損害賠償の請求・過失責任の原則

 契約の相手方が債務の履行の義務を果たさず債務不履行に陥ったとき、損害賠償の請求ができます。しかし!たとえ契約の相手方が債務不履行に陥ったからといって、必ず損害賠償請求ができるという訳ではありません。
 
(債務不履行による損害賠償)
民法415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

 ポイントとなる部分を太字にしました。「債務者に帰すべき事由」とは、債務の履行ができないこと、つまり契約の約束を果たせないことの理由が債務者自身にあるということです。
 上記の条文を見ると「債務者に帰すべき事由」という言葉は後段の文章にだけ係っているように読めますが、判例(裁判の判決)では前半の部分にも「債務者の帰すべき事由」が当然必要だとしています。従いまして債務不履行による損害賠償の請求は債務者の帰すべき事由、つまり債務者に過失(落ち度)があるときにできる、ということになります。
 以上の事を踏まえて、こちらの事例をご覧下さい。

事例
AはBの持っているギターが欲しくなり、Bに「そのギターを3万円で売ってくれないか?」と言った。するとBは承諾し、次の土曜日にAはお金を支払いBはギターを弦を張り直して引き渡すことになった。しかし約束の前日の金曜日、Bは空き巣被害に遭いギターを盗まれてしまった。尚、Bの戸締りに不備はなかった。


 この事例の場合、AはBに、Bの債務不履行による損害賠償請求ができるでしょうか?結論は、AはBに損害賠償請求できません。なぜなら、Bが債務不履行に陥ったことについてBの過失(落ち度)がないからです。Bは空き巣被害にあっただけのただの被害者です。従いまして、Bの無過失によりAの損害賠償請求権は成立しません。これが過失責任の原則です。
 債務不履行による損害賠償請求権が成立する流れをまとめるとこのようになります。

契約の成立→契約義務の発生→債務者の過失→債務者の契約義務不履行(債務不履行)→損害の発生→損害賠償請求権の発生

債務不履行の三つの態様

一般的に債務不履行には三つの態様があるとされています。

・履行遅滞
履行できるはずなのに約束の期日に後れること
事例で例えると、Bのミスで土曜日にギターを用意できなくなってしまった場合
・履行不能
契約成立後に契約義務の履行が不可能になること
事例で例えると、Bのミスでギターを折ってしまった場合
・不完全履行
契約義務(債務の履行)は果たしたが、目的物に欠陥があった
事例で例えると、Bが引き渡したギターは弦が張っていなかった

 これら三つの債務不履行は今後も出てきますので、覚えておいて頂ければと存じます。

補足

 今回の事例で、Bに空き巣被害がなければ、約束通りAとBは次の土曜日に互いに債務を履行をしなければなりません。しかし、約束の土曜日になってAがお金を払おうとしないのに「ギターをよこせ」と言ってきたらBはどうすればいいでしょう?この場合Bは「お前が金出すまではギターは渡さん!」と言えます。これを同時履行の抗弁権といいます。これは互いに債務を負う双務契約において非常に重要な権利ですので是非覚えておいて下さい。

 という訳で、今回も最後までお読み頂き有難うございます。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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