危険負担の超基本

事例
売主Aと買主BはA所有の甲建物の売買契約を締結した。しかし、その引渡し前に甲建物は地震によって倒壊した。


 この事例で、AはBから売買代金をもらえるでしょうか?いやいやそれはムリっしょ?という声が聞こえてきそうですが、この問題が、民法上の危険負担というものの話になります。
 尚、不動産は全て特定物です。全く同じ物は世の中に他に存在しません。ここはまず前提として押さえておいて下さい。
 それでは、危険負担について、いくつかのケースに分けて見ていきましょう。

1 AB間の売買契約の前日に甲建物が倒壊していた場合
 この場合は、どんな理由であろうともその契約は無効です。なぜなら、甲建物が売買契約前にすでに倒壊しているということは、すでに売買不能の物を契約したということになります。売買不能の物の売買契約は不可能なので、そのような契約は法律上、当然に無効になります。無効ということは契約そのものが成立しませんので、売買代金もクソもないということです。よって、AはBから売買代金はもらえません。

2 AB間の売買契約当初から甲建物に欠陥があった場合
 これは、売主Aの瑕疵担保責任の話になります。瑕疵担保責任は無過失責任です。売主Aは過失がなくとも負わなければならない責任です。この場合、契約は一旦有効に成立しているので、Aは売買代金はもらえます。しかし、買主Bは売主Aに対し瑕疵担保責任による損害の賠償の請求(信頼利益※に限る)、場合によっては契約の解除も可能になります(瑕疵担保責任について詳しくはこちらの記事をご参照下さい)。

3 売主Aに過失があって甲建物が全壊(滅失)あるいは損傷(一部が壊れる)した場合
 この場合は、売主Aの債務不履行の問題です。ですので、この場合も契約は一旦有効に成立しているので、Aは売買代金をもらえますが、買主Bは売主Aに対し債務不履行による損害賠償の請求(履行利益※も含む)、場合によっては契約の解除が可能になります。
※信頼利益と履行利益についてはこちらの記事をご参照下さい。
 尚、2と3で契約が解除された場合、結局、Aは受け取った売買代金をBに返還しなければなりません(原状回復義務)。

 さて、ここまで3つのケースを見てきました。しかし、これらは危険負担の話ではありません。それでは、危険負担の話になる場合とはどんなときでしょうか?
 危険負担の話となるのは、次のようなケースです。

契約成立後、売主に過失なく建物が滅失または損傷した
 事例に当てはめるとこうです。
AB間の売買契約成立後、売主Aに過失がなく甲建物が全壊または一部が壊れた

 このようなケースが危険負担の話となります。そう、つまり冒頭の事例がまさににこのケースなのです。
 回りくどくね?
 はい。スイマセン(笑)。しかし、わざわざ遠回りして別のケースをご説明してきたのには、理由がございます。私の経験上、危険負担については、かなりじっくりやらないと頭が混乱してしまうと考えます。ですので、回りくどいかもしれませんが、危険負担の話に入る前の前提として、確認しておくべきことを記した次第なのです。
 という訳で次回、本格的にご説明して参ります。引っ張るような形になってしまいましたが、まずは危険負担を理解するための前提として、今回の内容を頭に入れておいて下さい。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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