危険負担 イベント出演の場合

 前回、危険負担についてご説明申し上げましたが、今回もまた別の事例を交えて、危険負担についてもう少し考えていきます。

事例2
スーパーギタリストAはB音楽事務所が主催するロックイベントに出演することを約束した。しかしイベント当日、地震による交通機関の麻痺によりAはイベント会場に行くことができなかった。


 さて、この事例2において、スーパーギタリストAは出演料はもらえるでしょうか?
 事例2はAにもBにも過失がありません。よってこれも危険負担の問題になります。そして危険負担の場合は契約の「目的物」を中心に考えます。では事例2においての契約の目的物とはなんでしょう。それは「Aが出演すること」です。すると「Aが出演すること」に対しての債務者はA債権者はBということになりますね。前回の事例1と同じ結論であれば債権者主義によりAは出演料がもらえることになります。しかし!今回の事例2は前回の事例1とは決定的に異なる部分が存在します。それはどこか?まずはこちらの条文をご覧下さい。

(債権者の危険負担)
民法534条
特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。

 上記の条文は前回の不動産の事例で適用した規定です。しかし実は、今回の事例1にはこの条文は適用されないのです。なぜなら事例2においての契約の目的物である「Aが出演すること」は特定物に関する物権の設定又は移転には当てはまらないからです。「Aが出演すること」は債権であって物権ではありません。事例2においての「Aが出演すること」はあくまで危険負担を考える上での目的物ではあって、民法上の物に対する権利である物権の対象となる「物」ではありません。民法上でいえば「Aが出演すること」は人に対する権利である債権に属します。ここら辺は分けて考えて下さい。「Aが出演すること」はあくまで危険負担を考える上での目的物です。
 じゃあ事例2は結局どうなるの?はい。引っ張ってスイマセン(笑)。事例2で適用される民法の条文はこちらになります。

(債務者の危険負担等)
民法536条
前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。

 ちなみに私はこうやって説明の際に適用する民法の条文を取り上げますが、条文はあくまで参考として捉えておいて頂ければと思います。大事なのは結論とそれにいたる論理、法律構成と民法の考え方です。もちろんその元となるものは民法の条文ですが、条文そのものにはあまり深入りしない方がむしろ民法の学習は進めやすいと私は考えます。条文はある程度民法が理解できてからの方がイイです。これは私自身の経験上の考えです。ですので重要なポイントだけ押さえていきます。
 条文の「当事者双方の責めに帰することができない」というのは事例2に当てはめると「AとB双方に過失がない」ということです。そして最後の部分の「債務者は、反対給付を受ける権利を有しない」というのは「債務者のAはお金をもらう権利を有しない」ということです。反対給付というのは「Aが出演すること」に対するBからの給付、つまり「Aの出演料の給付」のことです。なので「Aはお金をもらう権利を有しない」となるのです。という訳で、もう結論は出ましたね。
 事例2でAは出演料はもらえるのか?
 結論。
 AはBから出演料はもらえません。
 これは民法云々以前に我々の一般的な常識から考えても当たり前の結論ですよね。いくらAがス-パーギタリストといえど当然の結果でしょう。もしAがこの結果に不服があるなら、出演前の交渉の段階でしっかりと細かい条件等の事項を詰めておかなければならなかったというハナシです。

 という訳で今回は以上になります。最後までお読み頂き有難うございます。

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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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