善意の第三者の登記・過失の有無 強迫無効後の第三者

 今回は、以前に取り上げた詐欺・強迫のまとめです。話が進んだと思ったらまた戻るようで申し訳ないですが、民法の学習はペンキ塗りです。繰り返し繰り返し重ねてペンキを塗るように理解を深めるものです。
 それでは事例とともに、理解を深めていきます。

事例1
AはBに自己所有の土地を売却しその旨の登記をした。さらにBはCにその土地を転売した。しかしその後、AB間の売買契約がBの詐欺によるものだったということがわかり、AはAB間の売買契約を取り消した。尚、CはAB間の売買契約がBの詐欺によるものであったということにつき善意である。

 さて、この事例で、土地の所有権を取得できるのは誰でしょうか?
 これは基本中の基本ですよね。詐欺による取消しは善意の第三者に対抗できないので、この事例の場合、善意の第三者であるCが土地の所有権を取得し、Aは泣き寝入りです。

そういえばCは登記を備える必要はないの?
~詐欺における善意の第三者は登記を備える必要があるか~

 これ、気になるところですよね。
「この場合、問われるのはCが善意か悪意かであり、登記の有無は関係ない。したがって、Cは登記を備えなくても土地を取得できる」
というのが通説的な見解です。学説は諸説ありますが、当サイトではこれ以上の深入りは致しません。※
 
そういえばCの過失の有無は問われないの?
~詐欺における善意の第三者は無過失を必要とするか~

 これも気になるところですよね。そしてこれにも学説が諸説あります。一応有力説としては
「善意であれば無過失(落ち度なし・ミスなし)までは要求されない」
とのことです。ただ、重過失(重大な落ち度・大きいミス)があった場合は保護されないでしょう。この問題に関しても当サイトでこれ以上の深入りは致しません。※

※上記二点の問題について、これ以上の深入りは当サイトの主旨から外れてしまいますので、さらに詳しく知りたい方は専門書をお読み頂ければと存じます。

事例2
Aは自己所有の土地をBに売却した。さらにBはCにその土地を転売し、Cは登記を備えた。しかしその後、AB間の売買契約がBの強迫によるものだったということが発覚した。尚、CはAB間の売買契約がBの強迫によるものだったということにつき善意である。


 続いては強迫の事例です。それではこの事例2で、土地の所有権を取得することができるのは誰なのでしょうか?
 正解はAです。いくらCが善意だろうと登記を備えようと、AB間の売買契約はBの強迫により問答無用で無効なので、BC間の売買契約も成り立たず、その結果、Aが保護されます。
 では続いて、この場合はいかがでしょうか。
 
事例3
Aは自己所有の土地をBに売却した。しかし、AB間の売買契約はBの強迫によるもので無効になった。それからAは登記も戻さずその土地をしばらくほったらかしていたが、その間に、Bは悪意のCにその土地を売却し、Cは登記を備えた。


 これは強迫後の話ですね。ポイントは、強迫によりAB間の売買契約が無効になった後に第三者が現れているという点です。
 さて、この事例3で、果たして土地の所有権を取得するのは一体誰でしょうか?
 実は、この事例3で適用する民法は、強迫による無効の規定ではありません。
 え?どゆこと?
 はい。今からご説明いたします。
 まず結論から先に申しますと、事例3で土地の所有権を取得するのはCです。
 マジで?
 マジです。なぜなら事例3は、強迫により無効になった後に第三者が現れているからです。
 この事例3で適用する民法の条文はこちらになります。

(不動産に関する物件の変動の対抗要件)
民法177条
不動産に関する物件の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律に定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 前回の記事「不動産登記は早い者勝ち?」でも解説いたしましたが、この条文が適用されるということは、もはや強迫云々の話ではなく、単純に登記したモン勝ち!ということです。従いまして、事例3では、登記を備えたCが土地の所有権を取得します。尚、この事例3では、AB間の売買契約が詐欺だろうが強迫だろうが、第三者のCが善意だろうが悪意だろうが、結論は一緒です。つまり、Aには気の毒ですが、ボサッとしていたAが悪いのです。理屈は、以前取り上げた「取消後の詐欺」と同じですので、そちらも併せてお読み頂ければと存じます。

 以上、詐欺・強迫のまとめでした。今回も最後までお読み頂き有難うございます。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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