民法?何それ?この世の中は契約社会

 こちらでは、民法について、できるだけわかりやすく噛み砕いて解説して参りたいと思います。各種資格試験を受ける等で民法の学習をされたい方、単純に民法に興味をお持ちの方、日常の法律関係で疑問をお持ちの方など、読んで頂いた皆様にとって、少しでもお役に立てて頂けるものになれば幸いです。
 尚、当サイトでは、法学初学者に向けての記述になると思いますので、その点はあらかじめご了承下さい。
 それでは始めて参ります。

 皆さんは、民法と聞いて何かピンと来ますか?おそらく、法学生や仕事で法務に携わっている方以外は、中々ピンと来ないのではないかと存じます。ですので、まずは「民法とはなんぞや?」というところから、始めて参りたいと思います。

この世の中は契約社会

 当サイトをご覧になって下さっている方で、アパートやマンションあるいは一軒家を借りて住んでいる、いわゆる賃貸不動産にお住いの方は多いと思います。実はその不動産賃貸借に関する規定が、民法の中に存在します。
 民法の条文は、全部で1044条存在します。その中に第七節 賃貸借というカテゴリーがあり、そこに不動産賃貸借に関係する規定が存在します。例えば、賃貸人(貸主、つまり家主・大家のこと)は賃貸物(賃貸している物件のこと)の修繕義務を負うとか、賃貸人に無断で転貸(また貸し)してはいけない等々。ちなみに、今挙げた例は、皆さんが家を借りる時に交わした契約書の中にも、盛り込まれていると思います。もしご面倒でなければ、今一度ご覧になってみて下さい。
 民法というものは、このように、実は我々の生活に密接に関わっています。先ほど挙げた不動産賃貸借の例ですが、これは不動産賃貸借契約になります。つまり、契約の一種ということですね。

 ところで皆さん。この世の中は契約社会というのはご存知でしょうか?と言っても、ルソーの社会契約論ではありません。まあ、いきなり契約社会と言われても、はぁ?て感じですよね(笑)。ですので、具体例を挙げてご説明いたします。
 皆さんも普段、当たり前にコンビニなどで買い物をしますよね。実はこれも契約です。その契約の流れはこうです。

1、購入の申し込みをする(レジに商品を持っていく)
2、申し込みの承諾を受ける(店員が商品をスキャンする)
3、代金を支払う
4、商品の引渡しを受ける(買った商品を受け取る)

 コンビニでモノを買うということは、実はこのような流れの売買契約になります。
 え?こんなことも契約になるの?
 はい。これも立派な、売買契約という契約なのです。
 それではここで問題です。上記の「コンビニでモノを買う」という売買契約ですが、この契約が成立するのは、契約の流れの中の1~4の内、一体どの時点だと思いますか?
 正解は2です。つまり、購入の申し込みの承諾を受けた時点で契約が成立します。このような契約を民法上、諾成契約といいます。読み方は「だくせいけいやく」です。承諾の諾に成る契約ということですね。契約には民法上、他にも◯◯契約というものが複数存在します。

 という訳で、今回は以上になります。
 さて、どうでしょう。何となく、民法が身近なものに感じて来ませんでしたか?そうでもないですか?
 次回は、契約というものについて、さらに詳しく解説して参りたいと存じます。
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諾成契約・要式契約・要物契約(寄託契約) 口約束でも契約成立?書面が必要な契約は?

・諾成契約
 前回コンビニでモノを買うのも契約だ、とご説明申し上げました。そしてその契約は、売買契約諾成契約である、とご説明申し上げました。そして売買契約という諾成契約は、買主が購入の申し込みをし、売主が申し込みの承諾をした時成立する契約になります。
 さて、ここで「あれ?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。そうです。諾成契約には、契約書もいらないのです。つまり、契約というものは、口約束だけでも民法上は成立してしまうのです。もちろん、現実を考えたとき、例えば、企業間取引等で口約束だけで決めることはほとんどないでしょう。きちんと書面を交わした上で契約をしておかないと、後々に疑義が生じたとき、言った言わないの水掛け論になってしまいますから。ですので、当然のことながら、トラブル防止のためにもきちんとした書面は必須なのです。しかし、民法上の原則として、口頭のやり取りだけでも契約は成り立ってしまう、ということは覚えておいて下さい。

 そして、契約には、諾成契約以外の契約もあります。

・要式契約
 要式契約は、前述の諾成契約とは違い、書面なり一定の方式を経ないと成立しない契約です。 例えば、保証契約がまさににこの要式契約にあたります。民法446条2項に明確な規定があります。

[民法446条2項]
保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

 つまり、誰かに保証人になってもらうとき、誰かの保証人になろうとするときは、口頭の合意だけではダメで、書面を交わさなければならない、ということです。もし、口約束だけの保証契約でトラブルになっている方は、そもそも、その保証契約は法的に成り立っていませんのでご注意下さい。
 形「式」を「要する」契約→要式契約
 こんなイメージで覚えると記憶しやすいと思います。

・要物契約
 要物契約とは、契約対象の物の引き渡しがあって初めて成立する契約です。例えば、寄託契約が、この要物契約にあたります。といっても、いきなり寄託契約と言われてピンと来ませんよね。寄託契約とは、物を預ける契約です。倉庫に物を預けて保管してもらったりするアレです。つまり、倉庫に物を預けて保管してもらう契約は、実際に物を預かってもらって初めて成立する契約なのです。
 「物」を「要する」契約→要物契約
 こんなイメージで覚えてみて下さい。
 
 という訳で、ここまで契約というものについてご説明して参りました。民法上の契約の類型、分類はまだ他にも複数存在します。次回、その分類と民法上の契約の典型の紹介、その解説をして参りたいと存じます。

寄託契約についての補足

 倉庫に物を預けるとき、実は契約のパターンが二つあります。ひとつは、先程ご説明申し上げた寄託契約。そしてもうひとつは、賃貸借契約です。
 え?どゆこと?
 わかりやすくざっくり申し上げますと、寄託契約の場合は、物を預かって保管してもらう契約です。一方、賃貸借契約の場合は、倉庫自体を借りて自ら保管する契約になります。当然、どちらになるかにより、料金が異なるのはもちろん、物の保管に関する責任の帰属関係も変わります。「責任の帰属関係が変わる」というのは、例えば、保管物に何かあったときに誰が責任を持つのか(その原因の問題はここでは省きます)、あるいはその責任の度合い、といったものが変わるのです。ですので、倉庫に物を保管するといった契約をされる場合は、事前にそのあたりの契約内容を、よく確認しておくことを推奨します。
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13種類の典型契約 売買契約と賃貸借契約

 前回前々回と、契約についてのお話をいたしました。

互いの意思表示だけで成立する諾成契約
書面なりの一定の形式が必要な要式契約
物の引き渡しがあって成立する要物契約

 上記の分類は、「契約の成立」という観点でカテゴライズされたもので、実は民法上の契約というもの自体は、13種類の類型が存在します。その13種類の契約が、それぞれ諾成契約だったり要式契約だったりするわけです。今回は、その13種類の契約を紹介するとともに、その中の売買契約賃貸借契約について、簡単な解説をして参ります。

 以下、民法上の13種類の契約の典型です。

売買契約 贈与契約 交換契約
消費貸借契約 使用貸借契約 賃貸借契約
雇用契約 委任契約 請負契約 寄託契約
組合契約 終身定期金契約 和解契約


 以上が、民法上の13種類の典型契約になります。そして、上記の改行の仕方には意味があります。上の行から、移転型、利用型、労務型、特殊型、というように、13種類の契約を、四つのグループに分けることができます(特に覚える必要はありません)。宅建試験や行政書士試験において扱われる契約は、主に移転型利用型になります。労務型と特殊型は、あまり出題の対象にはなりません(委任、請負、寄託に関しては多少出ます) 。
 この移転型、利用型、労務型、特殊型というグループ分けは、とりあえず「そういった分類がある」ということだけ、何となく頭の片隅にでも入れておいて頂ければ、それで結構です。

日常でよく行われる契約

 ところで、我々の日常生活においては、どんな契約がよく行われているのでしょうか。

売買 贈与 交換 消費貸借 使用貸借 賃貸借 寄託
 
 このあたりの契約が、日常的に、実際によく行われるものだと思います。
 専門職以外の、一般的なビジネスにおいては、次に挙げるものになるのではないでしょうか。

売買 消費貸借 賃貸借 雇用 委任 請負 寄託

 そんないきなり羅列されてもわからんわ!という声が聞こえてきたような(笑)。はい。それではここから、売買契約と賃貸借契約について、簡単に解説して参ります。

売買契約
 これは一番わかりやすいと思います。以前に、コンビ二の買い物の例を挙げましたが、それがまさしく、売買契約になります。
 買います→売ります→お金を支払う→物を引き渡す
 これが契約の流れです。そして契約成立時購入の申し込みの承諾時、つまり、上記の「売ります」の時点で契約が成立します(諾成契約)。

賃貸借契約
 これは、物の貸し借りの契約です。前々回に挙げた不動産賃貸借は、まさに賃貸借契約です。賃貸人(家主・大家・オーナー)の所有する家を賃借人(借りて住む人)が賃料(家賃)を払って住む、という賃貸借契約になります。他にもCDのレンタルやレンタカーも賃貸借契約です。これもイメージし易いのではないでしょうか。
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使用貸借契約は賃貸借契約と何が違う?贈与契約はナシにできる?

 今回は民法上の13種類の典型契約のうち、使用貸借契約贈与契約について、簡単に解説して参ります。

タダの貸し借り・使用貸借契約

 前回、物の貸し借りの契約である賃貸借契約についてご説明いたしましたが、賃貸借契約には賃料、つまりお金が発生します。しかし、現実には、お金の発生しない、つまりタダの貸し借りも存在しますよね。世の中には、お金の発生しない賃貸借もあります。これは民法上、賃貸借契約とは言わず、使用貸借契約と言います。要するに、タダで物を貸し借りする契約です。
 さて、ここでひとつ注意して頂きたいことがあります。なんと、賃貸借契約も使用貸借契約も
 借ります→貸します
で成立する、諾成契約になります。これはちょっとビックリしません?だって極端な話、口約束だけでも家を借りることができる訳ですよ?もちろん、現実には賃貸借契約書を交わす事がほとんどですが。ただ、知り合いから直接貸してもらい、その際になんの書面も交わしていなかった、という事は現実にもあるかと思います。私としては、たとえ知り合い同士の仲での事だとしても、そのようなやり方はオススメいたしません。絶対にトラブルの元になりますから。注意して頂きたいのは、売買契約賃貸借契約使用貸借契約も諾成契約なので、口約束だけでも成立してしまいます。ですので、後々に何かでモメて、書面もサインもハンコもないからそんな契約は無効だ!とは言えないということです。なぜなら、口約束でも諾成契約として法的に成立するからです。だからこそ、きちっとした書面を交わす事がとても大事なのです。

物をあげる契約・贈与契約

 贈与というのは読んで字の如く、物を贈る行為ですよね。つまり、贈与契約物を贈る契約です。これも契約なんですね(一定額以上の贈与には贈与税という税金もかかる)。そして贈与契約も、口約束だけで成立してしまいます。つまり、
 あげます→もらいます
これで成立する、諾成契約になります。しかし、贈与契約の場合は、若干違う規定がプラスされています。

民法550条
書面によらない贈与は、各当事者が撤回できる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

 つまり、口約束だけの贈与契約は「この前贈るって言ったあの話やっぱナシ!」とできるのです。ちなみに条文の「履行の終わった部分」、というのは「あげちゃった部分・もらっちゃった部分」という事です。つまり「一万円あげるね」と口約束して「とりあえず2千円だけ渡しておくね」となっていた場合、すでにあげてしまった2千円についてはもうどうにもなりませんが、残りの8千円については約束を取り消せるという事です。贈与契約も諾成契約ですが、贈与に関しては、民法は若干慎重な規定を置いています。もし、この慎重な規定がなかった場合、ついその場のノリで「俺の車オマエにやるよ!」といった贈与も、撤回できなくなってしまいます※。いくらこの世の中が契約社会だといっても、さすがにそれはマズイですよね。ただ、すでにあげちゃったもの、もらっちゃったものについては、たとえ口約束だとしても撤回できませんので、ご注意願いたいと存じます。

※このような場合、民法には心裡留保という規定が別途ございます。それについてはこちらの記事をご参照下さい。
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消費貸借契約(金銭消費貸借契約) 賃貸借契約とどう違う?

 今回は消費貸借契約です。前回前々回に、物の貸し借りの契約である賃貸借契約と、タダで物を貸し借りする契約である使用貸借契約をご説明いたしました。
 では皆さん、お金の貸し借りは何契約でしょう?実は、お金の貸し借りは、賃貸借契約でも使用貸借契約でもありません。お金の貸し借りは、消費貸借契約というものになります。特にお金の貸し借りは、金銭消費貸借契約と言われます。
 賃貸借契約とどう違うの?
 賃貸借契約と消費貸借契約の違いは、賃貸借契約の場合、お金を払って物を借りて使って返す、ということになりますが、消費貸借契約の場合は、お金を払って物を借りて「消費」して消費した分を返す、ということになります。これではなんだかよくわかりませんよね(笑)。もう少し噛み砕いてご説明いたします。
 賃貸借契約の場合は、

 物を借りる→借りた物を使う→借りた物を返す

となるのは、何度もご説明申し上げたとおりです。それでは、消費貸借契約の場合はというと、お金で例えるのがわかりやすいので、金銭消費貸借契約でご説明いたしますと、

 お金を借りる→お金を使う→使ったお金を返す

となります(利息に関しては説明をわかりやすくするために省きます)。

消費貸借契約は「価値」を貸し借りする契約

 お金を借りたら借りたお金は返しますよね。当たり前の話です。さて、ここでよく考えてみて下さい。家を借りたら借りた家を返しますが、お金の場合は「借りた分のお金」を返します。例えば、友達から1万円を借りたとしても、返す時は実際、友達から受け取ったその1万円札自体を返す訳ではないですよね。受け取った1万円札と同じ価値分の金銭を返しますよね。1万円を借りて1万円札を受け取っても、返すときは変な話、100円玉100枚で返しても良い訳ですよね。まあ、そんな返し方をしたら相手は嫌がるでしょうが(笑)。
 この違い、おわかりになりましたでしょうか。これが賃貸借と消費貸借の違いです。賃貸借物を借りる契約で、消費貸借はいわば価値を借りる契約です。

民法587]
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

 上記の条文からもわかるように、借りた物そのものを返すのではなく、「種類、品質および数量の同じ物」を返すのが消費貸借契約、ということです。つまり、貸した側は、貸した物そのものを返してもらう必要がないので、借りた側は、借りた物を賃貸借や使用貸借よりもっと自由に使える、というメリットがあります。もちろん貸した側にもメリットがあり、お金を貸した場合は、利息分を加算した額を返してもらうことで利益を得られます。

 以上、今回は消費貸借契約について簡単にご説明いたしましたが、お金の貸し借りの問題に関しましては、まだまだ色々と深い問題がたくさんございますので、また別の機会に詳しく解説したいと存じます。
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委任契約と請負契約はどう違う?業務委託契約の注意点

 今回は委任契約請負契約です。委任と請負、似て非なるこの契約の違い。ご説明して参りたいと思います。
 まず、委任と請負に関する、民法の条文を見てみましょう。

(請負)
民法632条
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる

(委任)
民法643条
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる

 違い、お分かりになりますでしょうか?請負と委任では、かなり重要で大きな相違点がございます。それは、請負仕事の完成を約す(約束する)契約委任法律行為を行うことを約す契約です。これだけだと今ひとつピンと来ませんよね。もう少し詳しく解説いたします。

請負契約

 請負は、仕事の完成を約す契約なので、請け負った仕事が完成して初めて契約の履行が達成されたことになります。「契約の履行」というのは「約束を果たす」という意味です。これを建築工事で例えると、家を建てたいと考え、工務店に建築を依頼したとします。家の建築を請け負った工務店は「家を完成させること」義務付けられます。請負契約は、仕事の完成を約す契約ですので、家が完成して初めて報酬が発生します※。
※実際には手付金とか中間金とか途中で支払いが発生する場合もあります。
 これに対して、委任の場合は、あくまで法律行為をすることを委託するだけなので、請負のような「仕事の完成の義務」は発生しません。

委任契約・てゆーか法律行為の委託って?

 法律行為の委託とは、例えば、不動産を購入すると登記をしますが、不動産の登記に関しては、司法書士が行いますよね。この「不動産登記を司法書士にやってもらうこと」が、まさしく法律行為の委託、すなわち委任になります。
 法律行為以外の委託はないの?
 もちろんあります。先の不動産の例ですと、不動産を売りたい・買いたい、というときは、不動産業者に物件を探してもらったり、買主を探してもらったりしますよね。これは媒介契約と言われるものなのですが、この媒介契約は「法律行為以外の委託」になり、委任契約ではなく、準委任契約というものになります。

請負契約と委任契約とでは責任が違う

 請負契約と委任契約の一番の違いは、「仕事の完成の義務を負うかどうか」、ここです。つまり、請負契約の方が責任が重くなります。
 日頃のビジネスの実務の中で、業務委託契約を結ぶことはよくあります。ここで注意して頂きたいのが、その業務委託契約が「請負なのか委任なのか」です。委託契約という名の契約でも、実質は請負契約になっている場合もあるからです。契約というのは、双方とも自己に有利な内容で結びたいものです。後々のトラブルを避けるためにも、きちんと各条項を確認し、気になるところがあれば、しっかりと協議した上で(現実問題として、ビジネスの世界はスピード感を要求されるものですし、相手方との力関係もありますから、実際にはそれも中々難しいこともありますが...)、できる限り適切な判断ができるように、ご注意願いたいと存じます。
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民法改正について

 平成29年5月26日、改正民法が参院本会議で可決、成立しました。当ブログでも民法を扱っているため、この話題には触れずにはいられないだろうということで(というふうに勝手に思い(笑))報道で取り上げられている主な部分について僭越ながら私なりの解説をしていきたいと思います。
 今回の民法の改正項目は役200に及びます。全ての解説はお偉い学者先生や弁護士先生方にお任せするとして、ここでは報道で取り上げられている部分を扱います。報道で取り上げられている部分は主に下記の通りです。

・契約関係
・時効関係
・敷金関係

 上から順に見ていきます。まずは契約関係。契約関係の民法改正の目玉は「約款」に関する規定の新設でしょうか。約款と聞いてもピンと来ない方もいらっしゃると思います。約款とは契約の条項の事です。契約内容の細かい部分と言えばいいでしょうか。例えば保険契約で言えば保険金の支払い条件や額等が「約款」に記されています(約款には不特定多数の契約者に対して共通する事項を定めた普通取引約款と、個別に加筆、変更、修正、削除された条項を設けた特別約款(特別条項)があります)。約款、お分かりになりますよね。そしてこの「約款」に関する規定が今までの民法には存在しませんでした。今回の民法改正で約款に関する規定が新設されるのです。
 え?今までそんな重要そうな規定がなかったの?
 はい。そうです。民法には約款に関する規定は存在しませんでした。というのもそもそも民法の契約に関する規定の多くが明治29年の民法制定時から変わっていないということが一点と、もう一点は民法には基本的に契約自由の原則があります。つまり契約に関しては自由なのです。基本的には。なぜならそうしておかないと世の中の取引というものが円滑に運んでいかない、ひいては経済が発展していかないからです。ですので細かい部分に関してましては自由かもしくは個別法というもので別途法律を作って対応しています。
 個別法って?
 個別法とは、一般法に対して個別法なのです。
 はぁ?
 ご説明します。民法は法律です。そして民法は一般法という法律になります。民法は一般法で、包括的にベーシックな部分を定めています。例えば不動産に関することも民法の中に規定がございます。しかしそれだけでは不動産という専門的な分野の規定は当然足りませんよね。ですので個別法として「借地借家法」や「建築基準法」や「宅地建物取引業法」といった法律で補充、強化しています。※
※不動産に関する法律は他にもありますがここでは省きます。
 そして一般法と個別法の力関係はこうです。

一般法<個別法

 つまり個別法は一般法に優ります。これを家庭関係に例えるとこんな感じでしょうか?

夫<妻

 話が逸れましたね(笑)。すいません。
 話を一般法と個別法に戻します。先の例の不動産ですと、借地借家法(個別法)は民法(一般法)に優先して適用されます。不動産は専門性の高い分野ですが、我々の生活からは切り離せないものです。ほとんどの人が買うか借りるかして家に住むでしょう?ですのでどうしても民法だけだと不動産業者や家主に有利になりがちという実態があったのです。そこでそんな実態を改善すべく個別法を制定することによって現在は契約当事者間の公平さを保っている訳です(もちろん現実にはそれでもまだ様々な問題がございます。例えば家主側からの家賃滞納者の退去問題等。その辺の詳しい事はまた別途機会を改めてご説明申し上げたいと存じます)。
 ここで話を民法改正の約款に関する規定に戻します。先ほどまでの話を踏まえた上で再び申しますと、要は民法という一般法レベルで約款に関する規定を設け、もう少し契約関係のトラブルを防ぎましょう、というような感じの話です。その背景にはインターネット取引の普及や高齢化の問題があります。おそらくそういった時代の変化に個別法の制定だけでは対応が追っつかなくなったのではないかと思います。

 という訳で少し長くなってしまったので、一旦ここで締めさせて頂きます。次回は契約関係の改正部分の具体的な内容を私なりに触れていきたいと思います。
今回も最後までお読み頂きありがとうございます。
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民法改正・約款

 今回の民法改正について報道等で主に取り上げられている点は下記になります。

・契約関係
・時効関係
・敷金関係

 改正項目は約200に及ぶそうなので実際には上記に挙げた部分以外にもありますが、報道等で主に取り上げられている上記について私なりに触れていきます。
 今回は前回取り上げた「約款」の項目の新設について、もう少し細かい部分まで見ていきたいと思います(約款というものについての解説は前回したので省きます)。
 ではどんな事が民法に盛り込まれるのでしょうか。

・約款が消費者に一方的に不利になる内容は無効

 上記の内容が改正民法に新たに盛り込まれるそうです。前回インターネット取引の普及が背景にあると申しましたが、これは正にそれで、今はスマートフォン等で簡単に取引ができます。その際画面上で約款を見せられる過程がありますが、大体の人が文字の細かさと読みづらい文章とメンドくささで、ろくに読みもしないで「同意」ボタンを押してしまっているのが実態だと思います。内容次第では後からとんでもない請求をされかねないのに…ただ約款が読みづらいのは事実ですし、いくら読んでも読み落としだって当然あるでしょう。そこで約款が消費者に一方的に不利になる内容であればたとえ同意ボタンを押していたとしてもその契約は無効ですよ、という規定が改正民法に盛り込まれるという事です。我々消費者にしてみれば安心な規定ですね。ただ注意点があります。それは約款が無効になるのはあくまで消費者に一方的に不利になる内容であった場合であって、そうでない場合は契約内容がきちんと約款に記されている限り、たとえ消費者が内容を理解できていなかったとしてもその約款(契約)は有効になります。
 なんだ消費者にとってたいして安心でもないじゃん!
 そんな声も聞こえてきそうですが、考えてみて下さい。あまりにも消費者ばかりを過剰に保護しすぎると商売なんかできたもんじゃなくなってしまいませんか?商売をしている人間なら痛いほど分かる事ですが、買う側にリスクがあるように売る側にもリスクがあるのです。買う側の保護ばかりをしてしまうと売る側のリスクばかりが増えてしまう。そうなると今度は逆に円滑な取引の安定が損なわれます。それは健全な経済の発展を阻害し、社会秩序を守る点からも問題です。ですのでこのようなバランスの取り方になるのです。
 
 なんとなく民法の性質がご理解頂けましたでしょうか。尚、今回の改正民法には契約関係では、他にも認知症の高齢者等の判断能力がない人が結んだ契約は無効となる旨の明記をすること等も盛り込まれているとのことです。これも前回申し上げた高齢化が背景にあるということの影響による改正ですね。認知症の高齢者等には別途後見制度というものがありますが、それだけではこれも対応しきれなくなってきたのではないでしょうか(後見制度は民法上にあります。細かい解説は今後別途解説を致しますのでその際にご覧下さい)。

 今回はここで締めさせて頂きます。次回は民法改正の時効関係と敷金関係について触れていきます。最後までお読み頂き有難うございます。
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民法改正・時効関係

 今回は民法改正についての時効関係に触れ、時効についての簡単な解説をしたいと思います。
 今回の民法改正により業種ごとにバラバラだった時効になる期間が統一されます。そもそも従来の規定ではどのようにバラバラだったのでしょうか。まずはそこから見ていきましょう。

時効成立期間1年
飲食代金・宿泊代金・運送代金など

時効成立期間2年
塾の授業料・弁護士報酬など

時効成立期間3年
建築工事の代金・診療代金など

 このような感じで、各種債権ごとに時効となる期間がバラバラでした。このバラバラだった時効期間が改正民法では原則5年に統一されます。正確に申し上げると「請求できると知った時から5年」です。つまり請求できると知った時が時効期間の起算点になります。
 じゃあ10年経ってから請求できることを知ったらそこから5年ってこと?
 違います。ここで時効についての基本的な部分をご説明いたしましょう。

ふたつの時効と除斥期間

 時効には2種類ございます。それは取得時効消滅時効です。ひとつひとつご説明いたします。
 まず取得時効ですが、例えば道で物を拾ったとしますよね。いつまでも持ち主が現れなかったらどうなるでしょう。拾った人の物になりますよね(もちろん拾った物にもよりますが、その辺りの細かい事はここでは省きます)。これが取得時効です。
 では消滅時効とはなんでしょう。これが今回の民法改正でお話申し上げている方の時効で、債権(請求できる権利)がどれくらい期間が経つと消滅してしまうかの時効です。
 ふたつの時効、お分かり頂けましたか?さらに時効にはもうひとつ重要な点がございます。それは所謂除斥期間です。これが先ほどの疑問に答える内容になります。
 今回の民法改正で時効期間、消滅時効の期間が「請求できると知った時から5年」に原則統一されます。実は民法には「請求できると知った時から◯年」という消滅時効に、そもそもいつ請求できると知ろうが10年経ってしまったら権利が消滅してしまうという規定がございます(10年以外のものもありますが、それらについては別途解説します)。これがいわゆる除斥期間と呼ばれているものです。つまり、10年経ってから請求できることを知り消滅時効はそこから5年、というのはありえません。10年経ってしまったらそもそも権利が消滅してしまいます。

時効という規定の存在理由

 てゆーか、そもそも時効って制度自体おかしくね?払わない方が悪いのに一定の時間が経つともう払わなくてもいい訳でしょ?ごもっともです。ただ民法では、いつまでも請求できる権利を宙ぶらりんのままで有効のままにしておくと法的安定性に欠けると考えます。だっていきなり30年前の事を持ち出されて金払えと言われたらどうしますか?困りますよね?そもそも覚えてなかったりするでしょうし…。こうなると世の中の秩序の安定も損なわれてしまう。だから時効というルールを作ってどうにかバランスを取っているのです。ちなみにこんな言葉もあります。

権利の上に眠る者は保護に値せず

 つまり権利があるなら権利がある者としての責任で権利を行使しろ!という事です。少し厳しく聞こえるかもしれませんが、これは何も民法に限らずこの社会を生きていく上で人間として当たり前の事ではないでしょうか。良し悪しだけではなく正当な権利を正当に行使するのは権利を持っている人間の責任でもあります。権利を行使しないのであればそれによって生じる現実をしっかりと受け入れるのもまた権利を持っている人間としての責任です。
 なんだか今回は偉そうに語ってしまいましたが(笑)、次回は民法改正の敷金関係について触れていきます。今回も最後までお読み頂き有難うございます。
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民法改正・敷金関係(原状回復義務、特約など)

 今回は民法改正の中の敷金関係について触れて参りたいと思います。
 改正民法では、部屋を借りる際に必要となる敷金の原則返還のルールが明確化されるとのことです。従来の民法では敷金の返還についての明確なルールは存在しませんでした。これが今回の民法改正により、個別法である借地借家法ではなく一般法である民法で明記されることになる訳ですから、部屋を借りる側としてみれば有難いことでしょう。背景にはやはり敷金関係のトラブルが絶えない現状があるのだと思います。裁判の判例やガイドラインを基準になんとかここまでやってきたがもうそろそろ法律で明確化した方がよくね?となったのではないかと。

敷金と原状回復義務

 ところで、そもそも敷金と原状回復義務についてはお分かりになりますかね?敷金というのは部屋を借りるときに貸主に一旦預けるお金です。貸主は万が一借主の賃料の未払いや部屋の毀損などがあった場合は預かった敷金から差し引く事ができます。要は敷金は部屋を借りるための担保のようなものです。もちろん現実では敷金だけでは万が一の事態のための担保としては不十分なので、貸主としてはさらに借主に保証人を付けさせたり家賃保証会社と保証契約をさせたりしてより安全を確保します(敷金ゼロ!保証人不要!と謳った物件も存在しますが、それにはそれの理由があります。それについてはまた別の機会でお話しできれば)。
 原状回復義務というのは、借りた部屋を返す時、つまり引っ越し等で賃貸借契約を終わらせて部屋を出る時に部屋を元の状態(原状)に戻す義務のことです。現状ではなく原状です。なので元に戻す原状回復となるのです。原状回復については現在はガイドラインでかなり細かく決められています。昔はそのガイドラインすらおぼつかなく貸主側の不動産業者から相当無茶な請求をされるなんて事もありました。もちろん今でもそういう輩は存在しますし地方では都内よりもまだまだヤバイなんて話も聞きます。

原状回復義務は何もかも元に戻す義務ではない

 借主は原状回復義務を負います。それは改正民法でも変わりません。しかし、何もかも元に戻せ!というのは違います。先ほど原状回復とは元に戻すことだと申し上げましたが、物には経年劣化があります。人が年を取って老いていくように物も年を取って老いていきます。この自然な劣化を経年劣化といい、経年劣化による修繕は借主に負担する義務はありません。そして通常の使用の仕方による損耗(傷や汚れ)の負担は家賃に含まれていると考え、これも借主の負担の義務はありません。この通常の使用の仕方による損耗を通常損耗といいます。
 まとめますと、経年劣化と通常損耗による修繕の負担は借主の義務ではない、ということです。そこを改正民法では明確化しようとのことのようですね。もちろんあくまで経年劣化と通常損耗での話であって、あきらかにおかしな使い方で汚したり故意に傷つけたりルールを破ってやらかしたものに関しては当然のごとく借主が責任を負います。

補足・特約の存在

 実は現在のガイドライン上でも経年劣化と通常損耗は原則貸主負担となっています。実態はそうなっていないことが多々ありますが。それともうひとつ厄介なのが特約の存在です。特約で借主負担にしてしまっていることもしばしば見かけます。もちろんあまりに借主に不利な内容の特約は無効になりますが。もし機会がございましたら原状回復ガイドラインをご覧になってみて下さい。あれ?そうだったの?と思うこともあるかと思います。
 いずれにせよ今回の民法改正により、一般法である民法から、謂わば借りる側の保護のボトムアップがはかられることは間違いなさそうです。
 という訳で、今回も最後までお読み頂き有難うございます。

意思表示の超基本 意思表示の形成過程

 今回は意思表示です。ちなみに「意志」ではなく「意思」です。ご注意下さい。

意思表示とは何なのか

 以前の記事でも、諾成契約についてのご説明をいたしましたが、諾成契約は、例えば、売買契約の場合「買います」という申し込みに対し「売ります」という承諾をした時、契約が成立します。このときの「申し込み」「承諾」、つまり「買います」と「売ります」が、意思表示です。つまり、諾成契約を民法的に説明すると、「当事者同士の意思表示により成立する契約」ということになります。
 意思表示が何なのかは、お分かりになりましたよね。ではここから、意思表示の形成過程を見て参ります。

動機

効果意思

表示意思

表示行為

 なんだか、まるで心理学みたいですが(笑)、順番にご説明して参ります。
 まず動機ですが、これは売買であれば「買う理由」です。美味しそうだな〜とか、安いからとか、カワイイからとか、動機という言葉の通りです。
 次の効果意思は「よし、買おう」です。つまり「頭・心の中の決断」です。
 その次の表示意思は「買おうと言おう」です。つまり「決断を表に示す意思」です。
 最後の表示行為は「これ買います!」です。これは説明不要ですね。「購入の申し込みの表明」です。
 以上が、意思表示の形成過程になります。

なぜこんな話が民法に必要なのか?

 それこそ本当に、心理学の講義みたいですもんね。しかし、これが実はとても重要なのです。なぜなら、意思表示があって初めて契約というものが成立するからです。
 契約関係のトラブルは、いつの時代も絶えません。トラブルがあったときは、その契約内容と成立過程を検証しますよね。その「成立過程」こそ、まさに先述の「意思表示の形成過程」が含まれます。
 買いたいと思っていない物なんて買わないですよね?ではなぜ買ったのか?無理矢理買わされたのか?騙されたのか?あるいは勘違いか?買ってもいない物が突然送られてきて、いきなりお金を請求されても困りますよね?売る側からすれば、なんの理由もなしにいきなり返品されて「金返せ!」と言われても困りますよね?そうなると、「意思表示の形成過程」のどこかに不備があるのではないか?と、民法的な検証ができる訳です。
 尚、付け加えて申し上げておきますと、意思表示は「黙示のもの」でも、有効に扱われる場合があります。黙示の意思表示とは、実際言葉には出していないけれど「それって買うってことだよね・売るってことだよね」ということです。つまり、黙っていても意思表示が明らかだと認められればその契約は成立してしまう、という事です。ですので皆さん、断るときはハッキリと口に出して断りましょう。

 意思表示とその形成過程の意味、ご理解頂けましたでしょうか。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
根本総合行政書士です。
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保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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