【連帯債務での債権譲渡による混同と更改】連帯債務者の死亡による連帯債務の相続の問題をわかりやすく解説!

【連帯債務での債権譲渡による混同と更改】連帯債務者の死亡による連帯債務の相続の問題をわかりやすく解説!

▼この記事でわかること
連帯債務の債権譲渡
債権譲渡による混同
債権譲渡による更改
連帯債務者の1人が死亡(連帯債務の相続)
債権者は連帯債務者の相続人に対していくら請求できるのか
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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債権譲渡による混同と更改


 連帯債務者の1人が、債権者から債権譲渡を受けた場合、その連帯債務はどうなるのでしょうか?
(債権譲渡についての詳しい解説は【債権譲渡の超基本】債権を譲ると?実際に債権譲渡が利用されるケースとは?初学者にもわかりやすく解説!をご覧ください)。

事例1
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。各自の負担割合は均一である。その後、BはAから当該貸付金債権の譲渡を受けた。


 この事例1では、連帯債務者の1人のBが債権者Aから、その連帯債務についての債権を譲渡されました。
 つまり、債権譲渡により連帯債務者の1人が債権者になってしまった、というケースです。


混同の場合


 事例1で、債権者Aから連帯債務者Bに債権譲渡されたことにより、AB間の債権債務関係は消滅します。
 なぜなら、債権者と債務者が同一人物となり、その債権債務関係の意味がなくなるからです。
 これを混同といいます。
 つまり、事例1で起こる結果を民法的に言えば、AB間の債権債務関係はABの債権譲渡により混同が生じて消滅する、となります。

 そして民法440条では、混同の絶対効が規定されています。
 これは何を意味しているかといいますと、AB間の債権譲渡により混同が生じてAB間の債権債務関係が消滅すると同時に、それは連帯債務者Bが債権者Aに対して150万円全額を1人で弁済したのと同じことになります。
 ということは必然的に、連帯債務者Bは同じく連帯債務者のC・Dに対する求償権を取得することになります。
(連帯債務の相殺についての詳しい解説は「【連帯債務の相殺と求償】相殺を援用する&しないとどうなる?/無資力者がいるときの求償問題など様々なケースと注意点をわかりやすく解説!」をご覧ください)。

 したがいまして、AB間の債権譲渡前と債権譲渡後の当事者の関係を図で示すと、次のようになります。

(債権譲渡前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(債権譲渡後)
B「50万円ずつ払え」→C
          ↘︎
           D

 ここでひとつ注意点があります。
ここがポイント女性   
 債権譲渡後にBがC・Dに対して50万円ずつ請求する権利は、あくまで求償権です。
 AB間の債権譲渡により、AからBに連帯債務の債権者が移ったわけではありません。
 AB間の債権譲渡により混同が生じて、混同の絶対効によりBが求償権を得たのです。 
 だからこそ、債権譲渡後は「150万円払え」ではなく「50万円ずつ払え」なのです。
 細かい話ではありますが、この点はくれぐれも間違えないようにご注意ください。


更改の場合


 では、続いては、連帯債務者の1人が債権者と契約更改をした場合について解説します。

事例2
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。各自の負担割合は均一である。その後、BはAと債務の契約更改をした。


 この事例2では、連帯債務者の1人のBが、Aとの間で債務の契約更改をしました。
 さて、ではAB間で債務の契約更改が行われたことにより、AC間・AD間の連帯債務はどうなるのでしょうか?
 まずはその前に、更改とは何なのか?
 ご説明します。

 更改とは、既存の債務を消滅させ、別の新しい債務を成立させる契約です。
 もっとわかりやすく言うと、元々あった契約を新しい契約で上書きすることです。
 ポイントは、契約更改は上書きなので、元々の契約は消滅します。
 ですので、当然に債務も、元々の債務に新しい債務が上書きされ、元々の債務は消滅します。
 したがって「更新」ではなく「更改」なのです。

 それでは話を事例2に戻します。
 AB間で債務の契約更改が行われたことにより、AC間・AD間の連帯債務はどうなるのでしょうか?

 結論。
 AB間で契約更改が行われたことにより、AC間・AD間の連帯債務は消滅します。
 民法438条では、連帯債務者の1人と債権者の間に更改があったときには、連帯債務についての債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅すると規定されています(更改の絶対効)。

 そして、AB間での債務の更改は、連帯債務者Bによる債務の全額弁済と同じ効果をもたらします。
 つまり、連帯債務者Bは債権者Aと債務の契約更改をしたことにより、150万円全額をB1人で弁済したのと同じ意味になるのです。
 したがって、AB間の契約更改により、AとBCDとの間の150万円の連帯債務は消滅し、BはC・Dに対して「50万円ずつ払え」という求償権を得ます。

(更改前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(更改後)
B「50万円ずつ払え」→C
          ↘︎
           D


連帯債務者の1人が死亡した場合


 連帯債務において、連帯債務者の1人が死亡した場合、どうなるのでしょうか?

事例3
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。その後、Dが死亡した。Dの相続人は、Dの子供E・Fである。


 このような場合、気になるのが、EとFがDを相続して、連帯債務がどうなるのか?ということです。

          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          (死亡)
        相続↓↘相続
          E  F
     Dの連帯債務はどうなる?

 この問題については、債権者Aの立場から考えるとわかりやすいので、そのような形で解説して参ります。


債権者Aは相続人EFに対してはいくら請求できるのか


 債権者Aとして一番気になるのが、EとFに対していくら請求できるのか?です。
 他の連帯債務者と同様に150万円請求できるのか?あるいは?
?女性
 これについては、次の2つの考え方が存在します。

1・EとFは150万円の債務の連帯債務者になる
2・EとFは(死亡した)Dの債務を相続分で分けた限度で連帯債務者になる

 それでは上記の2つの考え方について、ひとつひとつ解説します。


1・EとFは150万円の債務の連帯債務者になる

 この考え方の場合、債権者AはC・D・E・Fに対して、各自それぞれに150万円全額を請求することができます。
 つまり、債権者Aとしては、連帯債務者が1人増えたような感じです。

          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↓↘︎
         F E

 この考え方による結論は、債権者Aとしてはむしろありがたい展開かもしれませんね。
 連帯債務者が1人増えたということは、150万円を請求できる相手が1人増えたということなので、それだけ150万円を回収しやすくなります。


2・EとFは(死亡した)Dの債務を相続分で分けた限度で連帯債務者になる

 この考え方の場合、債権者Aは、B・Cに対しては従来どおりそれぞれに150万円請求できますが、E・Fに対してはそれぞれに75万円ずつしか請求できません。
 
なぜそのようになるのか?

 その理由は、EとFは連帯債務150万円を相続分に応じて相続した、と考えるからです。
 そしてE・Fの相続分は2分の1ずつです(法定相続)。
 つまり、EとFは連帯債務150万円を75万円ずつ相続したと考えるわけです。
 したがって、債権者AはE・Fに対してはそれぞれに75万円しか請求できないのです。

          B
         ↗︎
  「150万円払え」→C
A〈
  「75万円払え」→E         
         ↘︎
          F

 なお、この場合のB・C・E・Fの債務も連帯債務です。
 ただ、Dの死亡による相続で、その中身が通常の連帯債務とは異なっただけです。

 注意点として、AとB・CAとE・Fで、債権債務関係が別々になる訳ではありません。
 Dの死亡による相続後も、あくまでB・C・E・Fの債務は連帯債務のままです。
 この点はくれぐれもお間違いないようお気をつけください。

 それで結局どっちの考え方が正しいの?

 結論。
 判例は2の考え方を採用しています。
 したがって、事例3の債権者Aは、B・Cに対しては従来どおりそれぞれに150万円全額請求できますが、E・Fに対してはそれぞれに75万円ずつしか請求できません。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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