心裡留保

 今回のテーマは心裡留保です。「しんりりゅうほ」と読みます。字は「心理」ではなく「心裡」になります。字面だけ見るとやけに難しそうに思えますが、そんなに難しい話ではございませんのでご安心下さい。

 当サイトで私は以前、この世の中は契約社会だ、というような事を申し上げました。それは、口約束だけでも成立する諾成契約の存在等が根拠となっているのですが、それではこのような契約は成立するでしょうか?

この俺が付けてる本物のロレックスの時計、千円で売ってやるよ!

 結論から申しますと、この契約は有効に成立します。これが心裡留保です。ちょっと驚きですよね。結論だけだと意味がよくわからないと思いますので、これからその内容・結論に至るまでの論理を見て参ります。
 先ほど挙げた例で、売主は果たして本気でロレックスの時計を千円で売ろうと思ったでしょうか?ひょっとしたら本気の可能性もなくはないですが、冗談で言っていると考えるのが通常だと思います。しかし、その冗談を相手が信じてしまっていたらどうでしょう?ロレックスの時計の価値というものをよくわかっていない人であれば、信じてしまうことは十分ありえますよね。すると相手は困りますよね。それは、取引の安全性を損なうと、民法は考えます。

(心裡留保)
民法93条
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

「真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない」というところがつまり、冗談で言った事も有効に成立してしまいますよ、という意味になります。民法先生の前では、うかつに冗談も言えませんね(笑)。民法には「この世の中は契約社会で、基本的には自己責任」という考えがベースにあると思っておいて下さい。ですので、我々にとってみれば、民法には取引の安全性を重視して冷たく感じる部分があるのです。
 また、民法93条にはただし書きがあります。

民法93条但し書き
ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

 これはどういう事かと申しますと、「冗談を言われた相手がそれが冗談だと分かっていればその契約は無効ですよ」という意味です。先のロレックスの例に当てはめて考えると、「この本物のロレックスの時計、千円で売ってやるよ!」と言われた相手が、それが冗談だと分かっていれば、その契約は無効になり、有効に成立しません。錯誤のときもそうでしたが、この「相手がそれを知っていたら」というところは、民法では非常によく出てきます。注意して頂きたいと存じます。
 また、先の条文では「知ることができたとき」という文言がありました。これは「たとえ相手が、それが冗談だと知らなかったとしても、ちょっと考えればわかるようなことは、知らなかったでは済みませんよ」という意味です。先述のロレックスの例に当てはめると、相手がロレックスの時計の価値をわかっていて「待てよ?本物のロレックスの時計を千円で売るなんておかしいよな?」と、ちょっと考えれば十分わかることであれば、その冗談で言った事は無効になり、契約は成立しません。
 以上が心裡留保についてのご説明になります。簡単にまとめるとこうなります。
「冗談で言った事でも有効に契約は成立してしまうが相手がそれが冗談だとわかるときは無効になる」
 心裡留保、おわかりになって頂けましたでしょうか。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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