抵当権の処分 転抵当

 抵当権は財産権の1つです。したがって、これを処分することができます。
 抵当権の処分には、次の3つがあります。

・転抵当
・抵当権の順位譲渡、順位放棄
・抵当権の譲渡、放棄

 それでは、今回は「転抵当」について解説して参ります。

転抵当とは

 これは、抵当権自体を担保にすることです。どんなケースで転抵当が利用されるかというと、金に困った抵当権者がその抵当権そのものを担保として金を借りるような場合です。この場合、その抵当権を担保として抵当権者にお金を貸した者は「転抵当権者」となります。
 それでは具体的な事例とともに見てみましょう。

事例
BはCに融資し、その担保としてD所有の不動産に抵当権を設定した。その後、金に困ったBは、その抵当権を担保にしてAから融資を受けた。


 まずは事例の状況を確認します。
 抵当権者はBです。
 CはD所有の不動産を担保にBからお金を借りている債務者です。Dは物上保証人です。
 そして、抵当権者Bにその抵当権を担保としてお金を貸しているAが転抵当権者です。

  転抵当権者A
a債権⇨↓
  抵当権権者B
b債権⇨↓  ↘︎⇦抵当権(転抵当の担保になっている)
  債務者C 物上保証人D

 物上保証人もいるので複雑に感じてしまうかもしれませんが、まずは各者の立場と関係性を押さえて下さい。
 さて、ではこのケースで、転抵当権者Aは、いつ抵当権を実行できるのでしょうか?
 転抵当権者Aは、a債権とb債権の両方の弁済期が到来すれば、抵当権を実行することができます。ポイントはAのBに対する債権の弁済期の到来だけではダメなことです。AのBに対するa債権と、BのCに対するb債権の両方の債権の弁済期が到来して初めて、転抵当権者Aは抵当権を実行できるのです。尚、転抵当権者Aが抵当権を実行した場合の配当金ですが、まず転抵当権者Aが取り、余りがあれば抵当権者B、さらに余れば物上保証人D、となります。

抵当権Bは抵当権を実行できないのか?
 これについては、b債権の額がa債権の額を上回る場合のみ、原抵当権(Bの抵当権)の実行が認められます(判例)。なぜb債権の額がa債権の額を上回る場合だけなのかというと、原抵当権(Bの抵当権)を実行しても、配当金はまず転抵当権者Aから取ります。それで余りがあれば抵当権者Bが取ります。ですので、b債権の額がa債権の額を上回らなければ、Bが余りの配当金を受ける可能性はナイのです。Bが余りの配当金を受ける可能性がナイ場合にBが抵当権を実行しても、Bにとって何の意味もナイですよね。したがって、b債権の額がa債権の額を上回る場合のみ、原抵当権(Bの抵当権)の実行が認められるのです。

補足・債務者Cは誰に弁済すればいいのか?

 実は、転抵当は当事者同士の合意だけで効力が発生します。つまり、事例1の場合、AB間の合意だけでイイわけです。ですので、AB間の転抵当について債務者Cが知らないということもありえます。そこで民法は、債権譲渡の対抗要件の規定に従い、Bが債務者Cに(AB間の転抵当について)通知するか、債務者Cが(AB間の転抵当について)承諾しなければ、転抵当を債務者Cや物上保証人Dに対抗できないとしています。ポイントは、通知すべきはあくまで債務者Cで物上保証人Dではないということです。物上保証人Dに通知しても、それは意味を成しません。なぜなら、あくまで債務を弁済すべきなのは債務者Cだからです。
 尚、転抵当の第三者に対する対抗要件は登記です。しかし、AB間の転抵当について(第三者ではない)債務者Cに対する対抗要件は、前述の債権譲渡の対抗要件の規定に従ったもの(通知・承諾)になるのです。ここはお気をつけ下さい。
 さて、前置きが長くなりましたが、では債務者Cは誰に弁済すればいいのでしょうか?
 債務者Cが弁済すべき相手は転抵当権者Aです。AB間の転抵当について債務者Cに対する対抗要件を備えた後は、債務者Cは転抵当権者Aに弁済しなければ免責されません。転抵当権者Aの承諾を得れば抵当権者Bに弁済してもいいのですが、逆に言えば、転抵当権者Aの承諾を得ずにした抵当権者Bへの弁済は、転抵当権者Aに対抗することができません。転抵当権者Aに対抗することができないということは、債務者Cは二重払いを強いられることになってしまいかねないということです。
 尚、対抗要件を備える前であれば、抵当権者Bに対する弁済でも債務者Cは免責されます。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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