過ぎた)お金のことです。
 過払金の場合は、たいてい後から払い過ぎた事に気づくはずです。そもそも払う前に気づいていれば払いませんよね。
 つまり、後から過払金(払い過ぎた事・返済し過ぎた事)に気づいた時、それが「権利を行使することができることを知った時」になります。(ちなみに、この場合「過払いをした時(払い過ぎた時・返済し過ぎた時)」が「行使できる時」になります)
 そして、その時から5年間「払い過ぎた(返済し過ぎた)分を返せ!(過払金(不当利得)返還請求権)」と請求しなければ、消滅時効により過払い金は消滅し、その返還は無くなってしまいます。
 悪徳消費者ローンは丸儲け、借金した人は泣き寝入りで終了、ウシジマくんもご満悦です。(必ずしも悪徳業者の場合だとは限りませんが...)

どちらの時効期間が優先されるのか
比較
 ここでひとつ、こんな疑問がわいてきませんか?
 先ほど挙げた消費者ローンの過払金返還請求のケースで、例えば、Aが過払いをしてから9年後に過払金に気づいた場合、こうなりますよね。

・「行使できることを知った時」からだと残り5年
・「行使できる時」からだと残り1年

 このような場合は、残り期間が少ない方が適用されます。
 つまり、今の例だと、Aの過払金返還請求権は、1年後に時効により消滅してしまいます。
 
 では続いて、次のような場合はどうでしょう。
 消費者ローンの過払金返還請求のケースで、Aが過払いをしてから1年後に過払金に気づいた場合、以下のようになります。

・「行使できることを知った時」からだと残り5年
・「行使できる時」からだと残り9年

 もうおわかりですよね。
 このような場合でも、あくまで残り期間が少ない方が適用されます。 
 よって、Aの過払金返還請求権は、5年後に時効により消滅します。

【補足】
 人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効については、先述の「できる時から10年間」は「できる時から20年間」になります。
 これは、安全配慮義務違反による死亡事故や傷害事故を想定したものです。(民法167条)

消滅時効の起算点 

 取得時効では、例えば、Aが甲土地を時効取得する場合、その取得時効の起算点はAが甲土地の占有を開始した時です。
 時効の起算点とは、時効期間の数え始めとなる時点のことです。(例えば年齢の起算点は誕生日になる)
 さて、では消滅時効の場合、その起算点はいつになるのでしょうか?
 これはもうおわかりですよね。
 消滅時効の起算点は「権利を行使することができる時」と「権利を行使することができることを知った時」です。
 上記の2つの起算点の内「権利を行使することができることを知った時」については、先述の消費者ローンの過払金(不当利得)返還請求権のケースで、過払金に気づいた時になります。
 こちらについては、これで十分かなと思いますので、ここからは「権利を行使することができる時」について、詳しく解説して参ります。

「権利を行使することができる時」はケースによって違う

 消滅時効の起算点「権利を行使することができる時」ですが、その「権利を行使することができる時」は、実はどんな債権かによって異なってきます。 
 では一体、どんな債権があってどんなふうに異なっているのでしょうか?

確定期限付きの債権

 確定期限付きの債権とは、簡単に言うと「いつまでに」が決まっている債権です。
 例えば、AとBが不動産の売買契約を締結して「買主は売主に◯月◯日までに売買代金を支払う」という内容の入った契約書を交わしていたら、その売買代金債権は確定期限付きの債権になります。また、AがBから「◯月◯日までに返す」と約束してお金を借りたら、そのときのBのAに対する「金返せ」という債権も、確定期限付きの債権です。
 さて、ではこの確定期限付きの債権の、消滅時効の起算点はいつになるのでしょうか?
 これはもうおわかりですよね。確定期限付きの債権の消滅時効の起算点は、期限到来時です。
 つまり、先ほど挙げた例だと「◯月◯日までに」の「◯月◯日」が、消滅時効の起算点になります。これは簡単ですね。

不確定期限付きの債権

 文字だけ見ると「不確定の期限が付いている」という、なんだか訳のわからない債権ですが、これは簡単に言うと「いつまでに」が決まっていない債権です。
 といっても、やはりよくわかりませんよね。
 具体例を挙げますと「死因贈与」によって生じる債権は、不確定期限付きの債権にあたります。
 死因贈与とは「死亡したら贈与する」というものです。よく漫画やアニメなんかで「俺が死んだらこれをアイツに...」なんてのがありますが、あれも死因贈与です。
 でもそれって債権なの?
 つまりこうです。死因贈与も、贈与を受ける側から見ると「死亡したらくださいね」という債権になりますよね。
 そして、死亡の時期は不確定です(いつ死ぬかはわからない)。
 なので、不確定期限付きの債権になるのです。
 さて、ここからが本題です。
 ではこの不確定期限付きの債権の、消滅時効の起算点はいつになるのでしょうか?
 不確定期限付きの債権の消滅時効の起算点は、期限到来時です。
 これだけだと、はぁ?となりますが、これは先ほど挙げた死因贈与の例だと、贈与する者の死亡時になります。
 ただ、ここで注意していただきたいのが「贈与する者が死亡したことを知った時」ではありません。
 ですので、もし贈与を受ける者が、贈与者の死亡を知らなかったとしても消滅時効の期間は進んでしまいます。
 この点はご注意ください。
 ちなみに、相続において、遺産の受取りを放棄(相続放棄)したい等の場合は、相続があったことを知った時から、3カ月以内に手続きを行わなければなりません。被相続人の死亡時から3カ月以内ではありません。(民法915条1項)
 また、遺産分割請求権には時効はありません。
 これらの点は、死因贈与における債権の消滅時効とごっちゃにしないようお気をつけください。(詳しくは相続分野で解説します)

不法行為による損害賠償請求権

 これは、不法行為によって損害を被った被害者が、加害者に対して損害の賠償を請求する債権です。(不法行為についての詳しい解説は不法行為の超基本~をご覧ください)
 例えば、交通事故にあった被害者が、加害者である車のドライバーに対して損害賠償を請求するようなケースが、まさに不法行為(交通事故)による損害賠償請求です。
交通事故b
 さて、ではこの「不法行為による損害賠償請求権」の、消滅時効の起算点はいつになるのでしょうか?
 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点は以下です。

・不法行為の時
・被害者が加害者と損害の両方を知った時

 まず「不法行為の時」ですが、これはわかりやすいですね。交通事故の例で言えば「交通事故が起こった時」です。
 要するに「不法行為の時」とは、通常の債権で言うところの「権利が行使できる時」と同じです。
 次に「被害者が加害者と損害の両方を知った時」ですが、これはどういう事かと言いますとこうです。
 例えば、交通事故にあってケガをしたが、加害者である車のドライバーが中々見つからないこともありますよね?加害者が誰かわからないと損害賠償の請求もできませんよね?それなのに消滅時効が進んでしまったら被害者が困りますよね?
 ということで、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点は「被害者が加害者と損害の両方を知った時」なのです。
 また、加害者が誰かはすぐにわかったけど、後々になって後遺症が出るまでは損害がわからなかった、というような場合も同様で「後遺症が出て損害がわかった時」に初めて、消滅時効の進行がスタートします。

※参考条文

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
民法724条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一号 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二号 不法行為の時から二十年間行使しないとき。


(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
民法724条の2
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。


期限の定めのない債権

 これは、簡単に言うと「いつまでに」が決まってない債権です。
 といっても、不確定期限付きの債権とは異なります。
 期限の定めのない債権の代表的なものとしては「法律の定めによって生じる債権」があります。
 具体例を挙げると、解除による返還請求権がそうです。
 例えば、売主Aが買主Bに不動産を売り渡したとします。しかし、その後、何らかの事情でその売買契約が解除されると、AとBは互いに受け取ったものを返還する義務が生じます。すると売主Aは、買主Bに対し、不動産の返還請求権(売り渡した物返しやがれ!)を持ち、買主BはAに対し代金返還請求権(払った金返しやがれ!)を持ちます。
 このときの売主Aと買主Bが互いに持つ返還請求権は、まさに「いつまでに」が決まっていない、期限の定めのない債権になります。
 さて、では本題です。
 この期限の定めのない債権の消滅時効の起算点はいつになるのでしょうか?
 期限の定めのない債権の消滅時効の起算点は、債権成立時です。
 つまり、先ほど例に挙げた解除による返還請求権だと、契約の解除時になります。

【補足】
 解除権は10年で時効により消滅する。(判例)

弁済期の定めのない消費貸借

 これは簡単に言うと「いつまでに」が決まっていない貸し借りです。
 ハッキリ言って、こんなものビジネス・商売の取引の世界ではまずないでしょう。
 例えば、銀行や消費者金融でお金を借りて返済期限が決まっていないなんて事、ありえませんからね(笑)。
 ただ、友人間で「いつまでに」を決めずに、お金を貸し借りするケースは現実にも存在します。
 それがまさに「弁済期の定めのない消費貸借」になります。
借りる金
 そして、お金を貸した側は借りた側に対し「金返せ」という、債権を持つことになります。
 さて、ではこの「弁済期の定めのない消費貸借」における、債権の消滅時効の起算点はいつになるのでしょうか?
 弁済期の定めのない消費貸借における債権の消滅時効の起算点は「債権成立から相当期間経過後」です。
 これはどういうことかと言いますと、こうです。
 例えば、AがBに返済期限を決めずにお金を貸したとします。すると、AがBにお金を貸した時点で、AがBに対して「金返せ」という債権成立します。
 これが「債権成立」です。そして、AがBに「金返せ」と請求した場合、Bは「相当期間経過後」までにお金を返さなくてはなりません。(つまりBは「金返せ」と請求されても即座に返さなくちゃならない訳ではない。なぜなら返済期限を決めていないから)
 つまり、AがBにお金を貸した時点で債権が成立し、そこからAがBに対し「金返せ」と請求してから相当期間経過後に初めて消滅時効の進行が始まる、ということになります。

【補足】
「債務不履行による損害賠償請求権」は「期限の定めのない債権」にあたるのですが、債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効の起算点「本来の債務の履行を請求できる時」になります。
 つまり「この日を過ぎると債務不履行になる」の「この日」が、債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効の起算点になります。(債務不履行についての解説は「【債務不履行&損害賠償&過失責任の原則】債権債務の世界を超基本からわかりやすく徹底解説!」もご覧ください)

 以上が、様々なケース・債権における、消滅時効の起算点になります。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【時効の更新と完成猶予】その事由(原因)/消滅時効の進行を止める方法/除斥期間とは

▼この記事でわかること
時効の更新とは
消滅時効を更新させる方法(時効の更新事由)
時効の更新の特殊なケース(債権者代位権)
時効の完成猶予とは
時効が一旦止まるとき(時効の完成猶予事由)
除斥期間とは
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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時効の更新

 時効には2種類あります。取得時効消滅時効です。
 取得時効は権利を取得する時効であるのに対し、消滅時効は権利が無くなる時効です。
 つまり、時効によって権利が無くなってしまうのが消滅時効です。

事例1
AはBに「〇月〇日までに返す」と約束して100万円を借りた。その後、約束した期日が過ぎてもAがBにお金を返すことはなく、そのまま9年間が経過した。


 さて、この事例1ですが、Aはあと1年間やり過ごせば、Bに100万円を返さなくても良いことになります。
 根拠となる民法の条文はこちらです。

(債権等の消滅時効)
民法166条
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一号 省略
二号 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

 上記、民法166条により、Aはあと1年間なんとかやり過ごせば、消滅時効によって、BのAに対する「100万円返せ!」という債権消滅するので、合法的に借金を踏み倒せます。まあ、同時にAという人間に対する信用も消滅しますが(笑)。
 さて、ここからが本題です。
 それでは、Bとしては何か打つ手はないのでしょうか?
 あります。それは時効の更新です。
 時効の更新とは、時効期間のリセットです。つまり、時効の更新をすると、時効期間の進行が始まりのゼロ地点に戻されます。
 したがいまして、事例1でAの時効が更新すると、進行していた9年間という時効期間は始まりのゼロに戻ります。

消滅時効を更新させる方法(時効の更新事由)

 では、時効を更新させるには、具体的にどんな方法があるのでしょう?
 消滅時効の更新事由(消滅時効が更新するパターン)には下記のものがあります。

・承認
・請求

 それでは、ひとつひとつ解説して参ります。

・承認
 これは債務者債務を承認することです。
 事例1では、Aは債務者、Bは債権者、という立場になります。
 ということはつまり、事例1のAが「Bに100万円返します!」と認めることです。債権者のBとしては、債務者のAにそれを一筆書かせればバッチリです。
(「お金返します」と口で言わすだけでも有効だが、それだけだと裁判でシラばっくれられたら厄介なので、一筆書かせれば、もし裁判になったときでも言い逃れられない確固たる証拠になる)
 債務者のAが真面目で誠実な人間なら、このパターンで済むでしょう(笑)。

・請求
 これは、BがAへ「金返せコラ」と請求することなのですが、時効を更新させるための請求は「裁判上の請求」でなければなりません。(ただBがAに対して請求書を送っただけではダメ)
 裁判上の請求とは、例えば、訴訟の提起です。つまり、BがAに対して金返せという裁判を起こすことです。
 そして、裁判を起こせば、民事訴訟法上、Bの訴状提出時に時効期間の進行が一旦止まり(時効の完成猶予)、確定判決時に時効が更新されます。

 以上のように、BがAの時効を更新させる方法が存在します。
 ただ、どうでしょう。
 まず承認は、債務者のAが借金を踏み倒す気満々なら、ほぼ無理でしょう。ましてや、あと1年で時効になるというのに...。
 すると残る手段は、裁判所の手を借りた方法しかありません。
 しかし、裁判を起こすとなると準備も大変です。それこそ時効完成までの期間が1ヶ月もないような状況だったとしたら、債権者のBはなおさら大変です。

・催告
 そこで、民法では、時効の更新とまではいかないが、とりあえず時効期間の進行を一旦止まらせる効果のある「催告」という制度を定めています。
 催告をすると、時効期間の進行が一旦止まります。(時効の完成猶予詳細は後述)
 止まる期間は6ヶ月です。
 つまり、債権者Bが債務者Aに催告をすれば、Aの時効期間の進行をとりあえず6ヶ月の間は止まらせることができます。
 催告は通常、内容証明郵便で行います。(しっかりとした証拠を残すため)
 したがいまして、もし債務者Aの時効完成が間近な場合は、債権者Bはまず債務者Aに対し内容証明郵便で催告をして、Aの時効進行を一旦止まらせた上で、6ヶ月以内「裁判上の請求」等の裁判所の手を借りた手続きをすれば、無事、債務者Aの時効を更新させることができます。
 なお、催告は1回限り有効なものです。もう1回催告をしたら、そこからまたさらに6ヶ月間時効の進行が止まる、なんてことはありません。この点は注意ください。
 また、もし原告(訴える側)が訴訟を取り下げたときや、訴えが裁判所で却下(門前払い判決)されたときは、時効は更新しません。この点もあわせてご注意ください。

時効の更新の特殊なケース(債権者代位権)

 少し特殊ですが、次のようなケースもあります。
 まずは以下の事例をご覧ください。

事例2
AはBにお金を借りている。BはCにお金を借りている。


 これは、AがBからお金を借りていて、BがCからお金を借りている事例です。

 お金  お金
A ← B ← C
 貸す  貸す

 一見何の変哲もない事例ですが、このようなケースで、CがBへの貸金回収(貸したお金の回収)にあたり、Bにお金が無かったとしたらどうでしょう?
 その場合、AがBにお金を返せば、そのお金をBはCへの貸金回収に充てることができますよね。
 民法では、こういった場合に、BがAに対して持つ「金返せ」という債権を、CがBに代わって行使する債権者代位権という制度を定めています。
 つまり、CがAに対し「Bに金返せ」と請求することができるのです。

 返せ  返せ
A ← B ← C
↑(Bに返せ)
C  

 また、債権者代位権では、金銭債権の場合は直接自己に支払う事を求めること可能としています。
 つまり「金返せ」は金銭債権なので、CはAに対して「Bを通さず私(C)に直接金払え」と請求することもできます。

 返せ  返せ
A ← B ← C
↑(私に直接払え)
C   

 ただし、これができるのは、あくまでBが無資力(お金がない状態)のときだけですのでご注意ください。(債権者代位権については別途改めて解説いたします)。
金欠
 以上が債権者代位権についての簡単な解説ですが、ここからが本題です。
 債権は10年間で時効により消滅してしまいます。(民法166条)
 ですので、事例2のCは、Bに10年間逃げ続けられると借金を踏み倒されてしまいます。
 そこで、Cは消滅時効を止めるため、Bに対し裁判上の請求等を行わなければなりません。
 それでは、Cが債権者代位権を使って、BがAに対して持つ「金返せ」という債権を、Bに代わって行使(これを代位行使という)した場合、消滅時効の進行が止まるのは、BがAに対して持つ債権なのか、それともCがBに対して持つ債権なのか、一体どちらなのでしょうか?

 返せ  返せ
A ← B ← C
 債権  債権
  ↑   ↑
時効が止まるのはどっち?

 結論。消滅時効の進行が止まるのは、BがAに対して持つ債権です。
 したがいまして、もしCのBに対する債権が時効完成間近なのに、Cが債権者代位権によりBのAに対する債権を代位行使しても、CのBに対する債権の消滅時効の進行は止まりません。


時効の完成猶予

 時効が更新すると、時効期間はリセットされます。つまり、積み上げられた時効期間はゼロに戻ります。
 一方、時効の進行はストップするが時効期間はリセットされない「時効期間の進行が一旦止まる」というものも存在します。
 それは、時効の完成猶予です。

時効が一旦止まるとき(時効の完成猶予事由)

 では、一体どんなときに時効の完成猶予(一旦止まる)が起こるのでしょうか。

・仮差押え、仮処分
・催促

 催告は先述のとおりです。
 仮差押え、仮処分は 裁判所を使った手続です。(これらについての詳しい解説は借金で考える債権の世界~差押え&強制執行の超基本をご覧ください)
 他にも民法158~161条に時効の完成猶予に関する規定が存在するのですが、ここでは、その中の未成年者・成年被後見人に関する民法の条文を見ていきます。

(未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予)
民法158条
時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない


 この民法158条で言っているのはどういう事なのか、わかりやすく具体的に解説するとこうです。
 例えば、債権者が未成年者または成年被後見人だったとして、その債権があと少し(時効完成まで6ヶ月以内)で、時効により消滅しそうになっていたとします。
 このときに、債権者である未成年者または成年被後見人に、法定代理人がいない場合、その債権の時効の進行は完成猶予(一旦ストップ)します。
(法定代理人とは、未成年者の場合その親が法定代理人であることが多い)
親子2
 なぜそのようになっているのか?その理由ですが、未成年者や成年被後見人は、法定代理人に代理をしてもらわないと訴えの提起ができません。(例えば子供が自分で裁判を起こせない)
 そして、訴えの提起ができないとなると、時効の進行を止めることができないのです。
 これでは未成年者や成年被後見人は困ってしまいます。ましてや法定代理人がいないのは、本人のせいでもないでしょう。
 したがいまして、そのような場合には、法律により時効期間の進行を一旦止まらせて、未成年者や成年被後見人に法定代理人が就いてから、または未成年者や成年被後見人が行為能力者になってから(例えば未成年者が成年者になってから)6ヶ月が過ぎるまでの間は、時効期間の進行を止まらせたままにし、その間は時効が完成しないと定めているのです。

【補足1】 
 ちなみに、先述の民法158条には、被保佐人と被補助人については記述がありませんでした。
 その理由は、被保佐人・被補助人につきましては、法定代理人に代理をしてもらわなくても、自らで訴えの提起ができるからです(自分で裁判を起こせる)。法定代理人はそれに同意をするだけなので、時効の完成猶予も必要ないのです。(未成年者・成年被後見人や被保佐人などの制限行為能力者についての詳しい解説は制限行為能力者~成年被後見人・被保佐人・被補助人とは?をご覧ください)

【補足2】
 時効の完成猶予に関しまして、民法に次のような規定もあります。

(夫婦間の権利の時効の完成猶予)
民法159条
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消※の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

※婚姻の解消は「離婚」「配偶者の死亡」の2種類ある。

 この民法159条は、例えば、夫婦間で金の貸し借りなどをしていた場合、その債権の時効期間の進行は離婚してから6ヶ月までの間は止まる、ということを言っています。


以上、ここまでが時効の更新と完成猶予についてになります。
 時効の更新時効期間が完全にリセットされますが、時効の完成猶予はあくまで時効期間の進行が一旦ストップするだけです。
 この点はくれぐれもお間違いのないようにご注意ください。(時効の完成猶予は「時効の一時停止」と覚えてしまってもいいかもしれません)

除斥期間

 消滅時効と似て非なるものに、除斥期間があります。
 除斥期間とは、一定の期間を過ぎると問答無用に権利が消滅する期間のことです。
 問答無用に権利が消滅するとは、当事者が何しようがで勝手に権利が消滅するということです。
 さらに、更新も完成猶予もありません。
 したがって、債権者側からすると、除斥期間を過ぎるともはや手の打ちようがありません。
 一方、債務者側からすると、除斥期間が過ぎてしまえば、もはや援用(時効の権利の主張)すらする必要もないのです。
 
・除斥期間の起算点
 除斥期間の起算点は、一律に権利発生時となっています。

・除斥期間の効果
 除斥期間経過による権利消滅の効果はさかのぼりません。

・除斥期間という言葉は民法の条文に存在しない
 実は、民法の条文には除斥期間という言葉は存在しません。
 しかし、民法が規定する権利の存続期間の中で、除斥期間と解釈されるものはあります。
 例えば、売主の契約不適合責任における解除権の行使期間、取消権の行使期間、窃盗被害者・遺失主の権利回復期間などがあります。

 以上、最後に除斥期間についての簡単な解説でした。
 ここで覚えておいていただきたいことは、除斥期間は消滅時効と違い、更新もなければ、よほどのやむを得ない事由がない限り完成猶予もしないという事です。
 この点はくれぐれもご注意ください。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【時効の援用と利益の放棄】援用ができる当事者と時効更新の相対効について(保証債務)

▼この記事でわかること
時効の援用とは
時効の援用ができる当事者とは(保証人の援用)
時効更新の相対効(保証債務)
時効利益の放棄
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 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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時効の援用

 取得時効の場合、時効の完成によって権利を取得します。
 消滅時効の場合、時効の完成によって権利が消滅します。
 ところで、時効というのものは、時効期間が満たされると自動的に権利を取得したり、自動的に権利が消滅したりするものではありません。
 え?どゆこと?
 時効期間が満たされても、時効の効果を受ける権利を得るだけなのです。
 そして、その権利を行使することを時効の援用と言います。
 つまり、時効は、時効の援用をして初めてその効果が確定するのです。
 ですので、裁判所が勝手に「あ、それ時効ね」と決めることはできません。当事者が「時効を援用します」と主張して、初めてその効果が確定します。
 まとめるとこうです。

「時効期間が満たされても時効の効果は確定せず、時効の援用をして初めてその効果が確定し、時効を援用するかどうかは当事者の任意(当事者が自ら選択して決める)」

 じゃあ時効を援用しなかったら?
 そのときは時効の効果は確定しません。取得時効なら権利の取得は確定せず、消滅時効なら権利の消滅は確定しません。
 例えば、AがBに100万円を貸していて、すでに返済期日より10年間経過していたとしましょう。
 このとき、AのBに対する「100万円返せ」という債権は消滅時効にかかっています。なので、Bは時効の援用をすれば、100万円の借金を返さなくてもいいのです。
 しかし、Bが「借金を踏み倒すなんて道義に反する。オレは意地でもAに借金を返すんだ!」といって時効を援用しなければ、AのBに対する債権は消滅しません。(これを時効利益の放棄という)
 これが、時効の援用は当事者の任意(当事者が自ら選択して決める)ということの意味です。

時効の援用ができる当事者とは

 時効を援用できるのは「時効によって直接に利益を受ける当事者」だけです。
 では、この「時効によって直接に利益を受ける当事者」の範囲は、一体どうなっているのでしょうか?
考え中
 例えば、AがBを保証人として、Cからお金を借りたとしましょう。(このような場合、Aを主債務者と言います)

           債権 
B(保証人)ーA(主債務者) ← C
           借金

 そして、CのAに対する債権が返済期日10年間の経過により消滅時効にかかった場合、Aが時効の援用をできるのは当然として、保証人Bは時効の援用ができるでしょうか?
 結論。保証人Bも時効の援用ができます。
 これはすなわち、保証人Bも「時効によって直接に利益を受ける当事者」ということです。
 その理由は、主債務者AのCに対する債務(これを主債務と言う)が消滅すれば、保証人Bの債務(これを保証債務と言う)も消滅します。
 したがいまして、保証人Cも時効の援用ができる当事者なのです。(保証債務の基本についての解説は人が担保の保証人&物が担保の物上保証~をご覧ください)

補足:時効更新の相対効

 先ほど挙げた例で、保証人Bは、主債務者Aの時効を援用できることがわかりました。
 では、主債務者Aの債務、つまり主債務(AのCへの借金債務)の時効が更新した場合、保証人Bの債務、つまり保証債務の時効も更新するのでしょうか?
 結論。その場合は、保証人Bの保証債務の時効も更新します。
 ただし!保証人Bの保証債務の時効が更新しても、主債務者Aの主債務の時効は更新しません。
 これを、時効更新の相対効と言います。

〈時効利益の相対効〉
主債務更新→保証債務も更新
保証債務更新→主債務も更新× 

 なお、解説の中で登場した「相対効」や「主債務・保証債務」といったものに関しましては、別途改めて詳しく解説いたしますので、ここではとりあえず「そういうものがあるんだ」と、覚えておいていただければと存じます。

時効利益の放棄

 時効は、当事者が援用しなければその効果が確定しません。
 ということは、このようなことも可能なのでしょうか?
 例えば、AがBにお金を貸し付けた場合、時効対策として、あらかじめ契約書に次のような文言を入れておけば、債権者Aは安心なのでは?

「BはAに対し時効利益を放棄する」

 時効利益の放棄とは、時効を援用しないということです。時効利益を放棄すれば、時効の効力が確定的に消滅します。
 つまり「時効利益を放棄する」の文言を入れておけば、あらかじめ時効の効力を消滅させることができるわけです。
 しかし!そのようなことはできません。
 これについては、民法に極めてわかりやすい明快な条文があります。

(時効の利益の放棄)
民法146条
時効の利益は、
あらかじめ放棄することができない。

 え?民法さんどうしちゃったの?と思ってしまうぐらい、やけにわかりやすい民法146条条文ですよね(笑)。
 したがいまして、先の例のように、契約書にあらかじめ時効利益を放棄する旨の文言を入れたところで、その条項は無効になります。どうあがいても、あらかじめ時効の利益を放棄する(させる)ことはできないのです。
 もし、ヤバそうな所からお金を借りて、あらかじめ時効利益を放棄する旨の文言が入った契約書にサインをしてしまった人は、その条項につきましては無効なのでご安心ください。時効期間を満たせば、普通に時効が援用できますので。。。
 あ、決して借金の踏み倒しをススメている訳ではありませんので、誤解なきよう(笑)。

 さて、あらかじめ時効利益の放棄ができないことはわかりました。
 それでは続いて、このような場合はどうでしょう。

事例
AはBに100万円を貸し付けた。やがて時が過ぎ、AのBに対する債権は消滅時効にかかっていたが、Bはそれに気づかず債務を承認した。


 これは、債権者のAのBに対する「金返せ」という債権がすでに時効になっていたが、債務者のBがそのことに気づかずに「金返します」と債務の承認をした、という話です。
 さて、この事例で、Bは時効利益を放棄したことになってしまうのでしょうか?
 結論。Bの債務の承認は、時効利益の放棄にはあたりません。しかし、結果的には時効利益を放棄したのと同じことになります。
 ん?どゆこと?
 まず、事例のBは、自分の債務が消滅時効にかかっていることに気づいていません。つまり、Bは自らの時効利益を知らないのです。
 知らない利益を放棄できるの?
 もちろんできません。
 じゃあなんで時効利益の放棄と同じ結果になるの?
 判例では、次のような理屈で結論づけています。

「債務者Bの債務の承認は時効利益の放棄にはあたらない。
しかし、一回債務を承認したBが、その後、自らの債務が消滅時効にかかっていることに気づいて「やっぱり時効を援用します!」と言えるのか?
それは認められない。なぜなら、一度債務を承認した者が、その後、それをひっくり返して時効の援用を主張するのは信義誠実の原則(信義則)に反し許されないから!」

 なお、一度、時効利益を放棄しても、そこからまた新たに時効期間を満たせば、そのときは時効の援用ができます。
 これは時効が更新した場合と一緒です。
 この点ご注意ください。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

カテゴリ別項目一覧

▼各項目のページへのリンクになっています。

【代理の超基本】表見&無権代理とは/3つの表見代理とは/表見代理に転得者が絡んだ場合
【無権代理行為の追認】催告権と取消権とは?その違いとは?/法定追認について
【無権代理人の責任はかなり重い】無権代理人に救いの道はないのか?
【代理行為の瑕疵】代理人&本人の善意・悪意について/特定の法律行為の委託とは?
【代理人の権限濫用】それでも代理は成立している?裁判所の使う類推適用という荒技
【代理人の行為能力】表現代理人・無権代理人が配偶者の場合
【復代理】任意代理人と法定代理人の場合では責任の度合いが違う/代理を丸投げできるケースとは
【無権代理と相続】無権代理人が本人を&本人が無権代理人を相続した場合/本人が追認拒絶後に死亡した場合/相続人が複数の場合/相手方ができること
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【代理の超基本】表見&無権代理とは/3つの表見代理とは/表見代理に転得者が絡んだ場合

▼この記事でわかること
代理の超基本
代理人が顕名しなかったとき
無権代理とは
表見代理とは
代理権授与の表示による表見代理
権限外の行為の表見代理
代理権消滅後の表見代理
表見代理の転得者
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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代理の基本
 
 代理の制度は、法的三面関係を生み出すといわれ、相手方を含めて登場人物が最低3人は登場します。
 ゆえに、慣れないうちはややこしく感じるかと思いますが、私なりに、じっくりとわかりやすく解説して参りますので、よろしくお願いします。
 ちなみに、制限行為能力者の話などで出てくる法定代理人は、代理の一種です。
 それでは、まずは代理に関する民法の条文を見てみましょう。

(代理行為の要件及び効果)
民法99条
1項 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2項 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。


 上記、民法99条条文で、大事なポイントが3つあります。そのポイントをひとつひとつ解説して参ります。

1【代理人がその権限内において】
 権限というのは、権利の限界ということですよね。
 つまり「代理人がその権限」ということは、法律的に代理人には「代理人としての権利」すなわち、代理権が存在するということを意味します。
 そして「その権限内」とは、代理権の範囲内という意味です。
 これは例えば、ギタリストのAさんがBさんに「YAMAHAのギターを買ってきて」と頼んだとすると、BさんはAさんの代理人になり、Bさんの持つ代理権の範囲は「YAMAHAのギターの購入」になります。ですので、YAMAHAのピアノを購入することはできません。なぜなら、Bさんの持つ代理権の範囲外だからです。
 また、Aさんが「YAMAHAのギターを買ってきて」と依頼し、Bさんが「やるし!」とそれを承諾すると、その時点で委任契約が成立します。

2【本人のためにすることを示して】

 これは例えば、Aさんから「YAMAHAのギターを買ってきて」と依頼されたBさんが、楽器屋さんに行って「Aの代理人のBです。Aのために購入します」と示すということです。これを顕名と言います。
 顕名の仕方は、最も確実なのは委任状を見せることですが、委任状を示さずとも「Aの代理人B」ということが相手にわかれば、顕名があったと言えます。

3【意思表示】

 99条2項で書かれていることは、例えば、Aさんから「YAMAHAのギターを買ってきて」と依頼されたBさんが、楽器屋さんから「YAMAHAのギターを売りました」という意思表示を受け取った場合のことです。
 つまり、代理人と相手方の間で売買契約などの「法律行為が行われた」ということです。

 以上、3つのポイントを要約すると以下になります。

1・代理権
2・顕名
3・代理人と相手方の法律行為


 これらが代理の3要素、すなわち、法律要件になります。
 法律要件ということは、これらの3要素「代理権・顕名・代理人と相手方の法律行為」が存在して初めて代理が成立するということです。
 まずはここをしっかり押さえてください。
 そして、もうひとつ重要なポイントがあります。それは条文中の「本人に対して直接にその効力を生ずる」という部分です。
 これは、先述の3つの法律要件を満たして代理が成立すると、その法律効果は本人に及ぶということを意味します。
 ということは、Aさんから「YAMAHAのギターを買ってきて」と依頼されたBさんが、楽器屋さんでYAMAHAのギターを購入すると、その法律効果はAさんに及びます。つまり、YAMAHAのギターの購入代金の債務はAに生じるので、楽器屋さんが請求書を書く場合、そのあて先はAになります。そして、購入したYAMAHAのギターの所有権もAさんのものになります。
 このように、本人と代理人の代理関係、代理人と相手方の法律行為、法律行為の効果帰属(効果が及ぶ先)、という三面関係が、冒頭に申し上げた「法的三面関係」を生み出すという代理制度の大きな特徴になります。

 以上、まずここまでの解説が、代理という制度の「キホンのキ」になります。ちょっと退屈な内容に感じたかもかもしれませんが、まずはここをしっかり押さえていただければと存じます。

代理人が顕名しなかったとき
言わざる
 代理を構成する要素は先述のとおり次の3つです。

1・顕名
2・代理権
3・代理人と相手方の法律行為


 これを、もっとわかりやすく、事例とともに見て参りましょう。

事例1
お金持ちのAは、軽井沢に別荘を買いたいと考えていたが、多忙のため手がつかないので別荘の購入をBに依頼した。そして、BはAの代理人としてC所有の甲建物を購入した。


 この事例1で、代理を構成している3要素は
1・「私はAの代理人Bです」という顕名(通常は委任状を見せる)
2・本人Aを代理して権利を行使する代理人Bの代理権
3.BC間の売買契約(法律行為)
ということになります。
 では、これら代理を構成する3要素のどれかが欠けてしまったときは、どうなるのでしょうか?

顕名がない代理行為

 例えば、事例1で、代理人BがCに対し「私はAの代理人Bです」という顕名をしなかったらどうなるでしょう?
 普通に考えて、代理人が顕名をしないとなると、相手方は単純に、代理人自身を法律行為の相手方だと思いますよね。
 そこで、民法では、このような場合について次のように規定しています。

(本人のためにすることを示さない意思表示)
民法100条
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。


 これは民法100条条文を読めばすぐわかりますよね。
 つまり、顕名をしなかった代理人の法律行為は、代理人が自分自身のためにしたものになってしまうということです。
 したがいまして、事例1で、代理人Bが顕名をしなかった場合、Bは自分自身のために甲建物を購入したとして、BC間の売買契約が成立します。ですので、B自身代金支払い債務が生じ、Cが甲建物の売買代金を請求する相手はBになります。
 もしBが「そんなつもりはなかった」と言って支払いを拒むと、債務不履行による損害賠償の請求の対象になります。
 代理人が顕名をしないと大変なことになってしまうということです。
 では、顕名をしなかった代理人Bには、何か救いの道はないのでしょうか?
 実は、民法100条には続きがあります。

民法100条続き
ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。

 これはどういうことかと言いますと、たとえ代理人Bが顕名をしたかったとしても、相手方のCが「BがAの代理人であることを知っていた(悪意)」または「BがAの代理人であることを知ることができた(有過失)」ときは、顕名があった場合と同じように扱う、つまり、通常の代理行為として扱うという意味です。
 したがって、そのようなケースでは、甲土地の売買代金の請求先はAになります。

無権代理と表見代理

 顕名がなかったときの代理行為がどうなるのかはわかりました。
 では、代理人に代理権がなかった場合はどうなるのでしょう?
 実は、ここからが代理についての本格的な問題となります。ここまではまだ、代理制度のイントロに過ぎません。
 ここからいよいよ、代理制度のサビ、代理権がなかった場合についての解説に入って参ります。

事例2
Bは代理権がないのにもかかわらず、お金持ちのAの代理人と称して、軽井沢にあるC所有の別荘の売買契約を締結した。


 このケースでは、Bは代理権がないのに代理行為をしています。これを無権代理と言います。そして、Bのような者を無権代理人と言います。
 さて、ではこの事例2で、お金持ちのAさんは、無権代理人Bの勝手な行動によって、C所有の別荘を買わなければならないのでしょうか?
 結論。AはC所有の別荘を買わなければならなくなる訳ではありません。
 なぜなら、Bには代理権がないからです。当たり前の話ですよね。
 え?じゃあ誰が別荘を買うの?B?
 Bが買うことにもなりません。なぜなら、Bは顕名をしているからです。顕名をしていなければ、民法100条のただし書きの規定により、B自身が買わなければなりません。
 しかし、Bはたとえ偽りであれ「Aの代理人B」ということは示しています。ですので、B自身が買主にはならないのです。
 ん?じゃあどうなるん?
 このままだと、一番困ってしまうのは代理行為の相手方のCですよね。Bの勝手な行動による被害者とも言えます。
 そこで民法では、このような無権代理人の相手方を救う制度を設けています。それが表見代理です。

表見代理

 表見代理とは、ある一定の要件を満たしたときに、無権代理行為が通常の代理行為のように成立する制度です。
 つまり、事例2のCは、ある一定の要件を満たせば、本人Aに対して別荘の売買代金を請求できるのです。
 では「ある一定の要件と」とは何でしょう?
 表見代理が成立する要件は2つあります。

1・相手方の善意無過失
2・本人の帰責事由


 それでは、ひとつひとつ解説して参ります。

1【相手方の善意無過失】
 これは、事例2に当てはめますと、Cの善意無過失です。
 どういうことかと言いますと、BがAの代理人だとCが信じたことに過失(落ち度)がない、ということです。
 例えば、BがAの印鑑証明書まで持ち出してCに見せていたら、何も事情を知らないCは、普通にBがAの代理人だと信じてしまっても仕方がないですよね。
 したがって、そのような場合のCは善意無過失となります。
 一方、実はBがAの代理人ではないことをCが知っていたり(悪意)、自らの注意不足が原因で(有過失)、Aの代理人BということをCが信じてしまっていたような場合、それは善意無過失にはなりません。

2【本人の帰責事由】
 これも、事例1に当てはめてご説明します。
 まず事例1において、本人とはAのことですよね。つまり、Aの帰責事由(責任を取るべき理由)です。
 例えば、BがAの印鑑証明書まで持ち出していて、しかもそれが、AがBを信頼して渡していたものだったとしたらどうでしょう。そのような場合、Cにはこんな言い分が成り立ちます。
「一番悪いのは無権代理行為をしたBだ。しかし、そもそもAがBなんかに印鑑証明書を渡していなければ、こんな事も起こらなかったんじゃないか!?」
 これは、法律的に正当な主張になります。「Bに印鑑証明書を渡してしまったAも悪かった」ということです。すなわち、Aに帰責事由(責任を取るべき理由)アリということです。
 これが表見代理を成立させる要件の2つめ、本人の帰責事由です。

 以上、2つの要件「相手方の善意無過失」「本人の帰責事由」を満たすと、表見代理が成立します。
 したがいまして、事例2のCは、BがAの代理人であるということについて善意無過失で、かつ本人Aに何らかの帰責事由があった場合は、表見代理が成立し、本人Aに対して別荘の売買代金の請求ができるということです。同時に、本人Aには別荘の売買代金の支払い債務(義務)が生じ、無権代理人Bの責任を本人Aが取らなければならなくなります。

 以上が、表見代理の基本です。

表見代理の3類型
三本指
 民法では、表見代理について、3つの規定が存在します。

・代理権授与の表示による表見代理
・権限外の行為の表見代理
・代理権の消滅事由

 それでは、こちらもひとつひとつ解説して参ります。

代理権授与の表示による表見代理

(代理権授与の表示による表見代理)
民法109条
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。


 上記、民法109条条文中の「他人」とは、無権代理人のことです。「表示した者」とは、本人のことです。「第三者」というのは、無権代理行為の相手方です。
 つまり、民法109条で言っていることは「本当は代理権がない無権代理人に代理権があるように見せかけた原因を作ったのが本人の場合は、本人がその責任を負う。ただし、無権代理行為の相手方がその事実を知っていた、または過失により知らなかった場合には、本人は責任を負わない」ということです。
 要するに「本人に帰責事由アリなら本人が責任とれ!」という話です。

権限外の行為の表見代理

(権限外の行為の表見代理)
民法110条
前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。


 上記、民法110条条文冒頭の「前条」とは、前述の民法109条です。「権限外の行為」とは、代理権の範囲を超えた行為ということです。
 例えば、お金持ちのAさんが多忙のためBさんに軽井沢の別荘の買入れを依頼(委任契約)したとしましょう。するとBさんは「軽井沢の別荘の買入れ」という代理権を持つことになりますが、これを基本代理権と言います。すなわち、権限外の行為とは、基本代理権を超えた行為です。「軽井沢の別荘の買入れ」という基本代理権を持ったBさんが「北海道の別荘を買っちゃった」みたいなことです。そして、そのような場合も民法109条の規定が適用されるということです。
 ん?てことは権限外の代理行為の相手方が善意無過失なら本人が責任取るってこと?本人は別に悪くなくね?
 実はそんなことはなく、この場合も本人に帰責事由アリなのです。
 確かに、代理権限を超えた行為をした代理人が一番悪いのは間違いないです。相手方も被害者なら、本人も被害者です。
 しかし、こうも考えられます。
「代理権限を超えた行為をやらかしちゃうような信頼できない代理人に代理権を与えなければそもそもこんな問題は起こらなかったんじゃないか?じゃあ誰がそんな代理人に代理権を与えた?本人だよな。だから本人も悪い!
 ということで、このようなケースでも、本人に帰責事由アリとなるのです。

代理権消滅後の表見代理

(代理権消滅後の表見代理)
民法112条
他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。


 上記。民法112条条文中の「代理権の消滅」とは、委任契約の終了と考えるとわかりやすいと思います。
「事実を知らなかった第三者」とは、事実を知らなかった相手方(善意の第三者)です。
 つまり、この民法112条で書かれていることはこうです。
 例えば、お金持ちのAさんが多忙のためBさんに軽井沢の別荘の買入れを依頼(委任契約)したが、結局、別荘の購入はされないまま委任契約が終了し、その後に、もう委任契約は終了したのにもかかわらずBが軽井沢の別荘を購入しちゃった、というようなケースで、本人Aが「もう委任契約は終了したんだ!だから別荘は買わない!」と相手方に対し主張できないということです。
 本人の帰責事由は、先程と一緒で「委任契約が終了したのに代理行為をやらかしちゃうような信頼できない代理人に代理権を与えなければそもそもこんな問題は起こらなかったんじゃないか?じゃあ誰がそんな代理人に代理権を与えた?本人だよな。だから本人も悪い!」となります。

【補足】
 代理行為の相手方が助かるための要件は、善意無過失と本人の帰責事由です。
 では、代理行為の相手方の善意無過失は、誰が立証するのでしょうか?
 判例・通説では、民法109条(代理権授与の表示による表見代理)と民法112条(代理権消滅後の表見代理)のケースにおいては、本人側に代理行為の相手方の悪意・有過失の立証責任があるとされています。
 つまり、代理行為の相手方の無過失推定されるのです。本人が助かるには、自らで代理行為の相手方の悪意・有過失を立証しなければなりません。
 これは本人にとってはちょっと酷な構成ですが、取引の安全性を重視する、いつもどおりの民法の姿勢とも言えます。

表見代理の転得者

事例3
Bは代理権がないのにもかかわらず、Aの代理人と称して、A所有の甲建物を悪意のCに売却した。そして、Cは善意のDに甲物件を転売した。


 さて、この事例3では、まず表見代理は成立しません。
 なぜなら、代理行為の相手方のCが悪意だからです。表見代理が成立するための2つの要件、相手方の善意無過失と本人の帰責事由、そのうちのひとつが欠けてしまっています。
 ここまでは表見代理の基本ですが、問題はここからです。
 この事例3で、表見代理が成立しないのはわかりましたが、そうなると、善意のDはどうなるのでしょうか?
 結論。Dのために表見代理が成立することはありません

 表見代理の制度は、代理人に代理権があるという外観を、過失なく信じた代理行為の相手方を保護するためのものです。あくまで、代理行為の直接の相手方を保護する制度です。
 そして事例のDは、代理行為の直接の相手方ではありません。Dはあくまで転得者です。
 これは普通に考えてもわかるかと思いますが、転得者のDが「BにはAの代理権が確かにある!」と思って、甲建物の取引に入って来ることはまずないですよね?DがAともBとも知り合いだとか、過去に取引したことがあるとかなら別ですが、そのようなことはかなりマレでしょう。
 したがいまして、表見代理は転得者のためには成立しません。
 この点はご注意ください。

民法110条の正当な理由とは

(権限外の行為の表見代理)
民法110条
前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。


 上記は先述の民法110条の条文ですが、条文中の「正当な理由」とは、一体どんなものを言うのでしょうか。
 判例では、無権代理人が本人の実印を持っている場合「特段の事情がない限り正当な理由」としています。
 特段の事情という言葉は、判例ではよく出てくるのですが、簡単に言うと「よっぽどのこと」です。つまり「無権代理人が本人の実印を持っていたら、それはよっぽどのことがない限り代理権があると信じちゃうのは仕方ないよね」ということです。
 ただ一方で、判例で「正当な理由」が認められづらいケースも存在します。それは、本人と無権代理人が同居しているケースです。
 例えば、本人Aと無権代理人Bが旦那と嫁の関係で同居していたとすると、嫁のBが旦那のAの実印を持ち出すことは難しくないでしょう。そのようなケースでは、相手方は、本人の実印を持っている無権代理人に対して、より慎重に対応しなければなりません。
 例えば、旦那のAに直接確認の電話をするとか。そして、そのような慎重な対応をしていないと「正当な理由」が認められず、表見代理が成立しなくなってしまう可能性が高いです。つまり、本人と無権代理人が同居していると、無権代理人が本人の実印を持っているからといっても、それだけでは表見代理の成立が難しくなっているのです。

 このように、現実においては、表見代理の成立はケースバイケースで変わってきます。
 ですが、表見代理の基本は今までご説明してきた内容になります。
 まずはこの基本を、しっかり押さえていただければと存じます。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【無権代理行為の追認】催告権と取消権とは?その違いとは?/法定追認について

▼この記事でわかること
無権代理行為の追認の基本
不確定無効とは
催告権と取消権
追認と法定追認
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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無権代理行為の追認

事例1
Bは代理権がないのにもかかわらず、お金持ちのAの代理人と称して、軽井沢にあるC所有の甲別荘の売買契約を締結した。Aはその事実を知ると最初はたまげたが、次第に甲別荘を気に入ってしまい値段も悪くなかったので、そのまま購入してしまいたいと考えた。


 さて、いきなり事例から始まりましたが、まずこの事例1は、表見代理が成立するか否かの話ではありません。(表見代理についての詳しい解説は「【代理の超基本】表見&無権代理とは」をご覧ください)。
 なぜなら、本人Aが甲別荘を購入したいと思っているからです。
 これを表見代理として考えてしまうと、表見代理が成立しなければ本人Aは甲別荘を手に入れることができない、ということになります。もし、Bの無権代理行為について、Cが悪意(事情を知っていた)か有過失(落ち度アリ)であったか、または本人Aに全く帰責事由(責任を取るべき理由)がなかった場合、表見代理が成立せず、Aの思いは果たせません。
 そこで民法では、このように、無権代理人による行為であるとはいえ、本人がその結果を望んだ場合は、本人は追認できることを規定しています。※
※追認とは、追って認めること、すなわち後から認めることです。ある法律行為(事例1なら甲別荘の売買契約)を後から「それOK!」と(追認)する、ということです。

(無権代理)
民法113条
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。


 上記、民法113条条文中の「本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない」とは、本人が追認(後からOK)すれば無権代理行為の効力が本人に生じるというこ意味です。
 したがいまして、事例1の本人Aは、無権代理人Bの行為(C所有の甲別荘の売買契約)を追認すれば、甲別荘を手に入れることができます。
 本人Aは無権代理行為の被害者でもありますが、偶然とはいえ、甲別荘が気に入ってしまいました。そして、相手方Cも無権代理行為の被害者ですが、元々「お金持ちのAさんなら買ってもらいたいな」と思い、Aと甲別荘の売買契約をしたはずです。つまり、本人Aがそのまま追認してくれれば、Cも助かります。
 ですので、事例1は、たまたまとはいえ、Aが甲別荘を気に入ってそのまま追認するとなると、みんなウィンウィンでハッピーなんですよね。
 したがいまして、民法では、無権代理行為を本人が追認することができる旨の規定を置いているのです。
 また、補足ですが、民法113条には続きがあります。

民法113条2項
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。


 この民法113条2項は何を言っているのかといいますと、事例1の本人Aが追認する場合、その追認は、相手方Cに対してしなければ対抗できないということです。
 どういうことかと言いますと、例えば、すでに相手方Cの気が変わってしまい、もうAには売りたくないと思っていて、別の人に売ろうとしていたらどうでしょう?そのような場合、甲別荘が欲しいAは、Cに対して追認しなければ、別の人に売ろうとしているCに対抗できない、ということです。
 民法は、そのようなケースもあらかじめ想定しているのです。

不確定無効

 無権代理行為は、表見代理が成立するか本人が追認しない限り無効です。
 ですので、表見代理が成立しない無権代理行為は、本人が追認するかしないかの結論を出すまでは、どっちつかずの中途半端な状態です。この状態のことを不確定無効と言います。無効が確定しない状態なので、不確定無効なのです。
 無効が不確定、すなわち無い物が不確定、というのもなんだか面白いですよね。まるで釈迦に始まる中観仏教みたいです。
 ちなみに、私は釈迦に始まる中観仏教が大好きです。すいません。思いっきり余談でした(笑)。
奈良の大仏
催告権と取消権

事例2
Bは代理権がないのにもかかわらず、お金持ちのAの代理人と称して、軽井沢にあるC所有の甲別荘の売買契約を締結した。その後、Aに代理権がないことが発覚すると、Cは厄介な法律問題には関わりたくないと思い、さっさと別の買主を見つけて甲別荘をなんとかしてしまいたいと考えた。


 さて、この事例2では事例1のときとは違い、無権代理行為の相手方Cは、無権代理人Bとの甲別荘の売買契約をナシにしてしまいと考えています。
 では、甲別荘の売買契約がナシになる場合というのは、どういうケースがあるでしょうか?
 それは、本人Aが追認しないか、表見代理が不成立になるかです。
 しかし、これだと相手方Cは困りますよね。なぜなら、まず本人Aが追認するかしないかの決断を待たなければなりません
 本人の決断が出るまでは、不確定無効の状態が続きます。Cとしては、その間にも別の買主を探したいでしょう。もちろん、その間にも別の買主を探すことはできますが、もし本人Aが追認したならば、途端にBの無権代理行為は有効になり、Cには甲別荘の引渡し義務が生じます。なので、Cとしては動きづらいんです。
 そして「なら他の買主は諦めてAに買ってもらおう」と思っても、Aが追認してくれるならいいですが、そうでない場合は、表見代理が成立しなければなりません。そのためにお金と時間を使って裁判して立証して...となると、Cも大変です。
 そもそも事例2で、Cは法律問題には関わりたくないと考えています。
 そこで民法では、このように無権代理行為で困ってしまった相手方に、そのような状況を打破するための権利を用意しました。
 それが、無権代理行為の相手方の催告権取消権です。

催告権

 これは、無権代理行為の相手方が、本人に対して相当の期間を定めた上で「追認するか、しないか、どっちだコラ」と答えを迫る権利です。そしてもし、期間内に本人が返事を出さなかったらそのときは、本人は追認拒絶したとみなされます。無権代理行為の相手方の、本人に対する催告権には、このような法的効果があります。
 従いまして、事例2の相手方Cは、本人Aに対して相当な期間を定めた上で「追認するか、しないか、どっちだコラ」と催告し、本人Aが追認すれば、無権代理人Bが行った甲別荘の売買契約が有効に成立し、本人Aが追認しないかあるいは期間内に返事をしなかった場合は、本人Aは追認拒絶したとみなされ、無権代理人Bが行った甲別荘の売買契約は無かったことになり、Cはさっさと次の買主探しに専念できます。

取消権

 無権代理行為の相手方が本人に対して取消権を行使すると、無権代理行為は無かったことになります。すると当然、本人は追認ができなくなります。
 したがって、事例2で、法律問題には関わらないでさっさと他の買主を見つけたい相手方Cは、本人Aに取消権を行使すれば、手っ取り早く解決できます。

補足

 無権代理行為についての追認について、民法ではこのような条文があります。

民法113条2項
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。


 この民法113条2項の条文がまさに、事例2で重要になってくるのです。
 というのは、もし本人Aが追認したいと考えていた場合はどうでしょう?
 相手方Cは、むしろ別の買主に売りたいと考えていますよね。すると、状況としては「本人Aの追認が先か相手方Cの取消権行使が先か」というバトルになります。
 そしてこのときに、本人Aが無権代理人Bに追認の意思表示をしていたらどうなるでしょう?
 それだと相手方Cは、本人が追認したかどうかがわかりませんよね。その間に相手方Cが本人Aに対して取消権を行使したら、そのときは相手方Cの勝ちです。
 以上、といったことを、民法113条2項では規定しているのです。

追認と法定追認
女性講師
 最後に、追認についての補足的な内容を記します。

催告権行使と取消権行使の違い

 実は、この2つの権利行使には大きな違いがあります。
 その違いは、取消権善意の相手方しか行使できませんが、催告権悪意の相手方でも行使できます。
 なぜそのような違いがあるのか?
 これは、2つの権利の性格を考えればわかりやすいです。
 取消権は「取り消します!」と相手方が自分自身の意思をぶつけるのに対し、催告権は「追認しますか?どうしますか?」と本人の意思決定を伺う行為です。取消権は相手方自身が結論を出しているのに対し、催告権は「追認するかしないか、どっちだコラ」といくら迫っても、あくまで結論を出すのは本人です。つまり、催告権は取消権に比べて力の弱い権利なのです。
 したがって、結論を出すのはあくまで本人の催告権については、悪意の相手方でも行使可能となっている、ということです。

【内容証明郵便と返事】
 実際に現実に「追認しますか?どうしますか?」という内容証明郵便が送られてきたときに、追認する気がない場合、これに返事を書く必要があるのでしょうか?
 その場合、返事の必要はありません。そのまま、その催告をシカトしておくと、それがそのまま民法114条の追認拒絶となります。

無権代理行為の追認と法定追認

 無権代理行為の追認においては、民法125条の法定追認の適用があるのでしょうか?
 この問題について判例では、民法125条の規定はあくまで「制限行為能力、詐欺、強迫」を理由として取り消すことができる行為の追認についての規定であるため、その適用(類推適用)を否定しています。
 ということなので、もし無権代理においての本人が、民法125条に規定されている行為をしたとしても、法律上、追認したとみなされることはありません。(無権代理の本人が民法125条に規定される行為をしたときに、その行為が黙示の追認と判断されてしまう可能性はあります)

【追認の効力】
 追認の効果は、別段の意思表示がなければ遡及します。
 つまり、追認の効力は原則として遡って発生します。
 念のため申し上げておきます。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【無権代理人の責任はかなり重い】無権代理人に救いの道はないのか?

▼この記事でわかること
無権代理人の責任の基本
無権代理人に救いの道はないのか?
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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無権代理人の責任

 無権代理行為が行われた場合、相手方を救うための制度として表見代理があり、表見代理が成立すると本人が責任をとることになります。
 表見代理による相手方の保護は、民法が重視する取引の安全性の観点からも重要です。
 しかし、そもそも無権代理において一番悪いのは、無権代理人ですよね?
 もちろん、民法では、無権代理人の責任についての規定もしっかり置いています。

(無権代理人の責任)
民法117条1項
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。


 この民法117条1項のこれ、実はかなり重~い責任なんです。だって本人が追認してくれなかったら、無権代理人自身でなんとか事をおさめなきゃならないってことなので。
 その責任の重さ、事例とともにご説明いたします。

事例
Bは代理権がないのにもかかわらず、お金持ちのAの代理人と称して、軽井沢にあるC所有の別荘の売買契約を締結した。


 この事例で、無権代理人であるBは「Aの代理人Bです」という顕名を行なっています。ですので、あとは表見代理が成立するか本人が追認するか、という問題です。
 しかし、表見代理が成立せず本人Aが追認しなかったらどうなるでしょう?
 はい。もうおわかりですよね。そんなときに、先述の民法117条による重~い責任が、無権代理人Bに待ち受けています。
 では、どんな重~い責任が無権代理人Bに待ち受けているのでしょうか?
 まず、相手方Cが無権代理人Bに契約の履行を求めたなら、Bは別荘の売買代金を支払わなければなりません。
 また、相手方Cが無権代理人Bに損害賠償を請求したなら、Bはそれに応じ、賠償金を支払わなければなりません。
 しかも!このときの損害賠償の範囲はなんと、履行利益です!
 履行利益ということは、履行していれば得られたであろう利益を賠償するのです!(履行利益については「【契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)】~事業上の損害とは」でも解説しています)
 つまり、無権代理人Bは、契約の履行を迫られようが損害の賠償を迫られようが、いずれにしたって別荘の売買代金相当の支払いからは逃れられません。
 これ、マジでシャレにならない責任の重さです。表見代理が成立せず本人が追認しないときは、このように無権代理人には、地獄が待っているのです。

無権代理人に救いの道はないのか?
頼み
 表見代理が成立せず本人が追認しないとき、無権代理人には地獄が待っている、ということはすでにご説明したとおりですが、それでもまだなんとか!無権代理人に救いの手立てはあります。
 それがこちらの民法の条文で記されています。

民法117条2項 
前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一号 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二号 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三号 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。


 上記、民法117条2項の条文冒頭の「前項」とは、先述の民法117条1項のことです。
 この条文からわかることは、相手方が善意無過失でなければ無権代理人は救われるということです。
 つまり、事例の無権代理人Bは、相手方CがBの無権代理行為について、その事情を知っていたか(悪意)、もしくはCの不注意(過失)でBが無権代理人だということを見落としていたのなら、そのときは無権代理人Bは救われます。
 また、もし無権代理人Bが制限行為能力者であった場合は、そのときも責任を免れます。(無権代理においても制限行為能力者の保護は厚いのです)
 このように、表見代理が成立せず本人が追認しないときでも、無権代理人の救いの手立ては用意されています。
 しかし、相手方が善意・無過失ではないことを立証する責任は、無権代理人の側にあります。つまり、相手方の悪意・有過失の立証責任は無権代理人の側にあるのです!
 ですので、表見代理が成立せず本人が追認しないときでも無権代理人には救いの手立てが残っているとはいえ、その手立てを使って責任を免れるのも容易ではないのです。
 このことからも、無権代理人の、その重~い責任がよくわかります。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【代理行為の瑕疵】代理人&本人の善意・悪意について/特定の法律行為の委託とは?

▼この記事でわかること
代理人の善意・悪意について
本人が悪意のとき
「特定の法律行為の委託」とは
「特定の法律行為の委託」にあたるかあたらないかで結論が変わる理由
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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代理行為の瑕疵

 代理が成立するための3要素は「代理権」「顕名」「代理人と相手方の法律行為」になりますが、「代理人と相手方の法律行為」に瑕疵(欠陥)があった場合は、一体どうなるのでしょうか?

代理人の善意・悪意

事例1
Bはお金持ちのAの代理人として、軽井沢にあるC所有の甲別荘の売買契約を締結した。ところが、なんと甲別荘の真の所有者はDだった。どうやらDの資産隠しのためにCが協力して、甲別荘の名義をCに移したとのことだった。


 この事例1では、正式な代理権を持ったBは、しっかり顕名をして代理行為を行なっています。
 よってこれは、無権代理の問題ではありません。
 問題は、甲別荘の売買契約に瑕疵があるということです。つまり、冒頭に挙げた、代理が成立するための3要素のうちの「代理人と相手方の法律行為」に欠陥があるのです。
 ところで、事例1で、CとDが行なっていることは何かおわかりでしょうか?
 これは通謀虚偽表示です。(通謀虚偽表示についての詳しい解説は「【通謀虚偽表示の基本】無効な契約が実体化?」をご覧ください)。
 そうです。つまり、事例1は、通謀虚偽表示に代理人が巻き込まれたケースです。
 したがいまして、事例1で問題になるのは「甲別荘の売買契約が有効に成立して本人Aが甲別荘を取得できるかどうか」になり、そのための要件として「Cと甲別荘の売買契約をした者の善意」が求められます。この善意とは「CとDの通謀虚偽表示について」です。
 ということで「甲別荘の売買契約が有効に成立して、本人Aが甲別荘を取得するためには、Cと売買契約を締結した者の善意が求められる」ことがわかりました。
 さて、少々時間がかかりましたが、いよいよここからが今回の本題です。
 事例1で、甲別荘の売買契約が有効に成立するには、Cと甲別荘の売買契約をした者の善意が求められますが、では「Cと甲別荘の売買契約をした者の善意」とは本人Aの善意なのでしょうか?それとも代理人Bの善意なのでしょうか?
 まずは民法の条文を見てみましょう。

(代理行為の瑕疵)
民法101条
代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、
その事実の有無は、代理人について決するものとする。

 民法101条によると「その事実の有無は、代理人について決するものとする」とあります。これはつまり、事例1において、CとDの通謀虚偽表示についての善意・悪意は、あくまで代理人Bで判断するということです。
 したがいまして、事例1で、甲別荘の売買契約が有効に成立して、本人Aが甲別荘を取得するためには、CとDの通謀虚偽表示について代理人Bが善意であればOK!ということになります。
 なお、条文中に「意思の不存在、詐欺、強迫」とあり、通謀虚偽表示については書いていませんが、その後の「又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合」の中に、事例1のような通謀虚偽表示のケースも含まれます。

 さて、事例1において、CとDの通謀虚偽表示についての善意か悪意かを問われるのは、代理人Bというのがわかりました。
 しかし、実はこの話にはまだ、微妙な問題がはらんでいます。

本人が悪意のとき
悪意
事例2
Bはお金持ちのAの代理人として、軽井沢にあるC所有の甲別荘の売買契約を締結した。ところが、なんと甲別荘の真の所有者はDだった。どうやらDの資産隠しのためにCが協力して甲別荘の名義をCに移したとのことだった。当然、Bはそんな事実は全く知らなかったが、実はその事実をAは知っていた。


 この事例2でも、事例1と同様、CとDは通謀虚偽表示を行なっています。先述のとおり民法101条によれば、このようなケースで善意・悪意を問われるのは、代理人となります。
 となると、この事例2では本人は悪意ですが、代理人Bが善意なので、(悪意の)本人Aは甲別荘を取得できることになります。
 でもこれ、どう思います?なんか微妙だと思いませんか?
 確かに、まず何より通謀虚偽表示をやらかしたCとDが一番悪いです。それは間違いないです。
 ただ、通謀虚偽表示についての民法94条2項の規定は、善意の第三者を保護するためのものです。
 ということは、善意の代理人Bをかましただけで、いとも簡単に悪意の本人Aが甲別荘を取得できるとなると、民法94条2項の規定と整合性が取れなくなってしまいますよね。
 このままだと悪意の第三者は、代理人という裏技を使えば、民法94条2項の規定を事実上無力化できてしまうことになります。
 そこで、民法は「代理行為の瑕疵」について、こんな規定も置いています。

(代理行為の瑕疵)
民法101条3項
特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。


 この民法101条3項で重要なポイントは「特定の法律行為の委託」です。

民法101条3項の「特定の法律行為の委託」とは

 これは、本人が代理人に対して、具体的に指定するような指示を出すことです。
 例えば、事例2で、本人Aが代理人Bに対し「軽井沢にあるC所有のあの別荘を買ってきて」というような依頼の仕方をしていたら、それは「特定の法律行為の委託」となります。逆にそういった具体的に指定する依頼はなく、C所有の甲別荘を代理人B自身で見つけたような場合は「特定の法律行為の委託」にあたりません。
 結論。事例2において、Bの代理行為が特定の法律行為の委託」 にあたれば、たとえ代理人Bが善意でも、悪意の本人Aは甲別荘を取得することはできません。
 逆に、Bの代理行為が「特定の法律行為の委託」 にあたらなければ、代理人が善意であれば、本人Aは悪意でも甲別荘を取得することができます。

「特定の法律行為の委託」にあたるかあたらないかで結論が変わる理由は?

 ここは非常に重要な論点です。
 こう考えてみてください。
 悪意の本人Aによる「特定の法律行為の委託」によって、代理人Bが甲別荘の売買契約を締結したとなると、本人Aは、わかっていながら通謀虚偽表示の物件をわざわざ指定して代理人Bにやらせていることになります。そんなヤツ、保護する必要ありますかね?
 一方、本人Aは代理人Bに「軽井沢辺りに別荘買ってきて」ぐらいの依頼の仕方で、C所有の甲別荘を代理人B自身で見つけた場合に、本人AがたまたまCとDの通謀虚偽表示を知っていて...というようなケースだと全然ニュアンスが違いますよね?
 つまり「代理人B自身で見つけてきた物件の事情(CとDの通謀虚偽表示)を偶然たまたま本人Aは知っていて」というようなケースでは、同じ「本人Aの悪意」でも、全然その意味合いが違ってくるということです。
 したがって、そのケースだと「特定の法律行為の委託」にはあたらないと判断される可能性が格段に上昇します。
 このように「特定の法律行為の委託」にあたるかあたならないかは非常に重要なのです。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【代理人の権限濫用】それでも代理は成立している?裁判所の使う類推適用という荒技

▼この記事でわかること
代理人の権限濫用とは
代理は成立している
類推適用という荒技
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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代理人の権限濫用

事例1
BはAの代理人としてしっかりと顕名をした上で、不動産王のCとA所有の甲土地の売買契約を締結した。ところが、なんとBは甲土地の売買代金を受け取ってトンズラぶっこくつもりでいたのだった。


 いきなり事例から始まりましたが、いやはや、とんでもないヤツが現れましたね。
 そうです、ワルの代理人Bです。
 この事例1は、このろくでもないBのヤローのせいでAとCが困ってしまうハナシです。
 さて、それではこの事例1で、本人Aは甲土地を引き渡さなければならないのでしょうか?
 まず事例1は、無権代理の問題ではありません。なぜなら、Bには確かな代理権があるからです。
 つまり、事例1は、代理人Bがその代理権を濫用したケースです。
 ここで注意していただきたいのは、代理人Bのやったことは「代理権の濫用」です。代理の「権限を超えた」のではありません。
 代理の「権限を超えた」のであれば、それは「代理権にないことをやった」ということで無権代理の問題になりますが「代理権の濫用」の場合は「代理権があることをいいことに代理人がやらかすケースです。
 したがいまして、事例1は、代理人Bが代理権があることをいいことに甲別荘の売買代金を受け取ってバックレようとしているという、あくまで有権代理の話で、Cとの甲別荘の売買契約という代理行為自体には問題はありません。

代理は成立している

 そもそも、事例1で「代理」は成立しているのでしょうか?
 まず、先程ご説明しましたとおり、Bには正式な代理権があり、代理行為自体にも問題ありません。なおかつBはしっかりと顕名も行っています。
 ということは、代理が成立するための3要素「顕名」「代理権」「代理人と相手方の法律行為」の全てが見事に揃っています。
 よって、事例1において、代理はしっかりと成立しています。ということは、普通に考えますと、甲別荘の売買契約は問題なく成立し、本人Aは甲別荘を不動産王Cに引き渡さなければなりません。
 しかし、どうでしょう?この結論の導き方だと、仮に不動産王Cが悪意であっても、本人Aが泣かなければなりません。ましてや不動産王Cとワルの代理人Bが裏で繋がっていたらどうです?そんなケースでも本人Aが泣かなければならないのはオカシイですよね?
 しかし!実は民法には、事例1のようなケースを想定した条文がないのです。

類推適用という荒技
裁判所
 実は「うわ~このケース、条文ないわ~」ということは、現実には結構あります。
 そんなとき裁判所はどうするのか?
 はい。そのときに裁判所が使う技が類推適用です。
 類推適用とは「本来は違うケースに適用する規定だけど、パターンとしてはこのケースに適用させてもイイんじゃね?」というものです。
 では、事例1のようなケースで裁判所が類推適用する規定は?というと、民法93条です。

(心裡留保)
民法93条
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。


 この心裡留保についての民法の条文のただし書きの部分を類推適用します。
 心裡留保とは、表示した意思と内心が一致しないケースです。例えば、ウソを口に出しても内心とは違いますよね?(心裡留保についての詳しい解説は「【心裡留保の超基本】冗談で言った事が有効に契約成立するとき」をご覧ください)
 話を戻します。
 では、どのようにあてはめるのか?
 事例1だと、このようになります。

代理人Bのした表示→本人Aのために甲別荘を売ります
代理人Bの内心→売買代金を受け取ってバックレる

 つまり、
代理人Bのウソ→「本人Aのために甲別荘を売ります」
内心→「売買代金を受け取ってバックレる」
 上記が一致しない心裡留保として考えて、結論を出すのです。
 すると、このようなロジックになります。
「代理行為の相手方である不動産王Cが、代理人Bの真意(売買代金を受け取ってバックレる)を知っていた場合、または知ることができた場合には、甲別荘の売買契約は無効となり、本人Aは甲別荘を引き渡さなくてもよい
 これなら不動産王Cが悪意の場合や、裏でワルの代理人Bと繋がっていた場合まで、本人Aが泣くことはなくなります。
 でもそれだと不動産王Cが善意無過失なら結局本人Aが泣くことになるんじゃね?
 なります。しかし、その場合の理屈はこうです。
「一番悪いのはBだ。しかし、Bみたいなろくでもないヤツを代理人に選んだAも悪い!
 つまり、本人に帰責事由アリ(責任を取るべき理由アリ)となるのです。
 したがって、相手方Cが善意・無過失なら本人Aは責任を取らなければならないのです。

 このように、事例1のようなケースでは心裡留保の規定を類推適用して、相手方が善意・無過失なら「本人にも帰責事由アリ」として本人が泣くことになり、相手方が悪意・有過失なら「自業自得だろ」と相手方が泣くことになります。
 つまり、このような方法で、本人と相手方の利益衡量を行なっているというわけです。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【代理人の行為能力】表現代理人・無権代理人が配偶者の場合

▼この記事でわかること
代理人の(制限)行為能力の基本
未成年者の委任契約の取消し
表現&無権代理人が配偶者の場合
夫婦の場合には別の規定がある?
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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代理人の(制限)行為能力

 実は、代理人になるには行為能力者である必要はありません。
 民法では次のように規定します。

(代理人の行為能力)
民法102条
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。


 この民法102条の条文は、制限行為能力者が代理人としてした行為についての規定です。
 つまり、未成年者などの制限行為能力者でも代理人になれるということです。
 え?マジで?
 はい。マジです。ではなぜ、制限行為能力者でも代理人になれるのでしょうか?

事例1
未成年者のBはお金持ちのAの代理人として、軽井沢にあるC所有の甲別荘の売買契約を締結した。


 さて、この事例1で、未成年者である代理人Bは、制限行為能力者であることを理由に甲別荘の売買契約を取り消せるでしょうか?
 結論。未成年者Bは制限行為能力者であることを理由に甲別荘の売買契約を取り消すことはできません。
 なぜなら、先述の民法102条の規定は「制限行為能力者でも代理人になれますよ。そのかわり代理人になったら制限行為能力者として扱わないですよ!」という意味なのです。
 え?でもそれじゃ制限行為能力者がキケンじゃね?
 そんなことはありません。なぜなら、代理行為の法律効果が帰属するのは(代理行為で結んだ契約の、契約上の責任が生じるのは)本人です。代理人ではありません。ですので問題ないのです。
 それに、事例1で、本人Aはわざわざ未成年者Bに代理を依頼したということですよね?それはつまり、それだけ未成年者Bがその辺の大人よりしっかりしてるとか、代理を頼むに相応しい理由があるはずです。それで本人Aが納得して「Bに頼むわ!」としているのであれば、それならそれでイイんじゃね?ということになるわけです。
 また、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人になった場合に代理人としてした行為は、例外的に行為能力の制限を理由に取り消すことができます。この点でも安全は担保されているというわけです。

未成年者の委任契約の取消し

事例2
未成年者のBはお金持ちのAの代理人として、軽井沢にあるC所有の甲別荘の売買契約を締結した。しかしその後、未成年者BがAと結んでいた委任契約は親権者の同意を得ないでしたものであることが発覚した。


 さて、この事例2で、未成年者BはAとの委任契約を取り消すことができるでしょうか?
 結論。未成年者BはAとの委任契約を取り消すことができます。
 ここでひとつ問題があります。
 というのは、取消しの効果は遡及します。したがって、AとBの委任契約を取り消すとその効果は遡って発するので、BはハナっからAの代理人では無かったことになります。すると、BがやったCとの甲別荘の売買契約は無権代理行為ということになってしまうのです。
 これが問題なんです。だってこれでは、相手方Cが困ってしまいまよね。せっかくお金持ちのAに売れたと思ったのに、甲別荘の売買契約が有効になるには、表見代理が成立するか本人Aが追認するかしなければなりません。
 もし表見代理が成立せず本人Aが追認しなかった場合は最悪です。Bは未成年者、すなわち制限行為能力者ということなので、民法117条2項の規定により、Bに無権代理行為の責任を追及することもできません。
 これでは相手方Cがあまりにも気の毒です。ですので、このようなケースにおいては、委任契約を取り消した際の遡及効(さかのぼって発する効力)を制限し、その取消しの効果将来に向かってだけ有効とし、代理人の契約当時の代理権は消滅しないという結論を取ります。
 つまり、事例2で、未成年者BとAの委任契約が取り消されたとしても、取り消す前にCと交わした甲別荘の売買契約時のBの代理権は消滅しないということです。
 よって、甲別荘の売買契約も有効に成立します。

 なんだかややこしい結論に感じたかもしれませんが、このようにすることによって、相手方Cの権利と制限行為能力者Bの保護のバランスを取っているのです。(こういったところが民法を難しく感じさせる部分であり、民法の特徴でもあります)
 法律は決して万能ではありません。だからこそ、このような様々なケースに対応しながら、そこに絡んでくる人達の権利の保護とバランスをなんとかはかっているのです。
 このあたりの理屈は、最初は中々掴みづらいかもしれません。しかし、民法の学習を繰り返していって次第に慣れてくると、自然とすぅっと頭に入って来るようにもなります。なので民法くんには、根気よく接してやってください(笑)。

表現&無権代理人が配偶者の場合

事例3
A男とB子は夫婦である。B子はA男に無断で、Aの代理人と称してA所有の甲不動産をCに売却した。


 さて、続いてこの事例3ですが、ここでのポイントは、無権代理人Bと本人Aが夫婦だという点です。
 まずはそこを押さえた上で、、これがAとBが夫婦ではなかった場合表見代理の成立はありません。それは完全に無権代理の問題です。なぜなら、無権代理人Bは本人Aに「無断で」無権代理行為を行っているからです。
 表見代理の可能性があるケースは、以下の3類系※にあてはまる場合です。

・代理権授与の表示による表見代理
・権限外の行為の表見代理
・代理権の消滅事由
※表見代理の3類型についての詳しい解説は「【代理の超基本】表見&無権代理とは」をご覧ください。

 事例3では「無断で」とあるので、上記の3類系にあてはまらず、表見代理の問題にはならないのです。
 つまり、本人Aに責任が及ぶことはなく、責任が及ぶのは無権代理人B自身です。

夫婦の場合には別の条文がある
老夫婦
 最初に事例のポイントと申し上げましたが、今度の事例3のAとBは夫婦です。
 実は、これが少々やっかいなんです。
 先ほど述べたとおり、AとBが夫婦でなければ「無断で」とある限り表見代理の問題にならず、単純に「Bの無権代理の問題ですね。以上」と終われるところなのですが、夫婦の場合には、以下のような民法の条文が存在します。

(日常の家事に関する債務の連帯責任)
民法761条
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。


 つまり、民法761条の規定により、夫婦の一方が行った法律行為は、夫婦として連帯責任を持つということです。
 ただ、条文にあるとおり、その対象となる法律行為とは「日常の家事に関して」です。
 では、果たして事例3のような不動産の売却行為日常の家事に関する法律行為にあたるでしょうか?
 あたるか!セレブか!と思わずツッコミたくなるところですが(笑)、ツッコむまでもなく、普通に考えて、不動産の売却が日常の家事に関する法律行為にあたるわけないですよね。
 したがいまして、事例3では表見代理の成立はなく、民法761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)の適用もありませんので、相手方Cは甲不動産を取得することはできません。

【補足】
 実は判例では、事例3のようなケースにおいて、表見代理が成立され得る可能性を開いています。
 え?なんで?
 判例の理屈としてはざっくりこうです。

「先述の民法761条は「夫婦間の相互の代理権」を規定していて、それは法定代理権の一種である。法定代理権を基本代理権とした「権限外の行為の表見代理」は成立し得る。そして民法761条の「夫婦間の相互の代理権」を基本代理権として民法110条(権限外の行為の表見代理)の規定を類推適用し、相手方が無権代理人に代理権ありと信じるにつき正当な理由があれば表見代理は成立し得る」

 自分で書いておいてなんですが、おそらくこれを読んでもよくわからないですよね(笑)。
 そして、さらに身も蓋もない事を申しますと、この理屈を理解する必要もないです。
 大事なのは、事例3のようなケースでも「表見代理成立し得る可能性はある」ということです。
 ですので、ここで覚えておいていただきたいのは、事例3のようなケースでも、取引の内容やその他の具体的な事情によっては表見代理の成立もあり得ると判例は言っていることです。
 理屈の理解は置いてといて、この結論の部分だけ覚えておいていただければと存じます。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【任意代理と法定代理】法定代理に表見代理はあり得るのか

▼この記事でわかること
任意代理と法定代理とその違い
法定代理に表見代理は成立するのか?
法定代理人に基本代理権は存在するのか?
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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任意代理と法定代理

 代理は大きく分けて2種類あります。
 それは任意代理と法定代理です。

【任意代理】
 これは、委任による代理です。
 つまり、本人が「あなたに代理を頼みます」といってお願いする代理です。
 おそらく、一般的にイメージする代理は、こちらの任意代理になるかと思います。
「委任による代理=任意代理」←まずはここを押さえておいてください。

【法定代理】

 これは、法律によって定められた代理です。
 本人が「あなたに代理を頼みます」といってお願いする訳ではありません。本人がお願いするまでもなく、法律によって定まる代理です。
 最もわかりやすい法定代理は未成年者の親権者です。
 通常、子供の親は子供の法定代理人になります。でもこれって、子供が親に「代理頼みます」とお願いして成立するものではありませんよね?「法律がそう決めた」からそうなるのです。

委任による代理=任意代理
法律によって定められた代理=法定代理


 この基本はまず、確実に覚えておいていただければと存じます。

法定代理に表見代理は成立するのか

 さて、ここでこんな疑問が湧きませんか?
 それは、法定代理にも表見代理が成立するのか?です。
 まず、表見代理が成立するには、前提として無権代理行為の存在がなければなりません。
 となると、そもそも法定代理人の無権代理行為があり得るのか?となりますよね。
 というのは、法定代理人は本人にお願いされてなるものではありません。法律の定めによってなるものです。
 つまり、普通に考えて「法定代理人に代理権がない状態」はありえないことになります。
 すると、法定代理人の無権代理行為があり得るケースとして考えられるものがあるとすれば「代理権限を超えた」場合です。
 代理権限を超えた場合とは、例えば「軽井沢の別荘の購入」という代理権を付与された代理人(任意代理人)が、那須の別荘を購入してしまうようなケースです。
 このときの「軽井沢の別荘の購入」は基本代理権になります。その基本代理権を超えた代理行為「那須の別荘の購入」が、代理権限を超えた無権代理行為となります。
 つまり「代理権限を超えた無権代理行為」とは、前提となる基本代理権があって初めて成り立つものです。
 このように考えていくと、法定代理に表見代理があり得るのか?という問題は、法定代理人に基本代理権というものが存在するのか?という問いへの結論次第ということになります。

法定代理人に基本代理権は存在するのか?
?女性
 これは、実はハッキリと明確に結論づけられている訳ではありません。
 なんじゃそれ?じゃあ結局どーなのよ!?
 ですよね(笑)。ただ一応、法定代理にも下記の規定、表見代理の3類系のうちの2つの適用はあるとされています。

民法110条(権限外の行為の表見代理)
民法112条(代理権消滅後の表見代理)

 先ほどまで解説して参りました内容は、法定代理における「権限外の行為の表見代理」です。
 しかし、どうやら民法112条「代理権消滅後の表見代理」の方についても、法定代理での適用はあるようです。
 また、判例では「法定代理においても、表見代理の成立はなくはない」というように結論づけています。
 結局どっちやねん!
 ツッコミたくなりますよね(笑)。しかし、このような曖昧な結論というのは、民法の学習をしていると結構よく出てきます。ですので強引に慣れていってください(笑)。
 まあ、なぜこのような曖昧な結論になってしまうかの理由を考えると、それは「法定代理には本人の帰責性がありえない」ということが言えます。
 法定代理人は本人が選んでお願いしている訳ではないので「そんなヤツを代理人に選んでしまった本人も悪い」という理屈が成り立たないのです。表見代理は、そのような本人の帰責事由を成立要件として、相手方を保護し、取引の安全性を確保する制度です。
 ですので、本来の理屈としては、法定代理には表見代理は成立しないとなるところですが、まったく表見代理はありえないとなると、相手方としては法定代理人と取引する場合はちょっとリスクが増しますよね。そして、現実にはあらかじめ想定できないような様々なケースがありえます。
 このような事情から、やむをえず「なくはない」というような曖昧な結論になってしまうと考えられます。
 ということなので、試験対策としては「法定代理において表見代理の成立はない」という選択肢が出てきたら、それは誤りとして選択することになります。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

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Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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