債権・債務・債務不履行とは?契約という約束は守らなければならない

 この世の中は契約社会です。コンビニで物を買うのは売買契約だし、部屋を借りて住むのは賃貸借契約です。そして契約が成立すると、権利義務が生じます。

事例
AはBの持っているギターが欲しくなり、Bに「そのギターを3万円で売ってくれないか?」と言った。するとBは承諾し、次の土曜日にAはお金を支払いBはギターを引き渡すことになった。


 この事例で、AとBは売買契約を結んでいます。売買契約は「買います」「売ります」で成立する諾成契約なので、Aの申し込み(ギター売ってくれ)にBが承諾した時、契約が成立しています。すると、AとBは、互いに権利義務が生じます。
・Aの権利義務
 AはBに対し代金支払い義務が生じます。同時に、Bへギターの引渡しを請求する権利も生じます。
・Bの権利義務
 BはAに対しギターの引渡し義務が生じます。同時に、代金を請求する権利も生じます。

 このように、互いに法的な権利義務が生じます。そして、AがBにギターの引渡しを請求する権利、BがAに代金を請求する権利、これを債権といいます。一方、AがBに代金を支払う義務、BがAにギターを引き渡さなければならない義務、これを債務といいます。つまり、AとBは売買契約が成立したことによって、債権債務関係になるのです。
 また、債務を負った者を債務者、債権を有した者を債権者と呼びます。
 従いまして、売買代金に関してはAが債務者でBが債権者、ギターに関してはAが債権者でBが債務者となります。
 このように、互いに債務を負う契約を双務契約といいます(契約の片側だけが債務を負う契約は片務契約になります)。
 尚、物権は物に対する権利ですが、債権は人に対する権利です。今回の事例に即して言うと、AはBという人に対して、BはAという人に対して、債権という権利を持っている、ということになります。

約束は守らなければならない

 AとBは互いにギターの売買契約によって生じる義務(約束)を果たさなければなりません。もっとわかりやすく言うと、AとBは売買契約という約束を守らなければなりません。そしてこの「約束を守る」「義務を果たす」ことを、債務を履行するといいます。つまり、今回の事例で、AとBは互いに相手に対する債務を履行する義務を負っていて、AはBに対し代金を支払えば債務の履行を果たし、BはAに対しギターの引渡しをすれば債務の履行を果たした、ということになります。

債務を履行しなかったら?

 例えば、Aが無資力(金がない状態)になり、Bに代金を支払えなくなったらどうなるでしょう。すると、AはBに対する債務を履行できなくなります。このように、債務を履行できなくなることを債務不履行といいます。
 では、もしAが債務不履行になってしまった場合、Bは何ができるでしょう?

(債務不履行による損害賠償)
民法415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。


※民法改正後(2020年4月から施行)
(債務不履行による損害賠償)
民法415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

 Aがもし代金を支払えなくなったら(債務を履行できなくなったら)、Aは債務不履行となり、BはAに対して、Aの債務不履行による損害賠償の請求ができます。つまり、Aが債務不履行に陥ると、BのAに対する「金払え」という代金の支払い請求権は、損害賠償請求権に変化します。
 もしこのような事態に陥れば、AとBの関係は最悪になりますよね(笑)。ですので皆さん、契約という約束はしっかり守りましょう。
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損害賠償の請求・過失責任の原則~必ず損害賠償請求できる訳じゃない

 契約の相手方が債務の履行の義務を果たさず債務不履行に陥ったとき、損害賠償の請求ができます。しかし!たとえ契約の相手方が債務不履行に陥ったからといって、必ず損害賠償請求ができるという訳ではありません。
 
(債務不履行による損害賠償)
民法415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。


※民法改正後(2020年4月から施行)
(債務不履行による損害賠償)
民法415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

「債務者に帰すべき事由」とは、債務の履行ができないこと、つまり、契約の約束を果たせないことの理由が債務者自身にあるということです。
 上記の条文を見ると、「債務者に帰すべき事由」という言葉は後段の文章にだけ係っているように読めますが、判例(裁判の判決)では、前半の部分にも「債務者の帰すべき事由」が当然必要だとしています。従いまして、債務不履行による損害賠償の請求は、債務者の帰すべき事由、つまり、債務者に過失(落ち度)があるときにできる、ということになります。
 以上の事を踏まえて、こちらの事例をご覧下さい。

事例
AはBの持っているギターが欲しくなり、Bに「そのギターを3万円で売ってくれないか?」と言った。するとBは承諾し、次の土曜日にAはお金を支払いBはギターを弦を張り直して引き渡すことになった。しかし約束の前日の金曜日、Bは空き巣被害に遭いギターを盗まれてしまった。尚、Bの戸締りに不備はなかった。


 この事例の場合、AはBに対し、Bの債務不履行による損害賠償の請求ができるでしょうか?
 結論は、AはBに損害賠償請求できません。なぜなら、Bが債務不履行に陥ったことについて、Bの過失(落ち度)がないからです。Bは空き巣被害にあっただけの、ただの被害者です。
 従いまして、Bの無過失によりAの損害賠償請求権は成立しません。これが過失責任の原則です。
 債務不履行による損害賠償請求権が成立する流れをまとめると、このようになります。

契約の成立

契約義務の発生

債務者の過失

債務者の契約義務不履行(債務不履行)

損害の発生

損害賠償請求権の発生


債務不履行の3つの態様

一般的に、債務不履行には3つの態様があるとされています。

・履行遅滞
履行できるはずなのに約束の期日に後れること
事例で例えると、Bのミスで土曜日にギターを用意できなくなってしまった場合
・履行不能
契約成立後に契約義務の履行が不可能になること
事例で例えると、Bのミスでギターを折ってしまった場合
・不完全履行
契約義務(債務の履行)は果たしたが、目的物に欠陥があった
事例で例えると、Bが引き渡したギターは弦が張っていなかった

 これら3つの債務不履行、覚えておいて頂ければと存じます。

補足
 今回の事例で、Bに空き巣被害がなければ、約束通り、AとBは次の土曜日に互いに債務を履行をしなければなりません。しかし、約束の土曜日になって、Aがお金を払おうとしないのに「ギターをよこせ」と言ってきたら、Bはどうすればいいでしょう?この場合、Bは「お前が金出すまではギターは渡さん!」と言えます。これを同時履行の抗弁権といいます。これは、互いに債務を負う双務契約において、非常に重要な権利ですので、是非覚えておいて下さい。
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債権の世界~債権債務の超基本

債権・債務とは

 債権とは、特定の者が特定の者に対して一定の行為を請求することを内容とする権利です。
 例えば、Bにギターを売ったAは、Bに対して「おまえに売ったギターの金払え!」と請求する権利を持っています。これが債権です。

A→B
 ↑ 
 債権

 この場合、AはBに対して「金払え」という債権を持っている債権者になります。
 一方、Aからギターを買ったBは、Aに対してギターの購入代金を支払う義務があります。この「Aに対してギターの購入代金を支払う義務」が債務です。

B→A
 ↑
 債務

 この場合、BはAに対して債務を負っている債務者ということです。
 まとめると、ギターの売主Aは、Bに対して「金払え」という債権を持っている債権者ギターの買主Bは、Aに対して「代金支払い義務」という債務を負っている債務者、となります。

売買契約は視点を変えると債権・債務が入れ替わる

 先ほど、ギターの売主Aは債権者、ギターの買主Bは債務者、とご説明いたしました。これは「お金」という視点に立ったものです。これが実は「売買物」、つまり「ギター」という視点に立った場合は、ABの債権債務関係は入れ替わります。
「お金を払って物を買う」「物を売ってお金をもらう」という行為は、売買契約になります(売買契約の超基本はこちらの記事へ)。そして、売買契約は、売主と買主の両者が互いに債権を持ち、互いに債務を負います。どういうことかといいますと、売買契約は「お金」の視点で見れば、売主が債権者となり、買主が債務者となります。これは今までご説明したとおりです。ところが、これが「売買した物」の視点から見ると、売主が債務者となり、買主が債権者となります。なぜなら、売主は買主に対して「売った物を買主に引き渡す義務」という債務を負います。そして、買主は売主に対して「買った物をよこせ」という債権を持ちます。皆さんもお金を払って物を買ったのに、売主が物を引き渡さなかったら「物よこせ!」となりますよね?(金返せ!というのもありますが、それについてはここでは割愛します)。
 従いまして、ギターの売主Aとギターの買主Bの債権債務関係は、次のようになります。

「お金」の視点で見た場合
債権者 債務者
売主A→買主B
   ↑
   債権

ギター(売買物)の視点で見た場合
債務者 債権者
売主A←買主B
   ↑
   債権

 以上のように、売買契約においては「お金」の視点で見るのか「物」の視点で見るのかにより、債権の矢印の方向が変わります。
 また、この売買契約のように、互いに債権を持ち互いに債務を負う契約を、双務契約といいます。

お金の貸し借りは〇〇契約?

 物の貸し借りは、消費貸借契約になります。そして、お金の貸し借りは金銭消費貸借契約と呼ばれます(消費貸借契約の超基本はこちらの記事へ)。
 お金の貸し借り、つまり金銭消費貸借契約は、売買契約のように「物」はなく「お金そのもの」、もっと言えば「金〇〇円という価値そのもの」が、契約の目的物になっています。ですので、売買契約とは違い、お金の視点から見た債権債務関係しかありません。従いまして、お金の貸し借りの場合は、貸し手は借り手に対して「金返せ!」という債権を持つ債権者、借り手は貸し手に対して「借りた金を返す義務」という債務を負う債権者、という図式のみになります。

貸し手 借り手
債権者→債務者
   ↑
   債権

 また、この金銭消費貸借契約のように、一方の者だけが債務を負う契約を、片務契約といいます。

補足
 ちなみに、債権の場合は、AはBに対して債権を「持つ」、あるいは、債権を「有している」という言い方をします。一方で債務の場合は、BはAに対して債務を持つ、というような言い方はしません。債務の場合は、BはAに対して債務を「負う・負っている」という言い方をします。

 今回ご説明した内容は「債権」という分野について考えるときの基本中の基本になります。債権の分野は非常に難しいです。ですので、まずはこの基本中の基本を、しっかりとおさえておいて頂ければと存じます。
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債権ってどんな権利?物権と比較して考える債権の超基本

 債権とは、特定の者が特定の者に対して一定の行為を請求することを内容とする権利です。
 さて、それではこの「特定の者」とは、一体どのようなことを意味するのでしょうか?

 そもそも、なぜ「特定の者」なのでしょうか?実はこの意味について考えていくと、債権というものの、その性質・特徴が分かります。従いまして、ここからその「特定の者」について考えながら、債権という権利の性質・特徴をご説明して参ります。

債権は人に対する権利

 ところで「所有権」は債権なのでしょうか?
 違います。所有権は物権です。物権とは、物に対する権利です。所有権は「この物は私の所有物だ!」という物権になります(物権について詳しくはこちらの記事をご覧下さい)。
 一方、債権は「特定の者が特定の者に対して」一定の行為を請求することを内容とする権利です。「特定の者に対して」ということはつまり、債権は人に対する権利なのです。

物権と比較すると債権がよくわかる

 物に対する権利である物権は、1つの物に対して1人の物権が原則です(例外→共有)。これを一物一権主義といいます。
 例えば、あなたのギターはあなたの物、すなわち「あなたの所有物」です。全世界の他の誰の物でもありません。あなたはあなたの所有物について、他人を排して支配する権利を持ちます(排他的支配権)。もしあなたのギターを他の誰かが勝手に使っていたのなら、あなたは法律上堂々と「そのギターは私の物だ!返せ!」と主張できます。なぜなら、あなたのギターはあなたの所有物で、あなたにはそのギターの所有権(物権)があり、それは法律上当然に認められた権利だからです。あなたの所有物はあなただけの所有物なのです。あなたはあなたの所有権を不特定多数の者に主張できます。これが物権です。

 一方、人に対する権利である債権は、1人の者に対して1人の債権、という原則はありません。つまり、1人に対して複数の債権が存在することもあるのです。ということは必然的に、1人に対して複数の債務が存在することもあります。
 これは現実を考えれば簡単にわかります。例えば、八百屋のオヤジが複数の問屋から野菜を仕入れれば、八百屋のオヤジは複数の債務を負うことになります。また、問屋が複数の八百屋に野菜を販売すれば、問屋は複数の債権を持ちます。
 そして、債権は「特定の者が特定の者に対して」有する権利です。AがBに対して持つ債権は、AがBに対する債権でしかありません。つまり、問屋Aが、八百屋Bにみかん10ケース、八百屋Cにみかん20ケースを販売した場合、問屋Aは二つの債権を同時に持ちますが、八百屋Bに対してみかん20ケース分の代金を請求することはできません。なぜなら、それは八百屋Cに対する債権だからです。当たり前の話ですよね。
 また、債権は「特定の者が特定の者に対して」有する権利なので、問屋Aの八百屋Bに対する債権は、他の者とは何の関係もなく、八百屋Cに対する債権とも何の関係もありません。問屋Aの八百屋Bに対する債権の問題は、AB間だけの問題です。問屋Aの八百屋Bに対する債権は、八百屋Bに対してしか主張できません。

 というわけで、「特定の者が特定の者に対して」ということの意味、そして債権の性質と特徴、おわかりになって頂けましたでしょうか。ごく当たり前に思える部分もあったかと思いますが、まずは債権についての超基本として、しっかりとおさえておいて頂ければと存じます。
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債務不履行・損害賠償の超基本~債務の履行とは約束を守ること

 債権とは、特定の者が特定の者に対して一定の行為を請求することを内容とする権利です。
 AがBにお金を貸した場合、AはBに対して「金返せ」という債権を持ちます。一方で、BはAに対して「借りた金を返す義務」という債務を負います(債権債務の超基本はこちらの記事へ)。そしてこの場合、Aが債権者、Bが債務者となります。
 ところで、債務者が、その債務を履行※しなかった場合は一体どうなるのか?という問題があります。ここからはその問題について、わかりやすく「お金」の視点から、ご説明して参りたいと思います。
※借金という債務を負っている場合に、その借金を返済することを「債務の履行」という。わかりやすく言うと、債務の履行とは「約束を果たすこと」である。売買契約なら「買主が売主に代金を支払うこと・売主が買主に売った物を引き渡すこと」が債務の履行となる。

事例
「代金は月内に支払う」という約束をして、AはBにギターを売り渡した。しかし、月末が過ぎてもBは一向に代金を支払わない。


 これは売買契約の事例です。まずは各当事者の立場と関係性を確認しましょう。
 Aはギターの売主で、Bはギターの買主です。そして売主Aは、買主Bに対して「代金を支払え」という債権を持っています。一方、買主Bは、売主Aに対して「月内に代金を支払う」という債務を負っています。したがってこの場合、売主Aは債権者、買主Bは債務者となります。

債権者 債務者
売主A→買主B
   ↑
   債権

 そして、ここからが本題です。
 買主Bは「月内に代金を支払う」という約束をしたのにもかかわらず、月末が過ぎても一向にその代金を支払いません。つまり、Bは期限が過ぎても債務を履行しない、ということです。これを債務不履行といいます。そして、債務不履行の状態になることを「債務不履行に陥る」といいます。つまり、Bは債務不履行に陥っているのです。
 さて、Bが債務不履行に陥っているのはわかりましたが、早くBから代金をもらいたいAは、一体どうすればいいのでしょうか?民法には、次の規定があります。

(債務不履行による損害賠償)
民法415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。


※民法改正後(2020年4月から施行)
(債務不履行による損害賠償)
民法415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。


「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき」とは、簡単に言えば「債務者が約束どおりに約束を果たさないとき」ということです。そして、そのような場合、債権者は債務者に対して「生じた損害の賠償を請求できる」ことを民法415条は規定しています。
 従いまして、事例のAは、債務不履行に陥ったBに対して、生じた損害の賠償を請求することができます。
 尚、この場合、「生じた損害」は売買代金です。しかし、それ以外の損害も認められれば、そのときは、売買代金分とそれ以外の損害分とを合わせて、AはBに対して損害賠償を請求することができます。
 
 以上、まとめるとこうなります。

債権者 債務者
売主A→買主B
   ↑
   債権

Bが債務不履行に陥ると

債権者 債務者
売主A→買主B
   ↑
損害賠償請求権

 つまり、債務者が債務不履行に陥ると、債権者の債務者に対する債権の矢印が、損害賠償請求権の矢印へと変貌します。恐怖の変貌です(笑)。それはまるで、アシュラマンが怒りの面に変わるかの如く、緋村剣心が人斬り抜刀斎に変わるかの如く、といった感じでしょうか。
 契約は約束です。債務の履行は約束を守ることです。みなさん、約束はしっかりと守りましょう。
 尚、債務不履行についてはこちらの記事も、損害賠償についてこちらの記事もご参照ください。
→続いての記事はこちら

お金の貸し借りで考える債権の世界~債務を履行しない=約束を破った先には何がある?

 債務を履行するとは、約束を守ることです。
 債務を履行しないとは、約束を破ることです。
(債権債務の超基本はこちらの記事へ。債務の履行・債務不履行について詳しくはこちらの記事へ)。
 さて、では債務を履行しない=約束を破った先には、一体どんな債権の世界が待ち受けているのでしょうか?今回はその問題について、わかりやすく、現実にもよくあるお金の貸し借り(金銭消費貸借契約)を例に、ご説明して参りたいと思います。

事例
AはBに300万円を貸し付けた。その後、返済期限が過ぎても、Bは一向にその借金を返済しない。


 まず、各当事者の立場と関係性を確認します。
 Bに300万円を貸したAは、Bに対して「300万円返せ」という債権を持ちます。つまりAは債権者です。
 そして、Bは「返済期限までに300万円を返さなければならない」という債務を負います。つまりBは債務者です。

債権者 債務者
 A → B
   ↑
   債権
 (300万返せ)

 このようになります(Aを貸金業者と考えるとよりイメージしやすいでしょう)。
 さて、事例の債務者Bは、返済期限を過ぎても300万円を返しません。つまり、Bは債務を履行しないまま期限を過ぎた=約束を破っています。
 では債権者Aは、Bに対して、これから一体どのような行為・手続きを行っていくことになるのでしょうか?
 民法には次のような規定があります。

(履行の強制)
民法414条
債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。


※民法改正後(2020年4月から施行)

(履行の強制)
414条
債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。

 債権者Aは、債務不履行に陥った債務者Bに対して、裁判所を使って強制的にその債務を履行させることができます。裁判所を使うとは、訴訟を起こすということです。

訴訟を起こすかどうかは債権者の自由

 ここでひとつポイントです。債権者は、裁判所を使って強制的にその債務を履行させることができる、つまり、債権者Aは、訴訟を起こすことができるのであって、実際に訴訟を起こすかどうかは、債権者Aの自由なのです。
 このように、民事訴訟の世界では、実際に訴訟を提起するかどうかは、訴える者の自由なのです(これを処分権主義という)。

不起訴の合意

 また、債権者と債務者の間で「不起訴の合意」を交わすこともできます。不起訴の合意とは「訴えません」という約束をすることです。そして、この「訴えません」という約束、不起訴の合意は、拘束力を持ちます。拘束力を持つということは、一度、不起訴の合意をしてしまうと、その後、いくら債務者がその債務を履行しなかったとしても、債権者は訴訟を提起することができなくなります。ですので、もし友人間のお金の貸し借りでモメていて、借りた側から不起訴の合意を持ちかけてきた場合は、貸した側の人は、十分お気をつけ下さい。
 尚、不起訴の合意がなされると、その債務は自然債務になります。自然債務とは、債務者がその債務を履行すれば有効な弁済※になるが、債権者がそれを強制することができないという、債務者にとっては実に都合の良い債務です。
弁済とは、債務を履行して、その債権を消滅させること。わかりやすく言えば、約束を果たしてその義務がなくなること。

不起訴の合意には気をつけろ!

 自然債務とは、言ってみれば「いくら金借りても絶対に文句を言わない都合のいい友人」から借金した債務みたいなものです(笑)。ですので、繰り返しますが、友人間などのお金の貸し借りで不起訴の合意を求められたら、くれぐれも!お気をつけ下さい。もし不起訴の合意をしてしまえば、法律的な拘束力を持った形で「いくら金借りても絶対に文句を言わない都合のいい友人」に成り下がってしまいますから。

補足
 訴訟などで実際に履行を強制させるための手続きを規定したものが、民事訴訟法です。また、このような法律は、手続法と呼ばれます。一方、民法414のような規定・法律は、実体法と呼ばれます。
→続いて「債務者にその債務を強制的に履行させる」ことについてはこちら

差押え・強制執行の超基本~訴訟を起こして無理矢理借金を回収する?

事例
AはBに300万円を貸し付けた。その後、返済期限が過ぎてもBが一向にその借金を返済しないので、Aは訴訟を提起した。


 これは、債務者のBが返済期限を過ぎてもその借金を返さないので、債権者のAが裁判を起こした、という話です。
 さて、この金の貸し借り(金銭消費貸借契約)のケースで、Aが裁判で立証しなければならないことがあります。それは次の2点です。
1・返還の約束
2・金銭の授受

 つまりAは、Bの「返済期限までに300万円を返済する義務」と、Bに対して「実際にお金を貸したこと」証明しなければ裁判に勝てません。また、他にも弁済期の到来(返済期限の到来)も主張すべきとされています。
 これらの証明は、借用書があれば、その強力な証拠になります(だから貸金・借金の借用書は大事ナノダ!)。
 そして、債権者Aの立証・主張が認められれば
「BはAに対し金300万円を支払え」
というような判決文を裁判所が書き、無事、Aの勝訴となります。

強制執行

 ところで、そもそもなぜ債権者Aは裁判を起こす必要があるのでしょうか。裁判は、時間も手間もお金もかかります。そして裁判に勝って、裁判所に「BはAに対し金300万円を支払え」というような判決文を書いてもらって、それでどうなるのでしょうか?Bがその判決文を見て自主的に300万円を返してくれる?だったら、Bが往生際の悪いヤツで、それでも300万円を返そうとしなかったら?
 そうなんです。たとえ判決が出ても、必ずしも、Bが300万円を返すとは限りません。もしBが金を返さないままなら、判決文はただの紙切れとなってしまいます。となると、Aはただの紙切れのために時間と手間とお金を使った!ということになってしまいます。
 そこで!「BはAに対し金300万円を支払え」という判決文を手に入れたAは、強制執行の手続きを取ることになります。強制執行とは、簡単に言えば、国家権力を使って強制的に目的を果たすことです。それが判決文を手に入れることにより可能になります。RPGゲーム風に言えば、裁判というイベントをクリアすると「判決文」というアイテムが手に入り、判決文があれば「強制執行」という魔法が使えるようになり、「強制執行」を使えば強制的に借金を回収できるようになります。さしずめ強制執行とは、国家権力という魔獣を召喚する召喚魔法といったところでしょうか(笑)。
 従いまして、債権者Aは、判決文をもらって強制執行の手続きをして、国家権力を使って、強制的にBから債権を回収(借金を回収)することができます。

差押え

 強制執行には、不動産執行、動産執行、債権執行があります。そしていずれの強制執行も、債務者の財産を差し押えて行います。差押えとは、債務者の目的財産の処分行為を禁止することです。「債務者の目的財産の処分行為を禁止」とは、債務者が勝手に債務者自身の財産を処分できないようにすることです。
 従いまして、債権者Aは、まず債務者Bの財産を差し押えて勝手に財産を処分できないようにした上で、差し押えた財産を売却して(これを強制競売という)、その売却代金から借金を回収することを、国家権力を使って強制的に行うことができます。強制的とは「Bの意思に関係なく」ということです。つまり、いくらBが泣こうがわめこうが、国家権力を使って無理矢理Bの財産を差し押えて売却して借金を回収するというわけです。
 Bがかわいそう!
 確かにそうかもしれません。しかしこれは、そもそも借金を返さないBが自ら引き起こした結果です。さらに言えば、Bがかわいそうなら、300万円を返してもらえないAはどうなの?となりますよね。
 というわけで、皆さん。借りたお金はしっかり返しましょう(笑)。ただし、悪徳金融業者にはお気をつけ下さいね。
→続いての記事はこちら

破産の超基本~債務者に財産がなかったらどうなる?債権者平等原則とは?

事例1
AはBに200万円を貸し付けた。その後、返済期限が過ぎてもBが一向にその借金を返済しないので、Aは訴訟を提起し、勝訴した。そしてAは強制執行の手続きを取った。


 これは、Bに200万円を貸し付けた債権者であるAが、Aから200万円を借金した債務者であるBが返済期限を過ぎても金を返さないので、債権者Aが裁判を起こして勝訴して強制執行まで至った、という話です(強制執行・差押えについてはこちらの記事、強制執行の前段階までについてはこちらの記事へ)。
 さて、ここでひとつ、こんな問題があります。強制執行で、借金を回収できれば何も問題はありません。しかし、そもそも債務者Bに、差し押える財産がなかった場合は一体どうなるのでしょうか?
 強制執行とは、債務者の財産を差し押えて、その財産を売却して(強制競売)、その売却代金から債権を回収する事です。しかし、これは債務者に財産があることが前提ですよね。つまり、債権者Aが強制執行でお金を回収するには、債務者Bの財産の存在が前提になるということです。債務者Bの財産の中で、債権者Aが差し押さえることができる財産を、Bの責任財産一般財産と言います。そして、借金を踏み倒したBからお金を回収するためにAができる方法といえば、Bの責任財産・一般財産を差し押えて売却する強制執行以外にはありません。したがって、Bの責任財産・一般財産がすっからかんなら、Aはお手上げなのです。そして、債権者Aがそのお手上げ状態になってしまう典型的なケースが、債務者破産です。

債務者破産の典型的なケース

事例2
AはBから「店を始めるのでお金を貸してくれ。絶対にこの商売を成功させて返すから!」と頼まれた。そこで、AはBにその事業資金として200万円を貸した。それからしばらく、Bの店の経営は順調だったが、ある時からBの店の売り上げはどんどん下がっていき、次第に店の経営状況は悪化し、それと共にBの財産状況も悪化した。金に困ったBはサラ金に手を出し、サラ金業者Cから100万円を借金した。それでも足りないBはさらにクレジット会社Dからも100万円を借金した。そして結局、その後、Bは破産した。尚、Bに残っている財産は200万円の不動産だけである。


 この事例2では、債務者Bに対して「金返せ」という債権者はA・C・Dの3者います。そして各債権者の貸金の金額は、A200万円、サラ金業者C100万円、クレジット会社D100万円です。しかし、債務者Bは破産してしまい、Bに残された一般財産は200万円の不動産だけです。

           A(200万返せ)
          ↙︎
B(残財産200万円)←サラ金業者C(100万返せ)
          ↖︎
           クレジット会社D(100万返せ)

 さて、この時点で、残された財産が200万円の不動産のみの債務者Bは、背負った借金→200万+100万+100万=400万円全額の返済は不可能なのがわかります。では、債務者Bに残された200万円の財産の行方は、一体どうなるのでしょうか? Aが回収するのか?それともB?C?
 結論。債務者Bに残された一般財産200万円は、債権者A・C・Dの3者平等に配当されます。
 1番最初にお金を貸したのはAなのに?
 そうです。誰が1番最初にお金を貸したか、つまり、誰が1番最初に債権を有したかは関係ありません。そして返済期限の前後も関係ありません。あくまで債権者は平等に扱われます。これを債権者平等原則といいます。
 従いまして、債務者Bの財産200万円に対して、借金の総額は400万円ですので、債権者A・C・Dの3者は、200÷400=50%の配当をそれぞれ受けることになります。すると、各債権者が返済を受ける額は次のようになります。

Aが返済を受ける額→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額→200万×50%=50万円

 このような形で、債務者Bの破産手続は終了になります。したがって、債権者A・C・Dは、3者とも平等な割合で借金を回収して、3者とも平等な割合で損をするということです。
 債権者平等原則とは、債権者みんなで平等に泣き合う原則、と言ってもいいかもしれません。

破産の裏で泣く債権者

 実は、現実の債務者破産のケースでは、債権者は、1割の配当がもらえればマシ、ぐらいなものです。
 え?そんなもんなの?
 はい。そんなものです。ですので、事例2のA・C・Dは、債務者破産のケースの債権者としては、ありえないぐらいマシです。よく借金問題とか破産事件だとかの話を聞くと、とかく債務者の方ばかりに目が向きがちだと思いますが、しかしその実、その裏には、スズメの涙ほどの配当で泣いている債権者達がいるということです。ですので、クレジットカード会社などが、なぜ、わざわざ申込者を審査するのか、その理由がよくわかるかと思います。
→続いての記事はこちら

融資の際に登場する抵当権って何?担保物権(抵当権)の超基本

そもそも抵当権ってなに?

 日常でもよくある、一般的にもっとも馴染みのある抵当権のケースは、住宅ローンです。ですので、住宅ローンの例でご説明いたします。
 例えば、Aさんが住宅ローンを組んでマイホームを購入したとしましょう。このとき、Aさんに融資をした(お金を貸した)銀行が債権者Aさんは債務者です。そして債権者である銀行は、万が一、Aさんが住宅ローンを返済できなくなったときのために、そのマイホームを住宅ローンの担保として確保します。住宅ローンの担保として確保するとは、わかりやすく言えば「住宅ローンの保証にする」ということです。住宅ローンの保証にするとはつまり、「もし住宅ローンが返済できなくなったらこの不動産(マイホーム)を売っぱらってそのお金をローンの返済にあてます」ということです。そして、もし債務者のAさんが住宅ローンの返済ができなくなった場合、債権者の銀行は、担保にした不動産(マイホーム)を強制的に売っぱらって(競売)、その売却代金からお金を回収できます。これが抵当権です。そしてこの場合、債権者である銀行が抵当権者となり、債務者であるAさんは抵当権設定者となります。また、このとき担保にしたマイホームを、債務(住宅ローン)の担保に供した不動産(抵当不動産)、といいます。

抵当権の意味

 さて、ではここからは事例とともに、抵当権についてより具体的に考えていきます。

事例
AはBから「店を始めるのでお金を貸してくれ。絶対にこの商売を成功させて返すから!」と頼まれた。そこで、AはBにその事業資金として200万円を貸した。それからしばらく、Bの店の経営は順調だったが、ある時からBの店の売り上げはどんどん下がっていき、次第に店の経営状況は悪化し、それと共にBの財産状況も悪化した。金に困ったBはサラ金に手を出し、サラ金業者Cから100万円を借金した。それでも足りないBはさらにクレジット会社Dからも100万円を借金した。そして結局、その後、Bは破産した。尚、Bに残っている財産は200万円の不動産だけである。


[図]
  A(200万返せ)
 ↙︎
B(残財産200万円)←サラ金業者C(100万返せ)
 ↖︎
  クレジット会社D(100万返せ)

 さて、この事例で、破産してしまった債務者Bから、債権者A・C・Dの3者が回収できる金額は次のとおりです。

各債権者へのは配当割合→200万÷400万=50%
したがって
Aが返済を受ける額→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額→200万×50%=50万円


 債権者平等原則により、各債権者は平等に扱われ、上記のような結果になります(これについて詳しくはこちらの記事へ)。
 ところで、Aは結局、Bに貸した200万円のうち、返済を受けられたのは半額の100万円でした。これって、ハッキリ言って、Aとしては貸し損ですよね。しかし、これが債権者平等原則による結果です。 
 それでは、Aは債権者として、何か取るべき手段はなかったのでしょうか?
 それが、あるのです。そしてその手段というのが抵当権(担保物権)なのです。

担保物権の代表:抵当権

 担保物権にはいくつかの種類がありますが、その中でもっとも現実に利用されていて、代表的な存在が抵当権です。
 ということで、まずは抵当権についての民法の条文を見てみましょう。

(抵当権の内容)
民法369条
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。


 条文中に、抵当権についての非常に重要なポイントが2つあります。それは「占有を移転しないで」「他の債権者に先立って」です。
 それではこの2つのポイントから、抵当権のその性質・特徴について考えていきます。

「占有を移転しないで」とは
 これは、債務の担保に供した不動産を抵当権者(債権者)が占有する必要がない、という意味です。先の住宅ローンの例ですと、Aさんが購入したマイホームはあくまでA自身で占有して、銀行はその不動産(マイホーム)を占有しなくていいということです。これは抵当権の大きな利点です。債権者はわざわざ担保にした不動産を占有する必要がないし、債務者は担保にした不動産を使用し続けることができるので、債権者と債務者双方にとって有難いのです。
「他の債権者に先立って」とは
 こ・れ・が!債権者にとってはかなりアツイ抵当権の特徴になります。どういうことかといいますと、抵当権をつけておけば、万が一、債務者が破産してしまっても、抵当権を設定した不動産については、優先的にお金を回収することができます。
 え?どういう意味?
 はい。ということで、ここで再び事例に戻ります。

  A(200万返せ)
 ↙︎
B(残財産200万円)←サラ金業者C(100万返せ)
 ↖︎
  クレジット会社D(100万返せ)

 このような状況で、各債権者が回収できる金額は、債権者平等原則により次のようになります。

Aが返済を受ける額→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額→200万×50%=50万円

 そしてここからが肝です。もしAが200万円の貸金について、Bの不動産に抵当権を付けていたとしましょう。すると、なんと結果は次のようになります。

Aが返済を受ける額→200万円
Cが返済を受ける額→0円
Dが返済を受ける額→0円


 これが「他の債権者に先立って」の意味です!これは債権者としてデカイですよね。つまり、抵当権は、債権者平等原則をすっ飛ばせる強力な効果があるのです。
続いて「なぜ抵当権はそんなに強いのか」はこちら

抵当権の意味~なぜ抵当権は強いのか

 抵当権とは、金融機関などが融資(お金を貸すこと)を行う際、その融資したお金が回収できない場合の担保として不動産を確保して、実際にお金が回収できないような事態になったときは、強制的にその不動産を競売に出して(売っぱらって)、他の債権者に優先してその売却金からお金を回収できる権利です。


AはBから「店を始めるのでお金を貸してくれ。絶対にこの商売を成功させて返すから!」と頼まれた。そこで、AはBにその事業資金として200万円を貸した。それからしばらく、Bの店の経営は順調だったが、ある時からBの店の売り上げはどんどん下がっていき、次第に店の経営状況は悪化し、それと共にBの財産状況も悪化した。金に困ったBはサラ金に手を出し、サラ金業者Cから100万円を借金した。それでも足りないBはさらにクレジット会社Dからも100万円を借金した。そして結局、その後、Bは破産した。尚、Bに残っている財産は200万円の不動産だけである。


 このケースで、各債権者の回収できる金額は次のとおりです。
Aが返済を受ける額→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額→200万×50%=50万円

 これが債権者平等原則による結果です。
 ところが、Aが200万円の貸金についてBの不動産に抵当権を付けていた場合は、各債権者の回収できる金額は次のようになります。

Aが返済を受ける額→200万円
Cが返済を受ける額→0円
Dが返済を受ける額→0円


 抵当権は、抵当不動産について「他の債権者に先立って」自己の弁済を受けることができる権利です。したがって、AはBの不動産に抵当権を付ければ、抵当権者として、CとDに優先して、Bの不動産200万円からお金を回収することができます。これが抵当権の強みです。
(債権者平等原則についての超基本はこちらの記事、抵当権についての超基本はこちらの記事をご覧下さい)。

抵当権はなぜそんなに強いのか?

 CとDにしてみれば、AがBの不動産に抵当権を付けていたというだけで、1円も回収することができなくなってしまいます。それは、民法で「他の債権者に先立って」と規定されているから、と説明してもいいのですが、こう説明することもできます。抵当権は担保物権です。すなわち、抵当権は物権なのです。
 民法の原則として、物権は債権よりも強い権利です。特定の者が特定の者に対して主張できる権利が債権なのに対し、物権は不特定多数の全ての者に対して主張できる権利です。したがって、物権は債権に勝ります。ですので、担保物権という物権である抵当権債権に勝り、抵当権者は他の債権者に優先して、抵当不動産からお金を回収することができるのです。
 尚、抵当権は登記できます。これも、抵当権が物権として強力な権利であることを示していますね。

「一般財産」の意味

 抵当権者以外(正確に言うと担保物権者以外)の債権者を、一般債権者と言います。そして、一般債権者が差し押さえることができる財産を一般財産と言います(差し押さえについて詳しくはこちらの記事へ)。つまり、一般財産というのは、債務者の総財産から「抵当不動産などの担保として確保された財産」を差し引いた財産のことです(よく借金問題や破産事件などで「一般財産」という言葉を聞くことがあると思いますが、その言葉の意味は、今回ご説明申し上げた担保物権(抵当権)の仕組みを理解しないと、よくわからないのではないかと思います)。
 従いまして、事例で、AがBの不動産に抵当権を付けていた場合は、サラ金業者Cとクレジット会社Dは、あてにできるBの財産は一般財産だけで、一般財産がなければアウトということです。また、もしBの不動産が300万円のもので、Aの貸金を回収しても尚100万円残っていれば、その100万円をCとDは50万ずつ分け合うことになります。つまり、抵当権者がライオンなら、一般債権者はハイエナです。先にライオンが食い散らかした財産を、後からハイエナ達が食い合うようなものです。

 というわけで、今回は以上になります。なぜ住宅ローンを組むときに、金融機関が購入した不動産に抵当権を付けるのか、その意味がよくわかりますよね。
 尚、抵当権については、こちらの記事と合わせてご覧になって頂ければと存じます。また、余裕がございましたら「債権債務の超基本」から順に、今回の記事までお読み頂ければ、より債権というものについての理解が深まるかと思いますので、よろしければ是非。
→続いての記事はこちら

人を担保にする?保証人・保証債務の超基本


AはBに200万円を貸し付けた。その後、返済期限が過ぎても、Bは一向にその借金を返済しない。


 さて、この事例で、Aは困っています。なぜなら、貸し付けた200万円をBが返済しないからです。このままいけば、Aが取るべき手段は、そのまま諦めるか訴訟を提起するかのどちらかです。そのまま諦めれば、貸した200万円はドブに捨てたようなもんです。となると、Aとしては訴訟を提起して、なんとか200万円を回収したいところです。訴訟を提起して裁判で勝訴すれば、AはBに対して強制執行の手続きを取ることができます。そして、Bの一般財産を差し押さえて、強制競売によりお金を回収することになります(強制執行と差押えについて詳しくはこちらの記事へ)。それで一件落着...と言いたいところですが、この方法にはリスクがあります。というのも、もしBに財産がなかったら、たとえ強制執行したところで、お金は回収できません。「無い袖は振れない」というヤツです。ましてや、裁判をするとなると、手間も時間もお金もかかります。それで強制執行して1円も回収できなかったら、まさに「骨折り損のくたびれもうけ」です。さらに、たとえBに財産が残されていたとしても、他にも債権者がいた場合は、他の債権者とその財産を分け合うこととなり、全額の回収は非常に難しくなります(現実の債務者破産のケースに至っては、債権の1割が回収できればマシだとされています)。
 従いまして、強制執行は、債務者Bの意思に関係なく、国家権力を使って強制的にお金を回収することができますが、実はリスクも大きいのです。
 他にAの取れる手段は本当にないの?
 あります。ただそれは、お金を貸し付ける段階で取っておくべき手段になります。すなわち、事前に取っておくべき手段です。
 それはどんな手段?
 まずひとつは、抵当権(担保物権)です。貸し付ける300万円の担保として、Bの不動産を確保する方法です。これなら、担保にしたBの不動産については、300万円という貸金の回収のための財産として、確実に確保しておくことができます(抵当権について詳しくはこちらの記事へ)。
 他には?
 あります。これも、お金を貸し付ける段階で取っておくべき手段で、保証人を立てる方法です。

保証債務とは

 冒頭の事例で、債権者のAは、債務者のBに、貸したお金を返してもらえない、という事態に陥ってしまいました。当然、Aは貸したお金をきっちり回収したいはずです。そこで、Aはあらかじめこのような事態に陥った場合を想定して、Bにお金を貸し付ける段階で、Bの保証人保証契約を結ぶことができます。保証人との保証契約とは、要するに「債務者Bがお金を返せなかったとき、保証人か肩代わりしますよ」という約束です。つまり、Bの保証人と保証契約を結んでおけば、Bが300万円の返済を滞らせても、Aは保証人に対して300万円を取り立てることができます。
 保証人は、いわば人的担保です。抵当権が、いざというときに担保として確保した不動産をおさえるのに対し、保証債務は、いざというときに保証人という「人そのもの」をおさえます。だから「人的担保」なのです。
 尚、Bが保証人を立てた場合、保証人のAに対する債務を保証債務、BのAに対する債務を主債務といい、Bは主債務者という立場になります。

主債務者 債権者 
  B ← A → 保証人
(主債務)    (保証債務)

 ここで2つ、注意点があります。

・保証債務の付従性
 保証債務は、あくまで主債務の存在が前提です。したがって、主債務者Bの債務、すなわち主債務が、無効であったり取り消されたりしたような場合は、保証債務も成立しなくなります。このような保証債務の性質を、付従性といいます。

・主債務の保証債務はあくまで別個の契約
 先述のとおり、保証債務は主債務の存在が前提に成り立っています。ただし、保証契約の当事者は、あくまで債権者と保証人です。つまり、Bの債務の保証のためとはいえ、保証契約を結ぶのはAと保証人であって、Bの保証人が結ぶわけではありません。したがって、AがBの保証人と保証契約を結ぶと、AB間の主債務の契約と、Aと保証人の保証契約2つの契約が並立することになります。

債権者ー主債務者←主債務の契約
          ⇅(並立)
債権者ー保証人←保証契約

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Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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