その物の所有権は誰?占有の超基本

 動産の所有権(物権)は引渡しによって移転し、対抗要件を備えます。その根拠となる条文はこちらになります。

(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
民法178条
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

 動産の所有権(物権)自体は当事者の意思表示で移転しますが、引渡しがなければ、第三者に対する対抗要件を備えたことにはなりません。引渡しを経て法律上保護された、いわば完成された所有権になります。そして、この所有権を本権といいます。さらに、この本権以外にも物に対する権利が存在します。それは占有権です。
 まずはこちらの事例をご覧下さい。

事例
Aはギターを二本持っている。一本のギブソンのギターはメインとして使い、もう一本のYAMAHAのギターはサブとして使っている。ある日、Bから「明日ライブがあるのにギターが壊れてしまった。俺はこの一本しかギターを持っていない。頼む。Aのギターを一本貸してくれないか?」と頼まれ、Aは「それだったら仕方ないな」と思い二つ返事で、サブで使っているYAMAHAのギターをBに貸した。ところが、Bはライブを終えても一向にそのギターをAに返さない。なんとBは、Cにそのギターを売っぱらって引き渡してしまった。実は、Bはあるキャバ嬢にぞっこんで、その売買代金を全てキャバクラ代にあてたのだった。


 この事例でまず最初にわかるのが、Bがクズ野郎ということです(笑)。ですがそのことはさておいて...この事例で問題なのは、YAMAHAのギターの所有権がAにあるのかCにあるのか、です。
 さて、ここで民法にはこのような条文があります。

(即時取得)
民法192条
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

 上記の条文中に、占有という言葉が出てきましたが、そもそも占有とは一体何なのでしょうか?

占有とは
 自己のためにする意思で物を所持することです。自己のためにする意思とは、「自分の物だと思って」ということです。所持とは、物を事実上支配する状態のことです。

 以上のことを踏まえて、再び事例について考えていきます。
 CはBからYAMAHAのギターをお金を払って買って手に入れている訳ですから、普通に考えて、間違いなく自分の物だと思ってYAMAHAのギターを所持しているはずです。ということは、法律上、CはYAMAHAのギターを占有していることになります。これが占有権です。つまりこの時点で、Cは少なくとも、YAMAHAのギターの占有権を取得していることになります(いまひとつ占有権がよくわからないという方は、ざっくり占有権は本権(所有権)未満の権利と覚えて下さい)。
 
結局YAMAHAのギターの所有権は?

 ここまでの説明で、CはYAMAHAのギターの占有権を取得しているという事が分かりました。しかし、占有権を取得しているということは、逆に言うと、本権(所有権)は取得していないということになります。CはYAMAHAのギターの所有権を取得できないのでしょうか?
 結論。Cは三つの要件を満たすと、占有権が本権に昇格し、YAMAHAのギターの所有権を取得します。
 ということで次回、その要件とこの事例についての問題を、さらに詳しく解説して参ります。なんだか引っぱってしまいましてスイマセン(笑) 。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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