不特定物は危険負担にあらず そして種類債権とは

事例3
酒屋のAは、イベント会社のBから「ビール1ダースを午後3時までにパーティー会場に」との配達注文を受けた。しかしAは指定されたパーティー会場への配達の途中に地震に見舞われ転倒し、ビール瓶はすべて割れてしまった。


 いきなり事例から始まりましたが、この事例3の場合「ビール瓶が割れてしまった」という危険はAとBのどちらが負担するのでしょうか?
 正解。これは危険負担の話ではありません。なぜならビールは特定物ではありません。不特定物です。不特定物ということは、世の中に代わりになる同じ物が存在するということです。ですのでAはたとえ午後3時に間に合わなかったとしても、新たなビール1ダースを積み直して届けなければなりません。でないとAは債務不履行に陥ってしまいます。地震というのは天災なのでAに過失はありませんから、指定時間に遅れる事で債務不履行という扱いにはならないでしょう。現実にはAとBがお互い話し合ってどうするのか決めることになると思いますが、何の話し合いも合意もないのであれば、民法の原則として従来の約束を守らなければならないので、Aは指定時間に遅れてでも同じビール1ダースを積み直してパーティー会場に届けなければなりません。それが義務の履行です。

「危険負担とは双務契約の債務者の責めに帰すことができない後発的不能の問題である」

 なんだか小難しい言い回しですが、簡単に申し上げると危険負担とは「契約成立後、債務者に過失がなく契約の履行が不能になってしまった」場合の話です。ですので事例3は危険負担の話にはならないのです。

補足
 尚、不特定物が特定物に変わるのはいつなのか?という問題があります。え?不特定物が特定物に変わるの?はい。実はその規定は民法の条文にあります。

(種類債権)※
民法401条2項
前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。
※種類債権とは一定の種類に属する物の一定量を引き渡すことを目的とする債権。ビール1ダースは正にそれ。不特定物の債権を種類債権と呼ぶ。

 条文を読むだけではよく分からないと思いますが、条文では不特定物が特定物に変わるタイミングとして二つの場合を定めています。
1・債務者が物を給付するのに必要な行為を完了した場合
 この場合、判例が以下の3パターンを認めている。
a、債務者が債権者のもとへ物を届ける場合(これを持参債務という)債権者の現在の住所において物を給付するのに必要な行為を完了した時に不特定物が特定され特定物に変わる。例えば酒屋が注文者の自宅に注文を受けたビール1ダースを「どうぞ」と差し出した時。
b、債権者が債務者のところに物を取りに行く場合(これを取立債務という)履行を準備し給付物を分離してそれを債権者に通知した時に不特定物が特定され特定物に変わる。例えば酒屋が「あの注文者のビール1ダースはこれ」と決めて取り分けて「いつでもどうぞ」とその注文者に連絡した時。
c、債権者の住所地以外の場所に送付する債務の場合(これを送付債務という)送付することが債務者の義務であれば現実の提供時に、債務者の好意で送付する場合は発送時に、不特定物が特定され特定物に変わる。これは正に事例3のケースで、酒屋のAがイベント会社のB指定のパーティー会場にビール1ダースを実際に届けた時にビール1ダースは特定され特定物となる。
2・債権者の同意を得てその給付をすべき物を指定した場合
 例えば酒屋が注文者の同意の上で「あの注文者の分はこの1ダース」と指定した時

 以上が不特定物が特定され特定物に変わる時になります。そして不特定物が特定物に変わると危険負担の話になります。さらに不特定物が特定され特定物に変わった瞬間に物の所有権と危険が買主(債権者)に移転します。

 以上で危険負担に関する記述は終わります。私もそうですが、危険負担は中々最初はとっつきづらいかなと思います。できるだけ丁寧に記述したつもりですが、足りないところがございましたらまた改めて記述したいと存じます

コメント

非公開コメント

サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

スポンサーリンク

QRコード

QR

お問い合わせ

名前:
メール:
件名:
本文:

スポンサーリンク