民法改正について

民法改正について

 平成29年5月26日、改正民法が参院本会議で可決、成立しました。当ブログでも民法を扱っているため、この話題には触れずにはいられないだろうということで(というふうに勝手に思い(笑))報道で取り上げられている主な部分について僭越ながら私なりの解説をしていきたいと思います。
 今回の民法の改正項目は役200に及びます。全ての解説はお偉い学者先生や弁護士先生方にお任せするとして、ここでは報道で取り上げられている部分を扱います。報道で取り上げられている部分は主に下記の通りです。

・契約関係
・時効関係
・敷金関係

 上から順に見ていきます。まずは契約関係。契約関係の民法改正の目玉は「約款」に関する規定の新設でしょうか。約款と聞いてもピンと来ない方もいらっしゃると思います。約款とは契約の条項の事です。契約内容の細かい部分と言えばいいでしょうか。例えば保険契約で言えば保険金の支払い条件や額等が「約款」に記されています(約款には不特定多数の契約者に対して共通する事項を定めた普通取引約款と、個別に加筆、変更、修正、削除された条項を設けた特別約款(特別条項)があります)。約款、お分かりになりますよね。そしてこの「約款」に関する規定が今までの民法には存在しませんでした。今回の民法改正で約款に関する規定が新設されるのです。
 え?今までそんな重要そうな規定がなかったの?
 はい。そうです。民法には約款に関する規定は存在しませんでした。というのもそもそも民法の契約に関する規定の多くが明治29年の民法制定時から変わっていないということが一点と、もう一点は民法には基本的に契約自由の原則があります。つまり契約に関しては自由なのです。基本的には。なぜならそうしておかないと世の中の取引というものが円滑に運んでいかない、ひいては経済が発展していかないからです。ですので細かい部分に関してましては自由かもしくは個別法というもので別途法律を作って対応しています。
 個別法って?
 個別法とは、一般法に対して個別法なのです。
 はぁ?
 ご説明します。民法は法律です。そして民法は一般法という法律になります。民法は一般法で、包括的にベーシックな部分を定めています。例えば不動産に関することも民法の中に規定がございます。しかしそれだけでは不動産という専門的な分野の規定は当然足りませんよね。ですので個別法として「借地借家法」や「建築基準法」や「宅地建物取引業法」といった法律で補充、強化しています。※
※不動産に関する法律は他にもありますがここでは省きます。
 そして一般法と個別法の力関係はこうです。

一般法<個別法

 つまり個別法は一般法に優ります。これを家庭関係に例えるとこんな感じでしょうか?

夫<妻

 話が逸れましたね(笑)。すいません。
 話を一般法と個別法に戻します。先の例の不動産ですと、借地借家法(個別法)は民法(一般法)に優先して適用されます。不動産は専門性の高い分野ですが、我々の生活からは切り離せないものです。ほとんどの人が買うか借りるかして家に住むでしょう?ですのでどうしても民法だけだと不動産業者や家主に有利になりがちという実態があったのです。そこでそんな実態を改善すべく個別法を制定することによって現在は契約当事者間の公平さを保っている訳です(もちろん現実にはそれでもまだ様々な問題がございます。例えば家主側からの家賃滞納者の退去問題等。その辺の詳しい事はまた別途機会を改めてご説明申し上げたいと存じます)。
 ここで話を民法改正の約款に関する規定に戻します。先ほどまでの話を踏まえた上で再び申しますと、要は民法という一般法レベルで約款に関する規定を設け、もう少し契約関係のトラブルを防ぎましょう、というような感じの話です。その背景にはインターネット取引の普及や高齢化の問題があります。おそらくそういった時代の変化に個別法の制定だけでは対応が追っつかなくなったのではないかと思います。

 という訳で少し長くなってしまったので、一旦ここで締めさせて頂きます。次回は契約関係の改正部分の具体的な内容を私なりに触れていきたいと思います。
今回も最後までお読み頂きありがとうございます。
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