2018/02/01
停止条件と解除条件 そして随意条件
民法における条件には2種類あります。それは停止条件と解除条件です。停止条件は、条件が成就されるとその効力が生じるもので、解除条件は、条件が成就されるとその効力が失われるものです。これだけだとよくわからないですよね。それではひとつひとつ、詳しくご説明して参ります。
停止条件
条件が成就されるとその効力が生じるという停止条件とは、例えば、「内定が決まったらお祝い金をあげる」というようなものです。この場合「内定が決まること」が条件で、その条件が成就されると、つまり、内定が決まると「お祝い金をあげる」という効力が生じる、つまり、実際にお祝い金の贈与という行為が行われるということです。
解除条件
条件が成就されるとその効力が失われる解除条件とは、例えば、「就職が決まったら仕送りをやめる」というようなものです。この場合「就職すること」が条件で、その条件が成就されると「仕送り」の効力が失われる、つまり、仕送りがされなくなるということです。
条件を付けることが禁止される行為
次のような行為は条件を付けることを禁止されます。
・身分行為
・不法行為
・単独行為
まず身分行為からですが、これは例えば、「一部上場企業に就職したら、結婚して ア・ゲ・ル♡」というようなものです。このような条件は無効になります。
次に不法行為ですが、これはわかりますよね。「宅建試験に合格したら大麻をあげる」というようなものは、公序良俗違反で当然に無効です。また「金〇円をくれたら妨害行為をやめよう」というような、不法行為をやめることを条件とすることもダメです。ただし、自動車保険の「交通事故(不法行為)を起こしたら保険金を払います」というものは有効です。
そして3番目の単独行為ですが、相殺・解除・取消し・追認などといったものです。これらは一般論として、条件に親しまない行為とされているものです。ただし、相殺は条文上では明確に禁止されているものの「相手方を特に不利な立場にするもの」でなければ、条件を付すことができます。解除も「本書状到達から五日以内に金〇円の支払いがなければ、あらためて解除の意思表示を要せず契約は解除されたものとみなす」というようなアプローチの催告書などの形で条件を付すことは、現実の実務において当たり前に行われています。
また「債務の免除」も単独行為なのですが、これにも条件を付すことは可能です。
随意条件
冒頭に、条件には停止条件と解除条件の2種類あると申し上げましたが、その2種類の条件の中に、さらに随意条件と呼ばれるものがあります。随意条件とは、例えば、「気が向いたら車を買ってあげる」というようなものです。つまり、「気が向いたら」という部分が随意条件ということです。この「気が向いたら車を買ってあげる」というのは、随意条件の停止条件ということになるのですが、このような債務者の意思のみに係る停止条件は民法134条の規定により無効です。債務者の意思のみに係る停止条件とは、「気が向いたら支払う(あげる)」というものです。そのような条件は無効になります。
尚、下記の随意条件は有効です。
・債務者の意思のみに係る解除条件
例→気が向いたら仕送りするのをやめる
・債権者の意思のみに係る停止条件
例→気が向いたらその仕送りを受け取る
・債権者の意思のみに係る解除条件
例→気が向いたら仕送りしてもらうのをやめる
補足・条件成就の効果の発生時期
停止条件が成就された場合、その成就の時から、その効力を生じます。
(例・内定が決まった時→お祝い金贈与の効力発生)
解除条件が成就された場合は、その成就の時から、その効力が失われます。
(例・就職が決まった時→仕送り中止の効力発生)
ただし、当事者が条件成就の効果を、条件成就以前に遡らせる意思表示をした場合には、条件成就の効果を成就以前に遡らせて生じさせることができます。
(例・就職が決まる→就職決定以前半年間分の仕送りも無しに(半年分の仕送り返還))
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