「時」と「とき」・「無効」と「取消し」

 前回、原則と例外と要件についてご説明致しました。今回はそれの延長のようなお話になりますが、当サイトでもすでに登場した「時」と「とき」、そして「無効」と「取消し」について、それらの法律ならではの言葉の使い方とその意味について、簡単に解説して参ります。

「時」と「とき」

 法学部出身の方などにとってはとても基本的な事になると思いますが、そうでない方にとっては馴染みのない、法律の世界ならではの言葉の使い分けというものがございます。そのひとつが「時」と「とき」です。
 実はこの「時」と「とき」は、法律の世界では使い分けされています。どのように使い分けているかといいますと、まず「時」ですが、これは「時点」という意味です。バッターが構えた「時」、ピッチャーがボールを投げた「時」というような感じです。それに対して「とき」「場合」あるいは「シチュエーション」というような意味です。ツーアウト満塁の「とき」、ツーストライクスリーボールの「とき」というような感じです。野球がわからない方もいらっしゃると思いますので、恋愛に例えてみましょう。手を繋いだ「時」、映画館デートに行った「とき」というような感じです(笑)。
 おわかりになりましたでしょうか。この「時」と「とき」の使い分けを知った上で法律の文章を読むと、法解釈が今までと少し違ってくるかもしれません。ちなみに、冒頭に申し上げたとおり、この「時」と「とき」は、すでに当サイトで何度も登場しましたが、実は使い分けております。今一度ここで、過去の記事を読み返して頂ければ、おわかりになって頂けるかと思います(笑)。

「無効」と「取消し」

 無効という言葉も、すでに当サイトで何度も登場しました。無効という言葉自体の問題も特にないと思います。では、無効と取消しの違いは、おわかりになりますでしょうか。法律の世界では、無効と取消しは、区別されて使われています。それではひとつひとつ、ご説明して参ります。

 まず無効ですが、民法上の無効とは「始めから成立すらしていない」という意味です。ですので、その契約は無効だといったら、そもそもその契約は、始めから何の形も成していない、という事です。繰り返しますが、無効のものは、そもそも成立すらしていませんので、始めから何の形も成していないんです。ですので、無効の契約というのは、始めから成り立っていない契約なのです。無効のものは、始めから終わりまでゼロです。まずここをおさえておいて下さい。

 一方、取消し「一度有効になったものをナシにする」という意味です。この「一度有効になった」というところがポイントです。無効の場合は、始めからそもそも成立すらしていないのですが、取消しの場合は、一度有効になったものが、何らかの理由により取り消されてゼロになるだけです。取り消されて初めてナシになるということは、取り消されない限りは有効に成立します。

無効についてさらに詳しく

 ここまでのご説明だけでも、おわかりになるかもしれませんが、念のため、もう少し噛み砕いてご説明いたします。
 無効な契約は、最初から成り立っていません。成り立っているように見えるだけで、実態のない契約です(となると錯誤の無効の主張というのは少しおかしな話で、そもそも無効なモノなら主張しようがしまいが無効なはず。本来の無効の意味としては。この辺りの細かい話は様々な学説がありますが、それについてはこちらでは割愛します)。つまり、無効の契約というのは「契約というカゴの中に何も入っていない契約」という事になります。カラッぽの契約という事です。具体例を挙げると、強迫で結ばされた契約が、まさにこれです。強迫によって強引に結ばされた契約は無効な契約です。そんな契約はそもそも法的に成立しません。もし、そうした形で結んだ契約でモメているのなら、そもそもその契約は成立すらしていませんのでご注意下さい。 
 繰り返しますが、無効の契約は「契約というカゴの中に何も入っていない」というイメージで捉えておいて下さい。

取消しについてさらに詳しく

 取り消せる契約というのは、取り消されるまでは有効に成立しています。取り消さなければ、普通に契約として存続します。つまり「契約というカゴの中に一応モノが入っている契約」になります。具体例を挙げると、詐欺による契約がこれになります。詐欺で結ばされた契約は、実は取り消すまでは有効な契約なんです。なぜ世の中から詐欺がなくならないのか、これでわかりますよね。実は民法上でそのようになっているのです。
 あと、細かい話ですが、取消しと書いた場合は名詞で、取り消しと書いた場合は動詞になります。念のため申し上げておきます。
 
 無効と取消しの違い、おわかりになりましたでしょうか。無効と取消しという言葉は、今後も沢山出てくると思いますので、今回の話を頭に入れておいて頂ければと存じます。
 他にも、法律ならではの言葉の使い分けは色々ございますが、今回はここで締めます。今後もこのような法律用語解説は、必要となり次第行っていきます。
 尚、「強迫」について詳しくはこちらの記事を、「詐欺」について詳しくはこちらの記事をご覧下さい。
 という訳で、今回も最後までお読み頂き有難うございます。また次回も宜しくお願い致します。
(スマホでご覧の場合、次の記事へ進むには画面下左の前の記事をタップして下さい)

コメント

非公開コメント

サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

スポンサーリンク

QRコード

QR

お問い合わせ

名前:
メール:
件名:
本文:

スポンサーリンク