取消後の詐欺

 詐欺による契約は取り消せます。しかし、善意の第三者には対抗できません。では、取り消した後に第三者が登場した場合は、どうなるのでしょうか?

そもそも契約を取り消すとどうなるのか

 契約を取り消すと、その契約はゼロに戻ります。つまり、売買契約を取り消した場合は、売った側は相手にお金を返し、買った側は買った物を相手に返す、という事になります。契約する前の元の状態に戻るのです。それはつまり、その契約はなかった事になるのです。このように遡って効力を生ずる効果を遡及効といいます。遡求とは、遡る(さかのぼる)という意味です。
 以上、まとめますと、取消しによる効果は取消しの遡及効により遡って初めから無かった事になる、ということです。
 取消しについては、これで大丈夫かと思います。それでは以上の事をふまえて、本題の「取消後の詐欺」について、ご説明して参ります。

取消後に悪意の第三者現る

 詐欺による取消しは、善意の第三者(事情を知らない第三者)に対抗できません。冒頭に申し上げたとおりです。ところで、実はこの規定、取り消す前に第三者が現れた場合の話なんです。という事は、次のような事例の場合は、一体どうなるのでしょう。

事例
AはBに土地を売却しその旨の登記をした。しかし、この売買契約はBの詐欺によるもので、Aはこの売買契約を取り消した。その後、Bはその土地を悪意のCに売却しその旨の登記をした。


 上記の事例では、、取消後に第三者のCが現れました。しかも、Cは悪意です。悪意とは、事情を知っているという意味です。では、この事情を知っている悪意のCは、果たして土地の所有権を取得できるのでしょうか?
 結論、悪意のCは土地の所有権を取得できます。
 え?悪意なのに?

 はい。そもそも取消後においては、第三者の善意・悪意は問われません。

取消後はさっさとしろ!

 先の事例の場合、民法はこう考えます。
「取消後にAがさっさと登記をしなかったのが悪い」
つまり、悪意のCよりも取り消してからボサっとしていたAがの方が悪いと、民法は結論付けるのです。これは、取引の安全性を重視する民法の考えからでしょう。
 ちなみに、この結論は強迫の場合でも一緒です。
 マジで?
 マジです。それだけ取り消してからボサっとしていたAには厳しいんです。ボヤボヤしていたAにも落ち度があるといはいえ、Aにとってはちょっと酷ですが、基本的に民法は、トロイ奴に冷たい傾向にあります。厳しい言い方になるかもしれませんが、これも自立した契約社会においての自己責任なのでしょう。

補足

 さて、ここで賢い方は、こんな疑問を抱いたのではないでしょうか。
 取消しの効果は遡及するからAが取り消した時点でBからCに土地を売ること自体できないことなんじゃないの?
 仰る通りです。正しい指摘です。取り消した時点で契約は遡って無かったことになりますから、本来、AB間の売買契約があった上で成り立つBC間の売買契約と権利移動はありえないんです。しかし、民法は「取引の安全性重視だ!」と強引にねじ伏せます。そして裁判官もそれに従います。ということなので、ここは敢えてその指摘はシカトして下さい。この強引な理屈を受け入れて下さい。でないと試験に受かりません(笑)。学説は様々あるかと思いますが、当サイトではこれ以上の深い入りは致しません。
. 私も民法に負けず強引にまとめますが、とりあえず民法は「取引の安全性を重視する」ことと「トロイ奴に冷たい」ということを、頭に入れておいて頂ければと存じます。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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