物上代位の要件 抵当権者自身による差押え

 抵当権者が物上代位により、抵当権者として他の債権者に優先して弁済を受けるためには、抵当権者自身で差し押さえなければなりません。
 ではなぜ、抵当権者自身による差押えが必要なのでしょうか?次の事例とともに見て参ります。

事例
Bは自己所有の甲建物をCに賃貸し引き渡した。その後、BはAから500万円の融資を受け、甲建物に抵当権を設定した。その後、Bは債務不履行に陥った。そしてAは抵当権を実行した。


 さて、この事例で、抵当権者Aは物上代位により甲不動産の家賃を差し押さえることができます。ただし、Aが抵当権者として、他の債権者に優先して差し押さえた家賃から弁済を受けるためには、抵当権者A自身による差押えが必須になります。その理由は、甲不動産の賃借人Cの立場に立って考えるとよくわかります。

 ところで、甲不動産の賃借人Cは、甲不動産のオーナーBが差し押さえられるような状況にあることを知っているでしょうか?通常、オーナーのそのような状況を、賃借人は知らないと思います。というより、知らないのが普通です。それこそ、抵当権が設定されていることすら知らなかったりするでしょう。例えば、アパートの一室を借りて住んでいる学生が、大家が銀行からお金を借りてアパートに抵当権が設定されて、その後に大家が債務不履行に陥ってその抵当権が実行された、なんて状況知らないのが普通ですよね。ということはどういうことかといいますと、抵当権者Aが抵当権を実行したとしても、甲不動産の賃借人Cは、何も知らないままそれまでどおりBに家賃を支払い続けるはずです。そうなると、抵当権者Aが物上代位により甲不動産の家賃を差し押さえた場合、抵当権者A自身が差し押さえてくれないと、Cは本当に家賃を支払うべき相手を知ることができないまま、Bに家賃を支払い続けてしまうことになるので、Cには家賃の二重払いの危険性が生じてしまいます。ということなので、Cを保護する必要があります。
 従いまして、抵当権者Aが物上代位により優先的に甲不動産の家賃から弁済を受けるためには、抵当権者A自身による差押えが必要なのです。抵当権者A自身が差し押さえれば、Cは誰に家賃を支払うべきかを間違えずに済み、家賃の二重払いの危険を回避することができます。
 尚、事例1の、Cのような立場にある者を第三債務者といいます。つまり、抵当権の物上代位の要件「抵当権者自身による差押え」とは、第三債務者の保護という理由によるものということです。
 ちなみに、実際に抵当権者Aが物上代位により甲不動産の家賃を差し押さえると、差押命令が第三債務者Cにも送達され、それによりCは誰に家賃を支払うべきかを知ることができます。要するに、抵当権者Aによる差押えについてのお知らせが、裁判所から第三債務者Cにも送られるので、それによりCは事情を知って、本当に家賃を払うべき相手が誰かを知ることができるのです。従いまして、第三債務者Cは、裁判所からの送達前(知らせが届くまで)はBに家賃を支払い、送達後はAに支払えば、それでCは免責されます(法的な責任は果たしたということ)。

補足

 抵当権者がしっかり物上代位の要件を満たして差し押さえることができれば、他の債権者(一般債権者)に優先して、差し押さえた価値変形物から債権を回収できます。しかも、他の債権者の後に差し押さえたとしてもです。これは保険金の例だとわかりやすいので、次の事例でご説明いたします。

BはAから融資を受け、自己所有の甲不動産に抵当権を設定した。その後、甲不動産が火災により滅失した。 尚、サラ金業者CもBにお金を貸し付けていた。

 このケースで、サラ金業者Cが一番手で火災保険金を差し押さえたとします。しかし、抵当権者Aは物上代位の要件「払渡しまたは引渡し前の差押え」「抵当権者自身による差押え」の要件をしっかり満たすと、抵当権者Aが後から二番手でBの火災保険金を差し押さえても、抵当権者Aはその火災保険金から優先的に弁済を受けることができます。これは、抵当権の強さを現していると言えるでしょう。もっとも、サラ金業者Cからするとハタ迷惑な話なんですけどね。まあ、それだけ抵当権という担保物権は強力な権利ということです。

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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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