諾成契約・要式契約・要物契約(寄託契約) 口約束でも契約成立?書面が必要な契約は?

・諾成契約
 前回コンビニでモノを買うのも契約だ、とご説明申し上げました。そしてその契約は、売買契約諾成契約である、とご説明申し上げました。そして売買契約という諾成契約は、買主が購入の申し込みをし、売主が申し込みの承諾をした時成立する契約になります。
 さて、ここで「あれ?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。そうです。諾成契約には、契約書もいらないのです。つまり、契約というものは、口約束だけでも民法上は成立してしまうのです。もちろん、現実を考えたとき、例えば、企業間取引等で口約束だけで決めることはほとんどないでしょう。きちんと書面を交わした上で契約をしておかないと、後々に疑義が生じたとき、言った言わないの水掛け論になってしまいますから。ですので、当然のことながら、トラブル防止のためにもきちんとした書面は必須なのです。しかし、民法上の原則として、口頭のやり取りだけでも契約は成り立ってしまう、ということは覚えておいて下さい。

 そして、契約には、諾成契約以外の契約もあります。

・要式契約
 要式契約は、前述の諾成契約とは違い、書面なり一定の方式を経ないと成立しない契約です。 例えば、保証契約がまさににこの要式契約にあたります。民法446条2項に明確な規定があります。

[民法446条2項]
保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

 つまり、誰かに保証人になってもらうとき、誰かの保証人になろうとするときは、口頭の合意だけではダメで、書面を交わさなければならない、ということです。もし、口約束だけの保証契約でトラブルになっている方は、そもそも、その保証契約は法的に成り立っていませんのでご注意下さい。
 形「式」を「要する」契約→要式契約
 こんなイメージで覚えると記憶しやすいと思います。

・要物契約
 要物契約とは、契約対象の物の引き渡しがあって初めて成立する契約です。例えば、寄託契約が、この要物契約にあたります。といっても、いきなり寄託契約と言われてピンと来ませんよね。寄託契約とは、物を預ける契約です。倉庫に物を預けて保管してもらったりするアレです。つまり、倉庫に物を預けて保管してもらう契約は、実際に物を預かってもらって初めて成立する契約なのです。
 「物」を「要する」契約→要物契約
 こんなイメージで覚えてみて下さい。
 
 という訳で、ここまで契約というものについてご説明して参りました。民法上の契約の類型、分類はまだ他にも複数存在します。次回、その分類と民法上の契約の典型の紹介、その解説をして参りたいと存じます。

寄託契約についての補足

 倉庫に物を預けるとき、実は契約のパターンが二つあります。ひとつは、先程ご説明申し上げた寄託契約。そしてもうひとつは、賃貸借契約です。
 え?どゆこと?
 わかりやすくざっくり申し上げますと、寄託契約の場合は、物を預かって保管してもらう契約です。一方、賃貸借契約の場合は、倉庫自体を借りて自ら保管する契約になります。当然、どちらになるかにより、料金が異なるのはもちろん、物の保管に関する責任の帰属関係も変わります。「責任の帰属関係が変わる」というのは、例えば、保管物に何かあったときに誰が責任を持つのか(その原因の問題はここでは省きます)、あるいはその責任の度合い、といったものが変わるのです。ですので、倉庫に物を保管するといった契約をされる場合は、事前にそのあたりの契約内容を、よく確認しておくことを推奨します。
(スマホでご覧の場合、次の記事へ進むには画面下左の前の記事をタップして下さい)

13種類の典型契約 売買契約と賃貸借契約

 前回前々回と、契約についてのお話をいたしました。

互いの意思表示だけで成立する諾成契約
書面なりの一定の形式が必要な要式契約
物の引き渡しがあって成立する要物契約

 上記の分類は、「契約の成立」という観点でカテゴライズされたもので、実は民法上の契約というもの自体は、13種類の類型が存在します。その13種類の契約が、それぞれ諾成契約だったり要式契約だったりするわけです。今回は、その13種類の契約を紹介するとともに、その中の売買契約賃貸借契約について、簡単な解説をして参ります。

 以下、民法上の13種類の契約の典型です。

売買契約 贈与契約 交換契約
消費貸借契約 使用貸借契約 賃貸借契約
雇用契約 委任契約 請負契約 寄託契約
組合契約 終身定期金契約 和解契約


 以上が、民法上の13種類の典型契約になります。そして、上記の改行の仕方には意味があります。上の行から、移転型、利用型、労務型、特殊型、というように、13種類の契約を、四つのグループに分けることができます(特に覚える必要はありません)。宅建試験や行政書士試験において扱われる契約は、主に移転型利用型になります。労務型と特殊型は、あまり出題の対象にはなりません(委任、請負、寄託に関しては多少出ます) 。
 この移転型、利用型、労務型、特殊型というグループ分けは、とりあえず「そういった分類がある」ということだけ、何となく頭の片隅にでも入れておいて頂ければ、それで結構です。

日常でよく行われる契約

 ところで、我々の日常生活においては、どんな契約がよく行われているのでしょうか。

売買 贈与 交換 消費貸借 使用貸借 賃貸借 寄託
 
 このあたりの契約が、日常的に、実際によく行われるものだと思います。
 専門職以外の、一般的なビジネスにおいては、次に挙げるものになるのではないでしょうか。

売買 消費貸借 賃貸借 雇用 委任 請負 寄託

 そんないきなり羅列されてもわからんわ!という声が聞こえてきたような(笑)。はい。それではここから、売買契約と賃貸借契約について、簡単に解説して参ります。

売買契約
 これは一番わかりやすいと思います。以前に、コンビ二の買い物の例を挙げましたが、それがまさしく、売買契約になります。
 買います→売ります→お金を支払う→物を引き渡す
 これが契約の流れです。そして契約成立時購入の申し込みの承諾時、つまり、上記の「売ります」の時点で契約が成立します(諾成契約)。

賃貸借契約
 これは、物の貸し借りの契約です。前々回に挙げた不動産賃貸借は、まさに賃貸借契約です。賃貸人(家主・大家・オーナー)の所有する家を賃借人(借りて住む人)が賃料(家賃)を払って住む、という賃貸借契約になります。他にもCDのレンタルやレンタカーも賃貸借契約です。これもイメージし易いのではないでしょうか。
(スマホでご覧の場合、次の記事へ進むには画面下左の前の記事をタップして下さい)

使用貸借契約は賃貸借契約と何が違う?贈与契約はナシにできる?

 今回は民法上の13種類の典型契約のうち、使用貸借契約贈与契約について、簡単に解説して参ります。

タダの貸し借り・使用貸借契約

 前回、物の貸し借りの契約である賃貸借契約についてご説明いたしましたが、賃貸借契約には賃料、つまりお金が発生します。しかし、現実には、お金の発生しない、つまりタダの貸し借りも存在しますよね。世の中には、お金の発生しない賃貸借もあります。これは民法上、賃貸借契約とは言わず、使用貸借契約と言います。要するに、タダで物を貸し借りする契約です。
 さて、ここでひとつ注意して頂きたいことがあります。なんと、賃貸借契約も使用貸借契約も
 借ります→貸します
で成立する、諾成契約になります。これはちょっとビックリしません?だって極端な話、口約束だけでも家を借りることができる訳ですよ?もちろん、現実には賃貸借契約書を交わす事がほとんどですが。ただ、知り合いから直接貸してもらい、その際になんの書面も交わしていなかった、という事は現実にもあるかと思います。私としては、たとえ知り合い同士の仲での事だとしても、そのようなやり方はオススメいたしません。絶対にトラブルの元になりますから。注意して頂きたいのは、売買契約賃貸借契約使用貸借契約も諾成契約なので、口約束だけでも成立してしまいます。ですので、後々に何かでモメて、書面もサインもハンコもないからそんな契約は無効だ!とは言えないということです。なぜなら、口約束でも諾成契約として法的に成立するからです。だからこそ、きちっとした書面を交わす事がとても大事なのです。

物をあげる契約・贈与契約

 贈与というのは読んで字の如く、物を贈る行為ですよね。つまり、贈与契約物を贈る契約です。これも契約なんですね(一定額以上の贈与には贈与税という税金もかかる)。そして贈与契約も、口約束だけで成立してしまいます。つまり、
 あげます→もらいます
これで成立する、諾成契約になります。しかし、贈与契約の場合は、若干違う規定がプラスされています。

民法550条
書面によらない贈与は、各当事者が撤回できる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

 つまり、口約束だけの贈与契約は「この前贈るって言ったあの話やっぱナシ!」とできるのです。ちなみに条文の「履行の終わった部分」、というのは「あげちゃった部分・もらっちゃった部分」という事です。つまり「一万円あげるね」と口約束して「とりあえず2千円だけ渡しておくね」となっていた場合、すでにあげてしまった2千円についてはもうどうにもなりませんが、残りの8千円については約束を取り消せるという事です。贈与契約も諾成契約ですが、贈与に関しては、民法は若干慎重な規定を置いています。もし、この慎重な規定がなかった場合、ついその場のノリで「俺の車オマエにやるよ!」といった贈与も、撤回できなくなってしまいます※。いくらこの世の中が契約社会だといっても、さすがにそれはマズイですよね。ただ、すでにあげちゃったもの、もらっちゃったものについては、たとえ口約束だとしても撤回できませんので、ご注意願いたいと存じます。

※このような場合、民法には心裡留保という規定が別途ございます。それについてはこちらの記事をご参照下さい。
(スマホでご覧の場合、次の記事へ進むには画面下左の前の記事をタップして下さい)

消費貸借契約(金銭消費貸借契約) 賃貸借契約とどう違う?

 今回は消費貸借契約です。前回前々回に、物の貸し借りの契約である賃貸借契約と、タダで物を貸し借りする契約である使用貸借契約をご説明いたしました。
 では皆さん、お金の貸し借りは何契約でしょう?実は、お金の貸し借りは、賃貸借契約でも使用貸借契約でもありません。お金の貸し借りは、消費貸借契約というものになります。特にお金の貸し借りは、金銭消費貸借契約と言われます。
 賃貸借契約とどう違うの?
 賃貸借契約と消費貸借契約の違いは、賃貸借契約の場合、お金を払って物を借りて使って返す、ということになりますが、消費貸借契約の場合は、お金を払って物を借りて「消費」して消費した分を返す、ということになります。これではなんだかよくわかりませんよね(笑)。もう少し噛み砕いてご説明いたします。
 賃貸借契約の場合は、

 物を借りる→借りた物を使う→借りた物を返す

となるのは、何度もご説明申し上げたとおりです。それでは、消費貸借契約の場合はというと、お金で例えるのがわかりやすいので、金銭消費貸借契約でご説明いたしますと、

 お金を借りる→お金を使う→使ったお金を返す

となります(利息に関しては説明をわかりやすくするために省きます)。

消費貸借契約は「価値」を貸し借りする契約

 お金を借りたら借りたお金は返しますよね。当たり前の話です。さて、ここでよく考えてみて下さい。家を借りたら借りた家を返しますが、お金の場合は「借りた分のお金」を返します。例えば、友達から1万円を借りたとしても、返す時は実際、友達から受け取ったその1万円札自体を返す訳ではないですよね。受け取った1万円札と同じ価値分の金銭を返しますよね。1万円を借りて1万円札を受け取っても、返すときは変な話、100円玉100枚で返しても良い訳ですよね。まあ、そんな返し方をしたら相手は嫌がるでしょうが(笑)。
 この違い、おわかりになりましたでしょうか。これが賃貸借と消費貸借の違いです。賃貸借物を借りる契約で、消費貸借はいわば価値を借りる契約です。

民法587]
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

 上記の条文からもわかるように、借りた物そのものを返すのではなく、「種類、品質および数量の同じ物」を返すのが消費貸借契約、ということです。つまり、貸した側は、貸した物そのものを返してもらう必要がないので、借りた側は、借りた物を賃貸借や使用貸借よりもっと自由に使える、というメリットがあります。もちろん貸した側にもメリットがあり、お金を貸した場合は、利息分を加算した額を返してもらうことで利益を得られます。

 以上、今回は消費貸借契約について簡単にご説明いたしましたが、お金の貸し借りの問題に関しましては、まだまだ色々と深い問題がたくさんございますので、また別の機会に詳しく解説したいと存じます。
(スマホでご覧の場合、次の記事へ進むには画面下左の前の記事をタップして下さい)

委任契約と請負契約はどう違う?業務委託契約の注意点

 今回は委任契約請負契約です。委任と請負、似て非なるこの契約の違い。ご説明して参りたいと思います。
 まず、委任と請負に関する、民法の条文を見てみましょう。

(請負)
民法632条
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる

(委任)
民法643条
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる

 違い、お分かりになりますでしょうか?請負と委任では、かなり重要で大きな相違点がございます。それは、請負仕事の完成を約す(約束する)契約委任法律行為を行うことを約す契約です。これだけだと今ひとつピンと来ませんよね。もう少し詳しく解説いたします。

請負契約

 請負は、仕事の完成を約す契約なので、請け負った仕事が完成して初めて契約の履行が達成されたことになります。「契約の履行」というのは「約束を果たす」という意味です。これを建築工事で例えると、家を建てたいと考え、工務店に建築を依頼したとします。家の建築を請け負った工務店は「家を完成させること」義務付けられます。請負契約は、仕事の完成を約す契約ですので、家が完成して初めて報酬が発生します※。
※実際には手付金とか中間金とか途中で支払いが発生する場合もあります。
 これに対して、委任の場合は、あくまで法律行為をすることを委託するだけなので、請負のような「仕事の完成の義務」は発生しません。

委任契約・てゆーか法律行為の委託って?

 法律行為の委託とは、例えば、不動産を購入すると登記をしますが、不動産の登記に関しては、司法書士が行いますよね。この「不動産登記を司法書士にやってもらうこと」が、まさしく法律行為の委託、すなわち委任になります。
 法律行為以外の委託はないの?
 もちろんあります。先の不動産の例ですと、不動産を売りたい・買いたい、というときは、不動産業者に物件を探してもらったり、買主を探してもらったりしますよね。これは媒介契約と言われるものなのですが、この媒介契約は「法律行為以外の委託」になり、委任契約ではなく、準委任契約というものになります。

請負契約と委任契約とでは責任が違う

 請負契約と委任契約の一番の違いは、「仕事の完成の義務を負うかどうか」、ここです。つまり、請負契約の方が責任が重くなります。
 日頃のビジネスの実務の中で、業務委託契約を結ぶことはよくあります。ここで注意して頂きたいのが、その業務委託契約が「請負なのか委任なのか」です。委託契約という名の契約でも、実質は請負契約になっている場合もあるからです。契約というのは、双方とも自己に有利な内容で結びたいものです。後々のトラブルを避けるためにも、きちんと各条項を確認し、気になるところがあれば、しっかりと協議した上で(現実問題として、ビジネスの世界はスピード感を要求されるものですし、相手方との力関係もありますから、実際にはそれも中々難しいこともありますが...)、できる限り適切な判断ができるように、ご注意願いたいと存じます。
(スマホでご覧の場合、民法の続きへ進むにはこちらをタップして下さい)

カテゴリ

サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

スポンサーリンク

QRコード

QR

お問い合わせ

名前:
メール:
件名:
本文: