契約解除をするための3要件

 契約が成立すると契約義務が発生し、義務(債務)を履行しないと債務不履行に陥り、損害賠償請求権が発生します。
 では、一度結んだ契約の解除はできるのでしょうか?まずはこちらの事例をご覧下さい。

事例
AとBはギターの売買契約を締結した。しかし、Bは約束の期日が来ても一向にギターを引き渡そうとしない。


 この事例で問題になっているのは、Bがいつまで経ってもギターの引渡しを行わないことです。つまり、Bが約束を果たしてくれないのです。Aとしては、それならそれでこの契約はナシにして、他の売主・ギターを探したいですよね。損害賠償の請求という手もありますが、それも要件を満たしていなければできないし、正直メンドクサイですよね。そこで、Aとしては「この契約は解除できないか?」となります。

(履行遅滞等による解除権)
民法541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

 Aは上記の条文に基づいて、契約の解除ができます。しかし!それをするためには3つの要件があります。また要件かよ!という声が聞こえてきそうですが(笑)。法律上の請求をするときは「誰が、誰に対して、どのような要件を満たしたときに、どんな請求ができるか」を考えなければなりません。これはとても大事なことなので覚えておいて下さい。ちなみに、行政書士試験の記述問題では、まさにこのことが問われます。もちろん通常の択一問題を解く上でも大事ですし、宅建試験や公務員試験の民法を解く上でも大事なことです。さらに申しますと、現実にトラブルが起こって誰かに何かの請求をするときの原則にもなります。
 繰り返しますが
「誰が、誰に対して、どのような要件を満たしたときに、どんな請求ができるか」
このことは是非、頭に入れておいて頂ければと存じます。
 話を戻します。契約の解除をするためには3つの要件を満たす必要があります。

1・債務不履行の存在
2・債務不履行が債務者の責めに帰すべき事由(債務者の過失)によること
3・相当の期間を定めて催告をすること

 上記の3要件全てを満たしたときに、初めて契約の解除ができます。
 1は簡単ですよね。契約の解除をする理由となる債務不履行の存在です。
 2の債務者の帰責事由について、条文には記載がありませんが、判例上、これも当然に必要な要件とされています。
 3の催告とは、最後通告のことです。通常は「期日までに履行をしなければ、解除する」というような文言を入れた文書を、内容証明郵便という形で送ります。
 以上のことを踏まえて、今回の事例でAが契約を解除するためには
1・Bの債務不履行があり
2・Bの債務不履行がB自身の理由(帰責事由)によるものであるときであって
3・相当の期間を定めて催告した上で(「〇年○月○日までに履行しなければ、解除する」旨の内容証明郵便を送った上で)
行うことになります。
 もし、このような手順を踏まえないで、Aが契約の解除をしようすると、「テメー、約束を破るのか!」と、逆にBから攻められてしまいます。法律的にも、Aの方が約束を破ったことになってしまいます。ですので、上記の3要件と手順はしっかり押さえておいて下さい。
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契約解除後はどうなる?原状回復義務と解除の遡及効果の制限

事例1
楽器店のAはメーカーのBからギターを納入した。しかし、期限が到来したにもかかわらずAが一向に代金を支払わないので、BはAに対し相当の期間を定めて催告をした上で、売買契約を解除した。


 さて、この事例1で、Bは契約を解除しましたが、その後は何ができるのでしょうか?ギターの返還請求?損害賠償の請求?まずは条文をご覧下さい。

(解除の効果)
民法545条
1項 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2項 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3項 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

 太字になっている部分が、Bができることです。
 相手方を原状に復させる義務とは、原状回復義務のことで「元の状態に戻さなければならない」ということです。つまり、BはAに「ギターを返せ」と請求できます(返還請求)。一方、AはBにギターを返す義務(返還義務)を負います。
 損害賠償の請求を妨げないとは、損害賠償の請求もできるということです。
 従いまして、事例1で、メーカーのBは楽器店のAに対し、ギターの返還請求損害賠償の請求ができる、ということになります。

直接効果説

 解除の効果は遡及します。すなわち、さかのぼってナシになります。したがって、事例1では、Aにはギターの返還義務(元の状態に戻す義務←原状回復義務)が生じ、同時にBはギターの返還請求権(元に戻せ!と請求する権利)を得ます。そして、この論理を直接効果説といいます。他にも間接効果説、折衷説という考えも存在しますが、裁判所は直接効果説の立場を取ります。ですので、この「直接効果説」という考え方を、覚えて頂ければと存じます。

解除の遡及効果の制限

 契約を解除すると、その効果は遡及するので(直接効果説)、原状回復義務が生じます。しかし!条文には、このようなただし書きがありました。
「ただし、第三者の権利を害することはできない」
 これはどういうことなのか?まずはこちらの事例をご覧下さい。

事例2
楽器店のAはメーカーのBからギターを納入した。しかし、期限が到来したにもかかわらずAは一向に代金を支払わない。その後、AはCにそのギターを転売した。その後、BはAに対し相当の期間を定めて催告をした上で、売買契約を解除した。


 この事例2では、Bはギターの返還請求ができない可能性があります。なぜなら、Bの解除権の効果は第三者であるCの権利を害することができないからです。したがって、結論を申し上げると、Cがギターの引渡しを受けていたらBはギターの返還請求ができません。逆に、Cへの引渡しがまだされていなければ、Bは返還請求ができます。
 このように、解除の遡及効果は、第三者との関係で一定の制限が加えられています。これも利益衡量と取引の安全性から来るものです。この「解除の遡及効果の制限」は大事なポイントなので、是非覚えておいて下さい。尚、試験などでは、不動産の転売という形で問われることになると思いますが、不動産での場合については、また改めてご説明申し上げます。
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不動産売買契約の超基本と解除(手付放棄・手付倍返し)

事例
買主Aは売主Bと甲建物の売買契約を締結し、AはBに手付金を交付した。しかし後日、Aはこの売買契約を解除したいと思い、Bに甲建物の売買契約の解除を申し入れた。


 さて、この事例で、Aは甲建物の売買契約を解除できるでしょうか?結論は...の前に、まず不動産の売買契約の基本について簡単にご説明いたします。
 不動産の売買契約の場合は、コンビニでの買い物とは訳が違います。不動産売買契約の大まかな流れは次のようになります。

購入の申し込み→重要事項説明→売買契約の締結と同時に手付金の授受→残金の決済と同時に引渡し(登記手続き)

 正確にはもっと細かくあるのですが(ローンの契約、仲介なら不動産業者との媒介契約などその他諸々)、ざっくりとこんな感じです。
 では、不動産の売買契約の解除というのは、どのタイミングでどのように行うのでしょうか?まずは民法の条文をご覧下さい。

(手付)
民法557条
買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。

 まず、契約の解除のタイミングですが、上記の条文にあるように、当事者の一方が契約の履行に着手するまででないとできません。冒頭の事例だと、Aが契約の解除をするにはBが履行の着手※をするまでに行わないといけない、となります。
※履行の着手とは「かなり具体的に履行をしようとした」という意味です。「履行の準備」では履行の着手とは考えられていません。厳密には判例を見て個別具体的な判断をしなければなりませんが、過去の実際の事例では「買主が代金の用意をして、売主に物の引渡しを催告した」ことが履行の着手と判断されました。まあ、ここであまり細かく突き詰めてしまうと話が進みませんので、履行の着手とは「かなり具体的に履行をしようとした」と、ざっくり覚えてしまって下さい。

 そして「契約の解除をどのように行うか」ですが、これは買主と売主によって異なります。

(買主の場合)
売主に渡した手付金を放棄して行う(不動産用語で手付流しといいます)
(売主の場合)
買主からもらった手付金の倍額を買主に償還して(買主に払って)行う(不動産用語で手付倍返しといいます)

 このようになります。尚、上記の手付放棄・倍額償還をすることで、それ以外の損害賠償は支払わなくてもよいとしています。だからこそ手付流し・手付倍返しなのです。
 以上のことをまとめると

・買主は、売主が履行の着手をするまでは、交付した手付金を放棄して、契約の解除ができる。
・売主は、買主が履行の着手をするまでは、手付金の倍額を買主に償還して、契約の解除ができる。


となります。
 すると今回の事例で、Aは甲建物の売買契約の解除ができるのか?の結論は、AはBが履行に着手するまでは、交付した手付金を放棄して、甲建物の売買契約の解除ができる、ということになります。
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不動産売買契約 登記と解除前の第三者

 以前に、契約の解除と遡及効果の制限についてご説明いたしました。その時は動産の場合の話でした。では、登記のルールがある不動産の場合はどうなるのでしょうか?まずは事例をご覧下さい。

事例1
Aは不動産業者のBに甲土地を売却し、Bは登記をした。その後、AはBの売買代金の不履行(Bの債務不履行)によりAB間の甲土地の売買契約を解除した。しかし、すでに不動産業者のBはCに甲土地を転売し、Cは登記をしていた。


 この事例1で、Aは甲土地の所有権の主張ができるでしょうか?ポイントは、第三者のCが解除前に現れているという点です。
 まずは条文を確認してみましょう。

(解除の効果)
民法545条
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 先ほど申し上げたポイントと上記条文のただし書で、お察しの良い方はもうおわかりかと思います。
 結論。事例1において、Aは甲建物の所有権の主張はできません。なぜなら、民法545条ただし書の規定により、第三者であるCの権利を害することはできないからです。従いまして、事例1の甲土地をめぐる所有権争奪バトルはCの勝ちです。
 それでは続きまして、こちらの事例ではどうなるでしょう。

事例2
Aは不動産業者のBに甲土地を売却し、Bは登記をした。その後、AはBの売買代金の不履行(Bの債務不履行)によりAB間の甲土地の売買契約を解除した。しかし、すでに不動産業者のBはCに甲土地を転売していた。尚、Cは登記を備えていない。


 事例1との違いは、第三者のCが登記を備えていないという点です。
 では事例2の場合、Aは甲土地の所有権の主張ができるのでしょうか?
 結論。事例2の場合、Aは所有権の主張ができます。
 え?登記の有無については条文になくね?
 ないです。しかし、判例で「第三者が勝つためには登記が必要だ」となっているのです。つまり、第三者の登記の必要性は、いわば裁判所が勝手にくっつけたものです。これは、不動産の登記制度を考慮して取引の安全性を鑑みた結果、登記を第三者の保護要件としたのでしょう。
 従いまして、事例2は、第三者のCが保護要件である登記を備えていない以上、甲土地をめぐる所有権争奪バトルはAの勝ち!になります。尚、Bは登記を備えていますが、それは関係ありません。Bは第三者ではないし、そもそも債務不履行をやらかした張本人です。この期に及んで保護されようなぞ、ムシが良すぎるってもんです。
 簡潔にまとめると、今回の事例のような場合、Aは、甲土地の登記AかBにあれば、所有権を主張できます。

 以上、今回は解除前の第三者について解説いたしました。次回は、解除後の第三者について解説して参りたいと思います。
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不動産売買契約 登記と解除後の第三者

事例
Aは不動産業者のBに甲土地を売却し、Bは登記をした。その後、AはBの売買代金の不履行(Bの債務不履行)によりAB間の甲土地の売買契約を解除した。その後、不動産業者のBはCに甲土地を転売し、Cは登記をした。


 いきなり事例から始まりましたが、この事例で、Aは甲土地の所有権を主張できるでしょうか?
 結論。Aは甲土地の所有権を主張できません。その根拠となる条文はこちらになります。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
民法177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 あれ?解除に関する条文じゃない?
 はい。そうなんです。実はこの事例は、解除の問題ではないのです。以前にご説明した取消後の第三者と同じハナシです。つまり、単純に「早く登記したモン勝ち!」なのです。ですので、甲土地の売買契約を解除してからボサッとしていたAが悪い、ということです。
 尚、もしCがまだ登記をしていなければ、まだBに登記がある状態であれば、甲土地はBの債務不履行による解除の原状回復義務の対象ですから、Aは甲土地の所有権を主張できます。

補足・背信的悪意者と信義則

 不動産登記は早い者勝ち?でも若干触れましたが、もし今回の事例で、Cが背信的悪意者(合法的なとんでもないワル)の場合は、いくらCが登記を備えていても、Cは甲土地の所有権を取得できません。Cが背信的悪意者の場合は、次の条文が適用されます。

(基本原則)
民法1条2項
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

 これは信義誠実の原則と呼ばれるものです。(略して信義則と呼ばれます)
 民法には、利益衡量や取引の安全性を重視して、時に残酷で冷たく感じる面があると思います。そして、世の中にはそんな民法の性質を利用する合法的なワルが存在します。しかし、そいつらはあくまで合法的なので、民法先生も困ってしまいます。そこで!民法先生は最終手段の伝家の宝刀「信義則」を抜きます。そしてこう言い放ちます。
「オマエは背信的悪意者だ!背信的悪意者は信義則に反し許すべからず!」
 よって、背信的悪意者は保護されることはありません。
 このように民法は、信義則という「超えちゃならないライン」を引いて法律を補充し、法的秩序を保つのです(実際には裁判官が過去の判例を参考にしながら個別具体的に判断していくことになります)。

 昔、「男たちの挽歌」という映画で、マフィアのボスが主人公の刑事に追い詰められ病院に逃げ込み、そこで患者を人質に取ろうとするシーンがあるのですが、そこで、そのマフィアのボスに雇われた用心棒が初めてボスに逆らうのです。その時の用心棒のセリフがこうです。
「いくら極道でも、超えちゃならねぇ線があんだろ!」
 私これ、大好きなシーンなんです。スイマセン。余談もいいとこですね(笑)。

 ところで、民法177条において、第三者の善意悪意は問われていませんが、背信的悪意者はアウト!というのは今までご説明してきたとおりです。ちなみに、この民法177条で、登記を備えて所有権を主張できる第三者とは「登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する者」と、判例で定義づけられています。わかりやすく言うと「オマエ登記してねーだろ」と堂々と言える者ってことです。つまり、背信的悪意者には、信義則違反によりその資格がないということです。
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契約解除後の同時履行の抗弁権

 契約を解除すると、その契約は遡ってナシになり、原状回復義務が生じます。受け取ったものがあれば返さなくてはなりません。

解除後の原状回復は同時履行

 例えば、AがBにギターを売り渡し、Aが代金の支払いを受けてからその売買契約が解除となった場合で考えてみましょう。
 この場合、AはBに受領した(受け取った)代金を返還しなければなりません。一方、BはAに引渡しを受けたギターを返還しなければなりません。なぜなら、契約を解除したことによって、AとBには原状回復義務が生じるからです。そして、AとBの原状回復義務は、同時履行の関係になります。つまり、AはBからギターを受け取ると同時に代金を返さなくてはなりません。一方、BはAから代金を返してもらうのと同時にギターを返さなくてはなりません。そしてこのとき、AはBがギターを持って来ないのに「金返せ」と言ってきたら「だったらギター持ってこいコラ」と突っぱねることができます。一方、BはAがお金を持って来ないのに「ギター返せ」と言ってきたら「だったら金もってこいコラ」と突っぱねることができます。これを同時履行の抗弁権といいます。同時履行の抗弁権については以前も取り上げましたが、解除後の原状回復においても同時履行の抗弁権が成り立つのです。尚、これは取消後においても全く一緒ですので、そこも合わせて押さえておいて下さい。

補足・不動産賃貸借の場合は少し違う

 原状回復義務という言葉は、一般的には、おそらく不動産賃貸借においての退去の際に聞く言葉だと思います。多くの方は、引っ越すときの部屋の退去の際に聞く言葉ですよね。ちなみに、不動産賃貸借においての原状回復、すなわち敷金返還と部屋の明渡しは、同時履行の関係にはなりません。ご存知のように、敷金の返還は部屋の明渡しを済ませてから行われます。念のため申し上げておきます(不動産賃貸借における原状回復義務についてはこちらをご覧下さい)。

 以上、今回は解除についての補足的な内容でした。

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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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